孤独な少年が、突如現れた異形の美女と姉弟として暮らすダークファンタジー漫画。幼くして両親を失った主人公の少年・夕(ゆう)。親戚中をたらい回しにされた後に同居することになった、母の従兄弟が入院することとなり、入らないよう言われていた蔵で「千の仔孕(はら)む森の黒山羊(くろやぎ)」と名乗る恐ろしくも美しい悪魔的な存在と出会う。人間の「大事なもの」と引き換えに望みを叶えると言うその存在に、夕は姉になってほしいと願う。そして「千夜(ちよ)」となったその存在は、姉として夕と暮らし始めるのであった。
「千の仔孕む森の黒山羊」とはクトゥルフ神話において「シュブ=ニグラス」の名で知られる女神の異名だ。クトゥルフ神話に着想を得た独創的な、いわゆる「おねショタ(おねえさんと少年という意味)」作品である本作。設定は前述した通り、類を見ないものであるが、内容的にはハートウォーミングな正統派の作品と言える。傷ついた孤独な少年が、異形の存在である姉と暮らす日常が描かれている。時には神、時には悪魔と呼ばれる存在となる千夜。そんな存在でありながら、夕に対しては愛情のこもった接し方をしており、冷たい親戚と比べ、よほど人間的である。心に傷を持つ夕に対してやや過保護気味に接する千夜、そんな2人の姿がただただ微笑ましい。心温まる異色のダークファンタジーとして今後目が離せない。
主人公の青年と、3人の女神が日常を過ごすラブコメディ漫画。猫実(ねこみ)工大に通う平凡な大学生・森里螢一(もりさとけいいち)が、ひょんなことから出会った女神・ベルダンディーに、ずっとそばにいてほしいと願ったことから始まる物語。後にベルダンディーの姉のウルド、妹のスクルドも押しかけ、更なる波乱の日常が螢一を待ち受けているのであった。1993年、2011年にオリジナルアニメ化。2000年に劇場アニメ化。2005年、2006年にテレビアニメ化。
褐色の肌と奔放な性格が魅力的である三姉妹の長女・ウルド。神属と魔属の両方の血を受け継いでおり、妹であるベルダンディー、スクルドとは異母関係となる。怪しい薬を生成するのが趣味で、惚れ薬など物騒なものを作ってトラブルを巻き起こすこともしばしば。享楽的な性格ではあるが、妹思いで思いやりの深い一面を持つ。そんな個性あふれる3人の女神たちとの楽しくも波乱の日常が本作では描かれている。作者は本作のほかゲーム「テイルズ オブ」シリ-ズや「サクラ大戦」シリーズのキャラクターデザインを手掛けるなど女性の美麗な描写には定評がある。26年という長期連載となった本作は作者の代表作であり、ラブコメディ漫画の金字塔である。
錬金術の禁忌をおかし、自らの身体という大きな代償を払った兄弟の錬金術師が、それを取り返すべく戦うダークファンタジー。最愛の母親を失ったエドワードとアルフォンスのエルリック兄弟。錬金術の才能があった2人は、母親の死が受け入れられず、錬金術の最大の禁忌である「人体錬成」で母を蘇らせようと試みて失敗。代償に兄弟は身体を欠損させてしまう。2003年、2009年にテレビアニメ化。2005年、2011年に劇場アニメ化。2017年に実写映画化された。
失った部位に機械鎧(オートメイル)という新たな体を手に入れたエドワードと、鎧の体に魂を宿らせたアルフォンスは、自らの肉体を取り戻すべく、ロイ・マスタング中佐の誘いで「軍の狗」となることを決意する。本作の姉キャラといえば「剛腕の錬金術師」アレックス・ルイ・アームストロング少佐の姉である「氷の女王」オリヴィエ・ミラ・アームストロング少将だ。北方ブリッグズ要塞の司令官であり、非常に苛烈な性格である。錬金術は使えないが、剣術などに通じ戦闘能力は極めて高い。当初、エルリック兄弟に厳しかったオリヴィエだが、彼らの能力を評価し、目的のため協力関係となる。彼女だけでなく登場人物の一人ひとりの生き様が克明に描かれる本作。ダーク・ファンタジーの決定版である。
弟に思慕されていると勘違いしている女子高生が妄想を炸裂させるショートコメディ漫画。主人公の女子高生・近衛靄子(このえもやこ)は容姿端麗で文武両道の才女であるが、弟・輝(あきら)が姉である自分に求婚する変態であると勘違いし、日々妄想し、暴走している。幼少時に輝が「お姉ちゃんと結婚する」と発言したことがきっかけなのだが、靄子はそのことを真に受け、高校生となった今日にいたるまで妄想をこじらせ、その妄想に周囲を巻き込む毎日である。
過剰に弟を愛する靄子だが、本人にその自覚がない。幼い頃の弟の発言から「弟が自分を思慕している」という妄想に駆られ、暴走して周囲をトラブルに巻き込む毎日だ。美人で如才なく、クラス委員をつとめるなど人望もあるが、前述の点でいわゆる「残念」な姉である。一方、輝は姉思いの弟ではあるのだが姉に対する恋愛感情はなく、姉が妄想をこじらせていることには気づいていない。こういった輝や周囲と、靄子の温度差が激しいのがどこか微笑ましく可笑しい本作。靄子の過剰な愛情が徹頭徹尾、一貫してこれでもかと表現されていて、その愛でお腹がいっぱいになること間違いなしだ。前作『DCD』に続き、姉萌え表現を得意とする作者の代表作で面目躍如たる作品である。
主人公を中心に、ギルドに所属する魔導士の面々が様々な依頼を解決していく冒険ファンタジーバトル漫画。王国最強とうたわれる魔導士ギルド「妖精の尻尾(フェアリーテイル)」に所属する主人公・魔導士のナツ・ドラグニルが、ひょんなことからルーシィ・ハートフィリアと出会ったことで物語は始まる。2009年、2014年、2018年にテレビアニメ化。2012年、2015年に劇場アニメ化。2016年に舞台化された。
ルーシィは憧れの「妖精の尻尾」に加入するも、メンバーは問題児だらけ。中でも最大の問題児であるナツとチームを組んでルーシィは様々な依頼に挑んでいく。本作に登場する代表的な姉キャラといえば、「妖精の尻尾」の看板娘であり、エルフマン、リサーナといった弟妹を持つ美女ミラジェーン・ストラウス、通称ミラだ。穏やかな性格で、魔法専門誌のグラビアアイドルをつとめるほどの美貌を持つが、以前は「魔人」と恐れられるほどの実力をもつS級魔導士であり、魔法発動時は、サディスティックな性格に豹変する。彼女を含め、魅力的な面々が登場する本作。作者の前作で大ヒットした『RAVE』と並び、次の展開が気になるストーリー構成で多くの読者の支持を集めた大人気作品だ。