美しい物語、魅力的な人物描写の「高尾滋」特集！オススメ漫画５選45 Pt.

咲十子は鋼十郎から母親の勤める会社が倒産し、彼女が多額の借金を背負わされたこと、そして、その借金を和久寺グループの若き総帥である和久寺風茉（ふうま）が肩代わりしてくれたことを聞かされる。さらに驚かされたのは、まだ10歳の風茉が咲十子の許婚だということだった。それは先代社長と三津子が昔に取り交わした約束だったのだが、何も知らなかった咲十子は激しく動揺する。しかし結局、三津子の失踪で家を失った咲十子は風茉のお屋敷に厄介になることに。そんな咲十子の気持ちを知ってか知らずか、彼女に好意的に接してくれる風茉に、咲十子も次第に心を開いていく。多彩な個性を持つ登場人物たちが織りなす人間模様を軸とする、魅力的な人物描写で名高い作者の代表的作品。

そもそも人形の目的とは、人口増加に向けて行われた一家一子法で兄弟を与えたり、外部と交遊を取れない病人や孤独な老人たちの話し相手を作ることだった。それぞれの人形（ドール）には寿命があり、相手の子供が成人に達したり、病人や老人が亡くなったりした場合には役目を終えて、人形の館に帰るようにプログラミングされている。また、新しい家族から虐待を受けたり、その家族に受け入れられないと感じたときは自身の判断で館に帰還することもできる。ただ、それは強制ではなく、人形の意志に判断を委ねているのだ。一話完結方式のオムニバス作品であるが、20年以上にわたって不定期に連載されている、いわばライフワーク的作品でもある。

若い頃の慶光に瓜二つの光也は、慶光からバイオリンを買ってもらう。バイオリンの才能を高く評価された光也は留学を夢見て練習に励んでいたが、母親から強く拒まれ、浴室で自殺未遂を起こされてしまう。それがきっかけとなり、練習どころかバイオリン自体を封印してしまった光也。慶光はそんな光也を不憫に思い、自分の前でバイオリンを演奏するよう頼むが、母のリストカットを自分のせいだと思い込んでいる光也はそれを断り続けていた。ある夜、慶光危篤の連絡を受け病室に駆け付けた光也は従兄の慶（けい）に促されてバイオリンを手に取るが、その直後に地震が起き、光也は階段から落ちてしまう。転げ落ちながら「もしも時が戻るなら…」という慶光の断末魔を聞いた光也。目覚めた彼は何と、慶光の青春時代にタイムスリップしていた。

元々才蔵は紫信の忍びであり、二人は主従関係にあるのだが、幼い頃より彼女を慕っていた。しかし、才蔵は御城家の先代当主に両親を殺される場面を目撃したことで血に対する恐怖心が芽生え、視力が衰えてしまった。それゆえ気弱な性格になり、紫信の強い性格に憧れを抱いていたのだ。紫信の母松子（しょうこ）から直々に命を受けて転入してきた才蔵だったが、紫信から転校してきた理由を尋ねられても「貴女を守るためだ」と言えない。本来なら、姫君を守るはずの忍者が実は弱者という本末転倒のストーリー。バトルシーンも多いハードな内容なのだが、「作画が繊細で柔らかいので、読後はなぜか優しい気持ちになる」と作者お得意の作画マジックに魅了されるファンも多い。

万里子と俊はオリエント急行に乗り込み、パリへと出発する。豪華な車内で俊の友人や高慢な態度のインド人青年ニーラムと知り合いになる万里子だったが、翌朝になって何と俊が遺体となって発見される。自分の身に起こった余りに残酷な出来事に深い悲しみを抱く万里子だったが、泣いている俊の友人の妹に「あなた方が泣いてくださるから私も正気でいられるのかもしれません」と気丈に振る舞う。さらに追い打ちをかけるように、あろうことか、大雪で電車が立ち往生。ところが、この悲惨なる事件には大きなどんでん返しが待ち受けていたのだ。ミステリーの王道、アガサ・クリスティの「オリエント急行殺人事件」への数々のオマージュと作者高尾滋の心に響く名言が満載の珠玉の作品。