伝説の戦士と戦う良識ある悪の組織を中心に、伝説の戦士ともうひとつの悪の組織を交えた三つ巴の戦いを描く、バトルエロティックコメディ。『ゆけっ!! 悪の組織ダークドリーム!!』の正式な続編作品。主役は、セントガーデンという国を守る伝説の戦士パリキュアと戦う悪の組織「ダークドリーム」。彼らはまだ中学生であるパリキュアに大きな怪我をさせないよう、安全に倒すための方法を模索してきた。しかし、もうひとつの悪の組織「ナイトメアナイツ」の登場で、戦闘はより激しさを増していくのであった。
悪の組織は、女子どもであっても優しくしないものだという認識をもつ人もいるだろう。しかし、ダークドリームは違う。敵であるパリキュアが女子中学生であることに配慮し、なるべく安全に倒せるように創意工夫を凝らしてきた。だが、圧倒的な力量差が無ければ配慮した側が不利になるのは当然で、だからこそダークドリームの面々は自分たちの目的を果たせずにいた。社内会議の様子を見ていると、悪の組織らしい殺伐とした雰囲気はない。和気あいあいとしている。物語冒頭で第三のパリキュアであるパリライトニングに、構成員の1人がやらかしてしまったのではという疑惑について語られているのだが、そもそも敵の少女の貞操を心配する悪の組織とはこれ如何に。頭を抱え、涙目で疑惑を全力否定する姿を見ると、悪の組織の構成員であるはずなのに、「良い人」なのだろうなと思えてしまう。作中には別の悪の組織も登場するが、両組織の凶悪度の差に驚かされるだろう。良心的な悪の組織が目的を果たせるのか、戦いを見守りたい。
社会常識が壊滅的に欠けている元悪の組織の少年幹部と、同居人の女子高生が通う高校を舞台にした、日常青春コメディ。高校生の渡恭子(わたりきょうこ)が目覚めると、見知らぬ少年に両手足を鎖で繋がれ改造されそうになっていた。親戚のエーコに危ういところを助けられたが、少年はエーコの弟・ジローだという。阿久野(あくの)姉弟の実家である悪の組織が壊滅したため、しばらく同居することになった恭子。ジローはやたらと恭子に身体の改造をすすめてくるため、心が休まらない。そんな時、高校では女子の貴重品を狙った盗難事件が発生していた。
阿久野ジローは福岡県筑後を拠点としていた悪の組織「キルゼムオール」の、元構成員である。首領である父を手伝っていたのだが、正義の味方により組織を壊滅させられ、恭子の家に住むことになった。組織内では天才科学者として知られていたためか、恭子を改造する機会を虎視眈々と狙っている。本人の意思はまるで無視しているところは、悪の組織の人間らしいと言える。何でも改造したがるその姿は、いかにもマッドサイエンティストらしい。恭子にとってジローは間違いなく悪なのだが、キルゼムオールが完全なる悪の組織だったのかと言えば、そうでもないらしい。地域住民と交流したり、廃品回収を手伝ったりと評判は悪くなかった。人にやさしくすることをモットーとする悪の組織というのは、やはり風変わりである。しかもジローはまっすぐな少年だ。その言動に組織の一員としての信念が感じられ、心が温かくもなる。
実は悪の怪人という高校生と、怪人と戦う正義のヒロインという女子高生との日常と戦いを描くエロティックラブコメディ。天河十市(てんかわといち)は普通の高校生だが、実は世界を侵略している悪の組織の構成員、怪人(ファントム)ヴォルケンである。人間社会に溶け込みながら悪事を働いていたが、突然現れた正義の味方、断罪天使マイティハートに、撃退されてしまった。彼女の正体は、十市のクラスにやってきた転入生、舞島心(まいしまこころ)。図らずも心に惹かれていく十市は、自身の恋心と怪人としての立場に翻弄されていく。
天河十市は悪の組織の構成員、怪人ヴォルケンである。普段は容姿も能力も平凡、ちょっと冴えない高校生なのだが、怪人になるとメカっぽい姿に変化する。普通の高校生として日常を送っているのだが、心中では愚かで低俗な人間を嘲笑っている、悪らしい存在である。そんな彼が恋をした。相手は転入生の舞島心。美人でスタイル抜群なのだが、物事をはっきり口にするタイプで、十市は彼女に最初から冷たくされるという、少々かわいそうなポジションだ。実はこの心、マイティハートとなって悪と戦う正義のヒロインなのだ。変身というよりも仮装に近く、一目見ただけで正体がばれてしまうのはコメディであるせいか。敵との戦いの中、こっそりと手を貸したヴォルケンに心は好意を抱くのだが、同一人物とは知らないので関係が複雑になっている。実は怪人の時のほうが良い思いをしているのではと思うのだが、恋というのは概ね前途多難なものだ。読者は恋する怪人とヒロインの迷走ににやりとするだろう。
悪の組織のトップであるボスと、5匹の猫が織りなす日常ショートコメディ。作者が自身のSNSに投稿していたものを書籍化した。どこかの国にある悪の組織では、日々銃弾と札束が飛び交う、殺伐とした空気が流れていた。ボスは無口で常に眼に影がさしている男だが、実は無類の猫好き。組織内部で5匹の猫を飼っており、日々葉巻をくゆらせながら猫を膝に乗せ愛でているのであった。ボスと猫たちの日常を描いているが、ボスには笑い声以外のセリフはない。悪の組織が舞台ではあるが、猫あるあるネタが描かれた猫漫画でもある。
動物を好きな人に悪い人はいないと思われがちだが、悪い人はいるのだ。本作の悪の組織がどういった存在なのかは明確になっていない。高級そうなスーツに革靴、葉巻をくゆらせる姿は洋画に登場するマフィアのようだ。悪の組織のボスは猫を膝に乗せていることが多い、という気付きから誕生した作品なので、当然ボスは悪人だ。作中には銃も登場するし、札束も飛び交っている。確実に悪いことをしているのだが、猫たちはボスが何をしているのかにも関心はなく、自由気ままに生活している。人間と猫の間にある、この空気感が絶妙だ。猫を飼っている人間は猫の下僕とはよく言うが、ボスも例外ではない。ご飯の用意の催促、キャットタワーの作製も笑いながらこなし、小切手に猫がじゃれて棚の下に入れられても怒ることはない。一方、部下の不始末に対しては容赦がないので、部下としては猫たちが羨ましい限りだろう。そんな猫たちに激甘なボスと愛猫の一匹が出会った時のエピソードは格別だろう。傷ついた一人と一匹の固く結ばれた絆に心をつかまれる。
ヒーローが数多く活躍する架空の現代社会を舞台に、正義を保つために活動する悪の組織の活躍を描いたアクションコメディ。ヒーローが世界の平和のために戦う姿が当たり前に見られる世界。サウス東京市はかつて犯罪都市として知られていたが、ヒーローの活躍により平和が訪れていた。そんなサウス東京市には、まだ悪の組織がある。その組織、「ブラックレイブン」は日々悪事を働くが、そのたびにヒーローに撃退されている。その実態は、正義を守るために悪人役として活動する、社会のやられ役だった。
時代劇が好まれる理由は、勧善懲悪という物語スタイルにある。現実ではうやむやになってしまうあれこれが、物語の中ではきっちりと裁かれるのでスカッとするのだろう。正義が悪を断罪する物語は、総じて悪人がコテンパンに負かされることで楽しめる物語なのだと言える。本作には東京善力ヒーロー財団という組織があり、登録したヒーローが平和のために戦っている。一方、ブラックレイブンは悪の組織なのだが、本当に悪いわけではない。財団と秘密裏に契約を交わして活動している悪役なのだ。悪事を働くにしても本当に人を襲うわけではないし、建物も破壊しない。日々悪役らしい演技訓練をする他は、副業で保育士の仕事などをしている。悪役に扮しているブラックレイブンとヒーローとでは、ヒーローのほうが損害を出しているのではと、読者は複雑な気持ちになるかもしれない。市民からは感謝されず、やられ役に徹している彼らは、街を守る縁の下の力持ちと言えるだろう。自分たちの悪役スタイルを貫く信念と努力する姿は、少々カッコ悪くとも輝いている。