『お前、タヌキにならねーか?』、©奈川トモ/一迅社
Anime Japan主催の 「アニメ化してほしいマンガランキング」 。
一般応募であるノミネート作品の選定から、本投票が2024年2月1日(木)20:00よりスタートしています(投票期間は3/4にて終了)。第7回目となる今企画では、50作品のマンガ作品が選出されました。
本記事では、ノミネートした作品の担当編集者様へお話を伺い、作品の魅力・良さをたっぷりと語っていただきます。
第7回目にご紹介する作品は、「comicPOOL」にて連載中の『お前、タヌキにならねーか?』です。
『お前、タヌキにならねーか?』のあらすじはこちら→ マンガペディアリンク
奈川トモ先生 公式X
【担当編集・鈴木氏 プロフィール】
DMC・REX編集部/comic POOL編集部/comic HOWL編集部 編集長。
担当作は『お前、タヌキにならねーか?』、『恋する(おとめ)の作り方』、『ヲタクに恋は難しい』、『先輩がうざい後輩の話』、『おとなしそうな男子のとんでもない秘密を知ってしまった』など。
ーー 他の作品にはない、この作品の魅力を教えてください。
鈴木氏(以下、鈴木) 『お前、タヌキにならねーか?』は、“人情味”、人のあたたかさが描かれている作品です。
最近では、人の優しさをメインにした作品が、非常に少なくなっていると感じています。
この作品に関しては、今やらなければならないという意志を、もしかしたら奈川トモ先生(以下、奈川先生)も自分も持っているところがあるのかもしれません。
例えばいじめや、自殺を題材にした話は、(マンガとして)避けた方が良いことも多いです。ですが、そのような悩みを抱えている人は今この時もいらっしゃる。
そのことを考えた時に、いろいろな悩みや人の話を(『お前、タヌキにならねーか?』で)描き、誰かの悩みに向き合っていく意義はあるのかもしれないと考えています。
ーー 世の中の流れなどを察知している内容だと思います。どの程度意識して作品作りをされているのでしょうか?
鈴木 個人的には世の中の流れを意識しているとか、流行りに乗りたいというわけではないです。
ただ、新しい流れや新しい価値観が出てきたときに、その時代ならではの新しい悩みが出てくると思うんですよ。
その悩みを理解するというと烏滸がましいですが、(その悩みを)しっかり描き、勇気を与えられる作品になればと思っています。
ーー 若い方だけでなく、幅広い年齢層の方が手に取っているように感じます。
鈴木 仰る通り、本当に幅広い層に届いているなと感じます。30代、40代、さらに上の方も読んでくださっていて。
一度TVで、朝の情報番組に『お前、タヌキにならねーか?』を取り上げていただきました。その際には、主婦の方も情報番組を見て、『お前、タヌキにならねーか?』を手に取ってくださっていて。
SNSをあまり利用していない層でも読んでもらえる作品なのではないかと感じ、とてもうれしかった記憶があります。
また最初はSNSから拡がった作品ではありますが、SNSをあまり意識しすぎず、シンプルに良い作品を描いていこうと(奈川先生とも)話しています。
それが結果として幅広い世代の方々に手に取ってもらえている理由なのかもしれません。
ーー キャラクターの魅力についてもお伺いできますか?
マンガに動物を落とし込むときに、多くの作品はデフォルメ化してしまうと思うのですが、(『お前、タヌキにならねーか?』は)リアルタヌキで(笑)。それがすごく可愛いんですよ。
それは奈川先生の動物や自然というものに対しての敬意でもあるし、特性でもある。人間のとき、タヌキになったとき、人間に戻ったときの良さが、どのキャラクターでも出ているんじゃないかなと思っています。
ーー 編集者からみたここを推したい!ポイント、シーンはありますか?
SNSを利用する中で見かけるネット広告は、ネガティブなものも多いと思います。コンプレックスを刺激したり、人間のネガティブなところを切り取って、読み手に強い印象を与える作品が増えているなと。
もちろんインパクトを与えることはでき、広告としての役割は果たしていると思うのですが、人間ってネガティブなところばかりではないじゃないですか。
日常の小さな良いこととか、他人の優しさに触れる機会は多くあると思うので、その“人情さ”を忘れないでほしいという思いがあります。
ネガティブな要素、過激な部分を求めている時代だからこそ、人間のポジティブな側面をちゃんと伝えることでバランスをとっていきたいという思いがあるのかもしれません。
ーー 原稿を受け取ったとき、思わず唸ってしまったシーンはありますか?
鈴木 最近でいうと、今度出る6巻の描き下ろしがめちゃくちゃ良くて。
6巻は親子関係が重点的に描かれている巻なのですが、世の中的にも、親子関係のあり方や、希薄化、またどこまで他人とかかわるかを見直す雰囲気があると思います。
たしかに(親子関係や人間関係は)良いところばかりじゃないかもしれないけど、だからといって、そんなに悪いことばかりでもないと思うんです。
描き下ろしは、とあるキャラとお母さんの関係性のお話なのですが、奈川先生は人間のいい面はもちろん、そうではない裏側にもきちんと理由があることを描いてくれるので、僕自身も非常にグッときましたね。
また(『お前、タヌキにならねーか?』は)Webで読めるのですが、コミックスの際には、奈川先生が印象的なシーンをカラーに直して下さっています。
すごく良いシーンがカラーになっていますので、Webとの違いを楽しんでいただけたらうれしいです。是非ご購入いただけたらと思います。
ーー もしもアニメ化をするとすれば、期待したいこととは?
鈴木 作品の持つあたたかさが伝えられる作品になるといいなと思います。
あとはやはり、タヌキの動きですね。アニメにする際、めちゃくちゃ難しそうなのですが、本物のタヌキっぽい動きを再現できたら奈川先生も作品のファンの方も、とても喜んでくれると思います。
ーー すでに本作を楽しまれている読者の方も多いかと思います。今後の展開について、話せる範囲で教えてください。
鈴木 主人公のこがね丸 (こがねまる)の過去はまだ明かされていません。
こがね丸の過去に関しては、奈川先生ご自身が初期の頃からすごく考えられていて。確信に触れる部分に関しては、作品の後半になってくるかと思います。
『お前、タヌキにならねーか?』は、一話一話は気楽に読みながらも、しっかりお話に軸があり、深いところがあるなと思っていただけるのが、一番良い楽しみ方なのかなと思います。
あたたかい作風を感じつつ、明かされていない過去の部分についても、両方の軸で楽しんでいただけたらうれしいです。