伊藤潤二にしか描けない繊細で美しいタッチで、日常を逸脱した狂気の世界を描き出す。伊藤潤二は日本を代表するホラーマンガ家だ。
彼の代表作には『富江』、そして『うずまき』『ギョ』などがある。そのどれもが、見るも恐怖、読むも恐怖という恐ろしさ。
伊藤潤二の漫画はプロットも非常に優れており、唯一無二の作品を描き出している。
その恐ろしさは、余りにも凄すぎて笑いがこみ上げてくるほどである。
かの楳図かずおも笑いと恐怖は表裏一体であると語ったとか、いないとか。伊藤潤二はまさにそんなホラーマンガ家なのである。
ホラーマンガ家とはいえ人間だ。当然結婚もすれば私生活がある。
某年新居を購入した伊藤潤二。彼と一緒に住むのは婚約者のA子。ある日A子は伊藤に持ち掛ける。
J君(伊藤)は犬派? それとも猫派?
そして、これが恐怖の始まりとなったのだった。
実はA子の実家には、呪われた恐怖の猫、よんが飼われており、A子はその猫を新居へ招こうというのだ。やがてA子はよんだけではなく、むーという猫も召喚することになる。こうして伊藤潤二の新居には、背中にどくろの模様が現れている呪いの猫が住み着くようになったのである。
J君とA子と2匹の猫の恐ろしくも笑える日常が繰り広げられる!
マガジンZにて連載、コミックも発売中(完結)。
「よん&むー」との日々は恐怖の連続だ。
いや、実態は普通によくある猫好きマンガ家の日常みたいな感じなのだが、なんといっても描いているのが伊藤潤二。
どの絵、どのコマを切り取っても、確実に何か呪いがかけられているのではないか、怨霊の祟りがあるのではないか。そんな雰囲気がぷんぷんと漂っている。
2匹の猫と一緒にA子がねこじゃらしで遊んでいるだけの風景でも、伊藤潤二に描かせれば、発狂した女が暴れまわる惨劇の場面に大変身する。
伊藤潤二が好きな人も猫が好きな人も笑って楽しめる作品に仕上がっているのが本作の魅力だ。
呪われた猫と漫画家の恐怖の日常をぜひ、堪能してほしい。