ニューヨークシティの悪を掃討するのは一人の少女
本作で描かれるニューヨークシティは、魑魅魍魎が跋扈(ばっこ)するアンダーグラウンドな世界で、日々犯罪が増えて孤児が続出している。そんな悪者たちを標的にするのが、「シスターミリティア」と呼ばれる暗殺者で、一見冴えない女子大学生のティスタ・ロウン。控えめで内向きな性格ながら、修道院から請け負う暗殺仕事を忠実にこなし、マシーンのような冷徹さを見せていたティスタだったが、アーティー・ドロワーと出会ってからは次第に心のバランスを崩し、情緒不安定になっていく。
精神不安のきっかけはアーティーとの出会い
ティスタが精神のバランスを崩したきっかけは、画家を目指している青年・アーティーとの出会いと別れにある。アーティーがティスタをふつうの女性として接し、打算のない関係を築こうとしたことが、暗殺者としての自分にしか価値を見いだすことのできないティスタ自身の、精神状態の不安定さを引き起こす。ひょんなことから知り合った二人は急速に距離を縮めていくが、ある事件をきっかけに距離を置くようになってしまう。
ティスタを導くのは二種類の大人たち
ティスタを暗殺者に仕立てあげたのは修道院の大人たちだが、そこにも二種類の人間が存在する。その大人たちとは、ティスタを暗殺者にしてしまったことに罪悪感を抱き、彼女が贖罪を背負う姿に心を痛めるシスターたちと、あくまでティスタを道具としか見ておらず、精神的に不安定になっているティスタを「修理」するか「破棄」するかを冷徹に見極めようとする修道騎士たち。また、修道騎士たちはティスタが情緒不安定に陥った原因がアーティーにあることも見抜いており、ティスタにとって厄介な存在となっている。
登場人物・キャラクター
ティスタ・ロウン
ニューヨークシティのとある大学の教育学部に通う女子。金髪を低い位置でツインテールにしており、眼鏡をかけている。笑顔がぎこちなく、人付き合いが苦手で内向的な性格の持ち主。義憤に駆られると、瞳に十字線が入り、遠距離からスコープなしでターゲットを狙撃できる。同じ大学に通うアーティー・ドロワーと親しくなるが、ある事件がきっかけで、アーティーに暗殺者「シスターミリティア」であることが露見し、彼の前から姿を消した。アーティーとの出会いと別れを経験して情緒不安定になり、別人格が発現した。その後大学も中退し、両親が亡くなって以来世話になっている修道院に身を寄せるようになる。修道院の人たちからは「ティセ」と呼ばれている。両親が健在な頃の本名は「ティスタ・ロックウォール」という。父親からプレゼントされたウサギのぬいぐるみを大切にしている。
アーティー・ドロワー
ティスタ・ロウンと同じ大学の芸術学部に通う3年生の男子。「未来の超大物画家」になることを公言している。金髪のベリーショートヘアで、ニット帽を被っている。父親を亡くしてから孤児院で育てられた。誰もが認める絵描きになることを夢見ており、路上で似顔絵描きのアルバイトをしている。ティスタがジャンキーの車に轢(ひ)かれかけた際、助けたことで知り合って親しくなった。しかし、ある事件でティスタが暗殺者「シスターミリティア」であることを知り、その後行方をくらましたティスタの足取りを追っている。