α

α

お嬢様女優の三神妃子が、劇団出身の若手実力派俳優3人と切磋琢磨し、本物の女優へと階段を上っていく成長物語。劇中劇である「α」シリーズ6編と、俳優としてその劇を演じる舞台裏を描いた「+α」シリーズ6編との計12編で構成されている。「α」シリーズは、SFファンタジー、現代青春劇、サスペンスホラー、SFコメディ、近代の西洋もの、学園ものと、バラエティに富み、それぞれが独立して楽しめる短編になっている。雑誌掲載時は、まず「α」シリーズ6編が先に発表され、何の説明もなかったため読者を戸惑わせた。その後、「+α」シリーズが発表されて、劇中劇だとわかるようになった。単行本化にあたり、「α1」「+α1」「α2」「+α2」というように、時系列に沿って劇中劇と舞台裏を交互に並べ替えたため、わかりやすい構成になった。しかしその後、文庫本化の際には、雑誌掲載時と同じ構成に戻された。「コーラス」誌上にて、2001年3月号から2003年2月号まで隔月で掲載された。

正式名称
α
ふりがな
あるふぁ
作者
ジャンル
ヒューマンドラマ
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あらすじ

+α(\#1~\#6)

大物俳優を父に持つ三神妃子は、18歳の新人女優。社会経験も恋愛経験もない自分に、まったく自信が持てない。大きな映画賞で新人賞をとるが、七光りの結果だと思われているのではと、周囲の目が気になる。そんなある日、映画の主演の話がくる。共演は若手の実力派俳優、天水キリ山本燿。他人の目など気にしない個性派の2人に劣等感を持つ妃子は、自分に優しく接してくれる付き人の生田理一も共演者に加えてもらう。その3人は同じ劇団出身で、ともに叩き上げてきた仲間だった。実は、4人の出演が決まった映画『α』は、新進気鋭の映画監督・乃木サンジが天水キリのために企画したシリーズの第一弾だった。その事実に、主役の妃子はひそかに傷つく。しかし、テレビドラマや映画で第二弾、第三弾と進むにつれ、妃子の中ではだんだんと役者としての自信と欲、そして天水キリへの想いがふくらんでいくのだった。

α\#1

銀河系の外のある惑星アルファは、特殊な鉱物の影響で、人間から戦闘意欲を削ぐ。空中に深海のような生物が浮かぶ、平和で不思議な星だった。アルファ星の姫・サクラは、ある日、婚約者が決まったと聞かされる。サクラにはひそかに想う相手・アサダがいるのだが、アサダにはローズウッドという恋人がいた。アサダは宙を舞うクラゲのような電気生物・スワスワの扱い手で、アサダと手をつなげば感電せずにスワスワに触れるのだった。何度もアサダと手をつなぐサクラ。実はサクラの婚約者は、占いでアサダと決まっていた。しかし、アサダは辞退したという。かわりに、ヴィータ星から移住してきたキリ中尉が婚約者となる。ヴィータ星人は、触れた相手の心を読む能力を持っている。キリ中尉は、祝いの席で、アサダにもその血が流れているとサクラに教える。

α\#2

女子大生の立花芳乃は、マイペースで機械オンチ。携帯電話も持っていない。合コンに誘われても、待ち合わせを間違える。秋葉原の電気店で携帯電話を衝動買いするが、使いこなせない。美人でマイペースの芳乃は、しばしば傲慢だと誤解され、同性の怒りを買う。このままではいけないと、芳乃は友人達に言われるままにバイトをしてPCを買うが、やはり使いこなせない。そんなある日、秋葉原の電気店店員・棟方キリと再会し、PCの接続をしてくれるようにお願いする。芳乃のアパートは、次々に買った電化製品が段ボールのまま積み上げられていた。仕方なく、それらの接続と設定をするキリ。つないでもらったメールのテストで、芳乃はキリに好意を伝えるが、無視される。芳乃は落ち込むが、数日後、初めて説明書を読んで自力でPCを立ち上げることに成功。するとそこには、キリのアドレスが登録されてあった。

α\#3

日本のとある地方で、 椋木名花子は兄の椋木一真と共に、本家の伯父の葬儀に向かう。本家はその地方の名家で、屈指の資産家でもあった。幼い頃から、名花子は本家のいとこの椋木貴理が好きだった。しかし、貴理の姉の椋木美千子は、エキセントリックなうえに記憶能力に障害があり、苦手だった。その美千子は、川で溺れた名花子を助けようとして、数年前に亡くなった。以来、名花子は美千子の亡霊を見るようになっていた。伯父の葬儀は相続問題で揺れていた。嫡子のはずの貴理は、実は母親が不倫をしてできた子だったのだ。葬儀の間、名花子は、足だけになった美千子の亡霊を見る。その足が自分に触れた瞬間、名花子は何かに憑りつかれたようになり、貴理にキスをして、倒れる。目覚めた時には、美千子の気配が消えていた。そこで名花子は全て理解した。美千子は貴理の姉などではなかったこと。エキセントリックだった美千子は、自分にしか見えない存在だったということ。最後に美千子は、貴理を思う心を名花子に託して成仏したのだった。

α\#4

戦闘艦のコックピットの中、ポニーテールにミニスカートの女兵士・ポチは、艦長と2人で艦を守っていた。操縦盤につけたフライドポテトの油を拭こうとして間違ってロケット弾を発射したり、自分の洗濯物をため込んで資材置き場をいっぱいにしたり、失敗ばかり繰り返すポチに、艦長はテンポよくツッコミを入れ続ける。左遷された元エリートである艦長の、プライドの高さとさり気ない優しさに、ポチは恋心を抱いている。ある時、ついにレーダーにターゲットが映る。艦長は攻撃命令を出すが、有効な武器は何も搭載していない。ポチは「我々にあるのは体当たりのみです」と言う。自爆の覚悟を決め、体当たりに挑む2人。そのコックピットは実は、ある女子大生の脳内にあった。体当たりの指令を自分に出した女子大生は、気になっていた男子に声をかけ、あっけなく振られる。艦は撃沈。しかし、ローテクな艦は古いだけに丈夫で、3日もあれば復活できるはずだと、暗闇の中に艦長の声が響く。

α\#5

イギリスの没落貴族、スペンサー家のただ1人のメイド・ゾウイは、毎朝5時半に起きてキッチリと家事をこなす。孤児院から引き取られて10年間、ひたすら働き続けてきたゾウイのひそかな楽しみは、奥様からもらった日記帳に、華麗なウソの日記を書くことだった。ゾウイは、連日、新聞をにぎわせている怪盗キリィが、スペンサー家のパーティーに変装して現れる日記を書き、胸を躍らせていた。現実のスペンサー家は、寝たきりになった奥様1人で、使用人はとっくに逃げ出していた。無給で働くゾウイだが、ついに小麦粉も底をつく日がきた。奥様は家宝の指輪をゾウイに託す。生活のため、ゾウイは指輪を売ろうとするが、骨董商にレプリカだと鑑定される。本物は、いつの間にかすり替えられていたらしい。驚き嘆くゾウイに、骨董商はレプリカの代金を払い、追い返す。しかし、その後に変装をとくと、中年の骨董商に化けていたのは、若くハンサムな怪盗キリィだった。翌日、奥様の枕元には、売ったはずの指輪があった。驚いたゾウイが窓から見ると、怪盗キリィは屋根の上から「それが本物だ」と言い、ゾウイの額にキスをして消えた。その夜、ゾウイは初めて本当にあった事を日記に書いた。

α\#6

不良高校生の香本ミノルは、傷害事件を起こして寺に預けられた後、別の学校に転入させられる。そこはなんとお嬢様女子校だった。翌年以降の共学化を見越して、試験的に入学させられたのだ。たった一人の男子に興味津々の女子高生達に囲まれ、ミノルの調子は狂い、結果として猫をかぶることになる。本心では、好みのタイプである原口に近づきたいが、彼女は心の病を抱えた友人・笹川水桜につきっきりでチャンスがない。ある日、他のクラスメートから、水桜の病は不良グループに恐喝された挙句、冷凍室に閉じ込められた時の恐怖によるものだと聞く。ミノルは、もしかしたら犯人は自分のグループだったのではと思う。朝、水桜はいつも校門の前で震えて立ちすくんでいる。その手を引いて教室へ連れていくのは原口の役目だった。ある朝、ミノルが水桜の手を引いて教室へ連れていった。その日の昼休み、水桜はミノルの席まで来て微笑みかけ、次の瞬間、悲鳴をあげた。不良グループにいたミノルの顔を水桜は覚えていたのだ。翌日から、女子高生達はミノルを避けるようになる。しかし、今まで話した事もない原口だけが、ミノルに「おはよう」と笑いかけた。原口はミノルと水桜の手を取って校門をくぐった。

登場人物・キャラクター

三神 妃子 (みかみ ひこ)

大物俳優・三神力の一人娘。18歳。女優としてデビューし新人賞もとるが、他人の目ばかり気になり「七光り」という言葉に敏感に反応する。傍目には、謙虚で気配りができるいい子だが、自己評価が低く、常に胸の内に葛藤を抱えている。自分のやり方が通じない天水キリが苦手だったが、次第に心惹かれていく。貧乏劇団員時代をともに過ごしたキリと山本燿と生田理一の3人の絆に嫉妬し、憧れる。 3人に追いつこうと努力しているうちに、実力と自信をつけていく。一見、か弱いお嬢様のようだが、芯が強い。

天水 キリ (たかみ きり)

人気・実力ともに当代一の若手俳優。日本の代表的な映画賞で優秀賞をとったが、表彰式に出ずにパチンコをしているほどの変わり者。常にテンションが変わらず、社交辞令なども言わない。皮肉屋で冷たく見えるため、初めのうちは三神妃子に苦手とされていた。山本燿、生田理一と同じ劇団の出身で、仲間。実は、妃子の演技力と人間性を高く評価している。

山本 燿 (やまもと かがり)

天水キリ、生田理一と同じ劇団出身の女優で、仲間。映画賞では、三神妃子の前年の新人賞受賞者だった。抜群のスタイルを持つ美女だが、飾り気がなく、貧乏劇団員時代と同じアパートに住み続けている。アクセサリーなど小物を作るのが趣味で、路上で売って生計を立てていた時期もある。

生田 理一 (いくた りいち)

天水キリ、山本燿と同じ劇団出身で、仲間。俳優の三神力の大ファン。他の2人が人気俳優になってからも、三神力の付き人をして演技の勉強をしていた。その後、三神力に頼まれ、お目付け役として娘の三神妃子の付き人になった。個性が強すぎるキリや燿と違い、ソフトな物腰で、常識的な好青年。妃子の引き立てで表舞台に立ち、人気俳優の仲間入りをする。

三神 力 (みかみ つとむ)

三神妃子の父親で、大物俳優。早くに妻を亡くし、妃子と2人暮らし。娘を溺愛し、妃子が主演するドラマからキスシーンを外させるなど、過保護な言動が多い。

乃木 サンジ (のぎ さんじ)

インディペンデントの世界では有名な、新進気鋭の映画監督。坊主頭にどんぐりまなこがトレードマーク。天水キリを中心にした『α』シリーズの企画を立ち上げる。演技には厳しく、何を考えているか分かりにくいキャラクターだが、実は以前から三神妃子のファンだった。

サクラ

三神妃子が演じた。アルファ星の姫君で、アサダに心を寄せている。天真爛漫で、城を抜け出して庶民の市場を回るようなお転婆な一面もある。他人の心を読めるヴィータ星人を苦手としている。

アサダ

生田理一が演じた。宙に浮かぶクラゲのようなスワスワを扱い、放電させて電気を生み出すことを仕事にしている。占いにより、サクラの婚約者となったが、辞退した。同じオメガ星の出身であるローズウッドが恋人。

キリ中尉

天水キリが演じた。人の心を読む能力を持つヴィータ星人で、軍人。好戦的で絶え間なく戦争を繰り返す母星に嫌気がさし、平和なアルファ星に移住し、警備の仕事についている。アサダがサクラとの婚約を拒否したため、かわりに婚約者に選ばれる。

ローズウッド

山本燿が演じた。琴の名手で、宮殿の中でサクラに教えている。かつては市場で弾いていた。アサダとは同じオメガ星の出身で、恋人同士。

立花 芳乃 (たちばな よしの)

山本燿が演じた。機械オンチで、2浪の女子大生。美人だが、マイペースで他人に合わせようとしないため、しばしば周囲の人間の怒りを買う。好き嫌いの見極めが大変に早く、好きになる相手はどんな人混みの中でも瞬時にわかるという。

棟方 キリ (むなかた きり)

天水キリが演じた。秋葉原の電気店で働いている。電車の中で客の立花芳乃に再会し、頼まれて家中の電化製品の接続や設定をやらされる。

椋木 名花子 (むくのき なかこ)

三神妃子が演じた。いとこの椋木貴理に恋心を抱きながらも、貴理の姉の椋木美千子の霊におびえ、本家に近づくことができなかった。美千子の姿を見ることができる唯一の人間。

椋木 貴理 (むくのき きり)

天水キリが演じた。椋木家の長男だが、母の不倫でできた子供のため、将来は寺に入るつもりでいる。いとこの椋木名花子を好き。椋木美千子が溺れて亡くなったのと同じ場所で、3年前に名花子が溺れて以来、毎日、経をあげて美千子を弔っている。

椋木 一真 (むくのき かずま)

生田理一が演じた。椋木名花子の兄。いとこの椋木貴理のことを快く思っていない。サスペンスが好きで、名花子に近づく貴理を、財産を狙っているためだと決めつける。名花子が椋木美千子の話をしても、妄想だと決めつけて信じていない。

椋木 美千子 (むくのき みちこ)

山本燿が演じた。 椋木貴理のエキセントリックな姉だと椋木名花子は思いこんでいたが、実は貴理の亡くなった母親だった。その姿は、名花子にしか見えない。日々、貴理に経をあげられていることで、どんどん実体が薄くなっていく。

ポチ

三神妃子が演じた。戦闘艦のコックピットの中で、艦長と2人きりで漫才のようなかけ合いを繰り広げる。仕事の能力はないが、自らを「検索のポチ」と名づけ、検索を命としている。艦長の身長体重に経歴、好きな芸能人や性的な趣味まで調べ上げてはデータ化している。

艦長

天水キリが演じた。かつては特殊部隊の中隊長だったが、任務の失敗の責任をとらされ、ポチが1人で守っていたオンボロな艦に左遷させられた。もとはクールなエリート軍人だが、天然なポチのボケに振り回されて、ツッコミ続ける。好きな芸能人はさとう珠緒。女性のチラリズムが好き。

ゾウイ

山本燿が演じた。イギリスの没落貴族スペンサー家のメイド。無給のまま、ただ1人でまだらボケの奥様に仕え続ける。貧しいが、心正しい働き者。自分の幸せははなからあきらめ、新年のたびに奥様からもらう日記帳に、心がわき立つ嘘を書くことだけが慰め。

怪盗キリィ

天水キリが演じた。ロンドン中を賑わせている盗賊グループのボスで、変装の名人。中年の骨董商に化けているところに、ゾウイがスペンサー家の家宝である「碧のクレオパトラ」のレプリカを持ってくる。

香本 ミノル

生田理一が演じた。元不良の男子高校生だが、傷害事件のはてに謹慎させられ、その後、共学化する予定の女子校に試験的に入学させられた。原口のことが気になり、話しかけるチャンスを伺うが、なかなかうまくいかない。

原口 (はらぐち)

三神妃子が演じた。楚々とした美人の女子高生で、香本ミノルに思われているが、気づかない。内心ではミノルのことが気になっている。心を病んでいる友人の笹川水桜のそばを離れず、面倒をみている。

笹川 水桜 (ささがわ みお)

山本燿が演じた。美人の女子高生だが、かつて不良グループに怖い目にあわされたトラウマで、心を病み、しばしば奇行に走る。誰とも口をきかず、動けなくなる時もあり、友人の原口に助けてもらっている。

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