概要・あらすじ
長身・美男子でケンカも強い、トーイと呼ばれる高校1年の少年藤井冬威は、GASP(ガスプ)というパンクバンドでボーカルをやっていた。アイドル歌手であるいとこの森ケ丘園子からの情報で、トーイはスター歌手、哀川陽司が出演していたライブハウスに乱入し、哀川のマネージャーである加藤か志子に注目される。
この後、トーイはGASPを脱退し、哀川のバックバンドに参加。その活動中にトーイはマスコミから注目され芸名TO-Yとしてソロデビューし、人々をその天賦の音楽的才能で人々を魅了していくのであった。
登場人物・キャラクター
藤井 冬威 (ふじい とうい)
美男子で187㎝の長身、天才的な音楽性を兼ね備えた16歳の男子。ケンカもすこぶる強い。「退屈」を嫌い、自分の音楽(歌)の力で、どれだけ高みに上れるかを考えている。GASP(ガスプ)というパンクバンドでボーカルをやっていたが、より高みを目指すために脱退し、オーディションでスター歌手哀川陽司のバックバンドにベース担当として入る。 さらにその後、哀川のマネージャーであった加藤か志子のプロデュースのもとで芸名TO-Yでソロデビューし、人々をその歌で揺り動かし魅惑する。しかし、その人気のため芸能界の大きな欲望の渦に巻き込まれ、ある決断をする。初登場時は高校一年であったが、GASP脱退の際ほぼ同時に退学届を出した。 アイドル歌手の森ケ丘園子はいとこで、トーイと彼女は一時同棲していた。トーイの母は軽井沢近郊の旧家の娘で、トーイが9歳の時に両親が離婚。この際、トーイは父について東京へ出た。13歳のとき父が死去したあとも、トーイは東京に残って一人で生活を続けている。
山田 二矢 (やまだ にや)
中学3年の女子。ショートカットで大きい目と太めの眉毛という顔。小柄・痩せ型で私服も男の子っぽいので、しょっちゅう男子と間違えられる。公園で高い木に登ってしまった猫を降ろそうとしていた時に、トーイと出会う。しかし、ライブハウス等でTO-Yの歌を聞いていて、すでに大ファンだった。あまり物を深く考えず気持ちのままに動き、トーイのいるところにいつの間にか存在している。 トーイが同棲している森ケ丘園子の部屋には「通い」で顔を出しており、哀川陽司のバックバンドの合宿や、TO-Yがソロになってからのレコーディングの場にも、さり気なく存在する。学校にはほぼまったく通っていないが、成績は悪いわけではない。 父親は一等航海士で、南米航路の商船の船長をやっているため、ほとんど家にいない。母親はニヤが3歳の時に死んでおり、ニヤは団地の隣の部屋にいる祖母と叔母の世話になっている。
森ケ丘 園子 (もりがおか そのこ)
大人気少女アイドル歌手で、ブリッ子タイプを演じる。15歳だが、美人で背も高くグラマー(作品中で、誕生日を迎えて16歳になる)。本名は小石川日出郎。藤井冬威のいとこだが、恋人でもある。トーイがGASPを脱退し、ソロシンガーになるまで同棲していた。作中のある事件以降、ブリッ子はやめて、かえって好評を得ている。 実は、14歳でデビューする際、母から「2年だけ」と釘を刺されていたが、一族が東京に集まって会議を行った結果、その後もタレント活動の継続を許されている。
哀川 陽司 (あいかわ ようじ)
長身・美形で、派手なアクションが売りの男性人気スター歌手。ロック系の曲を歌う。年齢は18歳。大手芸能プロダクションの加山プロ(「カマプロ」と作中では呼ばれる)所属で、加藤か志子という敏腕女性マネージャーがついている。ライブハウスで歌っている時に藤井冬威の所属するGASPに乱入され、以後、トーイを意識するようになる。 トーイが彼のバックバンドEDGE(エッジ)に参加してからは、トーイと親友になっていく。森ケ丘園子に好意を抱いている。歌手・俳優の吉川晃司がモデルと思われる。
加藤 か志子 (かとう かしこ)
哀川陽司の敏腕女性マネージャーとして作品に登場。背が高く、肩幅も広いモデル体型。キツイ顔で細長いフレームのメガネをかけた美人。ヘビースモーカーで、いつも口元に煙草を加えている。哀川のライブに乱入したトーイの才能に注目し、哀川のバックバンドEDGEにトーイを参加させ、ヒットをものにする(EDGEの命名者はか志子)。 その後トーイがソロシンガーTO-Yになる際は、哀川の元を離れてトーイのマネージャーとなった。形式上は加山プロから子会社の経営者に出向する形をとっている。TO-Yのプロデュースに成功したあと、芸能ビジネスの闇に呑まれて失脚。 1973年から2年間だけ活動した、「ヒステリックス」と言う伝説のロックバンドのボーカルだった過去がある。その時のニックネームはケイトであった。
桃元 郷 (もももと ごう)
トーイが所属するパンクバンドGASPのリーダーで、ドラム担当。スキンヘッドでサングラスの男性で、22歳。いつもは工場で働いている。加藤か志子に勧誘されて悩んでいたトーイに、「上にいきたいって気持ちは大切にしろ」と言い放ち、GASP脱退を促す。後にメンバーを募って、新生GASPとして音楽活動を継続する。
近藤 勇 (こんどう いさみ)
トーイが所属するパンクバンドGASPのベース担当として登場。背が高く痩せ型で、後頭部は剃り上げ、てっぺんを伸ばして尖らす髪型をしている。22歳の男性だが、家では両親をパパ・ママと呼ぶ。職業不詳。トーイの脱退に対し、裏切りと思い強い怒りを覚え、GASPをやめてP・ショック(ペニシリン・ショック)に参加する。 しかしその後、ある大きな事件を経て、みんなと和解した。
鈴木 昭司 (すずき しょうじ)
トーイが所属するパンクバンドGASPの、ギター担当の20歳の男性。背が高く痩せ型。トーイが脱退するまでは長めのモヒカン刈りだったが、その後、普通の尖った髪型になる。実家は酒屋で、歳の離れた妹がいる。駅の大きなポスターを素早く剥がす特技がある。
加山 (かやま)
業界に君臨する大手芸能プロダクション、加山プロダクションの社長。40―50代の男で、メガネをかけ頭頂部以外を刈り上げている。名前は不明。美少年愛好の趣味があるため、加山プロはカマプロとも呼ばれている。謀略を巡らせ、ソロになったトーイを春日を使ってコントロールし、大儲けしようとする。
引田 真亜樹 (ひきた まあき)
森ケ丘園子のマネージャーの男性で28歳。いつも園子にスルーされ、涙を流している。
中原 公彦 (なかはら きみひこ)
三人組のパンク・バンドP・ショック(ペニシリン・ショック)のリーダーでボーカル担当。14歳の小柄な美少年。カイエという名前の由来については不明、と作中にて記されている。P・ショックは日比谷野音でのGASPのギグ「帝王切開」のゲストとして、カシミイルとともに演奏した。 トーイに対して、自分を音楽に導いてくれた存在として強い憧れを抱いており、そのため彼が芸能界入りしたことを腐敗と受け止め、「幸福な死」を与えようとして襲撃を計画する。金持ちの家の子供で、P・ショックの練習費用は全部彼が出している。
神田 綾子 (かんだ あやこ)
パンク・バンドカシミイルのリーダーの女性で、18歳。ベース担当。カシミイルは女性四人に見えるが、実はボーカルのエズミは女装した17歳の男性、江隅孝(えずみたかし)である。彼女らと一緒に演奏したバンドは、みんな解散してしまうという不吉なジンクスを持っていた。日比谷野音でのGASPのギグ「帝王切開」のゲストとして、P・ショックとともにプレイした。
遠藤 彰 (えんどう あきら)
M・A・Cレコードのディレクターで、第一制作室所属。口ヒゲとあごヒゲを生やした中年男で36歳。哀川陽司のレコードのディレクションを行っている。加藤か志子に呼ばれて日比谷野音のGASPのギグを聞き、哀川陽司のバックバンドのオーディションで、ディレクターとしてトーイを審査する。 ド近眼で、度のとても強い眼鏡をかけると陽気なキャラクターに変身する。遠藤は1973年から2年間だけ活動した、「ヒステリックス」という伝説のロックバンドのドラムだった過去があり、その時のニックネームはエディだった。
亜座 博史 (あざ ひろし)
哀川陽司のバックバンドEDGEのギター担当の男性で20歳。スタジオミュージシャンで、メンバーの誰よりテクニックと演奏経験がある。昔バンドをやっていたとき自分だけスカウトされ、仲間を裏切って芸能界に入ったが、助っ人演奏ばかりで結局デビューできなかった過去がある。非常に屈折した男だったが、トーイや哀川陽司と一緒に演奏を行っているうちに、心を開いて変わっていった。
龍谷 稔 (たつや みのる)
哀川陽司のバックバンドEDGEのドラム担当の男性で19歳。パンク・バンド出身で、トーイをよく知っていた。練習中、亜座に「2コードパンクス」と罵られ、傷つく。哀川のツアーで経験を重ね、一人前になっていった。
権藤 漸次 (ごんどう ぜんじ)
哀川陽司のバックバンドEDGEのキーボード担当の男性で22歳。メンバーの中で一番年上だが、低姿勢で敬語ばかり使う。体が弱く、何種類もの薬をいつも持ち歩いている。TO-Yのデビューコンサートに、他のメンバーに内緒で参加した。
マニ藤 (まにとう)
加藤か志子が辞めたあとの、哀川陽司のマネージャーとなった青年。年齢と名前は不明。寝起きの顔を見られたくないという理由から、いつでも白い仮面を頭の横につけており、実際に朝にはその仮面をかぶっている。元々はか志子の部下で、哀川のコンサートスタッフの一人だった。ベースの代わりの人間として、蒲愛克敏を連れてくる。 名前は1978年日本公開のホラー映画、『マニトウ』から。
蒲愛 克敏 (かばい かつとし)
トーイがEDGEを抜けたあと、マニ藤が連れてきたベース担当の2mの巨漢で、21歳の男性。その巨体により、メンバーが怖がるが、自身は気が優しく「カッチン」と呼んでほしいと懇願していた。あまり体が大きいので、ベースがウクレレに見えるほど。名前は、当時、上條淳士のアシスタントをしていた河合克敏からのもじり。
小石川 律子 (こいしかわ りつこ)
トーイの母。軽井沢近郊に、娘の籠女(かごめ)と暮らしている。年齢は不詳の美人。和服を着ている。7年前に夫と離婚している。3年前に夫が死んだあと、実家に戻らぬトーイと縁を切ったが、それでも仕送りは続けていた。また、トーイの高校入学・退学時には保護者としての手続きを行っている。 森ケ丘園子に関する一族会議に参加するため上京する。
小石川 籠女 (こいしかわ かごめ)
トーイの妹で14歳の美少女。母とともに軽井沢近郊にある小石川家の大邸宅で暮らす。肩まで伸ばした髪は、トーイや母と同じ色。母と同じく、和服を着ている。7年ぶりにトーイと出会った際には、号泣していた。その後、森ケ丘園子に関する一族会議に参加するため母と上京し、会議で重要な役割を果たす。
海野 灰猫 (うみの はいね)
トーイがGASPを抜けたあと、桃元にスカウトされて入ったボーカル担当の17歳の男子。常に人参やセロリなどの野菜をくわえている。トーイより歳上であるが、彼に憧れているため、敬語で接している。ニヤを好きになってしまうが、全く相手にされなかった。
キョウ
トーイとイサミがGASPを抜けたあと、イサミの代わりのベース担当として加入した男子で17歳。縮れた長髪で、涼しい目をしている。無口で他のメンバーと付き合わないが、テクニックはある。実はカイエの仲間で、彼のトーイ襲撃計画に手を貸すため、GASPに参加した。トーイ襲撃の前に、GASPのライブの邪魔をし他のメンバーに怪我を負わせる。 襲撃事件の後にGASPを去る。
伊東 半次 (いとう はんじ)
加藤か志子が雇った興信所の調査員の男性で24歳。いつもハンチング帽とコートを身に着けている。興信所の社名は、株式会社亀蜜秘密探偵社。か志子の依頼でトーイと森ケ丘園子が同棲していることを突き止め、さらにか志子の指示でそのスキャンダルをマスコミに流した。後に、怒ったトーイに殴られ、リークの指示を誰が出したか喋ってしまう。 か志子の失脚後も、彼女のためいろいろ動いた。
小石川 節子 (こいしかわ せつこ)
森ケ丘園子(小石川日出郎)の母。トーイの母である小石川律子の姉(長女)。黒髪の美人で、紋付きの和服を着ている(紋は白蛇)。年齢不詳。トーイと娘のスキャンダルに激怒して一族会議を招集し、赤坂の料亭で娘を吊るし上げ、昔の約束をタテに芸能界引退を迫った。
鮎見 初雪 (あゆみ はつゆき)
TO-Yのソロデビューレコードとコンサートのバックバンドとして、加藤か志子がアメリカから呼び寄せた男。38歳。黒縁のサングラスをかけている。1973年から2年間だけ活動した伝説のロックバンド、「ヒステリックス」のギター担当だった。レコーディングとコンサートで素晴らしい演奏を行うが、コンサートでのトーイの歌に押されて打ちのめされる。 モデルは「シーナ&ザ・ロケッツ」のリーダー鮎川誠と思われる。
幸田 アンジェラ (こうだ あんじぇら)
TO-Yのソロデビューレコードとコンサートのバックバンドとして、加藤か志子がアメリカから呼び寄せたメンバーの紅一点。29歳。ショートカットで、大きいサングラスをかけている。ベース担当。1973年から2年間だけ活動した伝説のロックバンド、「ヒステリックス」のメンバーだった。 トーイの歌に驚嘆しつつも、レコーディングとコンサートをしっかり支える。
マイケル・オーキー
TO-Yのソロデビューレコードとコンサートのバックバンドとして、加藤か志子がアメリカから呼び寄せたメンバーの一人。アフリカ系アメリカ人の男性で、ドラム担当。27歳。ドレッドヘアーに丸いサングラス。いつもは陽気な男だが、サングラスを外すと突然怒り出す。
翔念 大介 (しょうねん だいすけ)
TO-Yがソロデビューした年の2月にデビューした歌って踊る少年アイドル歌手、17歳。身長は、トーイより14㎝低い173㎝。ゴジテレビが主催する、「レコード大将」新人賞候補ナンバーワンだったが、トーイの出現に危機を感じている。TO-Yがテレビの歌番組に出演し、初めてソロで歌うときに翔念はひどい妨害工作をする。 が、落ち着いて対応したTO-Yの態度と歌唱に高い評価が寄せられ、翔念はかえって立場を失う。
春日 治 (かすが おさむ)
天才若手放送作家(構成作家)で、26歳。のっぺりとして表情を見せない顔で、物事に冷酷に対処する。高校生の時にラジオに送った台本でデビューしてから、斬新な企画力で売り出し中の男。ゴジテレビの来年春の一大企画にも深く関わっている。「仕掛け人」とも呼ばれ、視聴率を上げたり大衆を乗せることに無常の喜びを感じる危険なところがある。 人々を強く動かす素材としてトーイに興味を持ち、彼に様々な実験を行う。加山プロ社長にとり入って、加藤か志子を失脚させ、トーイをプロデュースしてより多くの人々の心を動かし、利益を上げようとするが、それに対しトーイはある決断を下す。
山田二矢の父 (やまだにやのちち)
ニヤ(山田二矢)の父一等航海士で、南米航路の商船の船長。名前と年齢は不明。ブラジルまで行って、帰ってくる。妻の名は一子で、ニヤが3歳の時に死亡している。
藤原 (ふじわら)
ニヤの中学の担任教師。名前・年齢は不明。学校に出てこないニヤ(山田二矢)を親身に心配するが、あまり聞き入れてもらえない。プロレスラーの藤原喜明がモデルと思われる。