テンプレ設定から脱線！暴走!?変化球な異世界漫画オススメ５選46 Pt.

ある日突然、中世ファンタジー風の異世界へと飛ばされた主人公が、最強の力を手にして無双するという物語の設定は、異世界モノの一大ジャンルを築くテンプレとなっている。本作は、そんな設定を逆手に取った変化球な異世界漫画だ。英雄として異世界に召喚されるも、これといって特別な能力を授かることのなかった一郎の冴えない日々を、シュールな劇画タッチで描き出す。城の雑用をこなし、夜は兵士長に絡み酒をされたり、畑で農作物を食い荒らす害虫のようなスライムを駆除したりと、一郎の妙にリアルな異世界ライフの描写がおかしい。日銭を稼いで生活しなければならない一郎の残念な異世界ライフを楽しみたい。

異世界転生モノのテンプレ設定として有名なのが、主人公が反則級のステータスで敵をなぎ倒していく「俺TUEEE」である。異世界に転生するとき、何らかの理由で能力値補正が働くのだ。だが、もしも「俺TUEEE」で無双できるのに、なかなか戦わない主人公がいたとしたら？というアイデアで描かれた、変化球な異世界漫画が本作だ。主人公の聖哉は、一億人にひとりの逸材と言われる超ステータスを持っていた。ところが、女神リスタルテによって召喚された彼は警戒心が強く、おまけに超慎重な性格。魔王討伐の準備として、いきなり筋トレの日々を送るのだ。そんな彼に振り回されるリスタルテと聖哉のコミカルなかけあいが楽しい一作だ。

本作は『人間失格』の作者、太宰治を思わせる文豪が登場する変化球な異世界モノである。異世界モノのテンプレの一つに、異世界に飛ばされた人間は勇者と呼ばれ、その世界を救う使命を持っているという設定がある。しかし、主人公のセンセーは、勇者としての使命を引き受けない。なぜなら、彼は死にたがりの作家だからだ。玉川上水で心中しようとしていたところ、異世界に転移したセンセーは、モンスターに襲われても抵抗せずに「グッド・バイ」と言って死のうとする陰鬱な性格の持ち主。生きる目的を持たない彼は、異世界に転移しているはずの心中相手と心中するためという根暗な明るさを発揮して、ぶらりと異世界を彷徨うのだった。

王道の異世界モノでは、剣や魔法で魔王の手から世界を救う勇者や英雄について描かれるものだが、そこには登場しない普通の人々にも生活があり、日々の楽しみとしての食事がある。本作は、そんな食事にスポットを当てた変化球な異世界モノだ。異世界の古都アイテーリアに突然現れた居酒屋「のぶ」が、人々に驚きと感動を与えるのである。日本人にはおなじみの居酒屋料理も、異世界人にとっては未知の味。古都の衛兵ハンスは、「のぶ」で出されるキンキンに冷えた生ビールに驚愕し、塩ゆでされた枝豆や熱々のおでんに舌鼓を打つ。実に美味しそうに食べるハンスを見ていると、いたって普通の居酒屋料理が、まったく普通ではない一級グルメのように感じられる。読んでいると居酒屋に行きたくなる異世界ファンタジーである。

異世界に旅立つものがいれば、帰ってくるものもいる。本作は、ほとんど描かれない異世界からの帰還者を主人公とした珍しい異世界モノである。だが、本作の真価は、テンプレート的には勇者として歓迎されるはずの異世界で、絶筆に尽くしがたいほどの迫害を受けていたというギャップにある。主人公のおじさんは、異世界の美的基準では「オーク顔」のために魔物扱いされていたのだ。転生したとたんにオークの亜種として狩られかけ、町に入れば恐怖の眼差しを浴びて襲われる。そんなおじさんに恋をするツンデレなエルフもいたのだが、ツンデレという概念を知らないおじさんは、それを単なる罵倒だと受け取り、恋のフラグをへし折ってしまう。爆笑必至な異世界コメディだ。