自宅で居場所を失ってしまった作家・幸田まり子の新たな歩みを描いたヒューマンドラマ。まり子は、15年前に死別した夫と若い頃に建てた我が家に、息子夫婦と孫夫婦、ひ孫の4世代で暮らしていた。ここを終の棲み処だと思っていたが、自分に内緒で息子夫婦たちが建て替えを計画していることを知ってしまう。加えて、昔の作家仲間が同じく4世代で暮らしていながら孤独死したことにショックを受け、まり子は80歳にして家出を決行する。
本作の主人公・まり子は、長年にわたって連載を抱え、数多くの著作もあるベテラン作家。80歳でも現役で仕事を続けているが、気付けばいつのまにか多くの仲間たちに先立たれてしまった。家族との諍いや、かつての想い人・八百坂親承(やおさかちかつぐ)の元妻が孤独死した事件などが続いたことで「長生きしすぎた自分は邪魔な存在」との考えに至り、家出を決意。まり子はネットカフェ暮らしのホームレスとなる。その後、クロという捨て猫を拾ったために新たな住まい探しを始め、八百坂に同棲を申し込まれたことで2人はドキドキの新生活をスタートさせた。80歳でも可愛らしく、好きな人にときめき、あふれる行動力と勇気で逆境に立ち向かうまり子に、活力がもらえる一作だ。
村長よりも強い権力を持ち、鶴の一声で村民のいざこざを収める大奥様・百目鬼(どうめき)ミキの活躍を描いた人情ドラマ。物語の舞台は、閉鎖的な田舎にある百目鬼村という架空の地。村民を襲うオレオレ詐欺や、いじめを苦に不登校となり、村で過ごすことになった男子中学生など、次々と巻き起こる問題や事件をミキがすっきりと解決していく。作者・高口里純の漫画『紅のメリーポピンズ』に登場したキャラクターを主人公に据えたスピンオフ作品。
本作の主人公・ミキは、着物をまとい、煙管(きせる)を愛好する迫力満点の村の総領。博識で鋭い洞察力を持ち、深い懐で村民たちから絶大な信頼を得ている。ミキ流の解決方法や名言の数々をもってして、パワハラに苦しむ女性や、トラウマに悩む子供をはじめ、教育熱心過ぎる母親、高齢者の運転問題から働かない息子など、現実社会を生きる読者にとっても身近な難問と闘っていく。「大奥さん」「ミキ総領」などの呼称で人々から親しまれているミキだが、横浜から引っ越し、父親の実家である百目鬼家に同居することとなった4歳の孫・亜子や、村長からは「グランマ」と呼ばれている。亜子はミキのかっこよさに心酔しており、年齢の離れた2人のやり取りも微笑ましい作品だ。
魔人と戦う魔法少女の正体は88歳の老女という設定が斬新なバトル・ファンタジー漫画。日本某所の平凡な田舎町・天野川町(あまのがわちょう)に住む紅林梅は、夫と死別した後、中学生の孫・桃と2人で平和に暮らしていた。ところがある日、アモル星の生命体・レオが持ってきた魔法少女に変身するための契約書に梅はサインをしてしまい、ヘイト星の生命体の刺客である魔人たちと戦うことになってしまう。町の住民たちが応援する中、変身した梅は魔人と戦いを繰り広げる。
本作の主人公・梅は、なぜか梅宅の仏間の円卓で酔い潰れていたレオとやり取りしたことがきっかけで、88歳なのに魔法少女になってしまった。着物姿で白髪をお団子に結い、丸眼鏡をかけ、まさに「日本のおばあちゃん」といった容姿をしていた梅だが、ヘイト星の魔人と戦うために、アモル星の愛の感情エネルギーの力で魔法少女に変身すると、何故か10代半ばの美少女に。しかし口調や思考回路など、中身は88歳のままなので、おばあちゃんならではの深い愛情と包容力で魔人と対峙する。負の感情に支配された魔人の悩みを聞いたり、割烹着姿で手料理を振る舞ったりと、梅にしかできない戦い方で心を浄化し、町を襲う魔人らを人間に戻していく。
おばあちゃんと、孫の「しょーちゃん」こと、しょうこの交流を描いたゲーム漫画。1990年代後半の日本のとある家庭が舞台で、ゲーム好きな10歳の孫娘との関係を深めるために、おばあちゃんが歩み寄っていく。当時、人気を集めた実在のゲームに毎話スポットライトがあたる。懐かしいおやつもときどき登場し、ノスタルジーも感じさせる作品となっている。
本作に登場するおばあちゃんは、以前は田舎に住んでいたため、孫とは夏休みにしか会えないでいたが、家族で近所に引っ越してきてからは毎日のようにしょうこの部屋を訪ねるようになった。初めは「ゲームばかりしているとバカになる!」と、ゲーム三昧の孫を心配していたおばあちゃんだったが、さまざまなジャンルのゲームを楽しむ孫の隣で画面を見ているうちに、「ゲームにもストーリーがあり、内容も敵を殺すものばかりではなく、頭を使うものもある」と知る。「あれは何?これは何?」と横から口を出してはしょうこに怒られつつも、日々、2人でゲームを楽しんでいる。おばあちゃんが意外な変貌を遂げた最終話も見逃せない。
75歳の老婦人・市野井雪と、17歳の女子高校生・佐山うららの年齢を超えた交流を描いたハートフルストーリー。ある日、75歳の雪が表紙絵に惹かれ、そうと知らずに買った漫画は男性同士の恋愛を描いたボーイズラブ(BL)作品だった。内容に驚きつつもすっかりその魅力にハマった彼女は、翌日に早速続刊を購入。それが縁となり、書店でアルバイトをしていたうららと意気投合し、漫画を貸し借りしたり、2人で同人誌即売会へ行ったりするような新鮮な友情を育んでいく。
本作の主人公・雪は自宅で書道教室を開いているおばあちゃま。2年前に夫を亡くした後も、娘とは離れて一人で暮らしており、買い物へ出たり、病院へ通ったりと穏やかな日々を過ごしていた。偶然購入してすっかりハマった漫画がきっかけで(BL)友達になったうららは、オシャレなどに興味がなく、クラスに好きなものを共有できる女友達もいない。しかし雪と出会ってからは、念願の同人誌即売会に一般参加して憧れの作家の本を入手するなど、58歳もの年齢差をものともせずに仲を深めていく。一方の雪も、自宅で食事を共にしたり、漫画を貸し借りしたりできる新しい友達・うららは、老人仲間に自慢したいほどの存在であり、そんな2人の類を見ない関係に引き込まれる一作だ。