あらすじ
第1巻
中学1年生の小田切美玲は、そのかわいすぎる見た目で男性が寄って来てしまい、いつも女友達の茜、秋風のん子に守ってもらいながら、ひばり女子学院に通っていた。誘拐や痴漢被害に遭う事を恐れた母親の小田切怜子に、放課後の寄り道を禁止されているため、美玲は家と学校と学校の友達だけで構成された世界しか知らなかった。しかし、それなりに楽しい毎日を過ごしつつも、もっと広い世界を見たいと考えていた美玲は、ある日、勇気を出して一人で出かけた先で痴漢被害に遭ってしまう。そこを近所の中学校に通う芦屋智に助けられた美玲は、後日、お礼をするため彼の通う柔道場に会いに行く。そして、初対面時から互いに好印象を抱いた二人は、交流を深めていく。だがそんなある日、急に智の姿を見かけなくなってしまう。通っている中学校も別々で、日常生活において智との接点がない事を思い知った美玲は動揺するが、ある日を境に、頻繁に玄関に花が置かれるようになる。以前、智が飼い犬の虎太郎の額に花を乗せて遊んでいた事を思い出した美玲は、玄関を見張って花を置く人物が智である事を突きとめる。そして智が、声変わりの最中でおかしな声調になっている事を知られたくなくて、姿を見せずにいた事を知るのだった。智に久しぶりに接した美玲は、コンプレックスを多く抱きながらもいつも明るく優しい彼に、恋愛感情に近い思いが芽生えていくのを自覚する。
第2巻
ある日、芦屋智に大事な話があると言われた小田切美玲は、こっそりと家を抜け出した。智に連れていかれた先は柔道場で、美玲は智に護身術を習う事になる。これは、いつか美玲が堂々と外を歩ける日が来るように、という智の願いによるものだった。自分のために親身になってくれる事が嬉しくて、美玲はますます智に惹かれていく。そんな中、夏休みに入り、智が柔道の大会の個人戦に出る事を知った美玲は、茜と共に智の応援に駆けつける。残念ながら智は決勝戦で敗れ、美玲に八つ当たりして辛辣な言葉を投げ掛けるが、それでも美玲は黙って彼のそばに寄り添うのだった。そんな美玲の優しさに励まされた智は、次こそは勝利しようと固く心に誓う。そして、大会からの帰り道、夏休み最終日の8月31日に花火大会があるという情報を得た智は、いっしょに行かないかと美玲を誘う。心配性の母親、小田切怜子に人の多い場所に出かける事を禁止されている美玲は戸惑うが、智と過ごすかけがえのない時間のために、勇気を振り絞って怜子を説得する。だが、結局許しは得られず、美玲は部屋で一人寂しく過ごす事となる。そんな中、美玲は智が線香花火を玄関に置いて行く姿を目撃する。線香花火の裏には、頑張ったね、と美玲を労うメッセージが書いてあった
第3巻
花火大会の日に、初めて母親の小田切怜子とけんかした小田切美玲は、いつか母親に自分の思いが通じる日が来ると信じ、気持ちを前向きに保ち続ける。そのための一歩として、美玲はつねにいっしょに行動していた茜や秋風のん子と離れ、一人で下校してみる事にした。下校中、美玲はさっそく男子高校生に絡まれるが、芦屋智に教えてもらった護身術で、難なく相手の手を振り払う事に成功。自分に構わないように伝えると、男子高校生達はあっさりと退き、美玲はこの一件で大きな自信をつける。
やがて季節は冬になり、美玲は智と最後に会ってから、半年以上経っていた。仮に自分が一人で外を歩けるようになったとしても、生活圏の違う智とは、今後疎遠になっていくのではないかと考え始める。春になり、小学生だった美玲の弟、小田切楓も中学受験に合格し、新しい制服に袖を通す。このまま智と会えなくなるのは嫌だと思った美玲は、1年前に智と、春になったらいっしょに桜を見に行こうと約束していた事を思い出す。いてもたってもいられずに約束の場所へ向かった美玲は、偶然その場所を訪れていた智と再会する。この半年のあいだに背が伸び、ずいぶんと目線の高くなった智は、美玲を自身の通う中学校へと案内する。もしも同じ学校に通っていたら、毎日他愛のない話をし、もっと距離が縮まっていたのだろうかと考える二人。そんな中、美玲が最近は一人で下校している事を知った智は、自分が毎日美玲を迎えに行き、家まで送り届ける事を提案する。翌日の放課後、約束通り校門で待ってくれていた智と並んで歩く帰り道で、美玲は智との距離がどんどん縮まっていく事を実感する。
第4巻
中学3年生になった小田切美玲は、大学までエスカレーター式に持ち上がれるひばり女子学院に通っているため、受験で奔走している芦屋智の苦労が理解できない。そんな中、智と同じ塾に通う秋風のん子から、智の志望校が難関校である事を聞いた美玲は、自分との下校の時間が智の負担にならないかと懸念する。智に打ち明けると、何の負担にもならないと笑われたが、美玲は、自分の世界がまだ狭い事を痛感する。智と同じ高校に通い、共に高校時代を過ごせたら、互いに気持ちが離れずにいられるのではないかと考え、高校受験する事を思い立つ。勉強ばかりするようになった美玲をいぶかしむ母親の小田切怜子は、美玲の部屋で高校受験の願書を見つけて激怒する。幼少期に美玲が知らない男に連れ去られた恐怖を忘れられない怜子は、やっとの思いで入学させたひばり女子学院を辞めようと考えている美玲を頭ごなしに叱り、一層監視の目を厳しくし、家から一歩も出さなくしてしまう。美玲は、そんな母親に反抗して部屋を抜け出し、行方不明になってしまうが、捜しに来た智に自分の意思を貫くよう助言を受ける。これに勇気をもらった美玲は、怜子を前に真剣に話し合うのだった。これにより怜子は、美玲が誘拐された幼い頃とは違い、自分の意思で行動できる大人になったのだとその成長を認め、二人は和解する。
登場人物・キャラクター
小田切 美玲 (おだぎり みれい)
ひばり女子学院中等部に通う中学1年生の女子。5月20日生まれのA型。身長155センチ、足のサイズは22センチ。勉強はあまり得意ではなく、特に数学が苦手。裁縫やあみぐるみが得意で、手芸クラブに所属しており、制作した手芸品は友人にプレゼントしている。非常にかわいい容姿のため、その姿を見た男性が大人子供問わず、近寄って来てしまう。 そのため、痴漢や誘拐被害を恐れた母親の小田切怜子が非常に過保護になり、門限を5時に設定し、放課後もまっすぐ帰宅するように教育している。お嬢様っぽい見た目に反して、フェンスによじのぼるなど非常に活発である。親友の茜と秋風のん子と登下校中も含め、いつもいっしょにいる。弟の小田切楓には姉扱いしてもらえず、名前に「ちゃん」付けで呼ばれ、いじられる事が多い。
芦屋 智 (あしや とも)
桜花中学校に通う1年生の男子。5月5日生まれのO型。足のサイズは25センチ。小学校に上がる頃から始めた柔道を現在も続けており、黒帯の腕前である。柔道場を経営している常磐とは、彼の弟と同級生という事もあり、柔道場に通うようになってからはいつも三人で遊び、兄弟同然の仲である。柔道大会では、ライバルである夏目といつも優勝を争っている。 試合に負けると荒れるタイプだが、以前、試合に負けて神経質になっているところを、からかわれて大喧嘩をした事を反省して以来、負けても明るく振る舞うようになった。身長が低い事にコンプレックスを抱いているが、柔道は体の大きさが関係ないところが気に入っている。秋風のん子と同じ塾に通っており、成績優秀で、とりわけ数学が得意。 父親と姉の芦屋奈々は警察官で、二人共に柔道が強い。虎太郎という子犬を飼っており、虎太郎が小田切美玲に懐いている事から、よく散歩がてら美玲の家まで会いに行っている。中学2年生で変声期を迎え、この頃から急激に成長期に入り、中学卒業時には175センチとなった。
秋風 のん子 (あきかぜ のんこ)
ひばり女子学院中等部に通う1年生の女子。小田切美玲の親友で、いつも美玲と茜と共に行動しており、美玲や茜、クラスメイト達からは「のんちゃん」と呼ばれている。弁護士志望で、毎朝のように美玲を追って校門前にたむろする男達の身辺調査をし、美玲に告白する時には相談するように、と口を酸っぱくして言っている。母親が化粧品会社に勤めているため、リップクリームなどのサンプルを持って来ては、美玲達に配り歩いている。 鍵っ子で、塾通いをしている。
茜 (あかね)
ひばり女子学院中等部に通う中学1年生の女子。小田切美玲の親友で、いつも美玲と秋風のん子と共に行動している。バスケットボール部に所属しており、非常に活発な性格をしている。運動神経抜群で、美玲が男性に囲まれて困っている時には躊躇なく飛び蹴りをかます行動力を発揮。その際、自らの事を「茜マン」と称する。末っ子のため、甘え上手。 大学までエスカレーター式の女子校に通っているため、「偏差値」という言葉の意味を知らない。
小田切 楓 (おだぎり かえで)
小田切美玲の弟で、小学校5年生。父親譲りの天然パーマのために、毎日のセットにうんざりしている。いつも眼鏡をかけている。姉の美玲より賢く、しっかりした性格の持ち主。そのため美玲を姉扱いせず、名前に「ちゃん」付けで呼び、からかう事が多い。難関校であるK大付属中学校への進学が決まっている。美玲には「かーくん」と呼ばれている。
芦屋 奈々 (あしや なな)
芦屋智の姉で、警察官をしている女性。柔道に強い事を彼氏にからかわれたため、同棲を解消して実家に戻って来ている。近隣の学校から依頼されて、護身術の指導をする事があり、そのいろはを智に教えた。智の通う柔道場の息子、常磐と共に、思春期の智の恋愛を面白おかしく見守っている。
常磐 (ときわ)
桜花中学校に通う中学3年生の男子。2歳下の弟がおり、柔道部と生徒会に所属している。高身長、頭脳明晰、容姿端麗と三拍子そろった逸材のため、行く先々で女子に囲まれている。実家は柔道場を開いており、幼い頃から常磐自身も柔道に親しんでいるが、黒帯になった芦屋智にはもはや敵わない。芦屋奈々と共に智の成長を見守り、応援している。 小学校に上がる頃に柔道場に通うようになった智とは昔なじみで、親が差し入れをする仲である。智といっしょに小田切美玲を痴漢から助けた経緯で、美玲と知り合った。
虎太郎 (こたろう)
芦屋智の実家で飼われているオスの子犬。智の13歳の誕生日に芦屋家にやって来た。名前は智が付けた。マザコンで、芦屋家で一番懐いているのは智の母親である。小田切美玲には「コタちゃん」と呼ばれており、非常に人懐こく、初対面の美玲にもすぐ慣れた。美玲を気に入り、散歩に出ると美玲の家の方角に行こうとする。
夏目 (なつめ)
柔道が得意な中学1年生の男子。柔道大会の個人戦でいつも芦屋智と優勝を競っているライバル。つねに冷静に構えており、不言実行で黙々と練習を重ねている。中学3年時の柔道大会の個人戦で智に敗れ、優勝を逃した。
小田切 怜子 (おだぎり れいこ)
小田切美玲の母親。ウェディング関係の企業に勤めており、仕事にやりがいを感じていたが、美玲が幼い頃に知らない男に連れ去られた事をきっかけに退社。以来、美玲を守りたいがため、家と学校の往復以外を許さなくなった。誘拐された幼い頃のままだと思っていた美玲が、中学生になって自分の意思で判断し、行動できる大人になったのだと気づいてからは、美玲の意思を尊重するようになった。