現在の愛知県にあたる尾張の国を舞台にした戦国アクション漫画。天文17年(1548年)、織田信長と竹千代(後の徳川家康)は、道行く途中で、男たちに絡まれていた少年・日吉(ひよし)を助ける。臆病な性格の日吉だったが、土壇場における度胸を信長に気に入られる。日吉は渡り巫女・ヒナタと偶然出会い、行動を共にするようになるが、彼女の体には2つの人格が宿っていた。そしてヒナタの別人格である予言者のヒカゲから、日吉は自分が後の天下人・豊臣秀吉となることを予言されるのだった。
愛知県は、戦乱の世を駆け抜けた三英傑と呼ばれる織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の出身地。本作では尾張を舞台に、彼らの若かりし頃を史実とフィクションを織り交ぜながら描いている。信長はそれまでの古いやり方とは違う新しい社会を目指して天下統一を目標としており、日吉はそんな信長を主君として慕うようになる。時には離れ離れになりつつも、次第に2人は信頼関係を築いていく。信長の側近となった日吉は様々な経験を経て少しずつ成長していくが、その一方で、この作品では時空を超えた世界とも繋がっており、思いもよらない方向へと物語は進んでいく。SF調の展開や、日吉とヒナタの恋愛模様など、見所満載だ。
姉妹2人、寄り添いながら成長していく様を描いた散歩漫画。7歳年下の妹が産まれてからずっと、忙しい両親の代わりに妹の面倒をみてきた市井(いちい)かりんは、大学卒業を控え、就職活動にいそしんでいた。だが、かりんは妹のために日々を過ごしてきたため、就職活動でアピールできる取り柄が一切なく、ずっと内定を取れずにいた。だが、祖父が他界したのをきっかけに、喫茶店の経営を引き継ぐこととなり、かりんは新たな生き方を模索するようになる。市井姉妹をはじめ登場人物たちが名古屋の街を散歩しながら、それぞれの悩みと向き合い、解決の糸口を探っていく。
市井姉妹が名古屋の街を散歩するようになったのは、かりんの妹・くるみの過去が大きく関係している。くるみは幼い頃に誘拐されそうになったことがあり、そのことがトラウマとなり、対人恐怖症になっていた。「季節や環境を感じる」「存在理由を想像する」など、作中では散歩の楽しみ方の「定義」を4つ提案している。2人は散歩をコミュニケーションや問題解決のツールとして利用し、他者との交流や気付きを大切にしながら散歩を続けていく。散歩を通じて登場人物たちの成長を柔らかな筆致で描いている。作中には随所に名古屋の名所である栄や大須などが登場し、名古屋の歴史や地理について学べる豆知識も掲載されているため、かりんたちと共に散歩している気分も味わえるだろう。
名古屋を舞台にしたご当地漫画。東京出身・陣界斗(じんかいと)は、名古屋へ引っ越してきたばかりの高校2年生。暮らしの変化を期待していたが、いざ転校してみれば、方言を話すクラスメイトはおらず、食生活も東京と変わらず、がっかりしていた。そんな界斗の前に現れたのは、猫耳のような髪型で名古屋なまりがヒドイ女子高生・八十亀最中(やとがめもなか)。彼女と同じ写真部に入部した界斗は、名古屋を愛してやまない八十亀の日常を観察し始めるのだった。2019年テレビアニメ化。
本作は名古屋出身の最中を物語の軸にして、名古屋ネタ満載で展開していく。例えば、コメダ珈琲店は名古屋発の喫茶店だが、本作でも八十亀が日常的に利用する喫茶店として登場している。また、作中には岐阜出身・只草舞衣(ただくさまい)や三重出身・笹津(ささつ)やん菜も登場し、様々な東海地方あるあるネタも盛り込まれている。東京出身の界斗が出会った八十亀は方言丸出しで、まさに界斗が思い描いていた通りの名古屋人。だが、八十亀は東京に対して強い対抗意識を持っており、なかなか2人の距離は縮まらない。地元愛が強い八十亀を通じて名古屋の様々な知識や魅力が描かれ、読み進める内に界斗と同じように少しずつ名古屋について詳しくなれるはずだ。
名古屋に転勤してきたアメリカ人ジャーナリストが主人公の痛快コメディ漫画。アルバート・ビリー・フラーは、アメリカから名古屋へ赴任してきた軍事ジャーナリスト。名古屋は織田信長、徳川家康、豊臣秀吉の3人の名将を生んだ土地であり、その血を受け継ぐ名古屋人には、知られざる戦力や隠された潜在能力があるはずだと考え、その力を全米に報道したいと願っていた。名古屋で暮らしていく内に名古屋や愛知県民について理解を深めていくアルバートの日常を描く。
主人公・アルバートは、全米で2位を誇るジャーナリスト団体、ワールド・ワイド・プレス社に所属している軍事ジャーナリスト。戦国大名を数多く輩出した名古屋に対して並々ならぬ興味を抱くアルバートは、毎朝デイリー・イングリッシュ新聞名古屋支部の特派員という形で名古屋へやってきた。作中に登場する市民たちは郷土愛が強く、また近所付き合いも濃厚で、作り過ぎたおかずを渡しにアルバートの部屋にも乗り込んでくるなどするため、流石のアルバートも押され気味だ。アルバートは軍事ジャーナリストの血を沸き立たせる名古屋について探りをいれようと考えていたが、作中ではスーパーなど庶民的な場所を中心に物語が展開されていく。名古屋の伝統や文化について独自の視点で切り込んだ意欲作といえるだろう。
女子高校生による大食い競技を題材にしたバトル漫画。主人公の春風天子(はるかぜてんこ)は、食いしん坊の高校1年生。中学時代は「食いしん坊のダンゴ」というあだ名を付けられていたため、高校では女の子らしくしようと、新しいクラスメイトたちの前では大食いを封印していた。だが、幼なじみの家族が営むそば屋で大量のそばを食していたところ、同じ高校に通う上級生の荒木遊(あらきゆう)に「食い道部」へスカウトされる。本作は大食い競技の全国大会「天食祭」で天下一を目指す少女たちの熱き戦いの物語を描く。
本作に登場する大食い競技の全国大会「天食祭」の発祥は、はるか昔に行われた巫女の行事という設定だ。そのため、競技者は全員女子。食いしん坊の天子にとって「食い道部」は天国のような部に思えたが、天食祭で最高の大食いを披露するには、強い胃と体作りが必要だった。食べることが好きなだけではなく、マラソンや筋トレ、データ分析など、陰では地道な努力をしなければならない。そして、天食祭はチーム戦であるので、次第に部員たちとの絆も強くなっていく。名古屋を舞台にしているため、作中には「味噌カツ」が登場するなど、名古屋らしさも盛り込まれている。「食い道部」の部員たちは、「食」への感謝の気持ちを忘れずに食べている。読んでいるだけで天子の至福感が伝わってきて、毎日の食事を大切にしたくなる作品だ。