中年サラリーマン・拝啓(おがみあきら)が社会の理不尽と戦い、また時に折り合いをつけていく社会人賛歌的作品。新入社員・立花侘助(たちばなわびすけ)が丸福堂商事株式会社・第3営業部に配属されるところから物語は始まる。慣れない接待で、酔いつぶれてしまった立花は、不良らに暴行され、貴重品を持ち去られてしまう。そこに現れ、不良らを蹴散らして彼を救ったのが、立花の指導係である拝であった。
頼りない印象の立花に、どこか浮世離れした雰囲気を持つ先輩の拝。上司の粉吹(こなふき)や四方山(よもやま)課長は典型的なやる気のないサラリーマンといったキャラで、拝を煙たがっている。立花もやる気の感じられない拝に業を煮やして諫めるも、拝は「正論は、溺れる者がすがる藁。できる限り自分で泳ぎなさい!」と諭し返す。社会人として何かしらズレている拝であるが、一本芯が通っているキャラクターだ。つかみどころがないが、何か大きなことをやってくれる雰囲気がある。彼のもとで立花は徐々に社会人としての矜持ある振る舞いや心構えを身につけていく。拝の破天荒さと、立花のひたむきさの対比が見事で、この凸凹コンビならば社会をアッと言わせてくれるのではないかと思わせてくれる。
動物たちが社員という企業の日常を描いたギャグ漫画。アフリカの大手企業に勤めるライオン、オオハシ、トカゲのサラリーマン3人ならぬ3匹らが巻き起こす、日本社会さながらの日常が、ときに「動物あるある」的な要素を交え描かれる。キャッチコピーは「誇り高き、社畜たちの生きざま。」である。動物の社会人だけあって「社畜」の意味もダブルミーニングであるのだろう。疲れたサラリーマン必読の作品だ。2019年10月にテレビアニメ化。
登場人物もとい動物らのサラリーマンとしての日々をコメディタッチで描いた本作。登場する動物らが仕事に奔走する様子が、可愛らしくもシュールで可笑しい。彼らは大変なのだろうが、その様子がまた笑いを誘い、そして共感を呼ぶ。動物が主人公のギャグ漫画でありながら、サラリーマンの哀愁がほんのり漂っている。また子供が今度生まれるというトカゲに「崖から落としとけばいいんだよ」と子育て指南をするライオンや、夕食に虫を食べているトカゲ、ライオンの威を借るオオハシなど、「動物あるある」的要素もギャグになっており、社会人と動物、二本柱のあるあるギャグ作品といえるだろう。疲れた社会人にとって清涼剤となる漫画だ、動物が好きならなおさらだろう。
加藤和恵の人気漫画『青の祓魔師(エクソシスト)』の登場人物である奥村雪男を主人公にしたスピンオフ作品。本編のシリアスな雰囲気とは違ったコメディタッチで、雪男の哀愁あふれる日常を描いている。本編屈指の苦悩を抱えるキャラである雪男。そんな苦悩する彼のキャラクターを逆手にとって、本編とはまた違った雰囲気の日常ギャグ漫画として前向きに描写し、うまく笑いに昇華している。単に彼のキャラクター性をいじるだけではない、愛のあるスピンオフ作品といえる。
本編の個性的な面々の登場人物のなかにおいて、真面目なだけに苦労人といえる雪男。そんな雪男を「サラリーマン祓魔師」と形容したタイトルで、コメディタッチで描いた本作。本編の重厚な雰囲気とのギャップで、本作の軽妙なギャグに初めは戸惑うかもしれない。だが苦悩の人物である雪男にスポットをあてた本作は、本編の裏側ではこうあってほしいという、ある意味読者の願いを作品化したものととらえることができ、いくぶんかの救いも得られるのではないだろうか。そういう意味では、作風は全く違っていながら、スピンオフとしては大成功といえる作品だ。本編のファンならなおさらであるが、初めて本作に触れる読者も楽しく読むことができるだろう。
主人公・サラリーマンの山崎(やまさき)シゲルが、部長を相手に行う常軌を逸した悪ふざけを一コマ漫画で表現したシュール系サラリーマンギャグ。一見普通のサラリーマンである山崎シゲルが、部長に対して缶コーヒーのようにサバ缶を差し入れる、頭にマーガリンを塗る、腕を箸置きに使うなど無茶苦茶なふるまいを行う本作。そんな山崎シゲルと部長の日常がほぼ毎回一コマ漫画として描かれる。お笑い芸人でもある作者によるシュールを突き詰めた大人気ギャグ漫画だ。
お笑い芸人としても活躍する作者がネットで発信し続けて話題となった本作。SNSを中心に発表し続けたシュールな一コマ漫画はインパクト抜群だった。その一コマのインパクトがSNS文化によくなじみ、たちまち拡散されてヒット作となった。山崎シゲルの自由奔放な日常を描いており、その行動によって毎回ひどい目にあっている部長のやんわりとしたツッコミとの対比が味があって可笑しい。破天荒な行動をとる山崎シゲルに対し、寛容な態度の部長はある意味、理想の上司かもしれない。読み進めていくとだんだん二人は仲良しなんじゃないかと思えてきて、微笑ましくも思えてしまう。ブラック企業や過労などが社会問題となって久しい昨今。そんなものはどこ吹く風という二人の日常が受け入れられているのも納得だ。
異世界に転生したサラリーマンが、その経験を生かして魔王配下の四天王として活躍する異世界転生ビジネスコメディ。海外に左遷されたサラリーマン・内村伝之助(ウチムラ)は、ある日バイク事故にあった。そうして転生した先は、異世界の魔王のもとであった。魔王のもとでサラリーマンとしての実績が評価され、四天王としての役職を与えられたウチムラ。他の一癖二癖ある四天王たちとともに、魔王軍の改革を進めるべく奮闘する日々を描いた作品だ。
異世界プラスコメディ、のみならずライフハックまで盛り込んだ、ユニークな異世界転生ものである本作。ウチムラは人心掌握や魔法の改良、兵器の開発、農地の開墾などにおいてサラリーマン時代に培った能力を生かし、魔王軍に貢献していく。その手法には実際に使える仕事の技術も満載だ。また上司や同僚である登場人物も個性的で面白い。まず、ウチムラの実績を正しく評価し、適切な指示を与えてくれて、必要ならば自らも手を貸すという理想の上司のような魔王。同僚の四天王でヒロインでもある美女の魔人・ウルマンダーは次々実績をあげるウチムラに徐々に惹かれていく。恋愛方面には無頓着なウチムラとのやり取りは、ラブコメ的で微笑ましく読むことができる。多方面に至れり尽くせりの作品だ。