繁華街を彷徨う子どもたちと、彼らを救おうとする「夜回り先生」の交流を描いた実話作品。真面目で優しい子でも、過酷な家庭環境からドラッグや自傷行為に身を落とす者がいる。そんな子どもたちを救いたいと願う高校教諭・水谷修。彼自身も深く心に傷を負いながらも、子どもたちに寄り添っていく。2009年に『さよならが言えなくて』のタイトルでテレビドラマ化。
本作は児童福祉運動家である水谷修の実体験を元に記された著書『夜回り先生』のコミカライズ作品である。高校教諭時代、繁華街に赴いては非行に走る生徒たちの心の闇に向き合っていた水谷。そのため「夜回り先生」と呼ばれていた。夜回り先生が出会う子どもたちは、ドラッグや暴力といった非行や、いじめや家庭内暴力で心を病む者など様々。水谷は子どもたちが非行に走ったり、自傷行為に陥るのには必ず理由があるという信念を持つ。そのため頭ごなしに叱責したり、無理に矯正しようとはせず、悩みを聞き、心に寄り添うことから始める。水谷は、子どもたちに救いの手を伸ばし続けるのだった。
犬と飼い主の深い絆と別れを描いたリチャード・ギア主演映画『HACHI 約束の犬』のコミカライズ作品。アメリカ東海岸のベッドリッジ駅で、迷い犬になっていた秋田犬の仔犬。大学教授のパーカー・ウィルソンはその仔犬を引きとることになる。仔犬を「ハチ」と名付け、可愛がるパーカー。しかし、幸せな時間は突然終わりを迎える。
本作は『ハチ公物語』をリメイクしたアメリカ映画のコミカライズ作品。『ハチ公物語』は、主人・上野教授が亡くなった後も、彼の帰りを待ち続けた忠犬ハチ公の実話を元に作られた映画である。アメリカ映画版では、駅舎で迷い犬になっていたところで、飼い主のパーカーと出会う設定になった。ハチはパーカーをベッドリッジ駅まで毎朝送り、夕方5時になると迎えに行っていた。しかし、『ハチ公物語』と同じく、パーカーも大学での講義中に倒れて帰らぬ人となり、ハチはパーカーをベッドリッジ駅で待ち続ける。海を越えても、変わらぬ切なさと感動をもたらした物語だ。
名探偵・金田一耕助が謎に挑む、横溝正史原作の推理小説のコミカライズ作品。天涯孤独の青年・寺田辰弥はある日、自分を捜しているという広告を知った。その後、祖父と再会するが、祖父は目の前で死亡。己の出生を知るために母の故郷「八つ墓村」へと赴いた辰弥は恐ろしい事件に巻き込まれる。1951年より3回の実写映画化、複数回のテレビドラマ化された作品。
本作は、金田一耕助シリーズの中でも屈指の人気作『八つ墓村』のコミカライズである。そして『八つ墓村』は実際にあった事件を元に作られた作品だ。物語は、落ち武者の呪いの伝説が根深く残る村が舞台。そこでは二十数年前、村の長であり辰弥の父とされる田治見要蔵が発狂して、一晩で村人32人を殺した事件があった。この事件は八つ墓村の舞台とされる岡山県で昭和13年に実際に起きた「津山三十人殺し」がモデルとなっている。本作では、この陰惨な事件が落ち武者の呪いであり、辰弥が村に帰郷することで再び惨劇が起きると示唆される。そして実際に次々と死者が出てしまう。金田一はそんな迷信深い村人たちを前にしても、冷静で鋭い観察力を持って事件の謎を解いていく。
ある女性の闘病と愛を描いたドキュメンタリーのコミカライズ。イベントコンパニオンで働く長島千恵はある日、末期の乳がんを宣告される。余命を宣告された千恵は、自らの闘病について取材を受け、同世代に発信していく決意をする。2007年ドキュメンタリー番組放送、2009年実写映画化。
本作は、2007年に24歳の若さで亡くなった長島千恵さんの実話を元に描かれた作品。イベントコンパニオンとして働いていた千恵は、仕事で知り合った赤須太郎から交際を申し込まれる。しかし、彼女にはとある不安があった。それは胸のしこり。検査の結果、乳がんが発覚する。太郎にその事実を告白したところ、彼は共に病と戦うことを決意してくれる。左胸の全摘出後、新たな人生を歩もうとする千恵。だが、再び病魔が彼女を蝕む。余命宣告を受けた千恵は、1人でも多くの人々に乳がん検診の重要性を広めることを決意する。
作者である中沢啓治が、自身の原爆の被爆体験を元にした自伝的漫画。1945年の広島、家族と共に暮らす中岡元(ゲン)は原爆投下に見舞われる。偶然にもゲンは、塀の影にいたために助かったが、父や姉、弟を喪う。ゲンは、生き残るため母・君江や後に生まれた妹・友子、原爆孤児の隆太と共に奔走する。1976年より3回実写映画化、1983年より2回アニメ映画化。
本作は、主人公・ゲンが体験する戦中~戦後の過酷な世界を描いた物語。これらは作者・中沢啓治自身の被爆体験が元になっており、自伝的漫画となっている。貧しくも真面目に暮らしていた中岡家。原爆投下によって生き残ったのは、ゲンと見重の母・君江だった。しかし君江は、ショックで妹・友子を早産する。そして、原爆投下からまもなく終戦を迎えるが、食べるものも住む場所もなく、ゲンたちは困窮。過酷な環境で生まれた友子は、やがて栄養失調で死に至る。そして、ゲンたちも被爆の後遺症に苦しむのだった。