空母いぶき

空母いぶき

現代の日本を舞台に、南西諸島に軍事侵攻して来た中国との戦いを描いた仮想戦記。自衛隊や中国軍の兵器などが入念に描写される他、専守防衛の理念故に大きな制約を受ける自衛官達の苦悩に焦点が当てられ、政治家や官僚、ジャーナリストなど多面的な視点から、戦争に直面した現代日本がリアルに描かれる。小学館「ビッグコミック」2014年第24号から2019年24号まで連載。次号2020年1号から続編『空母いぶきGREAT GAME』が連載開始された。第63回「小学館漫画賞」一般向け部門受賞。

正式名称
空母いぶき
ふりがな
くうぼいぶき
作者
ジャンル
ファンタジー
レーベル
ビッグ コミックス(小学館)
巻数
既刊13巻
関連商品
Amazon 楽天 小学館eコミックストア

あらすじ

第1巻

20XX年、遭難者を装った中国軍の工作員が尖閣諸島に上陸。中国はその救出を名目として、艦隊を日本に差し向けた。軍事衝突こそ避けられたものの、中国の脅威を痛感した垂水慶一郎首相は、新たな防衛計画の完成を急いだ。その結果、新型護衛艦「いぶき」が就役し、秋津竜太一等空佐が艦長に抜擢される。専守防衛を旨とする自衛隊だが、秋津は「アジア最強の艦隊を目指す」と公言するなど型破りな言動を見せる。一方、「いぶき」就役後の尖閣諸島周辺は一旦平穏を取り戻していた。しかし、密かに準備を進めていた中国海軍は、「いぶき」就役翌年の20XY年、突如として尖閣・先島諸島への攻撃を開始した。

第2巻

中国軍は尖閣・先島諸島に落下傘部隊を展開し、住民を人質に取って全島を占領。与那国島の自衛隊分屯地も制圧され、自衛隊員に死者を出した。報せは首相官邸にも届き、垂水慶一郎首相ら閣僚は対応に追われる。「いぶき」を旗艦とする第5護衛艦隊群は演習航海中だったが、一報を受けて直ちに反転し、先島諸島奪還作戦に向かった。第5護衛隊群・群司令の湧井継治に対し、秋津竜太は正当防衛のため、速やかに攻撃する事を具申。しかし湧井は専守防衛の信念を貫き、攻撃されるまでは撃ってはならないと命令を下す。その頃、多良間島上空では航空自衛隊の偵察機が撃墜される。南シナ海が既に戦場となっている事を認識した垂水は、ついに閣議決定により「防衛出動」の命令を下すのだった。

第3巻

先島諸島に接近する第5護衛艦隊群に対し、中国空母から5機の戦闘機が発艦した。護衛艦「あたご」は中国軍機からのミサイルを迎撃し、さらに中国機を1機撃墜する事となった。「敵機撃墜」の報は官邸にも届き、閣僚に衝撃を与える。垂水慶一郎首相はあえて撃墜を公表する事を選択し、マスメディアや国民のあいだにも動揺が広がった。前線では、航空自衛隊の「アルバトロス隊」が「いぶき」から発進。秋津竜太艦長は、1機も失わないという信念のもと、「迷ったら撃て」という指示を下す。5機からなるアルバトロス隊は、中国空軍の編隊に補捉され、柿沼一尉の乗る1機が撃墜されてしまう。この直後、北京では日本大使による交渉が始まり、自衛隊には「今後の交渉に影響を与える戦闘は極力控えるように」との指示が出された。潜水艦「けんりゅう」の滝隆信艦長は、もどかしい思いで中国潜水艦「遠征」に対峙する事になる。

第4巻

自衛隊の潜水艦群は、「先制攻撃ができない」という縛りのもとで、できる限りの抵抗を試みる。まず、「せとしお」があえて中国潜水艦「遠征」に接触・損傷させ、両軍に死傷者を出さずに互いを航行不能にする。さらに「遠征」が「けんりゅう」に向けて魚雷を発射すると、「けんりゅう」も魚雷を発射させて相討ちさせてしのぎ、中国側を驚嘆させるのだった。その頃官邸では垂水慶一郎首相が、大勢の人命を損なうであろう命令を、間もなく下さなければならない事に苦悩を強めていた。しかし、北京における2回目の外交交渉も決裂し、ついに武力による先島諸島の奪還作戦「はやぶさ作戦」が閣議決定される。「いぶき」艦長の秋津竜太は、はやぶさ作戦遂行にあたり、航空優勢の確保のための戦闘を指令。「いぶき」から航空部隊を発艦させると、中国戦闘機群の警戒をすり抜け、それらを統括する通信管制機を撃墜させる。

第5巻

先島諸島の多良間島・与那国島に抑留されている住民を救出するにあたり、近海の中国駆逐艦2隻が障害となった。秋津竜太は、護衛艦「ちょうかい」の艦砲射撃によって敵艦を損傷させるという作戦を提案する。敵の懐に入り込まねばならない危険な策だったが、「ちょうかい」艦長の浮船武彦の優れた指揮により目標を達成。次の段階として、多良間島に配備された中国のミサイル発射機を攻撃機で破壊する作戦が実行に移される。そのパイロットには、航空自衛隊の司令官である淵上晋が自ら志願した。淵上と江口一尉が搭乗する戦闘機は、夜陰に紛れて多良間島上空に到達し、拘束されている住民の近くをあえて飛行して彼らを鼓舞する。中国軍の対空攻撃によって江口の搭乗機が撃墜されるが、ミサイル発射機の破壊には成功。さらに与那国島では、深堀進二佐の率いる陸上自衛隊の特殊部隊が上陸、奪還作戦を開始する。

第6巻

与那国島に陸上自衛隊の特殊部隊が上陸した事を受け、中国軍は島の中学校に収容していた捕虜住民の分散を開始。住民の居場所が不明になった事で、特殊部隊は容易に動けなくなってしまう。本土では、奮戦する自衛隊の様子がテレビで公開され、一般国民は高揚感を高めていた。しかし、与那国島の特殊部隊は、捕虜の安全を守るために慎重な行動をせざるを得なくなり、中国軍との戦闘で徐々に損耗していく。秋津竜太は、湧井継治群司令に対し、輸送機を飛ばして与那国島に兵器や物資を投下、特殊部隊を支援する作戦を具申。撃墜覚悟の危険な任務であったが、航空自衛隊員達はこぞって志願した。輸送機は戦闘機に護衛されながらも、中国軍の対空攻撃にさらされる。物資を最後まで投下する事には成功するものの、輸送機はエンジンを損傷し、墜落してしまう。

第7巻

多良間島・与那国島での戦闘は物資投下によって膠着したが、中国軍はこのあいだに尖閣諸島の基地化を着々と進めていた。秋津竜太は、中国の尖閣諸島領有が既成事実化する前に、基地を艦砲で破壊するよう進言。ただし敵側に過大な死傷者が出ないよう、攻撃を事前通告するべきだとした。垂水慶一郎首相はこの進言を受けて、中国側に24時間後の攻撃を通告し、撤退か応戦かを選ばせる事にした。与那国島では、特殊部隊による駐屯地への奇襲作戦により、捕虜となっていた150名の隊員達を救出する事に成功する。作戦成功後、特殊部隊の狙撃手は自分の射殺した中国の哨戒兵の顔を、鮮烈に胸に刻んでいた。その頃、東都新聞記者の一の瀬一は、最前線での情報を伝えられない事に苛立っていた。一の瀬はリスクを承知のうえで、自衛隊の検問をかいくぐって沖縄・下地島の空港に到達。前線に出撃する戦闘機の姿を写真に収めた。そのあいだにも、攻撃までの24時間のタイムリミットは刻々と過ぎて行き、第5護衛艦隊群は尖閣諸島へと迫っていた。

第8巻

尖閣諸島近海では、中国の潜水艦が日本による攻撃を阻止すべく、魚雷による攻撃を開始した。イージスミサイル護衛艦「あたご」に放たれた魚雷に対し、護衛艦「せとぎり」の清家博史艦長は身を呈して「あたご」をかばう判断をする。被弾した「せとぎり」は破損し、隊員2名の犠牲を出すが、「あたご」による尖閣の基地破壊を手助けした。さらに、滝隆信艦長の乗る潜水艦「けんりゅう」は中国潜水艦の背後に回り、これを撃沈。官邸は衝撃を持って撃沈の報せを受け取るが、垂水慶一郎首相は国民との信頼関係を優先し、撃沈の事実をあえて公表する。日中の紛争は国連安保理にも持ち込まれ、中国内部の動きも慌ただしくなって来た。中国海軍は、空母「広東」を中核とする戦力を青島港から出航させる。中国軍は、国際法上攻撃できない病院船を艦隊に組み入れ、日本側が攻撃できないよう手足を縛っていた。

第9巻

空母「広東」率いる艦隊が先島諸島に向かう途中、東シナ海に大型台風が接近していた。戦闘の小休止を期待した日本の予想に反し、「広東」艦長の劉長龍は艦隊を台風に突入させ、中国艦隊の練度を示した。台風を通過した「広東」艦隊は、「いぶき」率いる第5護衛艦隊群との決戦に臨む。劉は「広東」より攻撃隊を発艦させるが、その標的は自衛隊の支援基地である下地空港と宮古島空港だった。不意をつかれた自衛隊は、爆撃によって戦闘機や滑走路に大損害を出す。さらに、「広東」より第5護衛艦隊群に向けて第2派の部隊が発艦。秋津竜太は、「中国の部隊は航空戦を想定しており、対艦武装は多く装備していない」という読みのもと、あえて戦闘機を出撃させずに迎え撃つ作戦をとった。

登場人物・キャラクター

秋津 竜太 (あきつ りゅうた)

航空自衛隊でパイロットを務める青年。初登場時は二等空佐で、のちに一等空佐に昇進、新型護衛艦「いぶき」の艦長となる。年齢は若いが泰然としており、周囲からは意図を推し量りにくいと評される事もある。専門外である船の操縦について、部下の新波歳也に頭を下げて教えを請うなど、柔軟性が非常に高い。軍人として日本を守りぬくという覚悟は強く、時に型破りな考え方で中国軍の侵攻に対抗していく。幼少時、父親の赴任先のドイツで過ごし、1989年のベルリンの壁崩壊を目の当たりにしている。この原体験が、「強烈な意志の力で、目の前の壁を壊す」という指揮官としての価値観につながっている。

新波 歳也 (にいなみ としや)

海上自衛隊の二等海佐。髭を蓄えた壮年男性。新型護衛艦「いぶき」の副長兼航海長となり、秋津竜太を補佐する立場となる。冷静で、常識的な視点の持ち主。当初は腹の底の見えない秋津の指揮能力を不安に思っていたが、徐々に秋津の大きな度量を感じ取るようになり、信頼を置くようになる。

湧井 継治 (わくい けいじ)

海上自衛隊の将官。恰幅の良い中年男性。初登場時は一等海佐で、のちに海将補に昇進し、第5護衛隊群の群司令となる。新型護衛艦「いぶき」は第5護衛隊群所属のため、秋津竜太や新波歳也らの上官にあたる。中国軍が先島諸島に侵攻すると、先島諸島近海における現地指揮官となった。中国海軍との前面衝突をギリギリまで避けるため、先制攻撃は行わないという決断を下す。本格的な軍事衝突が避けられなくなってからは腹をくくり、しばしば秋津の大胆な献策も受け入れながら戦闘の指揮をとった。

垂水 慶一郎 (たるみ けいいちろう)

日本国内閣総理大臣。精悍な風貌の中年男性。中国工作員の尖閣諸島上陸に対応した際に防衛力の必要性を痛感し、護衛艦「いぶき」の就役へと繋げた。さらに、中国による先島諸島占領への対応を迫られることとなる。平和国家として全面戦争だけは避けねばならないという立場と、国民と領土を守るという責任の板挟みに苦悩しながら、自衛隊最高指揮官として命令を下す。

石渡 俊通 (いしわた としみち)

日本国内閣官房長官。恰幅の良い中年男性。首相の垂水慶一郎とは、政治信条の近い盟友。中国の侵略行為に対して毅然と対応すべきというタカ派的な立場を取っている。垂水とはかつて思想を共有していたが、首相就任後の垂水の慎重な対中姿勢を、弱腰だと歯がゆく思っている。中国の強硬な態度については、日本が防衛力を高める好機ととらえ、新しい国防計画を推進した。

沢崎 勇作 (さわざき ゆうさく)

外務省の官僚で、肩書きはアジア太平洋州局参事官。肥満体の青年。外交の実務に携わる立場から、護衛艦「いぶき」就役などの防衛力強化の方針には、「中国を刺激する」として否定的である。垂水慶一郎首相の国防に関する覚悟に接しながらも、軍事については慎重な考えを堅持し続ける。

淵上 晋 (ふちがみ しん)

航空自衛隊のパイロットで、階級は一佐。口髭を生やした男性。第92航空団司令兼飛行隊長として、護衛艦「いぶき」の航空自衛隊の統括を行う。艦長の秋津竜太に「海上・航空の両自衛隊の隊員が協力できるように」と頭を下げられ、航海長の新波歳也との握手に応じた。冷静な判断力だけでなく勇敢さも備えており、自ら危険な任務を引き受ける。

浮船 武彦 (うきふね たけひこ)

海上自衛隊の将官で、階級は一佐。スキンヘッドが特徴の中年男性。イージスミサイル護衛艦「ちょうかい」の艦長。尖閣諸島を中国に奪われることにより、東シナ海の制空権を失うことを強く危惧している。先島諸島奪還作戦では、「ちょうかい」に座乗し、中国の軍艦との砲撃戦を指揮する。普段は標準語で話すが、本気になると関西弁になる癖がある。

滝 隆信 (たき たかのぶ)

海上自衛隊の将官で、階級は一佐。髭を蓄えた男性。新鋭潜水艦「けんりゅう」の艦長。中国の潜水艦の性能が向上し、潜水艦の数で劣る日本が不利な状態であることを指摘する。中国が先島諸島に侵攻すると、「けんりゅう」に座乗して奪還に向かう。その途上、中国の潜水艦と近距離で対峙することになった。

水谷 敬吾 (みずたに けいご)

海上自衛隊の幹部で、階級は海将。威厳のある風貌の中年男性。役職は自衛艦隊司令官。自衛官でありながら大胆な発言を繰り返す秋津竜太の言動を噂に聞いていた。そして、「いぶき」副長の新波歳也を呼び、秋津に艦長としての適性があるかを問う。中国軍が先島諸島を占領した際には、陸海空の統合任務部隊の司令官となる。想定外の事態にも、目的を見失わない冷静な指揮官。

一の瀬 一 (いちのせ はじめ)

東都新聞の政治部記者。パーマをかけ、髭を生やした男性。外務官僚の沢崎勇作と懇意にしており、よく情報交換を行っている。リベラル寄りの政治思想の持ち主で、垂水慶一郎首相の防衛力強化の政策には批判的である。「報道に中立はありえず、批判か追従しかない」という信念から、日本政府に厳しい追及を続ける。

馬 大奇 (まー たーち)

中国の海軍軍人。日本の駐在武官。端正な風貌の壮年男性。与那国島のレーダー施設などの情報を密かに入手し、中国の先島諸島占領の準備をする。中国軍が動いた後、日本の外務省から抗議を受けるが、「尖閣諸島は中国の領土である」という中国政府の主張を繰り返した。

浦田 鉄人 (うらた てつと)

海上自衛隊の将官。坊主頭の厳つい中年男性。階級は一佐で、イージスミサイル護衛艦「あたご」の艦長。護衛艦「いぶき」就役を旧海軍の空母部隊復活と捉える自衛隊内の動きを憂慮している。秋津竜太が会議で「アジア最強の艦隊を目指す」と発言したので、秋津の艦長としての適性に疑問を持った。

迫水 (さこみず)

航空自衛隊のパイロットの若い男性。階級は三佐で、第92航空団所属している。航空部隊「アルバトロス隊」の隊長。自衛隊の艦隊が先島諸島奪還に向かう途中、中国の空母から戦闘機が飛び立つ。迫水らはそれに対抗するために、護衛艦「いぶき」から発艦。出撃の直前、艦長の秋津竜太から「迷ったら撃て」という指示を受ける。

柿沼 (かきぬま)

航空自衛隊のパイロットの若い男性。航空部隊「アルバトロス隊」に所属している。先島諸島奪還作戦の途中、中国空母からの戦闘機攻撃を受け、迫水らとともに護衛艦「いぶき」から出撃した。「迷わぬためのお守り」として、妻と娘の写真を操縦席に貼っている。戦闘中、中国軍機に捕捉され、ミサイル攻撃を受けた。

沖 忠順 (おき ただまさ)

垂水慶一郎内閣の防衛大臣。白髪頭の年配の男性。中国軍による先島諸島占領を受け、対応のために閣僚たちの中心となって動く。国土を侵略されることは国家の危機という考えから、「あらゆる手段を動員して奪還を図るべき」と垂水首相に進言した。

程 朝旭 (ちぇん ちゃおしゅ)

中国の外交部副部長。恰幅の良い中年男性。中国軍の先島諸島占領後、日本の在中国大使から猛抗議を受ける。常に余裕のある笑みを浮かべており、手ごわい交渉相手となる。「尖閣諸島が中国の領土だと日本政府が認めれば、捕虜となった住民を返還する」と揺さぶりをかけた。

深堀 進 (ふかぼり すすむ)

陸上自衛隊所属の二佐。髭面が特徴の壮年男性。特殊作戦群副群長を務める。普段は泰然とした印象のある人物。中国軍に占領された与那国島の島民救出のため、突入する部隊の指揮を担当した。夜陰に紛れて落下傘で与那国島に上陸し、高い指揮能力を発揮する。捕虜となった島民の苦境を気遣い、果敢な行動に出る。

加瀬 利男 (かせ としお)

海上自衛隊所属の一佐。頬髭が特徴の壮年男性。新鋭潜水艦「せとしお」の艦長。先島諸島奪還作戦の途上で、パトロール行動中に中国の潜水艦隊に遭遇。この時、「今後の外交交渉に影響する戦闘は控えるように」という中央からの通達のため、自衛隊の艦隊は魚雷による攻撃ができなかった。限られた選択肢の中で、加瀬は相手の潜水艦にあえて接近していくという行動をとった。

沖村 聡志 (おきむら そうじ)

防衛省情報本部の情報官で、階級は二佐。眼鏡をかけた理知的な風貌の青年。中国軍からの先島諸島奪還作戦において、横須賀の自衛艦隊司令部で情報の収集・分析を行う。日本の中国大使館と中国軍の空母が直接交信していることを突き止め、中国軍内部の異変を察する。沢崎勇作とは、学生時代からの旧友。

池谷 (いけたに)

航空自衛隊のパイロットで、階級は三佐。いかつい風貌の青年。航空部隊「スパロウ隊」の一員。先島諸島奪還作戦において、先島諸島空域の制空権を確保するというミッションに参加。作戦の直前、秋津竜太が述べた「ここで我々が負けたら、日本が負ける」という言葉に強い印象を受けながら、決死の覚悟で出撃する。

ノボル

与那国島に住む男性。車椅子生活の祖母と同居している。与那国島が中国軍の侵攻を受けた際、ほかの住民と共に拘束される。拘束された住民はまず島の中学校に移動させられ、その後民家に分散して収容される。与那国島に上陸した特殊部隊長の深堀進が、住民を勇気づけるために大声で呼び掛けたのを聞きつけ、危険を顧みずに応答。この行動が、特殊部隊に捕虜住民の居場所という有益な情報を与えた。

清家 博史 (せいけ ひろし)

護衛艦「せとぎり」艦長を務める若い男性。階級は二佐。第5護衛艦隊群による、尖閣諸島の中国軍基地破壊作戦に参加する。基地破壊にはイージスミサイル護衛艦「あたご」の武装が必要であり、「せとぎり」の任務は「あたご」を守りぬく事であると心得ている。「あたご」が中国潜水艦の魚雷に狙われて危機を迎えた時、「せとぎり」自ら盾となる判断を下す。

劉 長龍 (りぉう ちゃんろん)

中国空母「広東」の艦長を務める青年。秋津竜太と同世代であり、来歴や言動は秋津と重なるように描写されている。空母決戦のため東シナ海を航海中、接近する台風にあえて突入する。また、自衛隊を後方から支援する下地空港・宮古島空港を奇襲によって爆撃するなど、秋津に劣らない大胆な指揮をとる。少年時代の1989年、中国による民主化弾圧である天安門事件に遭遇した。この原体験が、エリート軍人の経歴には似合わない、武力を誇示するような泥臭さの遠因になっている。

江口 (えぐち)

航空自衛隊パイロットを務める男性。階級は一尉。先島諸島の武力奪還作戦にあたり、多良間島に配備された中国軍ミサイル発射機の破壊作戦に参加。上官の淵上晋と共に、2機の戦闘機で多良間島上空に向かった。ミサイル発射機に肉薄するが、中国軍の対空攻撃によって撃墜され、生死不明となる。

海老名 洋子 (えびな ようこ)

護衛艦「あまぎり」の艦長を務める若い女性。階級は一佐。中国潜水艦の魚雷を受けて損傷した護衛艦「せとぎり」の交代要員として、「あまぎり」が第5護衛艦隊群に加わる。新波歳也からは、「極めて一徹な人柄」と評され、リーダーシップも強い。艦隊に合流後、直ちに艦隊旗艦「いぶき」に来艦して司令の指示を仰ぎ、秋津竜太に「一徹」な人柄を印象づけた。

集団・組織

アルバトロス隊 (あるばとろすたい)

護衛艦「いぶき」に所属する、航空自衛隊の航空部隊。5機の戦闘機からなり、迫水三佐が隊長を務める。中国空母から発艦した部隊を迎撃するため、「いぶき」から発艦。中国の部隊の方が10対5と数的優位があったため、柿沼一尉の搭乗する機体が中国機に捕捉され、撃墜されてしまった。

その他キーワード

いぶき

中国工作員が尖閣諸島に上陸した事件を受け、新たに就役した新型護衛艦。専守防衛の観点から護衛艦とされているが、実態は最新型戦闘機を搭載した事実上の空母である。航空管制は航空自衛隊、操縦は海上自衛隊の管轄。自衛隊としては初めての、空自と海自が協同して運用する艦船である。

防衛出動 (ぼうえいしゅつどう)

自衛隊に対する命令の1つ。本来自衛隊は専守防衛のための能力であり、他国の軍を攻撃することはできない。しかし、外国からの侵略行動に対し、内閣総理大臣から「防衛出動」の命令が下されると、自衛のための武力を行使できる。作中、先島諸島に中国が侵攻したため、垂水慶一郎首相は史上初めての防衛出動の命令を下した。

はやぶさ作戦 (はやぶささくせん)

陸・海・空の自衛隊の合同による、先島諸島の武力奪還作戦。中国との外交交渉が決裂したあと、垂水慶一郎首相が武力の行使を決断して発動した。これを契機に、自衛隊は「先制攻撃をしてはならない」という縛りから逃れる事になる。作戦名は艦隊司令官の水谷敬吾海将で、はやぶさが大きな獲物にも立ち向かう事から命名された。

クレジット

協力

惠谷 治

続編

空母いぶきGREAT GAME (くうぼいぶきぐれーとげーむ)

20YX年、地球温暖化で、北極海の氷の融解は進んでいた。調査研究のために北極海に派遣された護衛艦「しらぬい」は、アルゼンチン籍の海洋調査船から救難信号を受信する。魚雷攻撃を受ける調査船を救うため、「し... 関連ページ:空母いぶきGREAT GAME

書誌情報

空母いぶき 13巻 小学館〈ビッグ コミックス〉

第1巻

(2015-09-30発行、 978-4091872104)

第2巻

(2015-09-30発行、 978-4091872142)

第3巻

(2016-01-29発行、 978-4091874399)

第4巻

(2016-06-24発行、 978-4091876645)

第5巻

(2016-10-28発行、 978-4091892232)

第6巻

(2017-02-28発行、 978-4091893833)

第7巻

(2017-07-28発行、 978-4091896155)

第8巻

(2017-11-30発行、 978-4091896964)

第9巻

(2018-03-30発行、 978-4091898234)

第10巻

(2018-07-30発行、 978-4098600540)

第11巻

(2018-12-27発行、 978-4098601592)

第12巻

(2019-04-26発行、 978-4098603060)

第13巻

(2020-06-30発行、 978-4098606450)

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