あらすじ
大吾
ギャンブル好きで借金まみれの父親・橘十蔵のせいで、貧乏暮らしを強いられていた少年・橘大吾は、ある日、蒸発した十蔵の代わりに借金取りから追われる身となってしまう。逃走中に西岡ミズキを人質に取り、辛くも借金取りから逃げ切った大吾だったが、ハンドボールを馬鹿にしたことでミズキと決裂。そのスキを突いた借金取りによってミズキがさらわれてしまう。しかし、「英雄になる男」を自称する大吾は、超人的な身体能力を発揮して借金取りの車を追い詰め、ミズキを奪還することに成功する。その後、十蔵の計らいで、ハンドボールクラブの監督・西岡誠一郎の自宅へと行った大吾は、そこで誠一郎の娘であるミズキと再会を果たすのだった。
居候
西岡誠一郎の家で居候として暮らしをスタートさせた橘大吾。大吾を一流のハンドボーラーに育てるべく、意気揚々とコーチを開始する誠一郎だったが、ハンドボールに一切興味がない大吾はこれを拒絶。それでもしつこくハンドボールを勧める誠一郎に対し癇癪を起こした大吾は、ハンドボールを「クソスポーツ」と罵り、誠一郎に大きなショックを与えてしまう。しかし、その態度を西岡ミズキに責められ、深夜にも関わらず、大吾に見せるためのハンドボールの名シーン動画を編集する誠一郎の姿を見た大吾は、一時期の頑なな姿勢を改め、翌日から誠一郎とともにハンドボールの練習に取り組むようになるのだった。
信念
西岡誠一郎とのランニングの練習中、勝手に帰ってしまった橘大吾。自分勝手な振る舞いを誠一郎に咎められるが、体力に自信のある大吾はランニングなど不要と主張。基本を疎かにしては橘十蔵のような立派なハンドボーラーにはなれないと諭すが、父親を嫌悪している大吾はこれに猛反発し、ハンドボールをやること自体を拒否。そのまま家を飛び出してしまう。しかし、その現場を目撃していた借金取りの一味が、大吾を探していた誠一郎を捕まえて縛り上げ、大吾を呼び出すように脅迫。西岡ミズキからの知らせで家に舞い戻った大吾は、英雄として誠一郎を助けようとするのだった。
決意
遅々として進まない借金の回収に業を煮やし、借金取りの親分であるヤクザの組長が西岡誠一郎の家にやって来た。浮き足立つ借金取りのスキを突いて、橘大吾を逃がそうとする誠一郎だったが、大吾をかばい、銃弾をその身に受け、重傷を負ってしまう。そんな誠一郎を守り、たった1人で借金取りを追い払おうとする大吾の姿に感じ入った組長は、仲間を連れ、その場から引き上げる。後日、誠一郎の入院した病院を訪れた大吾は、彼に向かってボールを投げつけ、ハンドボールを始めるという決意を、誠一郎に見せ付けるのだった。
開始
ハンドボールを始めることを決意し、西岡誠一郎のクラブで初練習に参加することになった橘大吾。西岡ミズキと練習場である体育館を訪れた大吾は、その激しくスピーディな練習風景に圧倒されてしまう。そんな大吾の前にクラブのキャプテン・五十嵐カオルが姿を現し、大吾にボールをぶつけたうえ、監督の誠一郎に怪我を負わせた責任は大吾にあるとして、激しく責め立てるのだった。その言葉に大きなショックを受けた大吾は、監督の怪我は自分に非があるとして、気が済むまで自分を殴るようカオルに提案する。しかし、そんな大吾の態度を見たカオルは、それまでの挑発が大吾の人間性を見極めるためのものであったことを明かし、改めて大吾の入団を許可するのだった。
集合
ハンドボールクラブの選手から「鬼ババア」と呼ばれているコーチ小野チカコと出会い、彼女の厳しいプレッシャーを受けてたじたじとなった橘大吾。チカコの提案による、6対6のセットプレーの練習を見ていた大吾は、その激しいプレイに触発され、見よう見まねでジャンプシュートを実践。圧倒的に高い位置から鋭いシュートを繰り出し、クラブの仲間を驚愕させるのだった。そんな彼らの前に、クラブのレギュラーメンバーが姿を現す。
五人
遅れてきたレギュラーメンバーの5人が合流し、チームを分けて練習試合をすることになった。ハンドボールに関してはズブの素人である橘大吾は、選手の紹介と西岡ミズキによるルールの説明を受けながら、試合を見学する。レギュラーメンバーの素早い動きと連携プレイに目を奪われていた大吾は、そんなハイレベルなメンバーの中にいても、1人だけ異次元のプレイを見せ続けるチームNO.1のプレイヤー椎名仁に注目する。
試合
ライバルチームである帝聖レッドスパークとの練習試合当日、会場入りした橘大吾は、そこで帝聖レッドスパークの監督におさまっていた父親の橘十蔵と遭遇。十蔵の挑発に激昂した大吾は、自分を試合に出すように周囲に懇願するも、初心者ゆえに却下されてしまう。しかも、試合が始まる直前になって、チームの絶対的なエースである椎名仁が、橘十蔵によって帝聖レッドスパークへとスカウトされていたことが判明。昨日までのチームメイトを相手にした試合を強いられてしまう。仁を中心とした相手チームに蹂躙され続ける自チームの惨状を目の当たりにした大吾は、自分を試合に出すことを再度周囲に懇願するのだった。
対決
帝聖レッドスパークに加わった椎名仁の活躍によって、失点を重ね続ける橘大吾のチーム。自分を命がけで守ってくれた西岡誠一郎を馬鹿にする仁の態度に憤り、試合に出せとわめき散らす大吾。そんな彼のもとに病院を抜け出した誠一郎が姿を現し、ボールをもらったら即座にジャンプシュートを打てというアドバイスをしたうえで、大吾を試合へと送り出す。コートに入った大吾は誠一郎のアドバイスを実践し、マークをものともしない高い打点からのジャンプシュートで得点を決め続ける。浮き足立つ他の帝聖レッドスパークの選手をよそに、1人落ち着いていた仁は、大吾を潰すことを宣言するのだった。
英雄
帝聖レッドスパークとの試合の後半、死力を尽くすも16点差をつけられ、体力的にも精神的にも限界に達していた橘大吾。椎名仁のマークによってミスを誘発され、失点を繰り返していた大吾の心情を慮り、試合をやめさせるようとする西岡ミズキの言葉を跳ね除け、あくまで大吾を信じ、試合に出し続ける西岡誠一郎。何があっても大吾を信じ続ける理由を問うミズキに対し、誠一郎は大吾の父親である天才ハンドボーラーだった十蔵の身の上と、大吾にとっての英雄が十蔵であるという隠された真実を語りだすのだった。
登場人物・キャラクター
橘 大吾 (たちばな だいご)
英雄を目指している小学5年生の男子。年齢は11歳。ギャンブル好きな借金まみれの父親・橘十蔵のせいで、極度の貧乏暮らしを強いられており、ひもじい生活を送っている。学用品のほとんどを十蔵がパチンコでとってきた景品でまかなうという極貧生活に我慢がならなくなり、お金を貯めて家を出る算段を整えていた。幼い頃に自分を助けてくれた、空を飛ぶ謎の人物に憧れており、その人と同じような英雄になることが将来の夢。 猪突猛進かつ無鉄砲で、次の行動がまったく予測できない破天荒な性格。身体能力は非常に高く、超人的なジャンプ力と肩の強さを駆使して、高い打点から強烈なボールを投げることができる。ハンドボールの元日本代表だった十蔵の計らいで、西岡誠一郎のもとに居候し、ハンドボールを始めることになった。 当初はハンドボールにはまるで興味がなく、クソスポーツと称して罵っていたが、誠一郎の情熱とチームメイトのプレイに触発され、少しずつハンドボールに気持ちが傾いていく。
西岡 ミズキ (にしおか みずき)
気が強い小学生の女の子。ハンドボールのコーチである西岡誠一郎の娘。借金取りに追われていた橘大吾と出会った際、なぜか大吾に人質にされ、なし崩し的に行動をともにするようになった。その後、自宅に居候することになっていたハンドボールの逸材が大吾であることを知り、大いに落胆する。誠一郎の影響でハンドボールを愛しており、ハンドボールを馬鹿にされると、岩を投げて威嚇するほどに激怒する。 ハンドボールに興味が無い大吾のことは生理的に受け付けなかったが、ともに暮らすうちに、徐々にその姿勢を改めていく。
西岡 誠一郎 (にしおか せいいちろう)
小学生のハンドボールクラブの監督を務めている男性。元日本代表の天才ハンドボーラーだった橘十蔵の知人で、彼に頼まれて橘大吾を預かる身となった。ハンドボールにかける情熱は人一倍あり、大吾のことを立派なハンドボーラーに育て上げようと奮闘する。当初はハンドボールに興味がない大吾から拒絶されていたが、ハンドボールのためならどんな苦労も厭わない献身的な姿勢が、徐々に大吾の心を動かしていく。
橘 十蔵 (たちばな じゅうぞう)
頭にバンダナを巻いた男性。かなりいい加減な性格をしており、ギャンブルと借金にまみれた自堕落な生活を送っているダメ人間。息子である橘大吾の貯金さえ、ギャンブルに消費してしまい、大吾からは嫌悪されていた。元日本代表の天才ハンドボーラーで、押しも押されぬエースだったが、社会人リーグの弱小チームを復興させるために、自ら莫大な借金を背負った過去を持つ。 のちにその能力を買われ、帝聖レッドスパークスの監督となり、西岡誠一郎のチームから椎名仁を引き抜く。
五十嵐 カオル (いがらし かおる)
短髪で長身の男子小学生。西岡誠一郎が監督を務めるハンドボールクラブでキャプテンを務めている。生真面目な性格をした熱血漢で、クラブを見学に来た大吾の人間性を見極めるために、わざと稚拙な挑発を繰り替えしていた。背が高いが、耳のサイズも大きく、それを見た大吾を驚愕させる。
小野 チカコ (おの ちかこ)
おっとりした長髪の女性。西岡誠一郎が監督を務めるハンドボールクラブの女性コーチ。常に美しい微笑みをたたえており、言葉遣いや態度も非常に丁寧。反面、選手に課す練習内容は非常に厳しく、緩慢なプレイや態度を決して許さないタイプ。そのため選手からは「鬼ババア」「天使の笑顔に鬼の心を持つ女」と呼ばれ、恐れられていた。指導内容は誠一郎と相反しており、体力を特に重視する。
白咲 翔 (しらさき しょう)
美しい顔立ちをした男子小学生。西岡誠一郎が監督を務めるハンドボールクラブに所属している。華麗なプレイと抜群のルックスをしたゴールキーパーで、選手の母親から熱烈な声援を受ける。
椎名 仁 (しいな じん)
不敵な笑みをたたえた男子小学生。西岡誠一郎が監督を務めるハンドボールクラブに所属している。極めて優秀なハンドボーラーで、チームの核となる逸材。誠一郎の監督としての手腕を見限り、橘十蔵の誘いを受けて、ライバルチームである帝聖レッドスパークスへと移る。