概要・あらすじ
陰謀によりエンリルの地位を継承できなかったシュメール家の王子アダム・サクセス・エ・シュメールは、新王ジウドとの軋轢を避け、青と呼ばれる惑星への調査団へ参加する。調査団のリーダーは、王族を毛嫌いするカイン・アベル・サルゴン中佐だった。青の文明はエンリルに巻き起こる陰謀と争いを経て創世されていく。
登場人物・キャラクター
アダム・サクセス・エ・シュメール
惑星エンリルの宇宙開発局に勤務する青年で少尉の位を持つ。王弟の息子で、伯父の星王にいとこのジウドとともに養子に迎えられ王子となる。誰からも次期星王と目されていたが、王位がジウドに継承された。派閥争いを避けるために王宮を出て生家に戻り、惑星青の調査団に加わるが調査中に事故死したと伝えられる。
カイン・アベル・サルゴン
惑星エンリルの上級将校で中佐の位を持つ。勤務にあたっては時に冷酷とさえ思える顔を覗かせるが、家族に対しては一転優しい表情を見せる。惑星青の調査団の総指揮を命じられ、アダム・サクセス・エ・シュメールらとともに星間飛行機で旅立つ。自らの出自が王家に因縁があることを知り、王族を毛嫌いし、アダム・サクセス・エ・シュメールには厳しく接する。
アリ・イルガル
高度な文明を持つ惑星エンリルの宇宙開発局員。髭をたくわえ左頬に傷跡を持つ男性。カイン・アベル・サルゴン、アダム・サクセス・エ・シュメールらの惑星青の調査から、青の時間で数百年後再び青の調査のために降り立つ。補佐官のエア・ラクロウと夫婦を演じて、都市国家ウルに潜入し、ジウスドラ王に仕える。 当初は調査対象だった青で過ごすうちに、住民たちに対して愛情が芽生える。
エシュマ・ナハリオ
惑星エンリルでカイン・アベル・サルゴンの補佐官をつとめる青年。補佐官は上級将校一人につき一人ついている。無表情で必要以上の言動・行動はしない。補佐官の定めに従い、去勢され、感情を押し殺して機械に近い人間になるよう洗脳教育を受けた。補佐官養成所を主席で卒業した秀才。 カイン・アベル・サルゴンの勤務を補佐し、身の回りの世話もする。カイン・アベル・サルゴンを守るためには我が身を挺して行動する。
エバ・ユング・フロン
女性言語学者で、博士号を持つ。青の調査団に参加し、アダム・サクセス・エ・シュメールらと共に星間飛行機に乗り込む。異星人の会話や文字の分析を担当する。自身を「サバイバル向き」と称する。共に青の調査を進めるうち、アダム・サクセス・エ・シュメールに憧れている。
ジウド
惑星エンリルの星王の甥で、アダム・サクセス・エ・シュメールとともに後継者のいない伯父の養子となる。星王が死亡した際、王の印である指輪を受け取ったといい、第183代星王ジウド7世として即位する。アダム・サクセス・エ・シュメールに比べ心身が弱く、伯母である皇太后の言いなりになっている。
皇太后
惑星エンリルの皇后で、夫の星王が死亡後に皇太后となる。己の欲望に忠実な女性。甥である王子ジウドとは肉体関係にあり、気弱なジウドを自らの意のままに操っている。星王が死亡した際、ジウドとともにその臨終に立会い、ジウドが王位を継承したと証言する。
アンダ・エンシ・エ・シュメール
アダム・サクセス・エ・シュメールの実母の弟で叔父にあたる。アダム・サクセス・エ・シュメールの出身一族シュメール家の筆頭格。アダム・サクセス・エ・シュメールが惑星青で事故死したことを、皇太后達の陰謀であると確信し、私兵を増強して内乱を企てる。
エリ
カイン・アベル・サルゴンの妻。夫婦仲はむつまじく、惑星青の調査から帰還したカイン・アベル・サルゴンを温かく出迎える。父母やおじ・おば、甥、姪など一族とともに住み、乳飲み子の息子アガテを育てている。一族みんなで旅行に行こうというカイン・アベル・サルゴンの提案を素直に喜ぶ。
アガデ
カイン・アベル・サルゴンとエリの息子。カイン・アベル・サルゴンが惑星青の調査から帰還した時には、まだ乳飲み子だった。長じて父カイン・アベル・サルゴンの補佐官だったエシュマ・ナハリオの弟キリシャから、自分の出自を聞き、子孫に語り継ぐよう教えられる。
キリシャ・ナハリオ
カイン・アベル・サルゴンの補佐官エシュマ・ナハリオの年子の弟で、兄にうりふたつの顔をしている。補佐官として洗脳教育を受けたエシュマ・ナハリオが常に顔色を変えないのに比べ、表情豊か。兄のおかげでよい学校に通えて幸せと語る。
エア・ラクロウ
黒い長髪で、無表情な男性。高度な文明を持つ惑星エンリルの宇宙開発局員アリ・イルガルの補佐官。ともに惑星青の調査のため都市国家ウルに潜入する。去勢された男性であるが、潜入調査ではイルガルの妻役を演じる。ジウスドラ王の息子ドゥムジから慕われている。
場所
エンリル
『青のメソポタミア』の舞台となる惑星。人口は約18億人で、高度な科学技術を持つ。他の文明を持つ惑星と交流があるが、アモリ人とは長期に渡って抗争が続いている。アッカド王朝が支配し、アダム・サクセス・エ・シュメールは王子で王位を継承するとみられていた。
青
『青のメソポタミア』の舞台となる惑星。高度な文明を持つ惑星エンリルから調査団が派遣された。面積は惑星エンリルよりも小さく、住民の寿命も著しく短い。植民星として有望な環境だったが、ホモ・サピエンスが生息しているため、取り決めにより植民地化は見送られた。