ハードSFの巨匠であるジェイムズ・P・ホーガンの代表作、『巨人たちの星』シリーズのコミカライズ作品。物語の舞台は、人類が安価で無尽蔵のエネルギーを得た2030年以降の未来世界。人類は各国が協調して宇宙軍を創設、宇宙開発を進めていた。そんな中、月面で宇宙服を着た身元不明の遺体が発見される。調査の結果、遺体は5万年前の人間という驚きの事実が判明する。「チャーリー」と名付けられたこの遺体を巡り、世界中が騒然となる。
本作の作画を行った星野之宣は、『ヤマトの火』に代表されるように壮大なスケールのSFを得意とする漫画家。その彼が、世界的に評価の高いJ・P・ホーガンの名作をコミカライズ。SFファンならば、期待せずにはいられない組み合わせだ。本作は、日本でもっとも歴史のあるSF賞の星雲賞を受賞している。物語の発端となるのは、月面で発見された謎の遺体だ。彼が着用していた宇宙服や装備は5万年前のものと判明するが、古代に未知の文明が存在したのか?それとも宇宙人が介在したのか?様々な疑問が浮かび上がる中、衝撃的な事実が明らかになる。遺体と同じ年代に、月面で核戦争があった痕跡が確認された。宇宙軍から調査依頼を受けた主人公のハント博士は、これらの謎の解明に挑んでいく。
レイ・ブラッドベリのSF短編集の中から、作画を担当した萩尾望都が、自らの好みでピックアップしたコミカライズ作品。レイ・ブラッドベリは数多くの短編SFを発表しているが、本作で取り上げられているのは「ウは宇宙船のウ」、そして「スは宇宙(スペース)のス」、「10月はたそがれの国」という3つの短編集の中の8作品だ。
萩尾望都は、少女漫画界の大御所作家。代表作の『11人いる!』を筆頭に、数多くのSF作品を発表している。また、少女漫画に本格的なSFを定着させた功労者のひとりだ。デビュー当時からSF作品に並々ならぬ意欲を抱いていた萩尾望都が、レイ・ブラッドベリの名作をコミカライズするのは、ある意味必然だったのかも知れない。独特の透明感を持つ萩尾望都の作風と、ブラッドベリの美しさの中に寂寥感が漂う物語はベストマッチだ。ちなみに本作にはSFばかりではなく、サスペンスホラーの『泣きさけぶ女の人』、切なさが滲むファンタジー『みずうみ』といった作品も収録されている。
SFというジャンルを確立した「SFの父」、ジュール・ヴェルヌの古典的名作『地底旅行』のコミカライズ作品。物語の始まりは19世紀のドイツ。鉱物学の教授であるオットー・リーデンブロックは、16世紀の著名な錬金術師が残した暗号文書を発見し、甥のアクセル・リーデンブロックと共にその文書を解読する。やがて二人は文書の真相を確かめるべく、地球の中心を目指す冒険に旅立つ。
SFの訳語は「空想科学」だが、ヴェルヌの作品は、そこに「冒険」を付け加えるのがピタリとはまる。つまり「空想科学冒険小説」だ。「SFの父」と称えられる彼の作品は、今や古典となり現代科学からは大きく外れた部分も散見される。しかし、彼の奇想天外な発想から生まれた空想科学冒険小説には、今なお少年の心を刺激する魅力がある。そんなヴェルヌの作品は、漫画との相性も大変よい。本作はヴェルヌの代表作のひとつで、何度も映画化されている名作だ。天才かつエキセントリック過ぎるオットー教授と常識人のアクセルは、謎の暗号文書に導かれた地底で、広大な地底の海や古代生物など、驚くべき出来事と次々に遭遇する。
エドワード・エルマー・スミスのスペースオペラ『レンズマン』のコミカライズ作品。銀河を守る戦士レンズマンとなった、主人公・キムの成長と活躍を描く。レンズマンとは、高度な知的生命体であるアリシア人の技術の結晶「レンズ」を身につけた特別な人間のこと。キムことキムボール・K・キニスンも、そのひとりだ。彼らは銀河の平和を守るべく、宇宙海賊ボスコーンの脅威に立ち向かっていく。
E・E・スミスが生みだした『レンズマン』シリーズは、スペースオペラと呼ばれるSFジャンルの先駆け的な存在で、その後の作品に大きな影響を与えた名作だ。原作小説は日本でも高い人気を博し、1984年には劇場版アニメ映画と、テレビアニメシリーズが制作されている。コミカライズ作品である本作も、アニメと同時期にメディアミックス展開のひとつとして企画されたものだ。キムの活躍を中心に、銀河文明と宇宙海賊ボスコーンの戦いを描くという基本線は原作通り。ただし、物語の冒頭を含め、細部の展開などは原作やテレビアニメシリーズとは異なったものとなっている。
銀河帝国の興亡を壮大なスケールで描いた、アイザック・アシモフのSF大作『ファウンデーション』シリーズのコミカライズ作品。物語の舞台となるのは、2千5百万もの居住可能惑星と、1千兆にも及ぶ銀河市民を束ね、1万2千年の長きに渡って繁栄してきた銀河帝国。物語はこの帝国の衰退と、新たな帝国の礎となる集団が立ち上がる様子をオムニバス形式で展開いる。
アイザック・アシモフは、有名な「ロボット三原則」の発案者であり、SF界に多大な影響を与えた大御所。本作の原作『ファウンデーション』は、「スターウォーズ」シリーズなど、銀河の架空の歴史を描くSF作品の原点ともいえる。数学者のハル・セリダンは、人類の行動パターンを数学的に解析し、未来を予測する「心理歴史学」の第一人者だ。銀河帝国の元宰相でもあった彼は、「心理歴史学」で帝国が滅亡の危機に瀕していることを予測。ところが、帝国の中枢は彼の予測を否定して弾圧に走る。彼は裁判にかけられ、彼に賛同する10万人の市民と共に、辺境の惑星に追放される。しかし、この集団こそが、後に荒廃した銀河の救い手となる。