更生した青年を部長や中川たちが立派になったと褒めている姿に向かって、両さんが放った言葉だ。マイナスからゼロに戻っただけ、それだったら最初から悪いことなどせず、地道に努力を続けている人間の方がよほど立派だと、両さんは言う。実社会でも、若い頃はヤンチャだったが大人になり真面目になったと言えばギャップから、よく更生したと周囲から褒められるようなことはあるかと思う。確かにそれ自体は立派なことだが、一度も道を外さず、コツコツやってきた人間はもっと評価をされるべきだろう。
「正直者がバカをみる」世の中ではいけないと、両さんは言っている。
超神田寿司の女将、擬宝珠夏春都の言葉だ。両さんが超神田寿司で働くようになってから登場することの多い夏春都だが、厳しいおばあちゃんという一面の裏には、いつも両さんやみんなのことを想う気持ちや、冷静に世の中を見る目を持っている。老舗寿司店に嫁いだからこそ、いつまでもあぐらをかいているわけにはいかないといった気持ちも含まれているのだろうか。夏春都は両さんの新しいことをやってみたいという意欲に対していつも寛容な心で接している。もちろん失敗することもあり、私利私欲に走った両さんを咎めることもあるが、それで次のチャレンジをさせないということは決してない。
夏春都の言葉の中には、いつも強さの中に優しがある。
魅力的な登場人物はまだ多くおり、心に残る言葉もあるだろう。今回のように振り返っていければと思う。
参考:「こちら亀有公園前派出所」コミックス