19世紀のロンドン東部(イーストエンド)を舞台に、不思議な左手を持つ少年がホームズの助手ワトソンと共に謎に挑むミステリー系冒険アクション少年漫画。本作はイギリスで実際に起きた猟奇殺人事件を題材にしている。その事件の犯人の名は「切り裂きジャック」。この殺人事件の特徴は、殺した女性の遺体の一部が犯人に持ち去られているというところだ。名探偵シャーロック・ホームズは切り裂きジャックを捕まえるため、助手のワトソンと共に現場へと向かったのだが、そこで待ち受けていたのは意外な展開だった。
犯人逮捕に自信満々だったホームズとワトソンの前に現れたのは、カラスのような仮面をつけ、すさまじい切れ味の爪を持った怪物男だった。銃で応戦した二人だったが、男の傷は見る間に再生していく。傷つけてもすぐに治癒してしまう男に苦戦を強いられ、ついにホームズの方が追い詰められてしまう。だが男はホームズにとどめを刺さずに、「貴方(ホームズ)をずっと捜していた」とホームズを掻き抱いたままテムズ川の底へと消えて行った。怪物男と遭遇した翌日、ホームズの自宅にはウォルターと名乗る少年が訪れていた。子供嫌いのワトソンはウォルターの話を聞こうともしなかったが、ウォルターの手は切り裂きジャックと同じものだった。ウォルターの存在をきっかけに、ワトソンはロンドンに潜む常人には信じがたい闇の領域を知る。果たして二人は行方不明のホームズを探しだし、救うことが出来るのだろうか。ぜひ物語の結末を見届けてほしい。
シャーロック・ホームズの最大の宿敵モリアーティ教授の視点から見る世界を描いた歴史ミステリー漫画。大英帝国の全盛期である19世紀後半のロンドンでは、古くから根付く階級制度が厳然たる人間差別を生んでいた。最下層(アンダークラス)の出身である孤児のウィリアムは非凡な才能を持っていたことから、貴族のモリアーティ家に弟のルイスと共に養子として引き取られる。しかし、モリアーティ家の人間はウィリアムら兄弟を見下し、日々酷い仕打ちをしていた。
モリアーティ家の長男アルバートは貴族の差別的な理不尽さに辟易し、身分社会を憎むウィリアムら兄弟と組んで、モリアーティ家の人々と使用人を火事に見せかけて殺害。モリアーティ家の全ての財産を手に入れ、ウィリアムは自分と同じ名であったモリアーティ家の次男に成り代わる。それから13年後、天才数学者として活躍するウィリアムは表向きは相談役(コンサルタント)として市民の問題を解決しつつ、裏稼業では犯罪相談役(クライムコンサルタント)として密かに悪徳貴族たちを罰していた。後に運命的な出会いをするホームズが名探偵となったのも、ウィリアムがそうなるよう企てた陰謀によるものだったということが判明する。「名探偵を陰で操っていた張本人がモリアーティ教授だった」という斬新な着想で展開していく異色作品。
ゴーレム技師の律法師(ラビ)を目指す少女が、天才律法師との出会いによって人生の歯車を狂わされていく歴史ミステリー系バトルアクション漫画。舞台は19世紀末、「ゴーレム技術」によって第三次産業革命を迎えていた大英帝国ロンドン。人形などのボディに「スクリプト」をはめ込むことで「自動化する」ゴーレム技術は、工業、商業、交通機関から日常の家事にまで適用され、人々の生活を格段に豊かなものにした。
律法師を目指す17歳の少女アシュリー・オルコットは、王立律法院の在るロンドンに上京する途中でレイ・チャールズ・ギブスンと運命的な出会いをする。ギブスンはゴーレムの天才的技術を持っており、アシュリーと出会った際も自作のゴーレムを連れていた。「俺は命の刻み込まれた『刻命のゴーレム』を創る」と言い放つギブスンだったが、ゴーレム技術を利用して「完全生命体」を創ろうとする大貴族たちの陰謀に巻き込まれてしまう。そして、ギブスンの創りだした「刻命のゴーレム」ミーティアは人間たちを捕食し、その知能を吸収して進化していく怪物と化す。ミーティアの標的となった名探偵ホームズは生命体を創りだした罪で収監されたギブスンを救うため、アシュリーと共に「刻命のゴーレム」との全面戦争に挑む。
19世紀末のイギリスを舞台に、本来なら決して集うことのないホームズ、ワトソンとルパンが紡ぎだす日常を描いたギャグパロディ漫画。産業革命に沸く大英帝国ロンドンのベーカー街。その一角に在るアパートに世界に名を轟かす私立探偵シャーロック・ホームズが住んでいたのだが……。実はこの名探偵、ぬいぐるみが大好きだった。しかも、彼の親友にして助手のワトソンの趣味は何と筋トレだ。「筋肉を笑うものは筋肉に泣く!!」と言って、ワトソンは嫌がるホームズに日々トレーニングを強要するのだった。
ホームズが活躍していたのと同時期、フランスのパリでは稀代の大泥棒が世間の注目を一身に集めていた。その大泥棒の名はアルセーヌ・ルパン。変装の名人である彼は、大胆不敵にして神出鬼没。いくつもの名前を駆使し、大金持ちの貴族や資本家たちから宝石や美術品を盗む大怪盗である。名探偵と大怪盗という、立場上相容れないはずの二人なのだが、この作品のルパンは何と大のホームズ好きという設定だ。本来は決して協力し合うことのないホームズ、ワトソンとルパンの三人が力を合わせて難事件に挑む。原作者のモーリス・ルブランやアーサー・コナン・ドイルもぶっ飛び弾けるようなストーリー展開は、原作を愛するミステリーファンからは賛否両論あるが、ギャグパロディとしては逸品。読者をハッピーな気分にしてくれる作品である。
ホームズの姪クリスティが、伯父やワトソンと共に難事件を解決していく歴史ミステリー漫画。シャーロック・ホームズの姪という設定の本作の主人公は、は伯父のホームズ同様に頭脳派で、物理学、幾何学などの自然科学の知識に優れている。前作『クリスティ・ハイテンション』ではまだ10歳ほどの少女だったクリスティが、続編である本作では17歳のレディに成長している。公爵である父の名代として社交を広めながら、クリスティは新たな事件の謎解きに挑む。
クリスティは物理学や幾何学に関してはケンブリッジ大学やオックスフォード大学にも楽々入学できるほどの才媛であるが、その一方で、当時の高貴な女性に素養として求められていた社交ダンスやレディとしての作法、手芸などはからきしダメである。これは両親がインドに赴任していた頃、幼いなりに一人ぼっちの寂しさを紛らわすため、書斎にこもって本の知識ばかりを貪欲に吸収した結果である。そして何よりも、近くに住んでいた偉大な伯父ホームズに認められたいという願望からだった。伯父のホームズは好奇心旺盛で何事にも首を突っ込んでくる姪に手を焼きながらも、彼女の能力には一目置いている。この作品にはホームズの宿敵モリアーティも登場するが、クリスティを助ける場面もあり、ホームズもクリスティも宿敵である彼を心の底から悪人とは思っていない。