orange

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10年後の自分からの手紙を受け取った一人の女子高生が、死亡する運命にある同級生を救うべく奔走するSFストーリー。2012年から2015年にかけて連載された全22話で構成され、1話から9話までが「別冊マーガレット」(2012年4月号から12月号にかけて)、10話から最終話までが「月刊アクション」(2014年2月号から2015年10月号にかけて)に掲載された。

正式名称
orange
ふりがな
おれんじ
作者
ジャンル
恋愛
レーベル
アクションコミックス(双葉社)
巻数
全7巻完結
関連商品
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世界観

著者である高野苺が住んでいる、長野県松本市を舞台に物語が繰り広げられる。城山公園やあがたの森公園といった地域の名所が登場し、コミックの表紙などにも描かれている。

あらすじ

第1巻

長野県松本市に住む女子高校生、高宮菜穂は、2年生に進級した朝、「10年後の自分」を名乗る人物からの手紙を受け取る。菜穂の身に起こる事を次々的中させるその手紙には、転校生の成瀬翔が、10年後の世界では亡くなっていると記されていた。手紙の内容が真実であると悟った菜穂は、その日から手紙のアドバイスに従い、未来を変えるため、少しずつ行動的になっていく。やがて菜穂は翔に惹かれていき、手紙の内容と、菜穂の身に実際に起こる出来事にもズレが生じ始める。その変化に菜穂は喜ぶが、ある日、手紙の指示に一歩間に合わず、菜穂は翔へ自分の思いを伝えそびれてしまう。その結果、翔は1学年上の上田と交際する事になってしまう。 

第2巻

夏。手紙のアドバイス通りにはいかなかったが、高宮菜穂が勇気を出したので成瀬翔との距離は縮まり、さらに翔と上田は手紙にあった交際期間よりも早い段階で別れる事になった。そんなある日、菜穂は化学の授業中に、タイムトラベルとパラレルワールドについて学ぶ。そこで菜穂は、「10年後の自分」を名乗る人物は、今の菜穂が暮らす世界とは別世界におり、たとえ今の菜穂が、翔の死亡する未来を阻止したとしても、「10年後の自分」の世界で翔が蘇るわけではないと知る。それでも尚、今の菜穂と暮らす翔を救おうとしている「10年後の自分」のためにも、菜穂はより積極的になる事を決意をする。一方その頃、翔と別れた上田は、自分達が別れた原因は菜穂にあると感じ、菜穂に度々嫌がらせをするようになる。学園祭の日も、菜穂は翔との待ち合わせ中に上田に意地悪をされるが、須和弘人ら友人達のアシストにより無事、翔と楽しい時間を過ごす。そして夏休みが始まり、菜穂は「10年後の自分」からの手紙の最後のページを読み、翔が亡くなるのが来年の2月15日である事、死因は自殺である事を知る。これ以上この問題を一人で抱える事はできないと考えた菜穂は、弘人に相談する事を決意する。しかし、弘人が発したのは「菜穂も手紙を受け取っていたのか」という衝撃的な言葉だった。 

第3巻

夏休み。高宮菜穂は、須和弘人もまた「10年後の自分」から手紙を受け取っており、成瀬翔の自殺を阻止するため影ながら行動していたと知る。未来を知る者同士協力関係となった菜穂と弘人は、翔が自殺を考えなくなるくらい幸せな生活を送れるよう尽力しようと決める。そして新学期が始まり、茅野貴子村坂あずさのサポートで、上田から菜穂への嫌がらせも止み、9月14日の翔の誕生日に、菜穂は翔から告白される。ついに幸せな生活が訪れるかに思えたが、菜穂は弘人から、その直後の9月23日に、「10年後の自分」のいる世界では翔が自殺未遂をしている事を知らされる。翔の予定を無理やり変えさせて自殺未遂を防ぐ菜穂と弘人だったが、果たしていつも手紙の指示通りに動く事が、よい未来につながるのか思い悩むようになる。そして、その後に続く手紙で、10月の体育祭での失敗が、翔の決定的な落ち込みにつながると知った二人は、ついに手紙の指示とは別の選択をする。それは、リレーのアンカーとなる翔を支えるため、リレーに菜穂、弘人、貴子、あずさ、萩田朔の5人も参加し、全員で良い結果を目指すというものだった。 

第4巻

秋。「10年後の自分」から手紙を受け取っていたのは高宮菜穂須和弘人だけではなく、茅野貴子村坂あずさ萩田朔という、成瀬翔と親しい全員であった。5人の「10年後の自分」に当たる人物がそれぞれに翔の死を悔やみ、手紙を信じた今の菜穂達も、全員翔の死を阻止したいと考えている。それを知った菜穂は、翔と交際にこそ至っていなかったが、翔との距離をより縮めようと誓う。そしてとうとう体育祭の日が訪れるが、生徒達の家族が集まる光景に、自殺した母親を思い出さずにはいられない翔は深く落ち込んでしまう。それに気づいた5人は一丸となって翔のケアをし、菜穂達の1年6組リレーチームは、見事優勝を果たすのであった。 

第5巻

冬。高宮菜穂達は、大みそかの日に、仲よしグループ6人全員で「二年参り」に行こうと計画していた。しかし「10年後の自分」の手紙から、大みそかの日に自分が菜穂に告白すると知っていた須和弘人は断り、菜穂達は5人で出かける事になった。「10年後の自分」によると、この日、菜穂は些細な言葉で成瀬翔を深く傷つけてしまい、それを境に二人は疎遠になってしまうのだという。なんとしてでもそれは避けたい菜穂だったが、未来は変えられず、結局二人は喧嘩をしてしまう。そのまま新学期が始まり、菜穂は改めて翔に謝罪するものの、翔には避けられたままであった。それでも諦められない菜穂は、バレンタインデーの日に、とうとう翔に告白する。お互いの気持ちをすべて話してわだかまりも解け、晴れて交際を始めた菜穂と翔だったが、その翌日は翔が自殺してしまうとされる2月15日であった。6人にとって、ついに運命の日が訪れようとしていた。 

第6巻

時はさかのぼる。高校2年生に進級した朝、須和弘人は「10年後の自分」を名乗る人物からの手紙を受け取った。手紙にはこれからの自分の身に起こる出来事が断片的に綴られており、さらに10年後の世界においては、弘人と高宮菜穂は結婚していて子供がいるのだという。当初は半信半疑の弘人だったが、次々と手紙の記載通りの出来事が起こるにつれ、やがて手紙の内容を信じるようになっていく。そして、弘人は同じく手紙を受け取っていた友人達と協力し、成瀬翔が自殺するという運命を阻止するため行動するようになる。しかし弘人はその過程で、翔の自殺を止めるために、自分よりも翔の思いを尊重した場合には、自分と菜穂が交際できなくなると悟る。それでも菜穂と翔の幸せを守りたい弘人は、自分の思いを押し殺し、菜穂と翔の未来のために奔走する。 

第7巻

高校2年生の高宮菜穂達へ手紙を送った「10年後の自分」達の一人である須和弘人は、かつて高校2年生の冬、友人の成瀬翔を失った。弘人は、悲しみのあまり所属していたサッカー部をやめ、菜穂達とも疎遠になったまま高校を卒業。そして進学した弘人は、20歳になったある日、弁当屋でアルバイトをする菜穂と偶然再会する。その日から再び二人の交流が始まったが、ある日弘人は、翔の死から2年以上経った今でも菜穂が翔を思い続けている事を知る。それでも菜穂が気になってならない弘人は、彼女の心が翔のところにあると知りながら、菜穂にプロポーズをする。 

作品構成

2つの時間軸が並行して描かれる構成となっている。1つ目は、控えめな女子高校生・高宮菜穂と、どこか影のある転校生、成瀬翔が出会う「16歳」の世界。2つ目は大人となった菜穂が、翔が亡くなったことを悔やみ、過去を変えるべく手紙の執筆に至る「26歳」の世界である。この2つの時間軸が絡み合い、もともとあった「26歳」の世界とは違う方向に「16歳」の世界が展開していく、タイムパラドックスが描かれている。

メディアミックス

TVアニメ

2016年夏に浜崎博嗣監督によるテレビアニメの放映が発表されている。脚本は柿原優子、キャラクターデザインは結城信輝。

実写映画

2015年12月に、橋本光二郎監督により実写映画化された。主人公の高宮菜穂役を土屋太鳳、成瀬翔役を山﨑賢人が務めた。主題歌はコブクロの「未来」。

小説

2015年7月に双葉社ジュニア文庫から、原作のストーリーを小中学生向けに再編集した時海結以著の小説版全3巻が発表。また2015年11月には双葉文庫から、実写映画版の脚本を再現した蒔田陽平著の小説版も発売されている。

松本ツアー企画

2016年1月、株式会社そごう・西武で「『orange』の世界をめぐる松本ツアー福袋」企画が発表・募集された(募集はすでに終了)。ツアー内容は、作中に登場した地でのトリビアクイズ巡礼、作中でキャラクターが食べていた松本グルメの食べ歩き、高宮菜穂が作ったお弁当を再現した食事がふるまわれるなど。先着100名限定で、旅行代金は1人につき30,000円。2016年6月11日出発の1泊2日ツアーが予定されている。

イオンでのプレゼントキャンペーン

2016年2月、テレビアニメ化を記念して、アニメ描きおろしイラストが使用されたダブルポケットクリアファイル(A4サイズ)のプレゼントキャンペーンが全国の総合スーパー・イオン(北海道・九州・沖縄は除く)で行われた。対象となる明治の商品(菓子)を4個購入につき1枚がプレゼントされた。キャンペーンは各店先着・数量限定で、景品がなくなり次第終了。

ヴィレッジヴァンガードでの限定グッズ販売

2016年3月、ヴィレッジヴァンガードで限定オリジナルグッズが販売された。商品内容は「缶バッジセット(2個)」「コンパクトミラー」の2種類。

Twitter上でのバレンタイン企画

2016年2月、双葉社の『Orange』公式サイトで「Tweet Valentine」企画が行われた。企画内容は、特設サイトから男性キャラクター3名のうち1名に「バレンタインチョコレートを贈る」を選択し、Twitterにその旨を投稿すると、キャラクターからメッセージが送られるというもの。プレゼント合計個数は、計1万個を突破した。

登場人物・キャラクター

高宮 菜穂 (たかみや なほ)

長野県松本市の高校に通う女子生徒で、2年生に進級したばかり。遠慮がちで物静かな性格だが、非常にまめで料理や裁縫を得意とする家庭的な人物。新学期の朝、「未来の自分」からの手紙を受け取り、その内容を信じて成瀬翔を助けようと懸命に手を尽くす。普段はおとなしいが、いざという時は思わぬ大胆な行動に出ることも。

成瀬 翔 (なるせ かける)

高宮菜穂の想い人で、菜穂たちの高校に2年次から転校してきた男子生徒。菜穂の些細な変化にも気のつく心優しい性格で、屈託のない笑顔が印象的な人物。一方でどこか影があり、たびたび一人で考え込んでいる場面がみられる。転校前に起きたトラブルと家庭の問題による闇を抱えているが、菜穂たちとは楽しく過ごしたいと考えているため、それを伝えずにいる。10年後の未来では亡くなっている。

須和 弘人 (すわ ひろと)

高宮菜穂の友人で、同じクラスに所属する男子生徒。明るく親しみやすい性格で、転校したての成瀬翔に真っ先に声をかけた気さくな人物。サッカーが大好きでプロサッカー選手を目指しており、翔を部に勧誘する。菜穂のことをよく気にかけており、翔との関係についても積極的に助言するが、彼女に対し「あること」だけはしないと心に決めている。10年後の未来では、菜穂と夫婦関係になっている。

茅野 貴子 (ちの たかこ)

高宮菜穂の友人で、同じ高校・同じクラスに所属する女子生徒。クールで落ち着いた性格で、自分の意見を堂々と伝えられる人物。須和弘人の気持ちを誰よりも察しており、自分自身よりも菜穂や成瀬翔を優先しがちな彼を心配している。怒らせると非常に怖い。

萩田 朔 (はぎた さく)

高宮菜穂の友人で、同じ高校・同じクラスに所属する男子生徒。真顔でとぼけたことを言うお笑い好きな性格で、グループ内ではいじられ役になることが多い。一方で論理的思考に長け、タイムマシーンの存在に沸く皆に冷静な意見を述べることも。村坂あずさとは軽口を叩き合いながらもよく一緒におり、その姿はまるで夫婦のようだと言われている。

村坂 あずさ (むらさか あずさ)

高宮菜穂の友人で、同じ高校・同じクラスに所属する女子生徒。賑やかで明るい性格で、盛り上げ役を担当することが多い。実家はパン屋を営んでおり、店の商品をみんなに提供することも。萩田朔とはよく漫才のような会話を繰り広げており非常に仲が良いが、交際はしていない。

26歳の菜穂 (にじゅうろくさいのなほ)

16歳の高宮菜穂に手紙を送った人物。16歳の頃に数多くの後悔を残しており、タイムスリップがあると信じて過去に願いを託す。16歳の菜穂への望みは「後悔を一生残さない行動をすること」「成瀬翔の力になること」。須和弘人と結婚しており、幼い息子が一人いる。

上田 (うえだ)

高宮菜穂たちと同じ高校に通う3年生の女子生徒。気が強くプライドの高い性格で、華やかな印象の都会的な人物。サッカー部の見学をよくしており、成瀬翔を気に入って転校早々交際を持ちかける。翔と親しい菜穂のことはよく思っておらず、時に嫌がらせをしてくる。

翔の母 (かけるのはは)

成瀬翔の転校直後に亡くなった彼の母親。息子に相談することなく物事を決める人物で、翔とはそれが原因でぶつかることが多くあった。翔が幼いころに夫とは離婚してしまったことを気に病んでいる。死亡直前は心身共に不安定な状態にあり、翔は、自分のせいで彼女が亡くなったと考えている。

翔の祖母 (かけるのそぼ)

成瀬翔と暮らしている彼の祖母。穏やかで孫想いな人物。高宮菜穂たちの高校からはやや遠い場所に住んでおり、学校にはなかなか訪れにくい状態にある。10年後の未来では、家を訪問した菜穂たちに、翔の過去や死の真相を伝える。

集団・組織

松本山雅FC (まつもとやまがえふしー)

作中で須和弘人が贔屓にしているサッカーチーム。長野県選抜選手を中心とした歴史あるチームで、昭和40年に結成された。クラブ名は当時の選手がよく通っていた喫茶店「山雅」に由来している。ホームスタジアムは、長野県松本平広域公園総合球技場(「アルウィン」)。

イベント・出来事

二年参り (にねんまいり)

作中で高宮菜穂たちが行う初詣の形式。大みそかの深夜に神社へ向かい、日付変更を境に2年にまたがってお参りをすることからこの名称がついた。長野県、新潟県をはじめとする一部の地域で知られているが、他の地域では知名度の高くない言葉・形式。

松本ぼんぼん (もつもとぼんぼん)

作中で高宮菜穂たちが参加するお祭り。毎年8月に長野県松本市の中心市街地で行われる、長野県でも最大規模の夏祭り。「ぼんぼん松本ぼんぼんぼん」の音楽に合わせて、参加者が踊る盆踊りも同時に行われる。

場所

あがたの森公園 (あがたのもりこうえん)

コミックス1巻と2巻の表紙背景に描かれている公園。長野県松本市県3丁目に位置し、JR松本駅からは徒歩20分ほどの場所にある。総面積は6万1000平方メートルで、敷地内にはヒマラヤ杉やケヤキなどが植えられている。

縄手通り (なわてどおり)

コミックス3巻の表紙背景にその一部が描かれている商店街。地形が「縄のように長い土手」であることからこの名称がついた。地域のゆるキャラとして「かえる」がいる。

その他キーワード

開運堂のソフトクリーム (かいうんどうのそふとくりーむ)

コミックス3巻の表紙で菜穂たちが食べている、作中にも登場するお菓子。長野県松本市中央2に位置する菓子店「開運堂」で販売されており、ソフトクリームの味は日替わり。作中では、菜穂たちはカルピス味の日に食べている。

ソリゲリス

萩田朔のお気に入りの漫画。全5巻で構成されたギャグマンガで、成瀬翔との話題にするほどにはまっている。1巻の表紙には、「ソリゲリス」と思われる不思議な生き物とひよこが描かれている。萩田は中でも、特に3巻が気に入っている様子。現在、「月刊アクション」で『orange』スピンオフ作品として『ソリゲリス』(著・まつぽん)を不定期連載中。

ゆうがたGet! (ゆうがたげっと)

萩田朔がよく話題にするテレビ番組。テレビ信州で制作されている夕方のローカル情報番組で、毎週月曜日から金曜日の15時50分から17時53分にかけて生放送されている。

書誌情報

orange 全7巻 双葉社〈アクションコミックス〉

第1巻

(2013-12-25発行、 978-4575843231)

第7巻

(2022-04-12発行、 978-4575857054)

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