46億年もの長い時間、禁忌に触れないでいた最初の人類アダムとイブは、果実を口にしたことで楽園の外である現代に追放されてしまう。人間界に降り立ったアダムは何もわからないまま天使長ミカエルの協力を得ながらイブを探してさまようピュアラブコメディ。アダムとイブは神によって創られた最初の人類。言いつけを守り、頑なに禁断の果実を口にしてこなかった。46億年経過したある日、暇を持て余したアダムが禁断の果実を食べることを提案する。最初は渋っていたイブだったが匂いにつられて果実を口にした結果、楽園から姿が消えてしまうのだった。
旧約聖書にある創世記では、アダムとイブが禁断の果実を口にしたことにより、神の領域である楽園を追放記されたとされている。禁断の果実を我慢できたのは、1週間くらいかもしれないし、数十年だったのかもしれない。果実を口にし、羞恥を覚えた結果、人は子孫を残すことを知るわけだが、本作でもコミカルにその過程が描かれている。幼馴染カップルが互いを異性として意識するが、突然の別れを余儀なくされる。そんなイメージだが、問題は人間界に降り立ったアダムに現代知識が皆無であることと、イブが記憶喪失になってしまっている点だろう。初恋は成就しないという説は、もしや神話の頃からなのか。アダムの恋の行方が気になる。
新人アニメーターの主人公が、美人の制作進行の女性と出会い、アニメーターとして自身の仕事に向き合い奮闘していくお仕事ラブコメディ。沖口ひろゆきは幼いころから絵が得意。漫画家を目指していたが、動きのあるアニメに引かれて転身。アニメーターとしてある作品に関わっていた。原画を担当しているひろゆきだが、カゼで寝こんだため進行が遅れてしまう。締め切りに追われるひろゆきの元に、制作進行を務める西嶋の代理として、巨乳美女の篠塚・E・スミレが現れるのだった。
日本を代表する文化のひとつがアニメーションである。視聴者を魅了する作品のひとつひとつは、制作するスタッフにより生み出されている。ひろゆきはアニメ制作の中でも、原画を担当している新人アニメーター。動きのあるアニメの世界に惹かれてアニメーターになった。とはいえ、アニメ業界の労働環境は過酷。安い給料、迫る締め切り。作中にはアニメの制作工程がわかりやすく描かれているが、アニメーターが描く原画の枚数に驚かされるだろう。制作の裏側を知ってしまえば、シーンひとつも見逃せないという気持ちになる。そんな彼が美人制作進行の篠塚と出会い、恋にも邁進していく。仕事と恋に、同量の熱量を持ってぶつかっていくひろゆきを、純粋に応援したくなる。
喋ることが苦手で言いたいことを五七五の川柳形式で意思表示する主人公が、友人や文芸部の仲間、片想いの相手と共に学園生活を送っていく、川柳学園ラブコメディ。雪白七々子は喋ることが苦手な高校1年生。言いたいことは全て「五七五」で短冊に書き表現していた。文芸部に所属している七々子は、同じく文芸部に所属する同級生、毒島エイジを部活動に行こうと誘う。彼は目つきの悪さから喧嘩を売られ続け、不良として恐れられているのだった。2019年テレビアニメ化。
考えがまとまらないため、話をすることが苦手な七々子のコミュニケーションツールのひとつが川柳である。川柳とは「五七五」の音を持つ定型詩。同様の形式に俳句があるが、季語を必要としない分、川柳の自由度は高い。それこそ、コミュニケーションに不便がない形で活用できる。文字数が決まっていることで必要な情報がコンパクトにまとまっているうえ、言葉の響きが良い。川柳を活用し、日々学校生活を送る七々子が、関心を寄せているのが同級生の毒島だ。目つきが悪すぎるために絡まれることが多く、結果的に不良になってしまったが、現在は文芸部に所属している。偶然出会った「五七五」の音と川柳の世界に魅了された毒島。彼らが紡ぐ17音の言葉が、世界を鮮やかに彩っていく。
名探偵ともてはやされていた過去を持ちながら、現在はうだつの上がらない探偵の主人公と探偵志望の女子高生が、依頼をこなそうと奮闘する、探偵コメディ。名雲桂一郎は冴えわたった慧眼で「高校生名探偵」として一世を風靡した。35歳の現在は、事務所の家賃を滞納するくらい落ちぶれてしまっていた。腰にも不調をきたす名雲は若さを失い、老いを感じる日々に絶望しながらも、依頼をこなしていた。仕事のため事務所を出ようとする名雲の前に、女子高生の中西真白が現れるのだった。
若さとは武器である。実際男性は17歳、女性は14歳で肉体のピークを迎え、あとは緩やかに低下していくといわれる。20代ではなかなか実感できないが、30を過ぎてくると衰えを強く実感するだろう。名雲は高校生の頃、難事件を次々と解決したことで名探偵と呼ばれていたが、今はその面影すら感じられない。腰痛と戦い、始まってしまった老眼に肉体の衰えを強く感じる35歳だ。冴えわたった推理力や慧眼も今はなく、浮気調査などの街場の探偵らしい依頼をこなしている。そんな彼の前に現れたのが、現役女子高生の真白だ。探偵志望の真白は、老いを日々感じる名雲の前で、溌溂とした若さを発揮していた。凸凹コンビの軽妙なやり取りに、笑いと元気が湧いた。