概要・あらすじ
戦時中のとある島。多感な少女サンは、親友のマユ達とともに島一番の女学校に通っている。戦況の悪化により、サン達は看護隊として軍事活動に協力することになった。しかし、敵軍が上陸し、攻撃は激化。ひとり、またひとりと仲間を失っていく。凄惨な状況に心がくじけそうになる中、サンは親友のマユのみずみずしい言葉に包まれることで、かろうじて現実に折り合いをつけていく。
登場人物・キャラクター
サン
島一番の女学校に通っている多感な女の子。戦況が悪化する中、クラスメイト達とともに看護隊として戦地に赴くことになる。男性が苦手であったが、親友のマユの「ここに男の人なんかいない。男の人は影法師」という言葉により、現実に折り合いをつけていく。
マユ
サンの親友。東京からの転校生。島の名家の出で、背が高くて整った顔立ちをしている。後輩女子の憧れの存在だが、大きな秘密を抱えている。戦局が悪化し、事態が悲惨化する中、サンの世界を守るため、おまじないの言葉をやさしくかけていく。
ユリ
サンやマユの女学校の後輩。双子の女の子で、マリという姉妹がいる。空襲で逃げ遅れ、背中に大やけどを負っているが、「これで双子を間違われないで済む」と、明るく笑いとばして見せた。看護隊に加わって働くが、「疲れて体が動かない。お国にお役に立てない」と泣き出し、サンに慰められる。 看護隊解散後、双子のマリとウージ(サトウキビ)を分け合って食べたのち、ふたり一緒に死んでいく。
マリ
サンやマユの女学校の後輩。ユリという双子の姉妹がいる。看護隊解散後、サンとマユと行動を共にするが、双子のユリとウージ(サトウキビ)を分け合って食べたのち、ふたり一緒に死んでいく。その際、サンにふたりだけでウージを食べたことを謝罪する。
エツ子
サンの女学校の同級生。生真面目なメガネをかけた少女。サンたちと共に看護隊に加わる。看護隊解散後、南の岬に向けて移動する途中、銃撃を受けて左足を負傷する。ケガの激痛から、「もう頑張れない」との言葉を残し、石で自分の頭を割り自決する。
タマキ
サンの女学校の同級生。サンたちと共に看護隊に加わる。おしゃれが好きな美少女で、面倒な仕事はすぐさぼろうとする。兵士の足を切断する処置の助手をつとめたことで嘔吐した。砲弾の爆発を受け、はらわたをまき散らして死亡する。
ひな
サンの女学校の同級生。絵を描くことが好きな少女。サンたちと共に看護隊に加わるが、体が弱く、栄養失調になり、実作業を休むようになる。最後は目が見えなくなり、壕の奥でひっそり死んでいく。
兵隊たち (へいたいたち)
少女たちが克明な姿で描かれるのに対し、兵隊たちは皆、白い影で描かれる。作者今日マチ子はあとがきで、この理由を「少女時代のわたしが、潔癖さをつきつめるうちに、男性の存在がないようにふるまっていた思い出からです」と語っている。