本格的な恐怖、哀しくも美しいゴシックホラー、後味の悪さが思わずクセになる作品など。ホラー初心者から、トラウマ間違いなしの上級者向けまで、傑作少女漫画ホラーを紹介。
まだまだ暑い日に、背筋が凍るような物語はいかが? ラストを読み終えるまで決して後ろを振り向いてはいけない。
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本格的な恐怖、哀しくも美しいゴシックホラー、後味の悪さが思わずクセになる作品など。ホラー初心者から、トラウマ間違いなしの上級者向けまで、傑作少女漫画ホラーを紹介。
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父の転勤の都合で私立藤園女子高校に転校してきた、長谷部涼子。彼女が編入した二年E組の教室は、何故か窓際から四列目の席が空いていた。この席に座ったことにより、涼子の日常は一変する。まとわりつくように見える白い影法師の姿、原因不明の不気味な現象。やがて迎えた運命の日、悪霊の妄執が涼子に迫る! 『美内すずえ傑作選1 妖鬼妃伝』に収録。
本作を手がけるのは『ガラスの仮面』の著者である美内すずえ。読み始めたら止まらない、ぐいぐい引き込まれるストーリー展開はホラー漫画でも健在。ごく普通の少女・涼子が死霊に取り憑かれた理由は、「病死した少女・小夜子の席に座った」から。偶然から生まれたあまりの理不尽さに、もし自分が体験してしまったなら、と思わず感情移入してしまうだろう。最初はぼんやりとした影にしか見えなかった小夜子の霊が、徐々に涼子の目に映るようになっていき、やがて彼女の生気を奪っていく。そして小夜子が死んだ運命の日、このまま涼子はとり殺されてしまうのか? クライマックスシーンは、トラウマ待った無しの大迫力。ホラー漫画上級者向けの傑作だ。
出典:白泉社
死して人を喰らう凶悪なバケモノ「蠢く人形(ギニョール)」になってしまう奇病が蔓延する世界。世界の頂点に君臨するジェムシリカ女王は、そんな「蠢く人形」たちを、無辜の民ごと裁きの光で駆逐していた。だが女王の目をかいくぐり、金次第で「蠢く人形」たちから人々を護る存在があった。彼らの名は「裏の宮廷楽団」。
『伯爵カイン』シリーズや『天使禁猟区』など、美麗でファンタジックな世界観で読者を魅了する由貴香織里の描くゴシックホラー作品。ホラー要素は抑えめで初心者向き。ゾンビのように襲いかかってくる「蠢く人形」たちを、歌と音楽の力で鎮める主人公・ルチルとその仲間たち。ルチルは女性と見紛うばかりの美貌の持ち主で、その美声は天使の歌声さながらだと評される人物。そんな彼には、ある重大な秘密が隠されている。主人公たちは人助けをするが、決して正義の味方という訳ではない。なぜ「蠢く人形」が世界に生まれたのか? ルチルの真の目的は? 謎解き要素がふんだんに盛り込まれて、ミステリー好きにもお勧めしたい作品だ。
出典:KADOKAWA
海難事故により、無人島に漂流したひとりの男。島を探索すると、同じように遭難してこの島に辿りついた清楚な美女がいた。彼女に話を聞くと、男より前にこの島に辿りついたが、他に誰もいないという。男は島で暮らし始めるが、徐々に違和感を覚える。抜け出せない遭難生活の中、男は女から驚愕の真実を聞かされるのだった。
『アラベスク』や『日出処天子』などで知られる鬼才・山岸涼子の短編ホラー。物語は海難事故で無人島に漂流した男の視点で描かれる。たったひとりで島にたどり着いたと思った男は、他の人間、それも美女がいたことに安堵する。だが、島に果物はあるが魚や貝を獲ることはできない。狼煙を上げるも、島の近くを船が通りかかることはない。女は男の行動を冷めた表情で見ていた。作中で、男は遭難者ならば至極まっとうと誰もが思うような行動をするのだが、なぜか女は無駄と否定する。浜辺に打ち上げられた水死体、遭難してから変わらない生活。やがて、タイトル『グール』に繋がる謎が明かされた時、恐怖だけではなく、強烈な後味の悪さも体感できる怪作だ。
出典:小学館
女子高生の陵子は愛猫・ポウを喪い哀しみにくれていた。だがそのポウが突然蘇り、彼女の前に現れる。ポウの遺体には若い男の生霊が憑依し、どこかにある本当の体を捜してほしいと陵子に依頼する。生霊である男を警戒する陵子。だが何度も彼に危機を救われ、ふたりは信頼関係を築いていく。陵子たちに待ちうける運命とは?
『闇のパープルアイ』『天は赤い河のほとり』など、幅広い作風を持つ篠原千絵先生のホラー漫画。日常に紛れ込む霊の描写は背筋ゾクゾクもの。本人は無自覚なのに、強い霊感を持ってしまったために悪霊からイケメンの生霊・日下部拓まで呼び寄せてしまう陵子。記憶も体も喪っていた拓は、自分の本体を捜してもらうパートナーになってもらう代わりに、陵子の愛猫・ポウに憑依して彼女を護る。この拓が憑依したポウ、ビジュアルは猫なのにヒロインを悪霊から護る姿がカッコ良過ぎて、いっそこのまま猫の姿でも良いのでは?と思わせる。そんなポウ(拓)と陵子の少女漫画らしい恋愛要素もあり、ホラーだけれどもふたりの関係も気になる物語だ。
出典:宝島社
イギリスの大富豪・ハサウェイ家のひとり娘であるロザリンド。彼女は明るい金髪と大きな瞳をした、天使のように可愛らしい8歳の少女だ。だがロザリンドは、そんな見た目と幼さからは想像もつかないような悪魔の本性を宿していた。自らの無邪気で残酷な欲望のままに、ロザリンドは何の感慨もないまま周囲の者を死に追いやってゆく。
少女漫画界のレジェンド・わたなべまさこの描くサイコホラー。可愛らしく誰からも愛される少女、ロザリンド。彼女は、「遺品にあげる」と約束された金の置時計欲しさに、可愛がってくれたおばさんを殺害。さらに指輪欲しさにいとこを殺害、と次々と殺人を犯していく。怖いのは、ロザリンド自身に何の悪意もためらいもないこと。まさにサイコパスな少女だ。そんな彼女の本性を知りつつも、彼女に同情し、どうにか庇おうとする人々もいる。彼らの悲哀もロザリンドは理解できない。残酷なのに、ロザリンドの愛らしさは色あせない。そして、ロザリンドを愛する人々の悲哀も見逃せない傑作だ。連載から45年の歳月を経て、2017年に新作が描き下ろされた。
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