夏といえばホラー! ホラー漫画界の巨匠、伊藤潤二特集55 Pt.

伊藤潤二といえば、緻密なペン使いとグロテスクな画風が特徴の稀代のホラー漫画家である。また、思わず笑ってしまうようなシュールなストーリーでも人気を博してきた。今回は、現在も異彩を放ち続ける彼の独特な世界観に浸れる5作品を紹介しよう。

作成日時:2020-09-08 10:00 執筆者:マンガペディア公式

夏といえばホラー! ホラー漫画界の巨匠、伊藤潤二特集

出典:amazon


『富江』

『富江』

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伊藤潤二の代表作でもある、魔性の美少女と彼女を取り巻く男たちの破滅を描いたホラー漫画。女子高校生・川上富江は、ある日バラバラ死体となって発見された。クラスの担任・高木と富江の交際相手・山本の様子を見て、彼女の幼なじみ・松原礼子は心を痛めている。しかし、何事もなかったかのように富江が登校し教室はパニックになる。なぜなら彼女を殺してバラバラにしたのはクラス全員であったからだ。1999年に実写映画化。

課外授業で訪れた小さな山で、富江は山本と不倫相手である高木との三つ巴の痴話喧嘩の末、崖から転落した。罪を逃れるために高木たちは彼女の死体をバラバラにし、礼子をはじめとしたクラスメイトによって捨てられたのである。富江の出現により、高木は精神に異常を来し、山本は自首に失敗し高木同様に気がふれてしまう。礼子は引っ越すが、富江の死体の一部から彼女が復活するところを目の当たりにする。富江は名前を変え場所を変え、出会う男たちを次々と手玉に取り不幸のどん底に陥れる。妖艶な容姿に傲慢な性格である富江の「魔性」に、男たちは必ず殺意を抱き、手を汚してしまう。しかし、何度殺されても蘇る彼女の正体は明かされておらず、読めば背筋が凍ること間違いなしだ。


『うずまき』

『うずまき』

出典:小学館

とある町を舞台に、「うずまき」が引き起こす呪いに巻き込まれる男女を描いたオカルトホラー漫画。黒渦(くろうず)町に住む女子高生・五島桐絵(ごしまきりえ)は、隣町の高校に通う恋人・斎藤秀一を迎えに駅に向かっていた。道中、つむじ風に巻かれたり、壁に張り付いたカタツムリの殻を一心不乱に眺める秀一の父親に会ったりと不気味な体験をする。そんな桐絵に秀一は「この町はうずまきに汚染され始めている」と告げる。2000年に実写映画化。

当初は秀一の言うことをにわかに信じられない桐絵だった。しかし、秀一の父親が何かに取り憑かれたようにうずまきに固執し、異常を来した様子を見、戦慄をおぼえる。遂には父親が自ら取り寄せた桶の中でうずまき状になり死んでしまい、それを皮切りに黒渦町の住人たちが次々とカタツムリ化するなど変化が訪れる。あらゆるところに存在するうずまきが巻き起こす災害により、住人はもとより町全体が壊滅状態になってゆく中、二人は災厄の正体にたどり着く。川の流れや煙、味噌汁をかき混ぜた時の模様やデザインなど日常生活で目にする機会が多いうずまきだが、その螺旋状の模様は神秘的でもある。グロテスクな描写と相まって、それらが織りなす不思議な世界に思わず魅入られてしまうだろう。


『ギョ』

『ギョ』

出典:小学館

謎の生物「歩行魚」が引き起こす恐怖と、それに翻弄されるカップルを描いたパニックホラー漫画。主人公・忠は恋人の華織(かおり)と共に沖縄にバカンスに来ていた。スキューバダイビングを楽しんでいたところ、異常な速さで泳ぐ謎の生き物に遭遇する。その晩、潔癖症の華織と「臭い」をめぐって口論となり、彼女は別荘を飛び出してしまう。無事に彼女を見つけ部屋に戻る忠であったが、更なる恐怖が彼らを襲うのであった。2012年にビデオアニメ化。

二人を待ち受けていたのは部屋に充満する悪臭であった。忠は、機械の脚が付いついて、強烈な悪臭を撒き散らす「歩行魚」が部屋にいるのを発見し、撃退に成功する。逃げるように東京に戻った二人だが、撃退したはずの歩行魚が再び彼らの目の前に。忠は歩行魚の調査を依頼すべく、科学者である叔父の小柳にそれを託す。その結果、かつて小柳の父親が開発し、海の藻屑と消えた細菌兵器がその元凶であることが発覚するが時既に遅し。歩行魚の進撃は止まらず遂に首都圏を襲い、とうとう魔の手が華織にも及ぶ。ストーリーの怖さもさることながら、歩行魚や襲われる人々の描写がこの上なくグロテスクである。思わず目を背けたくなる一方で、その世界観に病みつきになること請け合いだ。


『憂国のラスプーチン』

『憂国のラスプーチン』

出典:小学館

原作者・佐藤優の実体験を元にした、国策捜査で逮捕された外交官と検察との長きにわたる闘いを描いた社会派ストーリー。2002年5月14日、外務省職員である憂木衛(ゆうきまもる)は、背任の疑いで東京地検特捜部に逮捕された。信頼する政治家・都築峰雄(つづきみねお)と共に北方領土返還に尽力していた憂木は、これが「国策捜査」の不当逮捕であることを知り、都築を守るべく徹底的に抗戦することを誓う。この日より、延べ512日にも及ぶ拘置所での生活が始まった。

疑惑のかたまりとされていた都築を陥れるために逮捕された憂木は、検事・高村貴史の取り調べに断固応じることはなかった。しかし、偽計業務妨害での再逮捕と仲間であった者たちの裏切りに続き、遂には都築まで逮捕され窮地に陥る。しかし、検察のシナリオ通りにでっち上げられた罪を認めるわけにはいかず、不当な取り調べに耐え続ける中、高村検事との間に不思議な絆が芽生えてゆく。長い勾留の末、いよいよ裁判となり検察との全面戦争が幕を開けるのだった。本作は実話をベースにしているため、検察の裏側が暴かれることに賛否両論を呼んだ。また、実在する政治家の素顔や拘置所生活の裏話が憂木の視点から小気味よく語られている。おどろおどろしい画風と相まって、最後まで目が離せない。


『人間失格』

『人間失格』

出典:小学館

文豪・太宰治の代表作を伊藤潤二独自の視点でコミカライズ。とある田舎町の議員の息子・大庭葉蔵(おおばようぞう)は生まれつき他人というものがわからず「恥の多い生涯」を送ってきた。隣人とまともに会話することができないため、その葛藤を「道化」を演じることでやり過ごしてきたのである。常に父の顔色をうかがい、下男や女中からは辱めを受けるなど過酷な幼少期を過ごしてきた葉蔵は、高等学校に入学するため上京する。そこで出会った悪友・堀木(ほりき)正雄の影響を受け、彼は破滅の道をたどってゆく。

遊び人の堀木から酒・タバコ・女を教えられた葉蔵は、カフェの女給であるツネ子と懇意になり溺れてゆく。彼女と最初の自殺未遂を起こすが、ツネ子だけが死に葉蔵は命を取り留めた。その後、堀木のツテで知り合った中野シヅ子の助けで漫画家として名を上げ束の間の幸せを手に入れるが、自らの手でそれをも壊してしまう。女性遍歴を重ねれば重ねるほど虚しさは募り、重度のアルコール中毒と薬物中毒を引き起こし遂には「脳病院」へと運ばれることに。しかし、そこで葉蔵は意外な人物との邂逅を果たす。本作は「人間」の恐ろしさに怯え生きてきた葉蔵の心の機微が見事に描かれている。伊藤潤二オリジナルの解釈も織り交ぜられているため、原作との差異を楽しむのもおすすめだ。


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