『俺たちのフィールド』などで知られる村枝賢一が描く、クリスマス&サンタクロースを題材にした短編集。本作では戦場の子どもたちにプレゼントを届けようとする少女と彼女を護る軍人たちや、近未来の荒廃した「闘京」でサンタとなる血の繋がらない兄妹などの4作品を収録している。聖なる夜にときに切なく、ときに心温まるストーリー群。
本作はクリスマスに特別な思い入れがあると語る村枝賢一が、ハートフルなストーリーを描いた短編集。それぞれ物語の舞台は異なるが、どの作品にも少女、あるいは女性のサンタが登場する。彼女たちはそれぞれ辛い過去を持っており、それゆえに子どもたちに希望を与えようとしたり、やり残したことに向かいあったりと、形は違えどそれぞれが夢を配る「サンタクロース」として邁進している。第一話『ジングルベルアーミー』では、13歳の親善大使アデリナ・クラスニーチェが登場。彼女は軍人たちとともに難民キャンプの子供たちにプレゼントを配るため、銃を向けてくるゲリラに向かってクリスマスソングで応戦する。
『聖☆おにいさん』などで知られる中村光が描く、サスペンスコメディサンタ物語。受験や就職活動に失敗し、コンビニバイトで日々の生活費を稼ぐ日野三春。彼はあるクリスマスの夜、黒いサンタ服を着た謎の存在に誘拐されてしまう。気が付くと三春は「黒いサンタクロース」たちが働く会社に就職することになってしまっていた。
主人公の三春は、紆余曲折を経て黒い服のサンタクロースたちの会社に就職することになる。この黒い服のサンタたちは、悪い子にがっかりするような贈り物をする役目を担っている。三春は真面目で責任感の強い青年だが、バイト先のコンビニで店長から不条理に怒られた腹いせに、廃棄品のケーキを万引きしてしまう。その罪のために、三春は黒いサンタによって罪を背負った者だけが就職できる彼らの会社に招かれるのだった。序盤はブラック・コメディ作品として進む本作だが、物語が進むにつれ三春の父の謎や同僚たちの抱える闇など、ハードかつダークな物語が展開されていく。
実在の職業「公認サンタクロース」を巡る女性の、ハートフルストーリー。生来の顔つきと人付き合いの下手さが災いして、勤めていた派遣社員の仕事を切られてしまった柊すずこ。そんな彼女は親類から誘われ、仕事を手伝うために海辺の田舎町へと向かうことに。その町で彼女が出会ったのは「公認サンタクロース」を名乗る高田さん。彼の仕事を見て、すずこはサンタクロースになりたいと思い始めるのだった。
本作に登場する「公認サンタクロース」は実在する資格である。グリーンランド国際サンタクロース協会が出す厳しい課題に合格した者だけが、本物のサンタクロースとして活動することができる。主人公のすずこは目つきが鋭く、考え過ぎてしまうために人とのコミュニケーションが苦手な女性。そんな彼女は幼い頃に出会ったサンタクロースを心の支えにしていた。仕事をクビとなったことをきっかけに親類の店で働くことになったすずこは、公認サンタの高田と出会う。高田に付き合って病院に子どもたちの慰問に訪れたすずこは、子どもたちの「絶対的な味方」であるサンタクロースに感動。自分も高田のように、公認サンタになることを決意する。
サンタクロース養成学校で少年少女たちが繰り広げる学園ロマンス。主人公の愛里は、子どもの頃からサンタクロースに憧れていた少女。そんな彼女は中学卒業と同時にフィンランドのサンタクロース養成学校「フィンランディア」に留学し、そこでサンタのお手伝いをする妖精「トントゥ」を目指すことになる。同じ学校に通うサンタ候補生、カインのトントゥになりたいと願う愛里だったが、失敗ばかりの毎日を過ごしてしまう。
本作はフィンランドを舞台に描かれる、サンタクロース候補生たちが通う学園の物語だ。主人公の愛里は幼い頃からサンタに憧れ、フィンランドのサンタ養成学校の留学を決意する。彼女が目指すのはサンタクロースの相棒と言える存在である、妖精の「トントゥ」。フィンランドの厳しい寒さや高度な授業、さらに観光業では必須の英語に悩まされながらも、ホームステイ先のサンタ候補生、カインのトントゥを目指す愛里。しかし肝心のカインはそっけないクール男子で、なかなか心を開いてくれない。それでも愛里は持ち前の明るさと前向きさで、一人前のトントゥを目指していくのだった。