サイバーチックにアレンジされた「シャーロック・ホームズ」
本作は、アーサー・コナン・ドイルの『緋色の研究』や『まだらの紐』など、「シャーロック・ホームズ」シリーズの作品に沿ったストーリー展開が楽しめる。しかし、主人公のシャーロックが少年型のアンドロイドであったり、事件の仕掛けにインターネットをはじめとした現代および近未来の技術が用いられるなど、現代風にアレンジされている。またシャーロックは、自分が記憶したデータをホログラム装置に投影して現場検証を即座に完了させたり、自らのAIを瞬時にほかの軀体に移し替えるなど、さまざまな機能が内蔵されている。その能力を活かした捜査で事件の解決に大いに貢献しているが、その一方で犯人や関係者の心理を読み切ることができなかったりと、アンドロイドであるがゆえの欠点もある。
人間とアンドロイドが難事件に挑む
アフガニスタンで軍医を務めていたジョンは、左脚に銃弾を受けて軍を退役してから、定職にも就かず自堕落な生活を送っていた。そんなある日、アンドロイドのシャーロックが、家賃と光熱費を無料にする条件でジョンとのルームシェアを希望する。だが、かつて左脚を負傷した原因がアンドロイドの誤射によるものだったことを理由に、ジョンはその申し出を断ろうとするものの、強盗犯のジェイムス・ライダーを協力して捕らえたことでシャーロックとの同居を受け入れる。そして二人は探偵業を開始し、アンドロイドと人間の探偵コンビはロンドンを揺るがすさまざまな難事件に挑むことになる。
「人類の初期化」を目論む宿敵、モリアーティ教授
シャーロックとジョンは、頻発する事件を解決していくうちに、その裏に潜む黒幕の存在を予感する。そして、これまで起きた事件に何らかの関連性がないかを調査したり、シャーロックの同型機にあたるマイクロフト・ホームズと情報交換を交わすことで、一連の事件はダラム大学の教授を務めているジェイコブ・モリアーティが仕組んだ「偉大なる暇潰し(グレートゲーム)」の一環であることが判明する。モリアーティは、「シンギュラの門」と呼ばれる概念の開放を目論んでおり、達成した暁には人類すべてが初期化されてしまう。マイクロフトから指令を受けたシャーロックは、ジョンと共にモリアーティを追い詰めるため行動を開始する。
登場人物・キャラクター
シャーロック・ホームズ
アサギ・コーポレーションで製造された少年型のアンドロイド。型式番号は「HSN-003」。身長は169センチで、体重は70キロ。外見および言動が限りなく人間に近いアンドロイドだが、細かな部分に感覚障害がある。飄々(ひょうひょう)とした性格で、人間を見下すような言動を見せることがある。ロンドン中の人間に埋め込まれているデータ端末「生体指標」を読み取ることで、その人物の経歴を瞬時に理解する。だが、常時オンラインで情報収集して学習する「深層学習機能」が備わっていないため、実際に行動した結果を分析し、その経験をもとにリアルタイムで成長していくという特徴を持つ。これは開発主任であるシェリンフォード・絵茉・レストレードの構想によるもので、彼女の指示によって人間に対する理解を深めるため、ジョンと共に探偵業を営んでいる。
ジョン・H・ワトスン
シャーロックと共に探偵業を営んでいる青年。年齢は23歳。身長は178センチで、体重は65キロ。かつてイギリス軍の軍医を務めていたが、アフガニスタンでアンドロイドによる誤射が原因で脚にケガを負い、退役している。現在も障害が残っており、激しい運動はできないが、射撃や格闘技術は衰えておらず、武器を使わなくても一人で犯人を制圧できる。キザで女たらしな一面があるものの実直な性格で、悪を見過ごすことができず、自らの身を危険にさらすこともいとわない。また文才にも優れており、レシェリンフォード・絵茉・レストレードにレポートを提出した時は、「小説家を目指してみてはどうか」と冗談半分に言われていた。一方で勘が鈍く、二択問題をことごとく外している。昔のケガが原因で、アンドロイドとの交流に消極的なところがあるが、シャーロックと共に事件の解決に奔走する中、アンドロイドへの悪感情を払拭する。
クレジット
- 原案
-
コナン・ドイル
- 脚本
書誌情報
I AM SHERLOCK 全4巻 小学館〈ゲッサン少年サンデーコミックス〉
第1巻
(2017-08-10発行、 978-4091277701)
第4巻
(2018-10-12発行、 978-4091286000)