概要・あらすじ
海上自衛隊の誇る最新鋭のイージス艦みらいは、新日米ガイドラインによる海外派遣に向かう途中、突如巻き起こった嵐に巻き込まれて落雷を受け、ミッドウェー海戦直前の太平洋戦争の時代へとタイムスリップする。目の前で激しい戦闘が繰り広げられ、艦内が混乱する中、副長である角松洋介は人命を優先し、みらいの付近に墜落した偵察機から大日本帝国海軍の将校・草加巧海を救助する。
みらい艦内で目を覚ました草加は、大日本帝国が悲壮な敗戦を迎えるという未来を知り、戦後日本と異なる未来の日本、ジパングを作ることを決意し、行動を開始。歴史改変を阻止するべく、拠るべき国もない角松ら、みらいクルー達の孤独な戦いが始まる。
登場人物・キャラクター
角松 洋介 (かどまつ ようすけ)
海上自衛隊に所属する自衛官の男性で、階級は二等海佐。イージス艦みらいの副長兼船務長を務める。人命を何よりも大切に考える情に厚い人物で、仲間はもちろん敵軍の兵士であっても命を見捨てることを決してしない。ミッドウェー海戦の最中にタイムスリップした際、本来死ぬはずであった大日本帝国海軍の少佐・草加拓海の命を救ったことで、後の日本の歴史を変えるきっかけを作ってしまう。 みらいクルーの中では最も早く内地に上がったこともあり、太平洋戦争中の時代への適応力は高く、現代では想定されていない艦隊戦の戦術にも対応するなど卓越した指揮力をもつ。梅津が負傷してからは、みらい艦長の座を譲り受ける。 歴史改変を避けようとする方針に不満をもったクルー達により、一時退艦を余儀なくされるなどの困難に遭うも、クルーをまとめあげ、草加の計画を阻止するために戦う。
草加 拓海 (くさか たくみ)
もう1人の主人公というべき存在。大日本帝国海軍に所属する軍人で、ミッドウェー海戦にて、飛行機を撃墜されるが、角松によって命を救われる。愛国心が強く、みらいの艦内で日本が敗北する未来を知り、その歴史を変えるため、大日本帝国海軍の軍人ではなく1人の日本人として行動を開始。戦後日本とも異なる新たな日本・ジパングを作るため、山本五十六、石原莞爾、滝栄一郎といった優秀な人材を取り込みつつ、世界で初の原子力爆弾を作り出そうと暗躍する。 目的のためには手段を選ばないが、みらいのクルーに対しては親しみに近い感情を抱いており、中でも自身の計画を遂行する上で最大の障害となる角松のことを、自分をもっとも理解する人間として認識している。 開戦前には、駐英武官補としてイギリスに滞在していた時期もあり、その際には英国軍士官に日本のお守りをプレゼントしている。
梅津 三郎 (うめづ さぶろう)
海上自衛隊に所属する自衛官の男性で、イージス艦みらいの艦長。のらりくらりと決断を避けがちなことから「昼行灯」というあだ名をつけられているが、それは艦や部下達のことを第一に考える思慮深さを持ち合わせているため。かつての阪神・淡路大震災の復興支援の任務では、規律を破って陸上自衛隊と連携をとるなど、必要な時には大胆な決断を行うこともあり、角松からは絶大の信頼を寄せられている。 戦闘中の負傷が原因で艦を降りてからは、内地でみらいクルーの帰りを待つ精神的支柱の役割を果たすが、草加による原子力爆弾製造を止めるため、如月と共に満州へと渡る。製造プラントを見つけ出し、原子力爆弾まであと一歩という所にまで迫るが、濃縮ウランの入ったトランクを手に身動きがとれなくなった所を撃たれて殉職した。 この行動により開発プラントを破棄せざるを得なくなり、爆弾の小型化が不可能となったことが、後の草加の計画に大きな狂いを生じさせることになる。
菊池 雅行 (きくち まさゆき)
海上自衛隊に所属する自衛官の男性で、イージス艦みらいの砲雷長。階級は三等海佐。副長である角松と航海長の尾栗とは防衛大学の同期。プライベートでは対等な関係で、互いに固い信頼関係で結ばれている。防衛大学時代は、たとえ自衛官であっても人殺しをしたくないと考えており、任官間近に自主退学を決意したこともあるほど戦争を嫌悪していた。 当初は草加を救おうとする角松を制止するなど、歴史改変に対して消極的な立場だったが、原子力爆弾によって太平洋戦争の結末を変えようとする草加の計画に惹かれていく。草加と通じた後は彼の協力者として謀反を起こし、角松を追い出してみらいの指揮権を剥奪する。 その後は角松と和解するが、角松を撃つと誤解した麻生の発砲により負傷。重傷を負うも生還し、以後は退艦し、内地から角松達をサポートするようになる。
尾栗 康平 (おぐり こうへい)
海上自衛隊に所属する自衛官の男性で、イージス艦みらいの航海長。階級は三等海佐。副長である角松と砲雷長の菊池とは防衛大学の同期。気さくで情にもろい、誰とでも仲良くなれる性格で、みらいのムードメーカー。歴史を変える可能性を恐れる菊池とは対象的に、自衛による武力行使を主張し、当時の大日本帝国海軍の戦艦に乗っていた河本らにブランデーを差し入れ交友関係を築くなど、積極的に行動する。 梅津からはその楽天的な性格を危ぶまれることもあるが、若松からの信頼は厚く、草加を追いかけて一時艦を離れる際には、副長代行を任命され、みらいの命とも言える自沈装置を託された。菊池のクーデターでは身柄を拘束されそうになるも、事前に自沈装置の解除パスワードを変更しておく機転を利かせて艦に残り、戦争に向かおうとするみらいのブレーキ役を果たした。
滝 栄一郎 (たき えいいちろう)
大日本帝国海軍に所属する男性。階級は少佐で、後に中佐に昇格。草加とは帝国海軍大学校時代からの同期であり、ライバル的な関係。当初はみらいや草加を危険視しており、米軍機動部隊の空母ワスプを利用した作戦でみらいの撃沈を図るなど敵対的な行動をとっていた。その後みらいに乗艦してクルーらと航海を共にする内に、次第に彼らに敬意を払うようになっていき、梅津が負傷した際には、単身でいち早く医務室に担ぎ込んだこともある。 軍から追われる身になっていた草加を確保し、当初は彼を幽閉するつもりであったが、草加から計画のあらましを聞き、利害が一致すると判断、以後は惜しみない協力をするようになる。 軍人でありながら政治的な手腕に長けており、早期講和のための終戦工作に大きく貢献する。
津田 一馬 (つだ かずま)
大日本帝国海軍に所属する男性で、階級は大尉。草加の元部下で、草加に厚い信頼を寄せていたが、人が変わったかのような草加の様子を見て戸惑いを覚える。みらいが未来の日本からやってきた事を知り、艦内の自販機から出てくるアメリカの飲料を見た際には困惑していた。その後は草加の代わりにみらいに乗艦、みらいが大和と戦闘状態になった際には捕虜として自害を試みるが、死ぬことが恐しいと桃井に告白し失敗する。 山本の命令で草加の足取りを追う内に草加の計画に巻き込まれていき、戦争の歴史を変えるためヒトラーの暗殺司令を受ける。ヒトラーにあと一歩のところまで迫るも、暗殺は失敗。 重傷を負いながら執念で駆けつけた草加と合流するも、治療を受ける途中で息を引き取った。
麻生 保 (あそう やすし)
海上自衛隊に所属する自衛官の男性で、イージス艦みらいの掌帆長。階級は海曹長で、先任曹長として下士官をまとめ上げるリーダー的な存在。部下を信頼することを信条とする温厚な人物であり、角松が退艦せざるを得なくなった際には、艦を降りて行動と共にする。また角松が艦を離れることになった戦艦・大和に乗り込んでの作戦では、実戦経験の豊富さを買われ桐野の補佐役として実質的なみらいの指揮を任されるなど、特別な信頼を得ている。 サザンオールスターズのファンで、プレゼントしたCDを島に残してきた部下を咎めず、もう1度戻ってCDを取りにくることを誓い合った。
柳 一信 (やなぎ かずのぶ)
海上自衛隊に所属する自衛官の男性で、イージス艦みらいのクルー。階級は一等海曹。角松から「山本長官のホクロの数まで知っている」と称されるほどの軍事オタクで、当時の兵器や作戦の内容に関する解説役として活躍する。現代では演習の際に尾栗に殴られて簡単に気を失うなど、自衛官としての練度の低さを露呈していたが、タイムスリップ後は角松と行動を共にし、危険な任務にかり出されることも多い。 軍事オタクでありながら歴史の改編にはさほど興味がないようで、角松が退艦する際には共にみらいを降りていた。
佐竹 守 (さたけ まもる)
海上自衛隊に所属する自衛官の男性で、イージス艦みらいのクルー。階級は一等海尉。みらいに搭載されている艦載ヘリ・海鳥のメインパイロットで、絶対に沈むことを許されないみらいに代わり、強行偵察など隊の中でも一際危険な任務を担当する。小笠原諸島での戦闘で、自身の油断から部下の森を死なせ、最初の殉職者を出してしまったことに強い責任を感じている。 この時代の戦争に取り込まれないため、元の時代に戻った時に支払われる特別手当の金額を算出し、現代人としての正気を保っていた。日本軍の撤退支援作戦中、セクションS航空部隊の攻撃からみらいを守るため、咄嗟に部下の林原を脱出させ、海鳥ごとみらいの盾となって殉職。 艦にとって非常に重要な存在であった彼の死の影響は大きく、艦は2つに割れ謀反が行われるきっかけを作ってしまう。
林原 克敏 (はやしばら かつとし)
海上自衛隊に所属する自衛官の男性で、イージス艦みらいのクルー。階級は三等海尉。殉職した森に代わって海鳥の射撃士を担当し、操縦士である佐竹への信頼は厚い。海鳥が失われた後は、残された最後の航空戦力であるシーホークの操縦士を務める。自身だけが生き残った意味に悩んでいたが、大和の機関部を停止させるため、汎用ヘリ・シーホークで対空砲火を潜り抜けて接近する危険な作戦に自ら志願し、大和の機関部を停止させる。
青梅 鷹志 (おうめ たかし)
海上自衛隊に所属する自衛官の男性で、イージス艦みらいのクルー。階級は一等海曹。艦の中枢とも言えるイージスシステムの最先任で、CICの中でも重要な役割を担う。そのため、艦の指揮を奪う反乱の際には菊池から真っ先に説得を受ける。太平洋戦争の時代の一員として戦争に参加することで、2度と妻子に会えなくなる予感を抱いていたため、当初は菊池の誘いにも乗り気ではなかったが、最終的には説得を受け、謀反に参加する。 大和乗艦作戦では、イージスシステムが使用不能に陥り、CICでの任務がなくなったことから、ハンドアローによる機関部の破壊や大和に乗り込んでの原子爆弾解体など、危険な任務に自ら志願する。
米倉 薫 (よねくら かおる)
海上自衛隊に所属する自衛官の男性で、イージス艦みらいのクルー。階級は一等海尉。艦の火器管制を統制するCICの要員だったが、太平洋戦争の時代にタイムスリップして最初の米潜水艦ガードフィッシュとの戦闘で、元の時代に戻れないという絶望と実戦の恐怖から、対潜ミサイル・アスロックを独断で発射。 アスロックを自爆させたことにより最悪の事態は避けられたものの、菊池によってCICからは叩き出され、補給科に異動となり、クルーからも蔑まれるようになる。しかしその後は何度も実戦を経験したことで成長。CIC要員としてはかなり優秀だったらしく、砲雷科に戻った後は退艦した菊池に代わって砲雷長代行を務め、大和への乗艦作戦では原子力爆弾の解体要員として選抜されるほどになる。
桃井 佐知子 (ももい さちこ)
海上自衛隊に所属する自衛官で、イージス艦みらい唯一の女性クルー。衛生士で、階級は一等海尉。捕虜となった津田が自害しようとした際には、男の情なさが露呈していると諭し、自害を思いとどまらせる。艦の空気に鋭く、菊池が謀反を画策している時、角松への不満が増えていることを察し心配していた。 みらいを大日本帝国海軍に奪われた際には、志願看護師として菊池の治療を担当。みらいを降りたことを戦闘艦の呪縛から逃れられたと考え、このまま平穏に暮らすべきだと考えていたが、梅津の最後の意思を伝えにきた如月の言葉を聞き、クルーの脱走に手を貸す。その後は、内地から菊池と共にみらいのサポートを行う。
立花 (たちばな)
海上自衛隊に所属する自衛官で、イージス艦みらいのクルー。階級は二等海尉。角松のことを心から尊敬しており、菊池が謀反を起こした際も角松のためなら死ねると豪語して抵抗した。角松が退艦する際にも共に艦を降りようとするが、みらいの外側の世界への恐怖をぬぐいきれず、みらいに残ることになり、尊敬する角松の力になれなかったことが負い目となってしまう。 みらいの大日本帝国海軍との共同作戦では、戦争への恐怖を克服するべく通信要員として空母龍驤に乗艦。英空軍の攻撃前にみらいへの退避を勧められるも、自身1人のために艦を危険にさらしてしまうことはできないと拒否する。その際の攻撃によって通信室からの脱出が不可能となり、最後の瞬間までみらいとの通信を行いつつ、沈み行く龍驤と運命を共にした。
桐野 (きりの)
海上自衛隊に所属する自衛官で、イージス艦みらいのクルー。階級は一等海尉。菊池の腹心的な存在であり、反乱の中心として角松派のクルー達に対し威圧的な言動をとる。菊池が負傷した際には草加、滝と通じて日本軍を呼び込み、みらいを制圧して自らの指揮下に置こうとする。しかし裏切り者である彼は草加や滝の信頼を得ることはできず、他のクルーと共に軟禁されることになる。 実戦経験こそ不足しているが、角松や菊池、尾栗らに次ぐ立場にあり、角松らが大和乗艦作戦のために艦を離れる際には、麻生と共にみらいの指揮を任された。
片桐 (かたぎり)
フリーのジャーナリストの男性で、海外派遣に向かうみらいの取材のため乗艦していた所をタイムスリップに巻き込まれる。現代に帰れなくなろうとも、ジャーナリズムの精神を捨ててはおらず、太平洋戦争の時代には存在しないみらいの艦内を撮影することで、この時代でのピューリッツァー賞を狙っているタフな精神の持ち主。 そのため、常日頃みらいのクルー達の取材を怠らず、クルー達が成長していることを日々認識している。角松らが原子力爆弾の破壊に大和へと赴く際には、危険を省みず自身も連れていって貰えるよう懇願した。これは受け容れられなかったため、代わりに愛用のカメラを角松に託す。
如月 克己 (きさらぎ かつみ)
上海陸戦隊の連絡将校で、階級は特務中尉。草加を追って満州に潜入した角松や梅津をサポートした。その後は日本へ戻り、引き続きみらいの協力者となる。常に冷静沈着で、顔色ひとつ変えず殺しを行える優秀な軍人で、草加も1度会話しただけでその存在を警戒するようになったほど。一方で、満州において角松が瀕死の重傷を負った際には、自身の血を輸血させて角松を救うなど、情に厚い一面も持ち合わせている。 梅津とは僅かな交流しかなかったが、彼の形見となった眼鏡を桃井に渡し、梅津の意思を伝えたことで、バラバラになりかけていたみらいクルーを1つにする重要な役割を果たす。
河本 (かわもと)
大日本帝国海軍に所属する男性で、階級は兵曹長。当初は所属不明のみらいを警戒するが、差し入れのブランデーを持ち込んだ尾栗と打ち解けて以降、みらいに好意を抱き、様々な便宜を図る。みらいが拿捕された際には、如月と共謀しクルーの脱出を助けた。その際、親しい友人関係となっていた尾栗からみらいへの乗艦を勧められるが、異なる時代の人間である自分はみらいにとっての異物にしかならないと辞退し、大日本帝国海軍に残った。
鴻上 一輝 (こうがみ まさき)
大日本帝国海軍に所属する男性で、階級は大尉。戦艦大和のクルーだが、草加の思想に同調した同志であり、「勉強会」の300人の部下と共に、大和への原子力爆弾の搭載を行う。戦闘により致命傷を負うが、計画遂行のため気力で動き、計画通りに大和を乗っ取ることに成功する。だがその時の負傷が祟り、草加に後を託した直後、停止していた大和機関部の復旧を見届けるように息を引き取った。
山本 五十六 (やまもと いそろく)
大日本帝国海軍に所属する男性で、連合艦隊司令長官。階級は元帥。ミッドウェー海戦でみらいと遭遇し、以後はみらいの行動に理解を示し、彼らの後ろ盾としてサポートを行う。同時に、大日本帝国の軍人としてみらいの戦力を有効活用したいとも考えており、草加の計画にも賛同する。 ラバウルで戦死したという、自分の運命を変えられるかを試すように戦地へと赴き、角松達の世界で戦死したと言われる時刻をやり過ごして生きのびた。だがそれから数時間後、墜落した米軍機から脱出したパイロットに撃たれて戦死する。実在の人物である山本五十六がモデル。
米内 光政 (よない みつまさ)
三国同盟や太平洋戦争に反対した将校で、大本営との不仲により現在は予備役にされている。暴走する日本の軍国主義に歯止めを掛けるには、敗戦を味わうしかないと考えており、日本に勝利をもたらしかねないみらいの戦力を危険視、自沈を促した。山本五十六の死後、みらいや角松の唯一の後ろ盾としてサポートを行い、角松がみらいに戻るための潜水艦や補給物資を手配するなど、最大の支援者となる。 みらいが大日本帝国海軍と袂を分かった後も協力関係は継続し、菊池や桃井らと共に内地で終戦に向けた工作を行う。実在の人物である米内光政がモデル。
石原 莞爾 (いしわら かんじ)
大日本帝国陸軍の将校だったが、日米開戦に猛反対したことから予備役とされ、軍から身を退いて反政府的な講義を行っていた。優れた戦略眼をもち、戦争を一撃で終結させる最終兵器が作られ戦争そのものが行われなくなるという、核兵器の誕生を戦前から予言していた。満州から石油が噴出されるという未来の話を聞き、日米戦略が根本から覆えせると考えて草加に協力。 軍に復帰後は支那派遣軍総参謀長として、草加の原子力爆弾製造を支援する。実在の人物である石原莞爾がモデル。
倉田 万作 (くらた まんさく)
中間子理論を研究する物理学者の男性。湯川秀樹と並び称されるほどの秀才だったが、滝川事件の抗議運動に参加したことから、軍に目をつけられ科学者としての未来を奪われる。草加に未来を予言されたことで草加に興味を抱き協力するようになり、世界初の原子力爆弾製造を行う。しかし完成前に原子爆弾を追いかけていた梅津と如月によって拉致され、すぐさま開発を中止するよう説得を受けるが、これを拒否。 だが、大量殺人の扶助をすることにはやはり抵抗があったようで、梅津が目の前で殺されて以降、爆弾の近くで時折彼の幻を見るようになる。
吉村 次郎 (よしむら じろう)
元満鉄調査部員の男性で、草加の計画に賛同する腹心的な存在。社会主義にかぶれて特高から逃れるため満州へと渡るが、そこでも軍部からの圧力を受け、組織を抜けて草加に協力することになる。真正面から物事を受け止めるのは苦手で、面倒ごとからは逃げ続ける性分。原子力爆弾の製造を行った後は草加の計画に従い、国内の終戦工作を行っていたが、菊池と如月によって拘束される。 草加とみらいの対立とは無関係に、戦争を終わらせるという目的が一致することから、説得に応じ行動を共にするようになる。
サミュエル・D・ハットン (さみゅえる・でぃ・はっとん)
アメリカ海軍に所属する男性で、空母ワスプの航空隊隊長。階級は中佐。ヨーロッパ戦線でほぼ無傷に近い戦績を誇ったこともあるエースパイロットで、みらいの対空砲火をかいくぐり、500ポンド爆弾を投下し、レーダーを破壊しながら船体の情報を持ち帰るという大戦果を上げる。その後設立されたセクションSのメンバーにも選ばれ、航空部隊の指揮を執る。 みらいの弱点を的確につく戦術により、海鳥の撃墜に成功するも、自身は自動操縦の効かなくなった爆撃機から仲間達を逃がすため最後までコクピットに残り、爆発に巻き込まれて戦死する。
クリス・エバンス
アメリカ海軍に所属する男性で潜水艦ガードフィッシュの艦長。階級は中佐。みらいと初めて戦闘を行った艦で、米倉の発射したアスロックによる攻撃を受けた後、その戦闘力に驚愕しつつ情報をアメリカ本国へと持ち帰る。その後みらいとの交戦経験を買われてセクションSのメンバーに選ばれ、ハットンの機体に同乗。 みらいの対空砲火によりコクピットが損傷した際、銃弾に撃ち抜かれて戦死する。
ウィリアム・テイラー
アメリカ海軍に所属する男性で、戦艦ノースカロライナの副長。ハットンから得た情報から、どんなに強力な艦であってもそれを運用するのは人間であると見抜き、みらいのレーダーと濃霧を利用した戦術でみらいを追い詰めるも、角松の機転によって艦を失う。セクションSのメンバーにも選ばれるも作戦は失敗、1人脱出に成功し捕虜となり、角松と接触、みらいがこの時代の艦ではないことを知る。 個人としてはみらいの存在に惹かれつつも、世界の現実を揺るがす存在であるみらいをアメリカ本国が受け入れることはないと伝え、決別する。
フランツ・グールド
アメリカ海軍の従軍記者の男性で、階級は大尉待遇。本業はカメラマンだが優れた観察眼をもち、司令長官からタワラの日本軍の陣地を撮影した写真について意見をもとめられ、偽装工作を見抜く。その真偽を確かめるべくタワラに上陸し、撤退の支援を行っていた角松や菊池と遭遇、その姿をカメラに収めることに成功する。 漏洩を恐れた海軍情報部により写真を回収され、事実上の口止めを受けるも、その後もみらいとの関わりは続き、カーネルらと共にみらいや草加の謎に迫っていくことになる。
ハリー・カーネル
アメリカ海軍に所属する男性で、海軍作戦部の将校。階級は少佐。前線の士官達からは“鬼”として恐れられるほどの優れた戦略眼の持ち主。次々と基地を引き上げていく日本軍を見て士官達が勝利を確信する中、兵力を維持したまま戦線を縮小する日本軍のこれまでの作戦との違いから違和感を覚え、背後にある草加という異物の存在を見抜く。 指揮権をもつ艦隊司令であるミッチャーとの折り合いは悪く、いっこうに意見が聞き入れられない中、ルーズヴェルトを動かし、大統領直属の命令として実質的な指揮権を掌握することに成功。みらい及び大和に搭載された原子力爆弾を奪取するべく部隊を展開する。
集団・組織
セクションS
『ジパング』に登場する、アメリカの富豪ハワード・ヒューズにより設立された対みらい特務機関。ハットン、エバンス、テイラーら、みらいの戦闘を経験した軍人を中心に構成される。みらいに関する情報や船体の一部には、莫大な懸賞金が掛けられており、それをモチベーションとする隊員も多い。ダンピール海峡での奇襲の失敗により、主要メンバーを失い、致命的な打撃を受けたが、貴重な情報を入手したことで、以後はルーズヴェルト大統領直属の機関として活動する。
場所
ジパング
『ジパング』に登場する架空の国家。草加が太平洋戦争の歴史を変えることで作りだそうとしている、大日本帝国とも戦後日本とも異なる、日本人が経験することのなかった新しい国家の名称。この構想を耳にした角松は、この構想をおとぎ話と切り捨て、草加との決別を宣言。両者の因縁が始まることとなる。後に角松は、草加の目指していたみらいが所属するべき大日本帝国とは別の、もう1つの日本として、ジパングの名前を用いている。
その他キーワード
DDH-182 みらい
『ジパング』に登場する架空のイージス艦。海上自衛隊が誇る第2世代のイージス護衛艦で、こんごう型を範としつつ対潜ヘリコプターの搭載を念頭に設計された。フェーズド・アレイ・レーダーをはじめとする最先端技術を惜しみなくつぎ込んだハイテク艦だが、周辺国や国内情勢への配慮から、満載排水量は1万t以内に抑えられている。『ジパング』作中では太平洋戦争の時代にタイムスリップし、クルー達の家ともいうべき唯一のより所として、重要な役割を果たす。 最新のレーダーやミサイル兵器により同時代の戦艦とは一線を画す圧倒的な戦闘力を発揮する一方、現代戦では近距離での艦隊戦を想定されていないことから装甲は薄く、ミサイルの使用を制限される場面では苦戦を余儀なくされた。 みらいの他に、DDH-01「ゆきなみ」、DDH-02「あすか」という同型艦も存在する。
MV/SA-32J 海鳥 (うみどり)
『ジパング』に登場する架空の艦載機。ベル社と三菱が共同開発した垂直離着陸機で、主に航空科の佐竹が操縦、森や林原が銃手を担当する。自由に身動きをとることができないみらいにとって“目”ともいうべき存在で、強行偵察から連絡飛行、機銃による支援や巡航ミサイルの中間誘導など、みらいの作戦の中でも特に危険度の高い任務を担当した。 ダンピール海峡でのセクションSの部隊との戦いで使用不能となった後部CIWSの給弾作業を支援するため、危険を冒して発艦。米軍の航空機との戦闘により機銃が使用不能へと陥り、みらいを守るための盾となって撃墜された。