概要・あらすじ
第二次世界大戦前夜のドイツ。ある夜、チンピラ青年のマックス・ミッケルとエリック・エルネマンは、道端で大金の入った鞄を拾う。能天気でお調子者のマックスは、その鞄を偶然再会した小学校の同級生で、片思いの相手のベルタ・イマーマンに預ける。翌日、兄貴分のウィルヘルムと、共通の遊び友達であるエルシー・シュリヒターの会話から、エリックは鞄の金がナチスの党支部機密会計という名目の裏金であることを知る。
折りしもポーランド侵攻により戦争の火蓋が切られた日、身の危険を感じたエリックとマックスは、鞄をベルタの店の倉庫に埋め、追求から逃れられるよう、海軍に志願するのであった。
登場人物・キャラクター
マックス・ミッケル (まっくすみっける)
能天気な性格のドイツ人青年。海軍上等兵としてドイツ海軍仮装巡洋艦「トール」に配属され、日本への長い航海に出る。海軍入隊前は、エリック・エルネマンとつるんで遊びまわっていたチンピラだった。小学校時代の同級生で、パン屋を手伝っているベルタ・イマーマンに片思いをしていた。ベルタとは海軍入隊後も手紙のやりとりをしており、文面では共通の秘密である大金の入った鞄のことを「黒いもぐら」と呼んでいる。
エリック・エルネマン (えりっくえるねまん)
神経質な性格のドイツ人青年。海軍一等兵として艦隊補給タンカー「ウッカーマルク」に配属され、日本へ向かう。海軍入隊前は、マックス・ミッケルとつるんでいた。利に聡い。日本滞在時、クーンツ親方からパンの作り方を習う。
ベルタ・イマーマン (べるたいまーまん)
父が経営するパン屋の手伝いをしているドイツ人女性。ベルリンの学校に行っていたが、兄が予備役にとられ、店が立ち行かなくなってしまったため休学して戻ってきた。マックス・ミッケルと同じ小学校に通っていた縁から、マックスとエリック・エルネマンが拾った大金の入った鞄を預けられ、店の倉庫に埋める。
エルシー・シュリヒター (えるしーしゅりひたー)
ナチスの党幹部夫人。派手な遊び好きで、夫のいない間にマックス・ミッケルやエリック・エルネマンを家に招いて騒いでいた。夫が集めた裏金の入った鞄がなくなったことを知り慌てる。
ウィルヘルム
左の額から目の端にかけて傷痕がある強面の男性。マックス・ミッケルとエリック・エルネマンの兄貴分。エルシー・シュリヒターとも知り合い。
リヒャルト・ミッケル (りひゃるとみっける)
恰幅のいい銀行員。マックス・ミッケルの兄。軍に入った弟に対して、見下した態度を取る。自分のことを「銀行家」であると主張している。
班長 (はんちょう)
めがねをかけた出っ歯の青年。ドイツ海軍仮装巡洋艦「トール」で、マックス・ミッケルが配属された班の班長。18歳から海軍にいる。面倒見が良い。エッカルトという名前の息子がいる。
キムヒ
鼻の大きい強面の青年。ドイツ海軍仮装巡洋艦「トール」で、マックス・ミッケルと同じ班にいた。女性に縁がなく、モテるユッケをやっかんでいる。頼まれごとがあると断れない性格で、上陸のたびに色んなものを買わされている。
ハンスヒェン
黒髪でつぶらな瞳の強面青年。ドイツ海軍仮装巡洋艦「トール」で、マックス・ミッケルと同じ班にいた。実家は酪農家であるらしく、よく牛のことを考えている。朴訥だが気のいい男。
ユッケ
眉毛のない彫りの深い顔立ちの青年。ドイツ海軍仮装巡洋艦「トール」で、マックス・ミッケルと同じ班にいた。13人もの女性から手紙と小切手をもらう漁色家で、金は愛の証と言い切る。旅先でも人妻をものにしようと動く。
ベック
めがねをかけた四角い顔の青年。ドイツ海軍仮装巡洋艦「トール」の電機課所属の電機兵曹。インゲという名前の妹がいるが、妹には放浪癖があり何年も会っていない。
アイゼル
ドイツ海軍仮装巡洋艦「トール」の中尉。マックス・ミッケルたちの上官。双眼鏡や望遠鏡を見ては、「ツァイス社」のレンズを褒める癖がある。
グスタフ
日本で「グスタフ商會」という店を開いているドイツ人男性。第一次世界大戦時、青島で日本軍の捕虜となり、そのまま日本に残って奉公先の旦那に店を任された。6年前にドイツ人女性と結婚し、その1年後に息子ミヘルが生まれた。
るり
箱根の温泉旅館「松葉屋」で働く若い女性。温泉が好き。マックス・ミッケルに気があると勘違いされ、肉の缶詰をプレゼントされる。
春
箱根の温泉旅館「松葉屋」で働く小太りの女性。るりより三ヶ月年下。
松葉 輝夫 (まつば てるお)
箱根の温泉旅館「松葉屋」の主人。かつて海軍省の柿大佐の伝手で南方見物に行ったことがある。横浜寄港時に、乗艦が爆発し、居場所がなくなってしまったドイツの仮装巡洋艦「トール」と艦隊補給タンカー「ウッカーマルク」の乗員180名を旅館に一時預かることになる。
ピート
海軍少尉。艦隊補給タンカー「ウッカーマルク」に配属されていた。アイゼル中尉とは同郷。貴族の出で、ハンサムなことから松葉屋の女性たちに持て囃される。
クーンツ
パン職人。艦隊補給タンカー「ウッカーマルク」に配属されていた。マックス・ミッケルに請われてパンの作り方を教えようとするが、マックスにはまったく才能がない上にやる気もなかったため教えるのを断念。後から加わったエリック・エルネマンの方が才能があったため、エリックには親身にパン作りを教える。