フランス料理の魅力を探る
本作のタイトルにもなっている「スペシャリテ」はフランス語で「極上の一皿」を意味しており、オムレツやボキューズ・ドール、ブリア・サヴァランなど、フランス料理にかかわる用語が多く登場する。また、序盤は簡単な料理やまかない料理が登場し、終盤になるにつれて豪華な食材をふんだんに使ったメイン料理が登場するストーリー構成となっている。さらに、単行本のおまけページでは、作中で登場した料理がさらに詳しく解説されている。
個性豊かなスタッフが集うフレンチレストラン
三星が勤務するフレンチレストラン「シャトー ド レクレール」は、フランス語で「稲妻の城」を意味しており、グルメ雑誌から三ツ星の認定を受けた名門レストランとして知られている。スタッフも国家最優秀料理人と認められた天才シェフのアラン・ポワロをはじめ、不愛想ながら優れた腕を誇るミシェル・ギャバンやお調子者で面倒見のいい金光など、個性的かつ優秀な人材がそろっている。レクレールのスタッフは、当初はアランのカリスマ性と統率力によってまとまっていたが、三星が働くようになってからは、彼の一生懸命な姿にスタッフが感化されて自発的に協力し合うようになり、さらに職場の雰囲気がよくなる。
レクレールを金儲けに利用する悪しき実業家
フレンチレストラン「シャトー ド レクレール」で修業を重ねる三星は、さまざまな客を唸(うな)らせるほどの料理人に成長し、彼のライバルであるギャバンも、フランス料理のワールドカップと呼ばれる世界最高峰のフランス料理コンクール「ボキューズ・ドール」で大活躍を見せる。そんな中、レクレールのオーナーである帝都ホテルが、実業家の黒川昇に買収されてしまう。帝都ホテルの実権を握った黒川は、レクレールを金の成る木と考え、三星をはじめとしたスタッフを解雇し、自らに服従する料理人だけを招き入れようとする。さらに、三星の父親がギャバンの父親の自殺に関係しているとのウソをでっち上げ、彼がアランや三星を裏切るように仕向けるなど、狡猾(こうかつ)な手段を用いてレクレールを追い込む。
登場人物・キャラクター
中原 三星 (なかはら みつぼし)
都立「明花高校」の定時制に通う男性。入院中の母親、中原千代子を支えるためさまざまなバイトに明け暮れており、大きな企業に就職したいと考えている。そんな中、ビル清掃のバイトで訪れた高級ホテルの手違いから、フレンチレストラン「シャトー ド レクレール」の厨房(ちゅうぼう)スタッフとして働くことになるが、早々に追い出されてしまう。しかし、料理人のアランやギャバンとの出会いをきっかけに、レクレールで修業をすることになる。人並外れた記憶力を誇り、コンビニでしか見たことのないポム・スフレを作り、わずかな期間でフランス語を習得した。底抜けに明るい性格で、職場でもムードメーカー的存在。また、興味があることには凄(すさ)まじい集中力を発揮し、満足できる結果が出るまで決してあきらめない努力家でもある。一方で自己顕示欲が非常に強く、ささいなことでムキになってしまう悪癖を持つ。
ミシェル・ギャバン
フレンチレストラン「シャトー ド レクレール」で働いている青年。担当はアントレ(前菜)。妹のニーナがいるが、現在は離れて暮らしている。日本語が堪能でスムーズに意思疎通も図れるが、尊敬するアラン以外とは必要以上にコミュニケーションを取ることはない。冷静沈着な性格で、自分にも他人にも厳しく、努力しない人物に対しては容赦しない。かつては明朗快活な性格だったが、シェフの父親が、事故で身体の自由を奪われたことを苦に自殺してからは、他者と深くかかわることを避けるようになった。三星から「フランス野郎」と呼ばれるなど口喧嘩(くちげんか)が絶えず、三星がレクレールで働き始めてからも何かといがみ合っている。しかし次第に三星の才能と情熱を認め、やがてよきライバル関係となる。なお、三星の父親とギャバンの父親はかつて同じレストランで働く親友同士だったが、二人はこの事実を知らない。
クレジット
- 監修
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秋元 真一郎
- 取材協力
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長谷川 幸太郎
書誌情報
★★★のスペシャリテ 全6巻 小学館〈少年サンデーコミックス〉
第1巻
(2009-01-16発行、 978-4091215765)
第6巻
(2010-02-18発行、 978-4091221506)