あらすじ
第1巻
2058年3月。アメリカ海軍に所属するアダム・ガーフィールドは、業務中の事故で大ケガを負い、右足を失ってしまう。これで退役かと覚悟していたアダムだったが、そこにJSOC(統合特殊作戦コマンド)のアーサー・トラヴィス中将が現れ、今後はCNASという研究所で「コンパニオン」という仕事をするように命じられる。コンパニオンとは、かつて猛威を振るった「眠り病」の治療において、パートナーの「ダイバー」を手助けする役割だった。アダムはそのダイバーの中でも、かつて「眠り病」を根絶させた優秀な英雄として知られるルネ・ウィンターとの適合率が非常に高かったため、彼のコンパニオンとして選ばれたのだ。しかし現在では眠り病の感染者はいないはずで、アダムはなぜいまさらそんな仕事が与えられたのかと困惑する。そんなある日、アダムはリハビリを受けている施設の資料室に忍び込み、4か月前から新型の眠り病が発生しており、しかも新型は何度でも再発する恐れがあることを知る。しかし、肝心のルネは召集を無視し続けており、ダイバーとして働く意思がまったくない。このままではいけないと考えたアダムは、ルネとの接触を試みる。
第2巻
ルネ・ウィンターは、アーサー・トラヴィスに脅されるような形でダイバーとして復帰した。こうしてアダム・ガーフィールドは、ルネと共に初めての「眠り病」の治療「ダイブ」に挑む。眠り病は、まず感染者とダイバー、コンパニオンの三人の脳波を「生体コネクト」という方法でつなぐ。そしてダイバーとコンパニオンは、感染者の脳の中の世界である「LINBO」を歩きながら、眠り病のウイルス「ESV」が取りついた記憶を除去する方法で進める。しかしこの記憶、すなわち「LINBO」は、感染者のトラウマで構成されており、治療に失敗すれば、ダイバーとコンパニオンは「LINBO」から出られなくなってしまうという、非常に危険な場所でもある。治療中、アダムは感染者であるマックス・ハットンの過去の苦しみを知ってショックを受けるが、どうにか除去に成功して現実世界に復帰する。こうして二人での初治療を終えた直後、アダムはルネの自宅に呼び出される。ルネによれば、新型の眠り病は人為的に作り出されたものなのだという。アダムたちが、人為的に作り出された感染者の治療中に失敗して死亡すれば、眠り病を治療できる者はいなくなり、以降は感染を止められなくなる。新型の眠り病を製作した者の狙いがそこにあると考えたルネは、CNASが怪しいとにらんでいた。そしてルネとアダムの二人は、ルネの知人であるドミニク・ウィルソンに協力を依頼する。
第3巻
アダム・ガーフィールドとルネ・ウィンターは、次に「眠り病」に感染する人間を特定してダイブし、彼らの直近の記憶を見ることで感染源を探そうとしていた。しかし、数人にダイブしてもなかなかめぼしい情報は得られず、さらにアダムの弟であるハリー・ガーフィールドが感染していることが発覚。そこで二人はハリーの脳にダイブし、感染源が青い封筒に入った、電磁波コーティングされた紙であることを特定する。しかし、ここでルネはハリーが再発の可能性が高いうえに、今治療を行うとCNASに見つかる恐れがあるため、治療はしないことを提案。だがアダムはトラウマに苦しむハリーを放っておけず、ルネに「コード」を使うという方法で、ウイルスに感染している記憶を消してほしいと依頼する。しかし、それが感染者にどのような影響を及ぼすか理解しているルネはこれを拒否し、どれだけつらい過去であってもそれが現在をつくっていると、アダムを説得するのだった。結局ルネはコードを用いらずに治療を行い、ハリーは回復。そして二人は青い封筒を受け取った人間を探し始める。そんな中、アダムとルネはCNASのセス・コバヤカワが、眠り病に感染した人間を秘密裏に殺す場面を目撃し、CNASとセスへの不信感を強める。
第4巻
「眠り病」感染源である青い封筒を配っていたのは、以前アダム・ガーフィールドたちが治療したマックス・ハットンだった。ルネ・ウィンターは青い封筒に入っている紙には、見た者を眠り病の感染者にするだけでなく、感染者をあやつるコードが仕込まれていると推測。二人はこれを公表するため、眠り病に関する記事を書き続けてきたジャーナリストのロバート・アスプリンに声を掛ける。そこでロバートから、記事を書く条件として関係者の記憶ログを取ってくるように言われた二人は、すべての根源である、アーサー・トラヴィスの脳にダイブすることを決意するのだった。こうして二人は変装し、アーサーが一人になった時を狙うが、セス・コバヤカワの妨害によって失敗。二人は気絶させられたままCNASに連れていかれ、何者かの脳に強制ダイブさせられてしまう。さらにこのダイブには、セスと彼のパートナーであるダイバーのゾエも参加していた。こうして何者かの「LINBO」で目覚めたアダムとルネは、ゾエが特別な力を使って、ゾエの「LINBO」に四人同時のダイブを行わせたと推測。現在ゾエが持つホスト権を奪うことでこの場を脱そうとするが、セスによってルネが刺されてしまう。
第5巻
「LINBO」の中でルネ・ウィンターがセス・コバヤカワに刺されたあと、セスとゾエは現実世界に戻った。しかし、アダム・ガーフィールドとルネは今度はルネの「LINBO」に取り残されており、そこでアダムはルネの壮絶な過去と彼の元妻であるアンジェラ・ホールについて知ることとなる。一方その頃、ロバート・アスプリンはアダムと連絡がつかないことを不審に思い、CNASを訪れていた。そこでロバートはセスから、アダムとルネがダイブしたまま戻れなくなり、2週間以内に戻れなければ死亡すること、現在アダムたちが怪しんでいるCNASは黒幕ではなく、CNASもまた「眠り病」をばらまく真犯人を探していることを知らされるのだった。そのまま日数が経過し、ゾエとセスは今回の責任を取り、一向に目を覚まさないアダムとルネを助けるためのダイブを試みる。そこでは、アンジェラの死を受け入れられないルネが、自らの記憶を書き換えようとしている最中だった。しかし、アダムが説得を試みたことでルネは正気を取り戻し、四人は合流を果たす。ルネはゾエとセスを敵視するが、アダムは以前ゾエが特殊なコードを用いて自分を助けてくれたことを根拠にルネを説得し、そろって現実世界に戻るのだった。
第6巻
アダム・ガーフィールドは無事に現実世界に戻るが、これをゾエとセス・コバヤカワが秘密にしていたため、アダムとルネ・ウィンターは死亡届が出されていた。ひとまずアダムはルネが目覚めるのをセス・コバヤカワとゾエと共に待つが、そこにアメリカ全土に向けた謎のメッセージが届く。これがルネにしか解読できない暗号で、送信者はルネの死亡を疑っているらしいことに気づいた三人は、ルネが目を覚ましてからドミニク・ウィルソンの協力のもと、もう一度ルネの脳にダイブする。するとそこで、アンジェラ・ホールを「眠り病」に感染させた張本人であり、現在青い封筒を配っているのはジョージ・シュタイナーであることが発覚。アダムたちはアーサー・トラヴィスにこれを伝え、ジョージの自宅に突入するのだった。しかし、ジョージはすでに新型の眠り病をばらまく準備を終え、眠り病の研究データは消去したうえで、自ら眠り病に感染して意識を失っていた。研究データを手に入れるには、ジョージの脳にダイブするしかない。アダムとルネは、これがジョージの罠であると認識しつつも、ダイブを決行する。
登場人物・キャラクター
アダム・ガーフィールド
ルネ・ウィンターのコンパニオンを務めるアメリカ人男性。サンフランシスコに住んでおり、年齢は27歳。コンパニオンとして「眠り病」の研究所であるCNASに所属するまでは、アメリカ海軍第一機動部隊NECCに所属しており、階級は二等兵曹だった。海軍は「ネイビー」とも呼ばれることから、ルネには「クソボケネイビー」と呼ばれることもある。坊主に近い短髪をツーブロックにし、顎ひげを生やしている。身長190センチで、筋肉質のがっしりとした体形と褐色の肌の持ち主。2058年2月に遭った事故で右足を失っており、右足は義足。現在は明るくお調子者で陽気な性格ながら、以前は暴力的な父親に苦しめられ、いつか自分は殺人犯になってしまうのではないかと思い悩んでいた。また軍に入ってからもしばらくは、近寄りがたい存在だった。2058年2月、艦隊の任務で船外作業中、不発弾の爆発に巻き込まれる事故に遭う。その後2週間意識不明で生死の境をさまよい、2058年3月2日に目を覚ました。これによって右足を失い、退役間近と思われていた。しかし、ルネとの適合率が97%と非常に高く、また見る夢がいつも明晰夢という不思議な力があることから、ルネのコンパニオンに抜擢される。当初はダイブの仕事に意欲的ではないルネを快く思っていなかったが、次第にルネの人柄とその過去に触れ、考えを改める。そしてパートナーとしての絆を深めていく。四人兄弟の長男で、年の離れた弟のクリス・ガーフィールドとハリー・ガーフィールド、年の離れた妹のニコル・ガーフィールドがいる。誕生日は2058年5月12日。
ルネ・ウィンター
ダイバーのアメリカ人男性。サンフランシスコに住んでおり、年齢は37歳。8年前、ダイバーとして「眠り病」を根絶させた英雄として「LIMBO THE KING」あるいは「ゴールデンゲートの英雄」と呼ばれている。パートナーは、アダム・ガーフィールドで、元妻のアンジェラ・ホールが生きていた頃は、彼女と組んでいた。シャーロット・ミーガンの父親だがこのことは隠しており、シャーロットは里親に預けて別々に暮らしている。前髪を目が隠れるほど伸ばした、白のぼさぼさの短髪に無精ひげを生やしている。身長は170センチで、瘦せている。お金持ちながら自分のことには無頓着で、身なりもぼろぼろ。不愛想な性格で、クールな雰囲気を漂わせている。8歳の時に母親から右前頭骨を撃ち抜かれ、孤児となったところを、眠り病の研究者であるエトムント・シュタイナーに引き取られた。以来、ダイバーの中でも100万人に一人の、「LINBO」の中で眠り病感染者と話せる特別な存在として、多くの感染者を救ってきた。また、この時にアンジェラと出会い、のちに交際してシャーロットをもうける。しかし退職前の最後のダイブの日、ダイブ終了後もアンジェラの意識が戻らず、死亡。以来ダイバーの仕事はやめ、稼いだお金もろくに使わず、死んだように暮らしていた。しかし、新型の眠り病が発生し、アダムと組んで再び治療に励むうちにアダムとの絆を深め、人間らしさを取り戻していく。ダイバーとしての能力の高さは、8歳の時に負ったケガが関係しているのではないかと考える研究者も多い。誕生日は2048年12月24日。
セス・コバヤカワ
「眠り病」の研究所、CNASに所属するコンパニオンの若い男性。ゾエがパートナーを務めている。元軍人でもあり、当時はアンジェラ・ホールの部下だった。坊主頭で体形は細めだが筋肉質。慇懃無礼な性格で、つねに不愛想に振る舞っている。また任務を最優先に考え、そのためなら手段を選ばずに人殺しもいとわない。しかし、ゾエに対しては非常に紳士的で優しく、彼女を大切に思っている。アダム・ガーフィールドとは、2086年の春にアダムがCNAS所属となった頃に知り合うが、業務中に話す程度で特に親しくはなかった。しかし2086年の夏、アーサー・トラヴィスの命令で、治療のふりをして眠り病の感染者を殺害したことから、アダムとルネ・ウィンターに強い不信感を抱かれ、敵対関係となる。その後、やはりアーサーの命令でアダムとルネを気絶させて強制ダイブをさせ、ゾエと共に「LINBO」の中でアダムを殺害、ルネを「LINBO」内に閉じ込める任務を行うが、失敗。この件の責任を取って「LINBO」から出られなくなったアダムとルネを、ゾエと共に助けに行くことになる。以降はアダムたちと協力関係になり、眠り病をばらまく真犯人をいっしょに探すことになる。何事もそつなくこなし、料理も得意。
ゾエ
「眠り病」の研究所、CNASに所属するダイバーの幼い少女。セス・コバヤカワがパートナーを務めている。前髪を眉の高さで切りそろえ、腰まで伸ばした赤のストレートロングヘアにしている。内気で引っ込み思案な性格で、いつもおどおどしている。しかし、ダイバーとしては非常に優秀で、複数のペアを同時に一か所の「LINBO」にダイブさせるなど、ほかのダイバーにはできないような特殊な技術を持つ。また、眠り病を根絶したいという気持ちが非常に強く、セスとは仲がいい。アダム・ガーフィールドとは、2086年の春にアダムがCNAS所属となった頃にその存在を知る。引っ込み思案な性格が災いし、接触することはなかったが、ルネ・ウィンターとは一度会って話したことがあった。2086年の夏、アーサー・トラヴィスの命令で、アダムとルネを気絶させて強制ダイブをさせ、セスと共に「LINBO」の中でアダムを殺害、ルネを「LINBO」に閉じ込める任務を行うが、失敗。その後、この件の責任を取り「LINBO」から出られなくなったアダムとルネを、セスと共に助けに行くことになる。以降はアダムたちと協力関係になり、眠り病をばらまく真犯人をいっしょに探すことになる。
アーサー・トラヴィス
アメリカのJSOC(統合特殊作戦コマンド)で、作戦担当司令官を務める中年男性。階級は中将。前髪を右端の位置で分けた癖のある短髪に眼鏡をかけている。たれ目たれ眉でわし鼻が特徴。クールで高圧的な性格をしており、目的のためには手段を選ばず、すべてを自分の管理下に置かないと気が済まない。2086年3月、右足を失ったアダム・ガーフィールドのもとを訪れ、ルネ・ウィンターとの適合率97%を根拠に、ルネと組んで新型「眠り病」の治療にあたるように命じた。その後、アダムたちには新型の眠り病をばらまいた真犯人ではないかと疑われるようになるが、実際はアーサー・トラヴィス自身もまた真犯人を追っており、これを悟られないようにするために感染者をセス・コバヤカワに命じて殺していた。
クリス・ガーフィールド
アダム・ガーフィールドの弟で、ハリー・ガーフィールドとニコル・ガーフィールドの兄。前髪を目の上で切った、癖のある短髪にしている。明るい性格で、非常に優秀なために飛び級している。2086年3月、右足を失ったアダムの退役は免れないと考え、進学せず就職しようと考えていた。だが、アダムがCNAS所属のコンパニオンとなったことで、引き続き学校に通えるようになった。2086年の夏にはサマーカレッジで寮に入っており、一度は「眠り病」の感染を疑われたが、無事だった。
ハリー・ガーフィールド
アダム・ガーフィールドとクリス・ガーフィールド、ニコル・ガーフィールドの弟。年齢は12歳。額が見えるほど短く切って刈り上げている。明るい性格ながら生まれつき体が弱く、頻繁に体調を崩している。2086年の夏、クリスが夏のあいだに入るサマーカレッジの寮について行った際に、見ると「眠り病」に感染する電磁波コーティングされた紙を見てしまう。これによって眠り病に感染し、事態に気づいたアダムとルネ・ウィンターによってハリー・ガーフィールド自身の脳にダイブされることになる。「LINBO」の中で再現されるトラウマの記憶は、5歳の頃にいじめっ子たちに家族を馬鹿にされたうえ、泥団子を食べさせられたこと。
アンジェラ・ホール
かつて「眠り病」の研究所、CNASに所属していたコンパニオンの若い女性で故人。ルネ・ウィンターがパートナーを務めており、ルネの恋人でもあった。前髪を長く伸ばして左寄りの位置で分けて額を見せ、胸の高さまで伸ばして毛先だけ巻いた黒のロングヘアにしている。唇が厚く、胸が非常に大きい。肝の据わった性格で、ある日、まだ少年だったルネのコンパニオンに、適合率が95%と非常に高かったことで選ばれる。当初は生意気で他人を寄せ付けないルネとのコミュニケーションに苦労していたが、次第に親しくなり、5年間共に眠り病の治療に勤しんでいた。やがてESV破壊用のコードが完成したことで、ルネ以外もダイバーとして眠り病の治療ができるようになり、その頃に交際を始める。その後、娘のシャーロット・ミーガンをもうけるが、退職前にアーサー・トラヴィスにどうしてもと頼まれて行ったダイブ後、意識が戻らずに死亡した。
シャーロット・ミーガン
アメリカのサンノゼに住む小学生の女子で、年齢は8歳。ルネ・ウィンターとアンジェラ・ホールの娘だが、生まれてすぐにアンジェラが亡くなる。ルネが周囲にはシャーロット・ミーガンの存在を隠したことで、本当の両親の存在を知らないまま、里親と暮らしている。前髪を上げて額を全開にした、胸まで伸ばしたロングヘアで、頭頂部はお団子にしてまとめている。たれ目たれ眉で、鼻の周辺にそばかすがいくつもある。明るく素直な性格をしている。ダイバーとしての適性は平均以上ではあるが、ルネに少し劣る。実家は書店で、里親の夫婦と共に暮らしている。
クレア
理学療法士の若い女性。前髪を長く伸ばしてあげて額を全開にし、胸の下まで伸ばした髪の毛全体を、頭の高い位置でポニーテールにしてまとめている。明るく親切な性格をしている。2086年3月、大ケガを負って右足をなくしたアダム・ガーフィールドの担当を務めることになり、突如コンパニオンの仕事をするように命じられて混乱するアダムの相談に乗っていた。リハビリに一番必要なのは覇気だと考えている。既婚者。
ジョージ・シュタイナー
「眠り病」の研究所である「CNAS」直下の増殖分化機構研究部門の部門長を務める男性。眠り病研究の第一人者であるエトムント・シュタイナーの孫でもある。前髪を上げて額を全開にし、肩につくほどまで伸ばしたセミロングヘアを、頭の高い位置でお団子にしてまとめ、口ひげと顎ひげを長く伸ばしている。穏やかな性格で、眠り病研究の最先端を担う若き天才として知られている。ルネ・ウィンターとは幼い頃、ルネがエトムントに引き取られた頃に出会い、困っているところを助けられたのを機に、熱烈に慕うようになる。ある日、エトムントの家に遊びに来た際、ダイバーとしての業務に苦しむルネを救うため、いつかすべてを消し去るという約束を交わす。以来眠り病の解析に勤しみ、最初の眠り病を根絶するコードを作り出す。しかし、共同開発者のポーラを実験体としてジョージ・シュタイナー自身が作り出した新型の眠り病の最初の感染者にして殺害。その後、全人類を新型の眠り病の感染者にして滅ぼし、自分とルネだけは自身の「LINBO」で永遠にいっしょに暮らす計画を立てる。アダム・ガーフィールドとは、2086年3月、アダムがルネのコンパニオンに選ばれたことがきっかけで知り合い、表面上は親しくしていた。
マックス・ハットン
「眠り病」感染者の若い男性。前髪を額が見えるほど短く切った短髪で、色黒ながっしりとした体形をしている。かつて軍人で従軍中に精神に異常をきたし、銃撃戦をしているあいだしか精神的に落ち着けない体になってしまう。ある日銃撃をするため、無抵抗の捕虜を多数殺害した過去がある。そのため、マックス・ハットン自身の「LINBO」の中で再現されるトラウマの記憶も、この件に関するものである。2086年の春、112人目の新型「眠り病」感染者となり、アダム・ガーフィールドとルネ・ウィンターによって治療される。しかし、感染時に仕込まれたコードによりジョージ・シュタイナーにあやつられ、113人目の感染者を作るために、見ると「眠り病」に感染する電磁波コーティングされた紙の入った封筒を、次の感染者候補に届けに行ってしまう。
ドミニク・ウィルソン
とある大学で教授を務める年老いた黒人男性。感染学を教えており、ルネ・ウィンターの知人でもある。額を全開にした、白のもじゃもじゃの短髪に口ひげと顎ひげを長く伸ばしている。背が高くがっしりとした体形の持ち主。2086年の6月頃、アダム・ガーフィールドとルネが大学を訪ね、新型の「眠り病」について調査してほしいと依頼される。そこで、まずは二人が今把握している情報から病原を特定するのがいいとヒントを与えた。また、アダムに最初の眠り病は、ホログラムの動画広告から偶然生まれたものだと説明をした。しかし、実は裏でCNASとつながっており、ルネがダイブした際に感染者の「LINBO」内に閉じ込めるコードの制作を頼まれていた。のちにこれをルネに知られるが、ルネが受け入れたためにその後も関係を続けている。
ロバート・アスプリン
新聞社「USAジャーナル」社会部で働く中年男性。前髪を額が見えるほど短く切り、もじゃもじゃの短髪に眼鏡をかけ、口ひげと顎ひげを生やしている。背が高く、細めの体形。長年「眠り病」に関する記事を書いており、ルネ・ウィンターからひそかに信頼を得ていた。そこで2086年の夏、アダム・ガーフィールドとルネが、新型の眠り病に関する情報を公表したいと考えた際に声を掛けられる。これによって二人と知り合い、CNASが黒幕である証拠をつかめれば記事を書くと約束して二人に協力するようになる。
その他キーワード
眠り病 (ねむりびょう)
人間の記憶に感染する謎の病気。「記憶の癌」の異名を持ち、発症から3か月以内になんらかの治療を施さない場合は、95パーセントの確率で死に至る。眠り病は、ESVというウイルスが人間のトラウマの記憶に取りつくことで発生し、感染者はESVによって増殖した辛い記憶に侵された結果、脳が機能不全に至って死亡する。治療は基本的に「ダイバー」と、その補助をする「コンパニオン」という二人一組の人間が、感染者の脳波と自分たちの脳波をつなぎ「LINBO」と呼ばれる感染者の脳の世界に入り込むことで行われる。ここでダイバーとコンパニオンは「コード」という、ESVが取りついた記憶を消す方法で治療を行う。しかし、これは感染者の記憶ごと消してしまうのと変わりないため、何度も眠り病に感染し、繰り返しコードを打たれた人間は多くの記憶を失い、抜け殻のようになってしまう。だが、ルネ・ウィンターだけは、コードを用いらずに感染者の脳の世界である「LINBO」で、感染者と直接話しながら治療を行えるため、重用された。ダイバーは適性のある人間のみが選ばれ、コンパニオンは各ダイバーとの適合率の高い人間が選ばれる。また、ダイバーは令状に従わない権利が保障されており、ダイブは強制ではない。