中学生の主人公が、母親の実家で山の中に住む不思議な能力を持つ少女を引き取ることになり、様々な騒動に巻き込まれていく現代ファンタジーコメディ。弥栄京太は8年ぶりに母親の実家である信州に帰省した。酒を飲んでいる大人たちに飽きれ、近寄るなと言われていた子毬山を散策していた京太は、巫女装束のようなものを着た少女、蝶子と出会う。京太に懐いた蝶子は探し物をしていると言う。幼い見た目に反し険しい山道をものともしない蝶子に、京太は驚愕するのだった。
蝶子は巫女装束のような服装をした小さな女の子だ。だいたい幼稚園児くらいの年だろうか。京太との出会いは山の中なのだが、移動に使用する道がかなりアグレッシブである。藪を潜り抜け、崖を上り、時に蛇をわしづかみにする。完全に野生児だ。蝶子が周辺住民から天狗が住むと言って恐れられている子毬山に隠れる用に住んでいるのは、その能力故だ。自らの精神を獣の形で召喚することができる力。精神獣使いと呼ばれる特殊な能力を持っているからこそ、山の中でひっそりと暮らしていたのだ。蝶子は自らが生み出した「ガァ」と共に、弥栄家で暮らすことになる。山暮らしが長く常識に疎い蝶子に、京太は振り回される。トラブルメーカーだが、元気いっぱいで可愛らしい蝶子の笑顔に癒された。
姉を探して旅をする主人公が、願いを叶える伝説の樹に関わる人々に出会い、様々な組織の思惑に巻き込まれていくハイファンタジー。ライセはその実を摘めば願いが叶うという伝説の樹「カルパ=タルー」で出来た変幻自在の杖を持ち、行方不明になった姉を探す旅をしている。手掛かりは杖と刺青の入った男。旅の中で出会った少女、クレハや双子のユタとセタ、カルパ=タルーの種を探すタヅマと仲間が増えていく。ある日、タヅマが地図を見ながら進んでいた道が間違っていることに気が付くのだった。
その実を摘めば願いが叶う聖なる樹木「カルパ=タルー」。人々の望みをかなえてきた樹は枯れてしまい、伝説は文字通り伝説となった。しかし、当時は「探せば見つかる伝説」だったものが、枯れたという噂だけで「実際には見つからない伝説」になってしまうわけではない。誰かが証明しない限りそこにカルパ=タルーは存在するのである。本作はそんな伝説の樹を巡る異世界ファンタジー作品だ。前作『パンゲア』と世界戦が地続きの物語となっているため、より世界を知るためには前作から読むことを推奨したい。多くの作品で願いをかなえてくれる装置が登場するが、求める人々が争うところは変わらない。ライセの姉は何故姿を消したのか。樹は何故枯れてしまったのか。旅の中で多くの謎が交差する。
すすめられるまま京都市内の高校を受験することになった主人公が、あらゆるものを喰らう化け物を退治する少女のパートナーとなり、反発しながらも協力し戦っていく現代バトルファンタジー。神足鉄汰はゲームが大好きな中学生。母親にすすめられるまま、不本意ながら京都市内の高校を受験することになってしまう。京都市内にやってきた鉄汰は、受験が始まる前にと、取り損ねたレアアイテムを獲得するためゲームを再開。その傍らで、人知れず何かが動き出しているのだった。
京都は千年の都である。古いものと新しいものが混在しているからだろうか。京都には怪異が良く似合う。本作は作者の出身地でもある京都を舞台にした物語だ。京都を喰い荒らす化け物を退治する力を持った「戦女(いくさめ)」とパートナーが、協力しながら京都の町を守っていく。鉄汰は戦女のパートナーとして協力していくことになるのだが、その相手となるのが椹木千鳥。小学5年生の少女である。浅野りん作品には年下の女の子に振り回される年上男子という主人公コンビが登場するのだが、本作も得意とする年の差コンビである。千鳥は気の強い少女であるため、他の作品とはまた違った関係を楽しむことができるだろう。現実と非現実が交差する京都、年の差コンビのやり取りと絆に注目だ。
父の入院で10年ぶりに実家の和菓子屋を継ぐために戻ってきた主人公と、居候している訳あり少女が、周囲の人々と関わる中で絆を深めていく京都日常ホームコメディ。和菓子店「緑松」の跡取り息子ながら、大学卒業とともに家を飛び出して東京でバンドマンをしていた納野和(いりのなごむ)。バンド解散と父の入院の知らせが重なり、実家を継ぐと決意し10年ぶりに京都に帰省する。そこには1年前から居候しているという小学生雪平一果がいたのだった。2021年4月テレビアニメ化。
家を飛び出すというと、大概は父親と反りが合わないため反発しているという関係が多いが、本作は少し違う。和はその名の通りなごみ系。言動はどこかボケを意識してかゆるめで、本気を感じさせない。それ故に周囲をイラつかせてしまうことはあるが、その性格故か物事を柔軟に受け止めて対処できることができる。実家に久しぶりに帰省したら、知らない女の子が居候しており、跡取りに名乗りを上げていると聞いても受け止めてしまっているのだから、実は大物なのかもしれない。少なくともこのゆるさは、一果にとっては心を和らげる要素の一つになるだろう。一果は複雑な事情を抱える少女で、それ故に真面目で頑ななところがある。和のゆるい言動が、お菓子のように良い塩梅になりそうだ。
飲み屋で出会った老人に長屋の管理人を任されてしまった父親の代わりに偏屈者ばかりが住む長屋にやってきた主人公が、不思議な少女と出会い、仕事を手伝いながら長屋に住むことになってしまう、レトロファンタジー。御守諒平は母を亡くしお人好しの父親と2人暮らし。ある日酒に酔った父親が、偶然出会った老人から長屋の管理人を任されたため、引っ越しをすると告げられてしまう。断ろうと件の長屋を訪れた諒平だったが、何者かに衝突され、意識を失ってしまうのだった。
舞台は大正時代を彷彿とさせるような、少し前の日本のような場所。今では集合住宅と言えばアパートやマンションだが、一昔前までは個別に玄関がある戸建てながらも壁を共有しているという長屋スタイルが一般的だった。諒平の父親は老人からとある長屋の管理人をお願いされてしまうのだが、その長屋は市井の人々が口々に噂するような場所。偏屈な者しか住むことができないという噂で、どんな人間が住んでいるのかわからないのだという。噂には尾ひれ背びれが付くものだが、住む者を選ぶ建物というと興味が注がれる。実際に住んでいる人間が本当に偏屈で変わり者だったかは、その目で確かめてほしい。諒平は「天外長屋」であんじゅという少女と出会う。かわいい2人のやりとりにも注目だ。