上を向いて歩こう

上を向いて歩こう

むつ利之の代表作である『名門!第三野球部』の続編作品。落ちこぼれていた選手が、ポジティブな考えを持って、低迷するチームの雰囲気を改善しながら、プロ野球のペナントレースを戦う姿を描いている。

正式名称
上を向いて歩こう
ふりがな
うえをむいてあるこう
作者
ジャンル
その他スポーツ
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あらすじ

第1巻

アメリカから4年ぶりに帰国した元プロ野球選手の神龍一は、現役時代にチームメイトだった檜あすなろが監督を務める桜高等学校野球部を訪れる。神はあすなろとの再会を喜び、4年前にあすなろの教え子だった上杉輪を思い出す。上杉は神が「投手になるために生まれた男」と称するほど才能があったものの、大学に進学したあとは上杉の活躍を伝える報道がまったくなかった。そこで、上杉が通う南都大学に向かった神とあすなろは、彼が野球部の学生寮の掃除係として冷遇されている事を知る。上杉は気の弱さとネガティブ思考が災いして試合での失敗が続き、負け犬のような姿になっていた。しかし神やあすなろ、後輩から発破をかけられて奮起。記者が多くいる前で、ドラフトの有望投手を滅多打ちにした打者を完璧に抑える快投を見せる。こうして本来の実力が認められた上杉は、ドラフト6位でプロ野球チーム、千葉マリンズに入団する。

第2巻

2月。千葉マリンズにドラフト6位で入団した上杉輪は、シーズンが始まる前の地方キャンプに参加。チームメイトで球界を代表する桑本海堂などの助言もあって、上杉は徐々にプロ選手らしくなっていく。3月になるとオープン戦が始まり、上杉は球界の盟主といわれる東京エレファンツとの試合で先発に起用される。序盤は東京エレファンツ監督の織田にペナントレースさながらの厳しい攻めに苦労し、ホームランで失点するものの、なんとか立ち直って後続を抑える。さらに高校時代から因縁のある松下を三振に仕留め、開幕一軍の座を勝ち取る。開幕戦はエースの桑本が相手を0点に抑え続けていたが、桑本から引き継いだ2番手投手が打ち込まれて、千葉マリンズは8点差という大差をつけられてしまう。この状況で上杉は、敗戦処理という役目ながらも初登板を迎える。

第3巻

6月。プロ野球のペナントレースで最下位に低迷する千葉マリンズ。上杉輪桑本海堂千藤峰雷太といった一部の選手以外はやる気をまったく見せず、試合では手を抜いたプレーを繰り返していた。そんな中、新しくチームのゼネラルマネージャーに就任した加藤冴利によってチームの大改革が発表され、今のメンバーの大部分が今年のペナントレース終了後に、戦力外通告を受ける可能性が出てくる。今の千葉マリンズを立て直すには優勝が必要だと感じた上杉は、闘争心をむき出しにして相手チームを0点に抑え込む。そんな上杉を見て、最初はヘラヘラと笑って手を抜いていたチームメイトも徐々に触発されていく。そして首位チームとの試合で連敗を止めた千葉マリンズは、破竹の勢いで勝利を重ねていく。確実に首位との差を縮めていく中、加藤によって衝撃的な発言が飛び出すのだった。

登場人物・キャラクター

上杉 輪 (うえすぎ りん)

プロ野球チーム、千葉マリンズに所属する男性。左投げ左打ちで、ポジションは投手。ひ弱そうな体からは想像できないほどの剛速球を投げるが、投げられる球種はストレート、カーブ、カットファストボールの3種類のみ。高校、大学とまともな成績を残していないが、ドラフトの目玉投手を滅多打ちにした神龍一を、多くの記者がいる前で完璧に抑えた事が評価されて、千葉マリンズにドラフト6位で指名された。 入団当初こそ気後れしていたが、桑本や海堂の助言もあってプロ意識がどんどん芽生えていく。紅白戦やオープン戦で結果を出して開幕一軍を勝ち取る。本来は気弱な性格だが、高校の監督を務めていた檜あすなろや恩人の神、大学の後輩に発破をかけられ、別人のように闘争心をむき出しにするようになる。

檜 あすなろ (ひのき あすなろ)

桜高等学校野球部で監督を務める男性。元プロ野球選手で、神龍一や桑本、海堂とは当時のチームメイト。上杉輪の肩の強さに気づき、野手から投手に転向させた。大学で学生寮の掃除係として冷遇され、ネガティブ思考に陥っていた上杉に前向きになる助言を与えた。

神 龍一 (じん りゅういち)

プロ野球チーム、千葉マリンズの元選手の男性。当時は主砲として活躍していた。今は引退して千葉マリンズのスカウトを務めている。選手時代のチームメイトである檜あすなろが監督を務める桜高等学校野球部の試合を見て、上杉輪の投手としての才能にほれ込む。金銭援助してまで無名の上杉を大学に進学させ、実績を積ませて、大学卒業後は千葉マリンズに入団させようとしている。 しかし4年後に再会した上杉が、負け犬のような闘争心のない人間になっていたので落胆し、やる気を出させるために厳しい言葉を投げかけた。闘争心を復活させた上杉が、本来の実力を発揮して千葉マリンズに入団が決まると、自分も打撃コーチとして現場に復帰する。

井戸 光雄 (いど みつお)

プロ野球チーム、千葉マリンズの新監督に就任した男性。現役時代は球界の盟主といわれる東京エレファンツで守備の要として活躍し、V9に貢献した。管理野球をモットーとしており、2月のキャンプでは練習メニューだけでなく、食事制限まで行う。選手やコーチといった、自分より下の人間には横暴な態度をとる。一方、現役時代の監督や球団社長など、上の人間には媚びへつらい、期待していなかった選手が戦力になるとわかると、急にフレンドリーになるなど、相手によって態度を豹変させる。

桑本 (くわもと)

プロ野球チーム、千葉マリンズに所属する男性。左投げでポジションは投手。千葉マリンズのエースで、昨シーズンの成績は16勝9敗(2位)、防御率2.57(1位)という日本球界を代表する投手の一人。長身と大柄な体格を活かした剛速球を武器にしている。新入団した上杉輪の投手としての才能にいち早く気づき、プロ選手としての心構えなどを、それとなく助言した。

海堂 (かいどう)

プロ野球チーム、千葉マリンズに所属する男性。右投げ右打ちで、ポジションは捕手。打率リーグ2位を誇る千葉マリンズで4番を務めるチームの主砲。新入団した上杉輪に対して、試合の内外でさまざまなアドバイスを送る。

河津 洋平 (かわづ ようへい)

プロ野球チーム、千葉マリンズの投手コーチに新しく就任した男性。現役時代は名投手として活躍し、コーチとなったあとも多くの一流投手を育ててきた名伯楽。普段は物静かに選手を見守っているが、試合中はするどい観察眼を見せる。

千藤 (せんどう)

プロ野球チーム、千葉マリンズに所属する男性。今年でプロ20年目となるベテラン選手。入団当初は投手だったが、一軍入り間近の3年目に、肩を壊して打者に転向した。以降は代打専門としてさまざまなチームを渡り歩いている。酒豪として有名で、大阪へ移動する新幹線の中でもビールを何本も飲み、大阪に着いたあとも、上杉輪をいろいろな飲み屋に連れ回す。

峰 雷太 (みね らいた)

プロ野球チーム、千葉マリンズに所属する男性。テスト生上がりで、かつて千藤と同じチームにいた。メジャー級の強肩を持ち主で、中堅手に守備固めで入る事が多い。フェンスに激突しそうなっても、フェンスを恐れずボールを取りにいくほど根性がある。

加藤 冴利 (かとう さえとし)

来年からプロ野球チーム、千葉マリンズのゼネラルマネージャーに就任する男性。現役時代は球史に残るほど活躍した名遊撃手。引退後はアメリカに長く野球留学し、球界随一と呼ばれるほどの緻密な野球理論を身につけた。パ・リーグで監督を務めたチームをすべて優勝に導いた知将。しかし、選手の将来性を考えずに、優勝するためのコマとして使い、力のない選手や使えなくなった選手には、容赦なく戦力外にする非情なやり方をする。 そのため、選手からは恐れられている。来年から自分の思い通りのチームにするために、正式に就任する前から勢力的に動き、今年ドラフト1位で入団した青木健太には、6月の時点で戦力外を言い渡す。

ジーホ

プロ野球チーム、千葉マリンズの助っ人として期待される外国人の男性。神龍一が駐米スカウト時代のルートを通じて獲得した。来日時は日本を台湾と勘違いしていた。アメリカではメジャーと3Aを行ったり来たりしており、ストレートには滅法強いが、変化球はまったく打てない。昔、自打球を股間に当てた事がトラウマとなっており、巨大なパットを股間に入れ、変化球に対応しにくい極端なオープンスタンスでのバッティングとなっている。

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