創刊9周年を迎えた「月刊！スピリッツ」作品を紹介！
38 Pt.

『シュトヘル』など歴史を背景としたマニア受けする作品から、『恋は雨上がりのように』のような甘酸っぱい恋愛ものまで、数多くの人気作品を輩出した「月刊！スピリッツ」関連の作品をご紹介！

この作品で初めて「重版出来」の読み方を知った、という人は少なくないだろう。いつも目にしているさまざまな書籍だが、普通の人はそれがどのようなプロセスで作られて、店頭に並んでいるのかまで考えることはない。そんな出版業界の舞台裏を描いたのがこの作品だ。学生時代は出版に関してまったくの素人だった主人公・黒沢心の目を通して、一冊の本が世に出るまでを知ることができる。この作品を読むと、書店に並べられた本や、そこに添えられた手書きの広告などに、その本を売ろうと努力している人々の想いを感じられるようになる。

24歳で無職。どんな仕事にも続かず、彼女のところでヒモのような生活をしていた主人公・十川善十（そがわ　ぜんじゅう）。ついには彼女にも愛想をつかされ、落ち込んで夜の街をさまよう。そこで立ち寄ったバーのマスターにスカウトされたのだが、そのマスターは7日前に他界していた。マスターの娘と名乗る女性に、マスターの遺志を継いで欲しいと頼まれた十川は、廃業する予定だったバーを引き継いだのだった。オカルト漫画のようなイントロだが、そこはいくえみ作品。クラシックなバーを舞台に新しい同僚、あこがれの仕事相手、元カノなどが入り乱れて、大人の恋愛模様が描き出される。

物語は現代の日本から始まる。見知らぬ国の戦争という悪夢に悩まされる男子高校生・須藤は、「スズキさん」という少女を紹介されたことがきっかけで、処刑された女戦士・シュトヘルに転生する。転生した直後に彼女を助けた「スズキさん」によく似た少年は、モンゴル帝国から西夏文字を守ろうとしている少年、ユルールだった。世界史で習ったかもしれないが、ほとんど覚えていない「西夏」という国。モンゴル帝国との戦争。そして物語のキーとなる「西夏文字」。史実をベースに緻密に練り上げられた物語により、読者はあまりなじみのない異国の歴史にぐいぐいと引き込まれる。過去のストーリー部分を読んでいると、歴史物語を読んでいるような気にさせられるが、現代のシーンでSF作品であることに引き戻される、そんな体験ができる作品だ。

17歳の女子高生、それもクールな美少女が恋をした相手は、45歳でバツイチのうだつのあがらないおっさん。現実ではまずあり得ない設定だが、それをロマンスいっぱいのラブストーリーに仕立てている。舞台は街のファミレス。人生に少々疲れながらも夢を捨てきれない店長は、すべての事にちょっと臆病に。そこで出会ったのは足の故障で陸上競技を断念した、傷心の少女。普通にありそうな設定が、ありえない物語を紡いでいくのがこの作品の魔法だ。脇を固める若いアルバイトやお局タイプの古参のおばさんなども、個性的ながら現実にいそうな面々だ。若い人は一筋縄ではいかない”女心”を学びながら、ちょっと年配の男性は遠い昔に感じた甘酸っぱい思いを感じながら、この魔法の世界にどっぷりと浸って欲しい。

春風高校に転校してきたR・田中一郎は、当初の世界征服という目標をすっかり忘れて、光画部（写真部）に入部する。この光画部は写真を撮るという本来の活動はほとんどせず、興味本位であちこちに出没しては学校全体をかき回す迷惑集団だった。いつも学生服を着用し、一見普通の高校生に見えるR・田中一郎だが、簡単に首が外れたり、内蔵コンセントでご飯を炊いたりして人を驚かせる。普段はぼーっと過ごしているが、時々アンドロイドとしてのパワーを発揮し、騒動をより大きくしていく。ゆうきまさみの代表作ともいえる人気ギャグ漫画で、OVAなどもリリースされた。「週刊少年サンデー」での連載が終了してから30年以上経った今も、熱烈なファンが多い作品だ。