超常的な力を危険視され収監された主人公ら、異能力者の生き残りのための戦いを描いたSFアクション作品。20XX年、ある日の天変地異を境に、人類の中から出現した異能力者「アルタード」。人類はアルタードを危険視し、囚人として孤島の刑務所「アイランドD」への移送を行っていた。異能力者の少年・飯田悟(いいださとる)もその中の1人。彼は護送船の中で、Sランクとされる危険なアルタード「カザラギ・ジン」と出会い、物語は動き出す。
アルタードの少年・悟はかつてその「触れたものを分解する」能力のせいで母親を亡くした過去を持つ。同様の超常の能力の持ち主たちが孤島の刑務所アイランドDへ移送される場面から物語は始まる。社会より危険視され、忌むべき存在とされる異能力者・アルタードたち。しかし、護送船の中で悟が出会った、最高危険度の囚人とされるジンは「アルタードも人の心を持った人間」と信じる男であった。アイランドDの自治区「異能街」に身を寄せることとなった悟らの戦いと、成長の日々が描かれる。『ARMS』、『牙の旅商人』などで知られる著名な原作者「七月鏡一」の重厚な物語と、『新暗行御史』などを描いた作者の美麗な作画の化学反応が素晴らしい、SFアクション大作である。
「愚連街」と呼ばれる街を舞台に、上京してきた青年の戦いを描いたバイオレンスアクション。田舎より上京してきた主人公・天道マハルは東京の外れの危険な街、通称「愚連街」に赴く。悪質な客引きに捕まり、バーでぼったくりにあうマハルであったが、そのとき彼を救ったのは、ヤクザ「九頭一家」の用心棒の虎坂シーマであった。違法店つぶしが目的のシーマが、バーの店長を拷問するなか、マハルがそれを止めたことで2人は、殴り合いとなる。
凄惨をきわめるマハルとシーマの殴り合い。そこに現れ、2人を止めたのは九頭一家の幹部・墓村(はかむら)であった。暴力に支配される愚連街を舞台に、マハルとシーマ、2人の戦いの日々が描かれる。熱いマハルとクールなシーマの凸凹コンビの出会いによって幕を開ける本作。マハルの少しおバカで明るい性格が功を奏し、物語は必ずしも陰惨なムードに支配されてはいないが、それでも暴力描写がすさまじいため、読み手を選ぶ作品かもしれない。しかし、それを差し引いても、迫力のバトルや、社会の闇の描写は見事で、ページをめくる指が止まらなくなるバイオレンスアクションであり、マハルとシーマのバディものとしても楽しむことができる注目の作品だ。
架空の年代、20XX年の日本を舞台に、他国との軍事衝突や現場の自衛官の活躍を描いた架空戦記作品。尖閣諸島沖での海上自衛隊と中国海軍の衝突から物語は始まる。日本政府が中国になかば屈する形で戦闘は回避されたが、その中国の行動に危機感をおぼえた日本政府は新型護衛艦の就役および、その艦船「いぶき」を旗艦とする「ペガソス計画」の前倒しを決定。2019年に実写映画化。続編に『空母いぶき GREAT GAME』がある。
空母いぶきの新艦長として就任したのは、航空自衛隊出身の最年少一佐でエースパイロットでもある秋津竜太(あきつりょうた)。副艦長兼航海長には海上自衛隊生え抜きの新波歳也(にいなみとしや)が就任した。艦長の座を競った2人の人物を中心に物語は展開し、政府関係者や、ジャーナリストなど、思想信条の相違はありながらも、ともに緊迫した事態に対峙する姿が描かれる。近年、周辺諸国との関係への危機感が近年高まる中で発表された本作。架空の物語とはいえ、現実に「あり得る」と思わせるリアルな描写は、作者の手腕であり、舌を巻く。代表作『沈黙の艦隊』や『ジパング』など軍事作品を得意とする作者の、新たな軍事エンタテインメント作品である。
深刻化した少子化対策として政府が設立した恋愛至上主義を是とする学園で、主人公らが繰り広げるラブバトル漫画。主人公・清天我(きよしてんが)は「衿糸(えりいと)学園」に通う高校1年の男子で「恋愛至上主義」とされる校風の中ただ1人の童貞である。一方、幼馴染の明星幸流(あけぼしさちる)は学園の「処女四天王」の1人。幸流に想いを寄せられながらも気づかない天我だが、ある日の授業で、「処女補修」を言い渡された幸流に付き添うこととなる。
少子化が叫ばれる昨今である。状況が深刻化した近未来が舞台の本作は、政府がその対策として、男女が正常に付き合うことを教育し、家柄のよい者同士の結婚を目的としたエリート校衿糸学園を立ち上げる。エリートによる恋愛至上主義が是とされる学園で唯一の童貞である天我と、数少ない処女である幸流の2人を中心に物語は展開される。現代において、2人の価値観は珍しいものではないが、本作の学園においては論外であり、2人は問題児として扱われ、その奮闘の日々が描かれる。その設定のため、そういった行為自体が直接的に描かれているのも本作の特徴。代表作『クズの本懐』など、一風変わったラブコメを多く執筆している妙手である作者の面目躍如たる作品である。
未来都市、ネオ・ドミノシティを舞台に決闘疾走(ライディング・デュエル)で最強を目指す青年の活躍を描いたカードバトル漫画。主人公・不動遊星(ふどうゆうせい)は、Dホイールと呼ばれるバイクを操縦しながらカードバトルを行う決闘疾走の強者。彼の弟分・伊集院セクトとの決闘疾走の場面から物語は始まる。2008年より放送された同名テレビアニメのコミカライズ版。人気漫画でアニメなど多岐にわたり展開される『遊☆戯☆王』シリーズの第3作である。
遊星とセクトの戦いは遊星の勝利で終わる。ライディング・デュエル後、都市伝説である「骸骨騎士」にレアカードをくれるように願うセクト。だが現れた骸骨騎士は、セクトを人質にし、遊星に決ライディング・デュエルを挑むのだった。同名アニメを元としながら、アニメとは違った展開を見せる本作。初代『遊☆戯☆王』の数十年後と明言されているアニメ版とは違い、舞台を同じくしながらも漫画版では時代設定は明言されていない。『遊☆戯☆王』シリーズといえば、作中登場するカードバトルが熱い名作であるが、本作はそれに加え、Dホイールで疾走しながらの対戦ということもあり、非常に迫力のあるカードバトルが展開される。荒廃した近未来的世界観やメカデザインなどはサイバーパンク系SFを思わせる良コミカライズだ。