人類が住むようになった火星を舞台に、謎の凄腕ガンマンが活躍する西部劇風SF漫画。1983年、地球人が初めて火星にやって来た。地球人は火星人たちを殺し、生き残った者を奴隷として迫害する。それから200年以上が経ち、農場の息子の星野マモルは、親戚の水野ケンを迎えに行く途中、火星人に襲われる。マモルを救ったのは、キャプテンケンと名乗る凄腕のガンマンだった。
キャプテンケンは、地球人に虐げられている火星人の救世主だ。ロボット馬のアロー号にまたがり、火星人の味方として活躍する。本作の見どころは、巧妙に作り込まれた世界観だ。ストーリー漫画の生みの親である手塚治虫は、人類が火星に移住するという、当時ではまだ実現していない世界を火星の詳細な情報と自身の想像を織り交ぜて描いている。そのため、フィクションでありながら、どこか現実味も感じられる物語に仕上がっている。もう一つの見どころは、キャプテンケンの正体だ。キャプテンケンが何者なのかを当てる懸賞が行われ、多くの回答が寄せられたが、当てることができたのはわずか数人だったという。本作を読んで、キャプテンケンの正体を推理してみよう。
巫女たちの日常を描いたふんわりSFスローライフ漫画。舞台は、遠い未来の火星(ひぼし)と呼ばれる星に存在する国東(くにあずま)という地だ。主人公のヒメは国東に住む巫女で、過去の記憶を持っていない。しかし、宇佐野神社で九十九神に仕えながら、友人で巫女見習いのアキや豪商の娘である鶴屋伊美と穏やかな日々を送っていた。ヒメは友人たちと友情を育み、自然の偉大さを感じながら、自身の暮らす国東の地に思いを馳せる。
火星には、先祖の星「天津星」すなわち「地球」の世界遺産が再現された108のドームがある。火星に住む人々にとって、人類が地球に住んでいた頃は神話の出来事だ。人々の世界はドームであり、それが当たり前になっている。国東もドームの一つで、大正時代の日本の文化を持った土地。主人公のヒメは、巫女として国東を守護している。ヒメと友人たちとののんびりとした描写が目立つ一方で、その裏には重厚なSF要素が潜んでいる本作。実は、物語の3年前、隕石が落下するという「龍の穴事変」が起こった。その際にドームが破損してしまって以降、国東はゆっくりと滅びへの道を進んでいる。癒やしとSFの見事なコラボレーションを楽しんでほしい。
火星コロニーで暮らす少女の成長と日常を描いたSFストーリー漫画。人類は、地球の人口増加、そして「ノッカーズ」と呼ばれる異能力者の凶悪犯罪を受けて、火星への移住を決めた。火星コロニーが完成して10年。少女ココロ・ドナーは、火星コロニーで、養父母と共に平和な生活を享受していた。ある日、彼女はコロという犬と出会う。コロはただの犬ではなく、異能力を持つノッカーズ犬だった。コロとの出会いが、ココロを火星コロニーの問題に巻き込んでいく。
ココロは、テロによって家族を亡くした孤児だ。彼女を養子として引き取ったのは、火星開拓の第一人者であるアレス・ドナーと、心優しきその妻マサコ・ドナーで、彼らの愛情に包まれて幸せに暮らしていた。本作は、ココロと養父母、そしてノッカーズ犬のコロとの絆を描いた心温まる物語だが、それだけではない。火星開拓の過酷さや問題についても触れられている重厚なSF作品でもある。火星開拓における労働力の8割が、地球から送られた労役囚でノッカーズ犯罪者たちだ。かつて、彼らが引き起こす凶悪犯罪から逃げるために造られた火星コロニーは、そのノッカーズ犯罪者によって建設されていた。しかし、コロニーで幸せに暮らす人々はこの事実を知らない。幸せの裏には多くの問題が隠されているのだと実感させられる作品だ。
火星人の少女が、火星と火星人の運命を救うため立ち上がるSFファンタジー。時は2276年。地球のドーム都市「ニュー・トーキョー・シティ」で暮らす少女・星(セイ)の正体は火星人だ。幼少期から火星人であることを隠し地球人として生きてきたが、いつかは故郷である火星に帰りたいと願っていた。そんな彼女の前に、エルグと名乗る異星人の青年が現れる。エルグの誘いで火星へ帰ることになったセイの運命は、大きく動きだす。
セイの故郷の火星は、複雑な歴史に満ちあふれた星。21世紀、人類は他星への進出を始め、火星にも移民用の基地が作られた。しかし、火星では胎児が生きられないということが判明する。そのため、移民計画は中止され犯罪者の流刑地に。その後、惑星間の戦争などの事情により犯罪者が火星に送られることがなくなったため、火星には人間がいなくなったと思われていた。しかし実際は、犯罪者たちの子孫らが繁殖する術を見出し、火星人として生きていた。彼らは、白い髪と赤い目という外見的特徴と超能力を有しており、それを理由に地球人から迫害を受ける。自分と異なる者に対する偏見について考えさせられる、メッセージ性の強い作品だ。
人類が、火星で人型に進化したゴキブリと戦うSFアクション漫画。人類が火星に住むために「テラフォーミング計画」が立案される。その内容は、平均気温がマイナス58度の火星を暖めるため、コケとゴキブリを撒いて地表を黒く染め上げ、太陽光を吸収するいうもの。2599年、計画の総仕上げとなるゴキブリ駆除のために、15人の若者が火星へと向かう。そこで彼らは、人型に進化を遂げたゴキブリたちと遭遇する。どちらが相手を駆除するかの戦いが始まった。2014年にアニメ化。2016年に実写映画化された。
本作では、火星に人類が住めるようにするためのテラフォーミング計画が、異常進化したゴキブリ「テラフォーマー」を生み出してしまう。それに対抗するため、ゴキブリを駆除しようと訳ありの若者たちに「バグズ手術」を行い、昆虫人間に改造する。彼らは、異能力を使ってテラフォーマーと戦うが、テラフォーマーは凄まじい数で若者たちを圧倒。彼らは次々と殺されてしまう。本作の見どころは、火星で繰り広げられる人間とテラフォーマーとの壮絶なバトルはもちろんのこと、魅力的なキャラクターたちが織り成す人間ドラマにある。仲間との絆や裏切り、計画の裏に見え隠れする各国の思惑など、戦闘シーン以外にも目が離せない要素が盛りだくさんだ。