in JACK out

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2015年の日本では、人々のうなじ部分にプラグを刺すためのジャックが装着され、多くの情報をやり取りする新時代が到来していた。高度に電脳化された社会を舞台に、五感が再現された仮想空間「インジャック」を生きる女子高校生の鈴木晴海、沖田久美、沖田和美ら三人の日常を描いた、新感覚サイバーコメディ。「別冊花とゆめ」平成23年2号から不定期掲載の作品。

正式名称
in JACK out
ふりがな
いん じゃっく あうと
作者
ジャンル
その他SF・ファンタジー
関連商品
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あらすじ

第1巻

2015年の日本では、人々は高度に電脳化された社会で生きていた。うなじ部分に組み込まれたジャックにプラグを刺すことで情報をやり取りする時代において、我が子が情報化社会に対応できるようにと、日本の高校生の電脳化率は実に95%を上回っていた。そんな中、鈴木晴海は超人気ロックバンド「HALCYON」の限定ライブが仮想空間「インジャック」で行われることを知り、五感をもリアルに再現するインジャックに興味を持つ。今人気の仮想空間について調べ始めた晴海の前に現れたのは、同じ学校に通う双子の沖田久美沖田和美の二人だった。久美と和美は、インジャックについて詳しい様子だったため、晴海は彼らに手引きされる形でアカウントを作成し、インジャック内に入ることになる。無料の買い物にカフェでの飲食など、晴海にとってどれも心躍るもので、実体ではないにもかかわらず冷たい、おいしいと感じることに驚きを隠せない。久美、和美と共にギフトモールを楽しんでいた晴海は、突然現れた謎の青年のアスターから、危険を知らされた直後にギフトモールが爆発。それはテロ集団「鉄の車輪団」による爆発テロだった。

登場人物・キャラクター

鈴木 晴海 (すずき はるみ)

素直で自由奔放な性格の女子高校生。年齢のわりに子供っぽいところがあるが、常識にとらわれずに柔軟な発想ができる。超人気ロックバンド「HALCYON」の大ファンで、彼らの限定ライブが仮想空間「インジャック」で行われることを知り、インジャックに興味を持つ。同時期に沖田久美、沖田和美と知り合い、彼らに誘導されるがままにアカウントを作成。学校のパソコンや自宅のノートパソコンから、現実世界とインジャック間を行き来する生活が始まった。鈴木晴海自身にとってインジャックは未知の世界であるため、何事にも興味津々な様子を見せる。インジャック内ではかなりの有名人である久美、和美と行動を共にすることで、何かとトラブルに巻き込まれやすい状況に陥っている。

沖田 和美 (おきた かずよし)

鈴木晴海と同じ学校に通う男子高校生。沖田久美の双子の弟で、穏やかな優しい性格をしている。長めの前髪が特徴。PC部に所属しており、仮想空間「インジャック」内のビルドグループ「アドアー」のワールドビルダーとして活躍中で、インジャック内では世界中のプレイヤーからさまざまな依頼を請け負うかなりの有名人。商業主義でも理想郷主義でもないが、面白いと思って始めたことを邪魔されるのを極端に嫌う。インジャック内では「カズ」と呼ばれている。

沖田 久美 (おきた ひさよし)

鈴木晴海と同じ学校に通う男子高校生。沖田和美の双子の兄で、やや荒っぽい性格をしているが、照れ屋で子供っぽい一面を持っている。無造作ヘアが特徴。PC部に所属しており、仮想空間「インジャック」内のビルドグループ「アドアー」のワールドビルダーとして活躍中で、インジャック内では世界中のプレイヤーからさまざまな依頼を請け負うかなりの有名人。商業主義でも理想郷主義でもないが、面白いと思って始めたことを邪魔されるのを極端に嫌う。インジャック内では「ヒサ」と呼ばれている。

(より)

鈴木晴海のクラスメートの女子高校生。仮想空間「インジャック」へは、以前父親のアカウントを借りてこっそり入ったことがある。しかし体になじまず、ログアウトして以降も車酔い状態が続いたため、インジャックに対して苦手意識を持っている。

コニー

仮想空間「インジャック」内でリゾート「コルネリウス・テラス」を経営しているドイツ人女性。エステやネイルサロンなどの施設を所有するオーナーで、超人気ロックバンド「HALCYON」のインジャック・ライブにも協賛しており、来店するお客様がさまざまなアクティビティを楽しむことでお金を得ている。商業主義者として、テロ集団「鉄の車輪団」からターゲットにされ、実際にテラス内で増殖物質テロの被害に遭う。

デニス・オブライエン

30代のアイルランド系アメリカ人の男性。現実世界では大企業のCEOを務めている富豪。仮想空間「インジャック」内では運営しているラボへの多額の寄付や、開発面での協力によって功績が認められ、名誉顧問の肩書を持っており、教授と呼ばれていた。しかし2週間前、現実世界において事故に遭って他界。遺言により、個人的な財産の約20億ドルをインジャック内に存在する家族であり、インハビタントのスカイラーとアシュリン、使用人たち、インジャックのラボにゆずる遺志が明らかになる。

スカイラー

仮想空間「インジャック」内のインハビタント。デニス・オブライエンの亡き妻の電子的クローンで、現実世界の本人は7年前に病死した。デニスがその亡くなった妻を電脳レベルで再構築してできたものだと噂されており、それは亡くなった本人とほぼ同等であることを意味する。そもそも倫理的に問題があるため、本来ならば許されることではないが、インジャックの開発に大きく貢献したデニスの問題であるため、運営しているラボからは黙認されている状態。最近夫が亡くなり、巨額の遺産を相続することになって、身の危険を感じるようになった。特に娘のアシュリンを守りたいと考えており、今住んでいる区画から安全な場所への引っ越しを依頼するために沖田久美、沖田和美、鈴木晴海のもとを訪れた。

アシュリン

仮想空間「インジャック」内のインハビタント。誕生日を迎えたばかりの5歳の少女で、デニス・オブライエンの実子。5年前に仮想空間内で誕生した。インジャック内にある自宅の庭で、謎の青年のアスターに会ったことがある。デニスが亡くなり、身の安全を確保するために引っ越しをすることになるが、デニスとの思い出がたくさん詰まった自宅を引っ越すことに不安を感じている。引っ越しに絡んで訪問した鈴木晴海を慕っている。ひよこが大好き。

ノーマン

デニス・オブライエンのいとこ。デニスが亡くなり、巨額の遺産が仮想空間「インジャック」内のインハビタントであるスカイラーとアシュリンにゆずられることを快く思っていない。スカイラーとアシュリンのもとに蝶の形のスパイツールを送り込み、彼女たちを消去してしまおうと画策する。

アスター

仮想空間「インジャック」内のさまざまな場所で見掛ける謎多き青年。プロフィール上では、名前やアカウント作成日などすべての項目が「*(アスタリスク)」になっており、その詳細を知ることはできない。実はスカイラーを作り出した張本人である。アスター自身はテロリストではないが、テロが行われる場所で見掛けられることが多く、またテロリスト相手であっても、利害が一致すれば手を組むこともあると公言している。

集団・組織

鉄の車輪団 (あいあんほいーる)

仮想空間「インジャック」内で活発に活動しているテロリスト集団。理想郷派の集団で、インジャックを現実と隔離された夢の国にしたいと考えている。そのため、現実からの商業主義者の流入を毛嫌いしている。リアルの企業が出店しているギフトモールを狙って爆発テロを、コニーの経営するリゾート「コルネリウス・テラス」では増殖物質テロを起こすなど、さまざまな方法で危険な活動を続けている。現在は、超人気ロックバンド「HALCYON」のインジャック・ライブの会場を次の標的にしている。

その他キーワード

インジャック

仮想空間の一つ。公式ジャンルはマッシブリー・マルチプレイヤー・バーチャル・ワールド(MMVW)。パソコンでアカウントを作成し、ユーザー各自の電脳を、うなじにあるジャックにプラグを刺して接続することで、感覚変換を伴って世界を共有することができる。内部では3Dスキャンされた本人と同様の外見のアバターを使用する。生活や仕事、ショッピングや趣味、リラクゼーションなど、現実世界で可能なあらゆる活動を電脳空間に再構築する試みが行われており、よりリアルに近い感覚で楽しむことができる空間となっている。五感をも再現する空間になっているため、飲食も可能。おいしい、冷たいなどを感じることはできるが、インジャック内での感覚はすべて偽物で、どんなに食べても現実世界の体が満腹感を得ることはない。また、感覚変換にはリミッターも存在し、痛覚に関してはリアルに近すぎない程度のものに抑えられている。それでもインジャック内でケガをしたストレスでリアルの体に支障が出たり、暴食しすぎて脳が騙されることでリアルの体が太ったりするケースも確認されている。排せつはできない仕様でトイレはなく、アバターは男女ともに性的な部分が存在しない、つるっとしたのっぺらぼう状態。しかし、アダルトエリアではいわゆる大人の遊びをするために性的な部分を読み込み、アバターに反映させるサービスが公然の秘密として存在し、当然ながら成人向け有料サービスとなっている。本社がアメリカにあるため、内部の公用語はすべて英語になっているが、一方通行の同時翻訳処理が働くため、基本的に相手の言葉はすべて自分の使用言語に聞こえる仕様になっている。15歳以下は利用できない。

2015年

人類が月にすら到達できないまま、2015年を迎えた世界。人々は宇宙に進出する代わりに、その居場所を電脳空間に広げている。「上の世代」と呼ばれる「第一世代」が高度に成長した電脳システムを構築し、その後「第二世代」がそれを自らに組み込んだ。第二世代の子にあたる「第三世代」は、我が子が高度な情報化社会に取りこぼされることを恐れた親たちによって電脳化された。現状、日本の高校生の電脳化は実に95%を上回っている。電脳化された人間は、うなじ部分にプラグを刺すジャックがあり、そこから情報を脳内に取り込むことができる。例えば読書についても、目で字を追うのではなく、プラグを刺すことで直接その内容を取り込む。また、自分の脳内にある情報は、ジャックの横に収納されているコードを引き出し、相手側のジャックに刺すことで移動させることもできる。

インハビタント

仮想空間「インジャック」の仮想市民。操作する人がいない状態で、プログラムのみで動いている、いわゆるNPC(ノンプレイヤーキャラクター)のこと。一般のプレイヤーと外見での見分けはつかないが、プロフィールを表示させることで、一般のプレイヤーかNPCかの判別は可能となっている。また彼らには、人工知能が人間に対して危害を与えないための工学理論「ロボット三原則」が適用されているため、人間への安全性、服従、自己防衛の観点に沿って行動するようになっている。

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