六篇法国と教王戦
本作の舞台である六篇法国は、山口県西部の六篇島にある、日本から独立した独裁国家である。武の神・六護神を崇拝する宗教国家で、国家元首は「教王」と呼ばれている。現教王の就任から5年、六篇法国は軍拡の一途をたどっており、その矛先は日本に及ぶ可能性が高い。そんな状況を危惧したのが、六人の枢軸卿の一人、葉山家当主・葉山和美だった。教王を失脚させるためには、六人の枢軸卿全員の賛同が必要だが、和美以外の五人は教王派である。そこで和美は、枢軸卿だけが使える切り札を切る。それは、六人の枢軸卿が選んだ六人の代表者による殺し合いを行い、ただ一人の勝者を擁する枢軸卿が新教王になるという「教王戦」だった。六篇法国出身の伝説の殺し屋・藤間シフは、葉山家の依頼を受けて教王戦に参加する。
妖しく蠱惑的な殺し屋たち
百年に一人ともいわれる六篇島伝説の暗殺者・シフは、様々な特殊能力を有する。その一つが「第二の目」である。シフは中心視野を司る中心窩という領域が二つあるため、中心視野を二つ持っている。広い視野と高い空間認識能力を得たシフには、死角がないのだ。そんなシフを迎え撃つ、六篇法国の殺し屋たちも曲者揃い。切り取った人間の足を全身に纏い、異常発達した両足からあらゆる足技を繰り出す“足男”。催眠術をかけた島民たちにシフを襲わせ、その様子を撮影して作品として仕上げようとしている、“女優”シャーロットなど、妖しく蠱惑的な殺し屋たちの技や風変わりな人間性が本作の魅力の一つである。
殺し屋たちの切ない人間ドラマ
シフは生まれつき不感症であり、世の中のあらゆる物事に興味を示さない子供であった。そこで、人間のことを理解・分析することから始め、最終的に「人間の奥底に潜む闇」に興味を持つようになった。なお、六篇法国の現教王は、シフの妹・藤間朱花であり、シフは彼女によって親殺しの濡れ衣を着せられ、日本に逃亡した過去がある。また、六篇法国の殺し屋たちにもそれぞれドラマがある。異常に大きい両足を持つ“足男”は、その足のせいで出産時に母を失う。そして、バケモノといじめられ続けるが、その足を生かして裏の世界に身を落とした。シフをも超える才能を持つといわれる少年、“軍人”佐和田太一は、少年兵時代に、反体制デモに参加していた母を知らずに殺してしまう。その後、母殺しの贖罪(しょくざい)からか人間であることをやめ、人体改造手術を受けて超人兵士になった。本作は迫力のバトルだけではなく、殺し屋たちの切ない人間ドラマを描いている。
登場人物・キャラクター
藤間 シフ (とうま しふ)
六篇法国出身の伝説の殺し屋。30歳の青年。10年前に妹・藤間朱花の策略により、親殺しの濡れ衣を着せられて日本に亡命する。以後、政府などの依頼を受け、「殺し屋殺し」として名を馳せる。ただし、日本に来てからは敵を制圧するだけで人を殺していない。物心がついたころから何にも興味を示さない不感症だったが、唯一「人間の奥底に潜む闇」に興味を持つ。六篇法国の御六家の一つ、葉山家当主・葉山和美の依頼を受け、六篇法国の国家元首・教王の座を懸けた、六人の殺し屋による代理戦争・教王戦に参加する。
藤間 朱花 (とうま しゅか)
六篇法国第九代教主。藤間シフがまだ子供だった頃、王位継承権を持つ御六家の一つ、藤間家の養子となった。人の本性を知りたいという理由で、子供たちを誘拐したことがあり、シフに関心を持たれる。5年前、教主に就任してからは「日本国が六篇法国を合併しようとしている」と吹聴し、全児童の適性検査を行い、才能がある子を僧兵團に編入させることを義務付けた。その結果、六篇法国は軍拡の一途をたどり、日本政府からも警戒されるようになる。
田中 早紀 (たなか さき)
日本国内閣情報調査室に所属する若い女性。日本国民を守る使命に燃える真面目な性格。身寄りがない人を家に居候させていたような両親の下で育つ。その影響もあってか、理由なき善意から無償の奉仕を行う。そんな言動を、藤間シフに気に入られ、六篇法国の同行人に指名された。
書誌情報
ROPPEN-六篇- 6巻 小学館〈ビッグ コミックス〉
第1巻
(2023-04-28発行、 978-4098616893)
第2巻
(2023-07-28発行、 978-4098624867)
第3巻
(2023-11-30発行、 978-4098625987)
第4巻
(2024-02-29発行、 978-4098627066)
第5巻
(2024-06-28発行、 978-4098627950)
第6巻
(2024-09-30発行、 978-4098630325)