アルキメデスの大戦

アルキメデスの大戦

第二次大戦前の日本。戦艦「大和」の建造計画を軸に、天才的数学者と彼を取り巻く日本軍の兵器開発の闇を描く。山本五十六をはじめとした実在の人物を登場させつつも、虚実綯い交ぜとなったストーリーが展開される。講談社「週刊ヤングマガジン」2015年52号から2023年31号まで連載されたのち、同社「ヤンマガWeb」に移籍して2023年7月6日から9月21日まで配信。2019年7月実写映画化。

正式名称
アルキメデスの大戦
ふりがな
あるきめですのたいせん
作者
ジャンル
ファンタジー
レーベル
ヤンマガKCスペシャル(講談社)
巻数
既刊38巻
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あらすじ

第1巻

1933年、大日本帝国海軍は航空母艦「赤城」を完成させ、日本は世界でも類を見ない機動部隊を所有する軍事国家となった。大日本帝国海軍司令長官・山本五十六は、これからの戦争は戦艦ではなく航空機が主体となる事を見越していたが、海軍内部では平山忠道中将を中心とする一派が、巨大戦艦の建造を目論んでいた。海軍内部で行われた新型戦艦建造計画会議で、山本の部下である藤岡喜男は航空母艦を護衛するための高速艦を提案するが、平山は巨大戦艦「大和」の建造計画を提案する。さらに平山は、藤岡の案よりもかなり安い建造費を見積りとして提出していた。明らかに安すぎる見積りに山本は疑念を抱き、会議は2週間後に再検討される事となった。平山案の見積りが不当に安い事を証明するため、山本は数学の天才・櫂直を海軍に招き入れる。少佐の階級を与えられた櫂は早速海軍へと出向き、戦艦建造費用の資料を確認。だが、もともと帝大で数学を学んでいた櫂は、軍艦についての知識が皆無だった。そこで櫂は横須賀へ赴き、停泊している戦艦「長門」に乗り込み自身の手足と目で戦艦を調べようとする。

第2巻

大日本帝国海軍で主計少佐となった櫂直は、副官の田中正二郎と共に戦艦「長門」の設計図を自身で起こそうとする。それは、新造戦艦建設計画会議で敵対する平山忠道の提出した見積りの、不当に安い金額の真偽を見極める事が目的だった。櫂の動きを察知した平山は、部下の高任久仁彦に命じて櫂の身辺調査を行う。かつて櫂は、大日本帝国海軍ともつながりの深い尾崎財閥の令嬢・尾崎鏡子の家庭教師だったが、彼女との不義で家庭教師をクビになったばかりか、大学も退学となった過去があった。その事実を摑んだ高任は、海軍内に櫂を告発する怪文書を発信する。しかし櫂はそんな怪文書を意に介さず、戦艦建造の正確な費用を算出するため、民間造船会社の社長・鶴辺清を巻き込んで人件費や材料費等の原価を割り出す事に成功する。新造戦艦建設計画会議に臨んだ櫂は、平山の提出した見積り金額が安すぎる事実を突きつけ、さらにその裏には尾崎財閥が関係しているのではないかという、自身の推論を展開する。

第3巻

新造戦艦建設計画会議での櫂直の展開する持論に、会議は紛糾する。自身の提出した案を推したい平山忠道は、部下の高任久仁彦に調査させた櫂の私生活を暴露し、櫂の人物評価を貶めて揺さぶりをかける。かつて櫂は、大学を退学となった過去があったが、それは彼に思いを寄せる尾崎財閥の令嬢・尾崎鏡子の策謀によるものだった。その事実を突きつけられた櫂は激高しさらに会議は混乱するが、会議の末に平山案では戦艦の安全設計に疑問が残る事が明らかとなり、平山は潔く案を取り下げる。しかし、その直後に平山と新造戦艦建設計画を競っていた藤岡喜男が、過去に設計した水雷艇が災害に遭遇して沈没するという事故が起こる。藤岡は事故の責任を負って自決し、その遺志を継いだ櫂は、海軍兵員の生命を守るための戦艦設計に取り組む決意を固める。だがそれは、平山の案が再浮上する事も意味していた。それを承知のうえで櫂は、平山の部下である小石川達郎のもとを訪れ、自身の考案した改修案を渡す。

第4巻

櫂直の提出した改修案をもとに、再び平山忠道は戦艦「大和」の建造計画を考案する。平山の建造計画に対抗するため、航空機に目をつけた櫂は、海軍航空隊の基地を訪れて航空機設計者の堀越二郎と出会う。大日本帝国海軍では、世界に類を見ない新型航空機の開発に着手しており、堀越はそのための主任設計者だった。堀越の考案した戦闘機を見た櫂は、優れた機体である事を認めつつも、堀越が航空母艦の運用を想定していない事に落胆する。そこで櫂は、堀越が所属する航空機メーカー・三菱ではなく、海軍内で戦闘機を開発する航空廠に目をつける。櫂は自ら考案した戦闘機案を航空廠に持ち込むが、機関大尉の坂巻茂雄は、櫂が芸姑・佳つ世と昵懇の仲である事を不服に思っていた。櫂に対して非協力的な態度を崩さない坂巻に対して、櫂はポーカーによる勝負を提案。この勝負に勝利した櫂は、坂巻からの協力を取り付ける。

第5巻

大日本帝国海軍航空廠の坂巻茂雄と共に新型戦闘機の開発に取り組む事となった櫂直は、三菱の堀越二郎が設計している機体に、三菱のライバル企業である中島のエンジンを取り付ける構想を語る。しかし中島は、大日本帝国陸軍との距離が近いため海軍に対しては非協力的で、中島製エンジンを手に入れる事は困難を極める。櫂は、帝大時代のコネを利用して陸軍の東条英機を紹介してもらい、さらに東条を介して陸軍少将・永田鉄山と面会。櫂の説得は功を奏し、永田に中島に働きかけてもらう事に成功する。中島では永田の提案に対して難色を示す者も多かったが、主任設計者の小山悌は永田の提案を受け入れ、櫂にエンジンの提供について協力を約束する。

第6巻

中島のエンジンを手に入れる事に成功した櫂直は、早速そのエンジンの図面を航空廠に持ち込んで取り付けのための準備に入る。その過程で櫂は、中島の主任設計者である小山悌と出会い、小山から航空機設計で最も重要な事は搭乗員の安全を守る事だと告げられる。その意見を聞いた櫂は、航空廠で開発中の新型戦闘機でも搭乗員の安全確保を重視するよう機関大尉の坂巻茂雄に申し入れる。反発しながらも坂巻は試作機を完成させるが、テスト飛行で乗り込んだ搭乗員の八神武文が行った急降下で試作機は空中分解してしまう。辛うじて脱出した八神から試作機の問題点を知った櫂は、急ぎその改修に入る。海軍が主催する新型戦闘機の試験飛行の日に間に合ったものの、既に三菱や中島といったライバル企業は完成度の高い戦闘機を開発していた。三菱の堀越二郎、中島の小山と再会した櫂は、改めて新型戦闘機の制式採用に向けての闘志を燃やす。だがその直後、海軍の山本五十六より戦闘機採用の審査はわずか2日で行うとの告知が入る。

第7巻

大日本帝国海軍で制式採用する新型戦闘機の実機審査が始まった。審査の内容は、海軍航空隊の源田實が実機に乗り込んで操縦するテストと、それぞれの戦闘機同士を模擬空戦させるというものに分かれている。三菱と中島、そして航空廠の開発した戦闘機に乗った源田は、航空廠の飛行機に対して微妙な評価を下す。櫂直は、模擬空戦でその微妙な評価を覆すために、航空廠専属搭乗員の八神武文に合わせた調整を行う。模擬空戦では、中島の戦闘機はエンジンの不調により離脱する事態となったため、三菱の戦闘機との一騎打ちとなった。その三菱の戦闘機には、かつての八神の教官でもある乾勝治が搭乗し、奇しくもかつての師弟対決となった。八神の戦法を知り尽くした乾だったが、八神は航空廠の開発した戦闘機の性能を発揮し模擬空戦に勝利する。三菱との模擬空戦を制した事で、海軍の制式採用は決まったと思っていた櫂達だったが、その後の審査会議で海軍司令長官・山本五十六は三菱製の戦闘機を制式採用すると決定する。

第8巻

大日本帝国海軍で制式採用する新型戦闘機の審査の結果、三菱製の戦闘機が採用される事となった。戦闘機を設計した堀越二郎に対して祝辞を述べる櫂直だったが、まだあきらめてはいなかった。櫂は海軍司令長官・山本五十六に航空母艦への戦闘機の着艦試験を提案する。これを受けた山本は付近を航行する航空母艦「赤城」に、三菱製戦闘機を着艦させるように指示をする。だが三菱製戦闘機は、着艦の歳に風にあおられ着艦に失敗し、海に沈んでしまう。その状況を予測していた櫂はすぐさま航空廠の戦闘機を発進させ、八神武文の操縦するその機は見事に赤城に着艦する。その様子を見ていたドイツ軍少佐ハインリッヒ・シュバルツは、櫂の優秀さを高く評価する。海軍は同盟国であるドイツ軍に対して赤城の設計図を渡す見返りとして、ジーゼル機関の技術供与を受ける約定を交わしていた。その交渉に同席した櫂は、ジーゼル機関に加えてドイツが研究中のガスタービン機関の技術も手に入れる事に成功する。数々の成果をあげた櫂だったが、その裏で海軍中将・平山忠道は、着実に戦艦「大和」建造の道筋を立てつつあった。

第9巻

平山忠道が戦艦「大和」を建造するため、呉の造船施設へ向かった事を知った櫂直は、それを阻止するために副官の田中正二郎と共に自身も呉へと向かう。だが許可なく軍の施設に立ち入ったため、櫂達は平山の部下である高任久仁彦に拘束されてしまう。この状況を打破するため、櫂は平山からの密命を帯びていると申告し平山との直接対決に臨む。平山は大和を建造する事は軍事力増強のみならず、多くの雇用を創出する「公共事業」としても必要な事と櫂に語る。しかし櫂は、公共事業であれば航空母艦の建造や航空機の開発でもできると答え、平山を論破する。だが、平山は櫂に大和の設計図を見せる事で逆転を図る。平山の思惑通り、大和の設計図を見た櫂はその設計図の不備を見つけ次々と指摘していく。何事にも自身が気の済むまでとことん突き詰めるという櫂の性格を見抜いていた平山の策略にはまった櫂は、少しずつ大和の事が頭から離れなくなっていく。それでも櫂は大和建造計画を廃案に持ち込むために、平山を告発すると告げその場を去っていく。

第10巻

平山忠道の戦艦「大和」建造計画を廃案にすべく、平山を告発するための準備を整えた櫂直は、大日本帝国海軍司令長官・山本五十六に海軍を辞めさせてもらうように要請する。大和の建造計画を潰す事が当初の目的であり、それがほぼ達成できた今となっては海軍にいる必要はないとの判断だった。櫂の才能を惜しむ山本はそれには即答せず、休暇を出して時間を稼ぐ。だが櫂の休暇中に陸軍の永田鉄山が部下によって斬殺されるという事件が起こる。永田によって今まで抑えられてきた陸軍の好戦派は一気に勢いづき、軍内部では戦争への機運が高まっていた。その状況を知った櫂は、戦争を回避するために海軍を辞める事を撤回し、休暇を取り下げる。さらに櫂は、戦争を回避するための抑止力として戦艦「大和」が必要であるという事実にたどり着き、平山のもとを訪れる。共に大和を建造しようと持ちかける櫂に、平山も当初は賛同するもののあくまでも建造するのは櫂の設計・考案した戦艦である事に反発、櫂は独自に戦艦を建造する事を決意する。

第11巻

櫂直から戦艦「大和」の建造を決意した事を聞かされた大日本帝国海軍司令長官・山本五十六は、櫂の提案に驚きつつも協力する事を約束する。山本は平山忠道の上司である。海軍中将・嶋田繁太郎に働きかけて大和の建造計画を推進するよう進言する。さらに櫂には中佐の階級を与え、建造計画の主任設計者として任命する。嶋田は大和建造計画を海軍大将・永野修身に提案し、櫂の設計する大和は正式に建造が決定する。だが嶋田は、未だ日本では実用化がされていないガスタービン機関を利用したものである事を理由に、大和の製造は実現不可能だと考えていた。建造計画が失敗に終わった時にはその責任を永野に負わせ、自身が海軍を掌握するため、櫂の計画を利用していたのである。そうと知らない櫂は海軍内部で戦艦建造のための人材集めに奔走するが、思うように人員が集まらない。そんな中、ふと立ち寄った資料室で櫂は桑野肇という男と出会い、彼の持つ艦船設計の才能と熱意を買って設計者としてスカウトする。だが、桑野と共に大和の設計を開始した矢先、櫂は山本からドイツへと渡るように指示を受ける。

実写映画

2019年7月26日公開。配給は東宝で、監督は山崎貴。主人公の櫂直を菅田将暉、山本五十六を舘ひろしが演じる。

登場人物・キャラクター

櫂 直 (かい ただし)

山本五十六から請われて大日本帝国海軍主計少佐に就任した男性。かつて帝大で数学を専攻しており、その天才的な頭脳で海軍内部での軍艦設計に携わっていく。本人は一貫して戦争反対の姿勢であり、海軍に入ったのも軍部が誤った方向へと進まないようにするためだった。一度気になるととことんその事について突き詰める性格であり、櫂直自身の数学の知識を活かして航空や語学などさまざまな方面に才能を発揮していく。 海軍の山本五十六をはじめ陸軍の東条英機達軍部首脳からはその才能を高く評価され、「利用価値の高い男」として注目を集めている。

山本 五十六 (やまもと いそろく)

大日本帝国海軍少将・司令長官を務める男性。大艦巨砲主義のもと、巨大戦艦の建造に進もうとする海軍にあって、これからの戦争は戦艦ではなく航空機が主体となるという予想を持った先見性のある人物。日本が国際社会において孤立しつつあり、アメリカ等の国との間で緊張が高まっている現実を目の当たりにした事から、日本の将来を憂慮している。 櫂直を平山忠道の戦艦「大和」建造計画を潰すために海軍に入れる事を提案した人物であり、平山の大和建造計画が頓挫したあとも、櫂の才能を日本の将来に役立てようと考える。

平山 忠道 (ひらやま ただみち)

大日本帝国海軍中将の男性。軍艦の設計を担当しており、新型戦艦建造計画会議では巨大戦艦「大和」を提案した。造船会社大手の尾崎財閥と深い癒着があり、不当に安い金額で大和の建造を発注したが、櫂直によって安全性に問題がある事を指摘される。平山忠道自身に不利と判断するや身を引く潔さも持ち合わせている。大和の建造は自身にとっての野望であり、その実現には手段を選ばない。 一方で、大和の建造は日本という国家全体のために必要な事業とも考えており、軍人として国家を憂える気持ちは強い。

藤岡 喜男 (ふじおか よしお)

大日本帝国海軍少将の男性。造船を担当しており、新型戦艦建造計画会議では平山忠道の提出した案と対立する。大艦巨砲主義の平山に対して、兵員の運用を第一に考えた実用的な軍艦を設計する事を旨とする。実直な軍人であり、櫂直への資料提供についても軍事機密という理由で拒むほどだった。過去に自身が設計した水雷艇が事故に遭遇し、沈没した事の責任を取り自決する。

田中 正二郎 (たなか しょうじろう)

櫂直の副官の男性。年齢は櫂よりも3歳年上だが、階級主義の大日本帝国海軍においては櫂に対して忠実に従う。日本という国に対する愛国心を持ち、日本を正しい方向へ導こうとする櫂に賛同し共に困難に立ち向かう。櫂に絶大な信頼を寄せており、櫂が海軍を辞めようとしていた時にはその才能を惜しんで反対した。

尾崎 鏡子 (おざき きょうこ)

尾崎財閥の令嬢。かつて自身の家庭教師だった櫂直に対して思いを寄せており、その思いが高じて結果的に櫂が自分のもとを去っていった事に心を痛めている。櫂が家庭教師を辞したあともたびたび彼のもとを訪れ近況を尋ねるが、既に佳つ世と生きる事を心に決めた櫂には、そのたびに袖にされている。

高任 久仁彦 (たかとう くにひこ)

平山忠道の部下の男性。平山に命じられて櫂直の身辺調査を行い、櫂の過去に尾崎財閥の令嬢である尾崎鏡子が関係している事を突き止める。櫂に対しては一定の評価をしているものの、立場上自身とは対立する関係にあるため平山を支持する。のちに戦艦「大和」建造計画が頓挫するに伴い平山を見限り、海軍中将・嶋田繁太郎のもとに身を寄せ、彼の指示で行動するようになる。

鶴辺 清 (つるべ きよし)

民間造船会社の社長を務めている男性。第一次世界大戦で乗り合わせた船が魚雷攻撃を受けた経験を持っており、それからは船の安全性を第一に考えた造船設計を心がけている。また、先の経験から戦争については櫂直同様に反対の立場をとっており、軍艦の設計についても「戦争をするためではなく抑止力のため」と考えている。航空母艦の飛行甲板について直線式が主流だった当時において、斜め式の飛行甲板を提案するなど、先見性にも優れた人物。

小石川 達郎 (こいしかわ たつろう)

大日本帝国海軍の造船少将の男性。平山忠道のもと戦艦「大和」の設計に携わっており、「大きな戦艦」を作りたいという願望を持っている。櫂直ほどではないまでも、数学や設計において非凡な才能を持っており、対立する立場ではあるものの櫂に対しては理解を示している。戦争に関しては賛成でも反対でもなく、大きな戦艦を作る事ができれば何でもいいという考えの持ち主。

佳つ世 (かつよ)

芸姑の女性。新型戦艦建造計画会議で平山忠道の案を退けた祝宴の席で櫂直と知り合う。その後は急速に櫂と惹かれあい、櫂は彼女との結婚を考えるようになる。「佳つ世」は芸姑としての源氏名であり、本名は「ヒサ」という。芸姑という身分では海軍に務める櫂とは釣り合わないと思いつつ、自身が幼い頃に両親と別れた天涯孤独の身である事から、櫂と離れたくないと考えている。

堀越 二郎 (ほりこし じろう)

航空機メーカー「三菱」に所属する設計者の男性。これからの戦争は航空機が主体となる事を見抜いた櫂直と出会う。堀越二郎自身の設計した図面を評価した櫂と意気投合するも、自らの設計した戦闘機が航空母艦での運用を想定していない事から櫂とは意見が分かれる。櫂本人の持つ才能には一定の評価をしており、日本の航空技術の発展のためには他社へ技術を提供する事も厭わない。 のちに零式艦上戦闘機を設計する。

坂巻 茂雄 (さかまき しげお)

大日本帝国海軍機関大尉の男性。海軍航空廠で戦闘機の設計開発に携わっている。芸姑の佳つ世に入れ込んでおり、櫂直が彼女と懇意にしている事から当初は櫂の事を快く思っていなかった。のちに櫂の設計をもとにした新型戦闘機の開発に携わるようになり、反目しつつも櫂に協力する。直情型の性格の持ち主だが気のいい人物で、自身の信念に従って行動する。

永田 鉄山 (ながた てつざん)

大日本帝国陸軍中将の男性。航空機メーカー「中島」の社長とは深いつながりがあり、櫂直に協力するよう呼びかけた。櫂については、部下の東条英機によって紹介されたものの当初は協力するつもりはなく、適当にあしらうつもりだったが、櫂の持つ熱意と将来的な利用価値とを考え協力する事にする。陸軍内部で起こったクーデターに巻き込まれ部下に斬殺される。

東条 英機 (とうじょう ひでき)

大日本帝国陸軍中将の男性。航空機メーカー「中島」が陸軍に近い事を知った櫂直が、協力を要請するために接触した。現在は福岡県久留米市に駐留しており、ふだんは釣りをする等閑職に甘んじているが、将来的に中央で権力を握る事を目指し雌伏の時を過ごしている。櫂の持つ才能を認め、将来的に東条英機自身の役に立つ事を見越して永田鉄山を紹介する。

小山 悌 (こやま やすし)

航空機メーカー「中島」の主任設計者の男性。戦闘機の開発においては搭乗員の安全を第一に考え、設計する事を信条としている。日本の航空技術の発展のためには敢えて自身の開発したエンジンを競合他社に提供する事もいとわない、柔軟な思考の持ち主。のちに戦闘機「隼」「疾風」を設計する。

八神 武文 (やがみ たけふみ)

航空廠専属搭乗員の男性。優秀な操縦技術を持っているが、乗る機体に負荷のかかる操縦を行うため、テスト飛行によって機体をバラバラにしてしまう事が多い。空戦においては、急降下して攻撃する一撃離脱戦法を得意としており、その戦法のために戦闘機に負担をかけた操縦をしてしまう。

乾 勝治 (いぬい かつじ)

大日本帝国海軍航空隊教官の男性。小柄で軽量という、航空機の操縦に最適な体格の持ち主。そのため、戦闘機の操縦技術は海軍でも随一といわれており、その技術を買われて航空隊で教官を務めている。八神武文を始めとする航空隊員を数多く指導しているが、性格は強引かつ狭量な人物のため部下達からの人望は薄い。

ハインリッヒ・シュバルツ (はいんりっひしゅばるつ)

ドイツ軍少佐の男性。父親がユダヤ人である事から、ドイツ国内で高まりつつあるユダヤ人迫害を逃れるために軍へ入隊した経歴を持つ。かつては櫂直と同じく数学を学んでいた秀才であり、当初は櫂に対して見下したような態度を取っていたが、やがて櫂の優秀さを認めるようになる。ハインリッヒ・シュバルツ自身と同じような経歴を持った櫂とは互いに通じるものを感じ、櫂に対してまだ研究中のガスタービン機関の技術を提供する。

源田 實 (げんだ みのる)

海軍航空隊隊長の男性。海軍航空隊の中では熟練した搭乗員であり、戦闘機の正式採用についても彼の意見が活かされている。豪快な性格で他人に有無を言わせない強引な部分と共に、戦闘機の操縦における微妙なクセを読み取るなど、繊細な部分も持ち合わせている。

永野 修身 (ながの おさみ)

大日本帝国海軍大将の男性。司令長官・山本五十六の後ろ盾として、海軍内部でも高い地位にある。山本と同じく将来の日本海軍は巨大戦艦ではなく航空兵力が主体となると考えていたが、櫂直が提案する超巨大戦艦の構想を評価し、戦艦「大和」の建造を認可する。

嶋田 繁太郎 (しまだ しげたろう)

大日本帝国海軍中将の男性。平山忠道の上司で、平山と共に巨大戦艦の建造を推進していた。国家存亡の事よりも自らの保身を第一に考える人物であり、海軍内部での地位と権力を手に入れるために平山達を利用する。山本五十六とは同期ながら将来の軍備構想において対立する事が多い。

桑野 肇 (くわの はじめ)

大日本帝国海軍中佐の男性。帝大造船科を卒業し、艦船の設計においては非凡な才能を示す反面協調性に欠けるため海軍内部でも疎まれていた。100年先の日本海軍の軍艦を構想するなど、優れた先見性の持ち主で、櫂直はその先見性と設計の才能を自身の戦艦「大和」の建造計画に取り入れる。

その他キーワード

大和 (やまと)

大日本帝国海軍の平山忠道が中心となって建造計画を推進している戦艦。これまでに類を見ない超巨大戦艦として設計されており、平山はこの戦艦を建造する事を自身の天命と考えている。海軍内部でも大艦巨砲主義者が多く、戦艦「大和」に期待する者は多い。

書誌情報

アルキメデスの大戦 38巻 講談社〈ヤンマガKCスペシャル〉

第1巻

(2016-05-06発行、 978-4063827811)

第2巻

(2016-05-06発行、 978-4063827828)

第3巻

(2016-08-05発行、 978-4063828283)

第4巻

(2016-11-04発行、 978-4063828764)

第5巻

(2017-02-06発行、 978-4063829280)

第6巻

(2017-04-06発行、 978-4063829518)

第7巻

(2017-08-04発行、 978-4065100882)

第8巻

(2017-11-06発行、 978-4065103531)

第9巻

(2018-03-06発行、 978-4065110911)

第10巻

(2018-07-06発行、 978-4065116494)

第11巻

(2018-08-06発行、 978-4065124130)

第12巻

(2018-11-06発行、 978-4065135570)

第13巻

(2019-03-06発行、 978-4065148266)

第14巻

(2019-05-07発行、 978-4065154670)

第15巻

(2019-06-06発行、 978-4065161326)

第16巻

(2019-07-05発行、 978-4065163559)

第17巻

(2019-08-06発行、 978-4065167281)

第18巻

(2019-11-06発行、 978-4065177235)

第19巻

(2020-02-06発行、 978-4065184882)

第23巻

(2021-02-05発行、 978-4065222911)

第24巻

(2021-05-06発行、 978-4065233351)

第25巻

(2021-08-05発行、 978-4065243374)

第26巻

(2021-11-05発行、 978-4065258545)

第27巻

(2022-02-04発行、 978-4065268193)

第28巻

(2022-05-06発行、 978-4065277874)

第29巻

(2022-08-05発行、 978-4065288030)

第30巻

(2022-11-04発行、 978-4065297537)

第31巻

(2023-02-06発行、 978-4065307021)

第32巻

(2023-05-08発行、 978-4065316931)

第33巻

(2023-07-06発行、 978-4065322475)

第34巻

(2023-08-04発行、 978-4065326565)

第35巻

(2023-09-06発行、 978-4065330173)

第36巻

(2023-10-05発行、 978-4065333167)

第37巻

(2023-11-06発行、 978-4065336274)

第38巻

(2023-12-06発行、 978-4065341209)

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