アンジェリク

アンジェリク

17世紀のフランスを舞台に、緑色の瞳を持つ男爵令嬢アンジェリクの波瀾万丈な人生を通し、憧れていた華やかな宮廷の暮らしと、その裏に渦巻く陰謀を描き出す歴史ロマン。アン・ゴロンが夫との共著により書き綴った、長編小説『アンジェリク』の1〜5巻までを原作とする。

正式名称
アンジェリク
ふりがな
あんじぇりく
作者
ジャンル
アドベンチャー
 
その他歴史・時代
 
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概要・あらすじ

緑色の瞳をもつ快活な美少女、サンセ男爵令嬢アンジェリクは、貧しい男爵家と領民を救うため、顔も知らないラングドックの大貴族ジョフレ・ド・ペイラック伯爵と婚約。優雅な暮らしの中で愛を育んだアンジェリクは、ルイ14世の宮廷デビューを果たす。しかしそこは、華やかな見た目とは裏腹に、男も女も入り乱れた嫉妬や陰謀が渦巻く世界だった。

陰謀に巻き込まれたアンジェリクと、幼なじみのニコラ・メルロ、美貌の従兄弟プレシ公爵が織りなす、華やかな波乱の人生の物語。

登場人物・キャラクター

アンジェリク・プレシ・ベリエール侯爵夫人

緑色の美しい瞳を持つサンセ男爵の次女。裸足で外を走り回るお転婆娘だが、華やかな宮廷に憧れ、従兄弟のプレシ侯爵との結婚を夢見ていた。陰謀の証である木箱をそれと知らずに持ち去る。ジョフレ・ド・ペイラックと婚約し憧れの宮廷デビューを果たすも、陰謀に巻き込まれ波乱の人生が始まる。 一時ニコラ・メルロとともにネスルの塔に暮らし盗人稼業に手を染める。婚約したジョフレ・ド・ペイラックとは陰謀によって引き裂かれ、ペイラック家を継いだニコラ・メルロと婚姻したがルイ14世によって破棄され、プレシ侯爵と婚姻させられ侯爵夫人となる。

ニコラ・メルロ

主人公アンジェリクの幼馴染でサンセ男爵家の使用人の養い子。養父の借金の形にパリへ連れて行かれ、コエスルの跡継ぎとしてネスルの塔に暮らす盗人団に引き入れら、悪事に手を染める。アンジェリクの危機を何度も救い、一時はペイラック伯爵家を継ぐ。 ジョフレ・ド・ペイラックの腹違いの弟。

ジョフレ・ド・ペイラック

トゥールーズのラングドックの伯爵。スミレの香りのする美しい黒髪が印象的で、吟遊詩人のような歌声をもち、幼い頃に起きた宗教戦争に巻き込まれだ際に負った怪我が元で、片足が利かず顔に傷があるにもかかわらず、女性たちに大層モテる。アンジェリクと婚約し、陰謀に巻き込まれ、無実の罪を着せられ火刑に処される。

フィリップ・ミルモン・デュ・プレシ・ベリエール

アンジェリクの初恋の従兄弟。国王ルイ14世のお気に入りの元帥。戦のたびに各地に奔走する美貌の剣士。羨望・陰謀渦巻く宮廷に育ち、ポーカーフェイスを貫く。天真爛漫なアンジェリクに心惹かれてきたことに気がつくも、王命に従い妻となったアンジェリクを差し出し、初めて本当の愛を知る。

ルイ14世 (るいじゅうよんせい)

フランス国王。宮廷で見慣れた美女たちとは違うアンジェリクに魅せられ、手に入るためプレシ侯爵と結婚させる。戦場で命をはって助けてくれたプレシ侯爵を心の友と信じ、借金の形にすすめられる婚姻を王名で破棄させる人情も持つが、欲しいモノはなんとしてでも手に入れる専制君主として描かれる。 実在のフランス国王ルイ14世がモデルとなっている。

レスカトール

アルジェの海賊。見事な黒髪と顔に傷を持つ男。実は火刑に処されるところを助けられ、生きるためにカルメンシータと婚姻させられたジョフレ・ド・ペイラック。アルジェの海でフランス海軍提督の船に乗り合わせていたプレシ侯爵に見とがめられ、正体を見抜かれる。アンジェリクを救いだし、新しい国へと旅立つ計画を遂行する。

アンリ・ド・ボーフォール

歴代のフランス国王に仕えてきた名門貴族。海軍司令官。借金の肩代わりを申し出てプレシ侯爵と関係を結ぶが、若い頃から人形のように振る舞う姿を気に掛けていた。素直なアンジェリクに対するプレシ侯爵の反応に、それが恋だと諭す。実在のヴァンドーム公ボーフォールがモデルと思われる。

コエスル

ネスルの塔に暮らす盗人団のボス。ペイラック伯爵の世話係となった許嫁が、伯爵の子ニコラ・メルロを出産し他界。その憎しみからペイラック伯爵家への復讐を誓った。ネスルの塔襲撃を感知し、すり替えた木箱をタラオに託しアンジェリクに返すと共に真実を告げる。

タラオ

ネスルの塔に暮らす盗人団の一人で、コエスルの一番の手下。ネスルの塔襲撃で生き残り、ポラックとともに重症を負ったニコラ・メルロの世話をやく。

ポラック

ネスルの塔に暮らす盗人団の一味。姉御肌で「ポラック姉さん」と呼ばれる。ネスルの塔襲撃で生き残り、アンジェリクに嫉妬しながらも、重症を負ったニコラ・メルロを献身的に看病する健気な女性。

クロード

ネスルの塔の盗人団への情報提供者。吟遊詩人クロード・ル・プチとして各地を転々としながら、フランス中の情報を網羅しているため、権力者たちから恨みを買い、賞金首のおたずねものとして役人に追われ、ネスルの塔襲撃で命を落とす。

デグレ

クロードの幼なじみの近衛兵。ジョフレ・ド・ペイラックをバスチーユへ好意的に護送する。自殺しようと川に飛び込んだポラックをたまたま助けたり、アンジェリクに剣を教えたりと、ニコラ・メルロたちと仲良くなるにつれ、宮廷暮らしに魅力を感じなくなっていった。

ペギラン

ジョフレ・ド・ペイラックの親友で、ローザンの子爵。近衛隊長。ジョフレ・ド・ペイラックの火刑の後、王弟殿下への抗議を国王ルイ14世に咎められ、一時バスチーユに投獄される。アンジェリクがプレシ侯爵と一夜を過ごしたことを知り、親友ジョフレ・ド・ペイラックの名誉のために決闘する。

ベルナール

ジョフレ・ド・ペイラックの親友で、アンディジョの侯爵。ジョフレ・ド・ペイラックを火刑から救えという南部の民を率い、ランドックで叛乱を起こし、捕らえられて一時はバスチーユに投獄される。

セルバロー

ジョフレ・ド・ペイラックの親友で、男爵。ベルナールと行動をともにし、ランドックの叛乱に加わり、捕らえられた後バスチーユに一時投獄される。

王弟殿下 (おうていでんか)

ルイ14世の弟。男色家として知られ、ジョフレ・ド・ペイラックを気に入り伽をさせようと誘うが、それを利用され陰謀に手を貸すことになる。火刑を目の当たりにし、自らの過ちを母に告白して国王に許しを請う。実在のフランス国王ルイ14世の弟で、後のオルレアン公フィリップがモデル。

シュヴァリエ・ド・ロレーヌ

王弟殿下のお気に入りの男色相手。王弟殿下をそそのかし国王暗殺の陰謀の片棒を担ぎ、カルメンシータや毒薬師エグジリ(クレマン)を使い、ジョフレ・ド・ペイラックを陥れる。ネスルの塔襲撃の指揮官。実在のオルレアン公フィリップの愛人シュヴァリエ・ド・ロレーヌがモデル。

カルメンシータ

スペイン王家の血を引く娘。ジョフレ・ド・ペイラックを熱烈に愛する。余りある愛ゆえに陰謀に手を貸し、クレマンによって火刑から救い出したジョフレ・ド・ペイラックをスペインへ連れ帰ると強引に結婚。アンジェリクを亡き者にしようと襲い、逆に刺されて命を落とす。

クレマン

カルメンシータ及びプレシ公爵夫人が送り込んだ天才毒薬師。ジョフレ・ド・ペイラック及びアンジェリクの人柄に触れ、二人の暗殺をせず味方となる。ジョフレ・ド・ペイラックを火刑から救い出した張本人。天才毒薬師として知られるエグジーリをモデルとしていると思われるが、この人物が実在したかどうかは明確ではない。

マルゴ

ペイラック家の使用人の少女。アルジェの海へと出かける商戦(実はフランス海軍の船)に密航し、無事に海賊となったジョフレ・ド・ペイラックの元へかけつける。ニコラ・メルロの存在を知る数少ない一人。

クアシバ

ペイラック家の使用人。体が大きく肌の色も黒いムーア人。奴隷市場からジョフレ・ド・ペイラックが買い取った。火刑を止めようとしたが傷を負い、カルメンシータに救われ同行した。

コーナン・ベシェール

修道僧。サンセでアンジェリクを襲った盗賊の頭が双子の弟で、吟遊詩人に身をやつしたジョフレ・ド・ペイラックに殺害されたことを恨み、カルメンシータと手を組み陰謀に巻き込んだ。まんまと大司教の座を手に入れたが、赴任の際にアンジェリクに襲われ海に落ち、命を落とす。

プレシ公爵夫人

プレシ公爵フィリップ・ミルモン・デュ・プレシ・ベリエールの母。アンジェリクの伯母にあたるが、サンセ男爵一家を馬鹿にしている。国王暗殺の陰謀に組みしたものの、その証拠をおさめた木箱をアンジェリクが持ち去ったことに気が付き刺客として毒薬師エグジリ(クレマン)を差し向ける。

フランソワーズ・アテナイス・ドゥ・モルトゥマール

権力欲に燃える宮廷人。プレシ公爵に思いを寄せるがかわされ続けアンジェリクに嫉妬し、ルイ14世の寵愛を得るため次々と讒言を広めてアンジェリクとジョフレ・ド・ペイラックを陥れる。実在のルイ14世の寵姫モンテスパン夫人がモデル。

アンヌ・ドートリッシュ

フランス国王ルイ13世の后にして、ルイ14世と王弟殿下の生母。アンジェリク及びジョフレ・ド・ペイラックには好意的で、王弟殿下贔屓なところがある、大人しい母。実在のルイ13世后アンヌ・ドートリッシュがモデル。

ジュリオ・マザリーニ

フランス国王ルイ14世に仕えるイタリア人の宰相。「ジョフレ・ド・ペイラックの方が陛下(ルイ14世)よりも優秀だが、国王ではない」と断言。有能な外交官で老練な政治家と評され、ルイ14世に「政治は人任せにするな」と言い遺し他界。その言葉通りにルイ14世は宰相をおかず自ら政治を取り仕切ることになる。 実在の人物であり、ルイ13世と、ルイ14世に仕えた宰相。

サンセ男爵

モントローの男爵で、アンジェリクの父。娘たちを農家と同じような感覚で育てており、他の貴族や親類からは「はしたない」「いやしい習慣だ」「だから一生貧乏なのだ」などと、馬鹿にされているが、領民からは慕われ、盗賊に襲われた際には領民全てを城に収容し助ける。領民の肩代わりをしてきた納めきれない税金分の借金もあり、兼ねて申し込みのあったトゥールーズの伯爵ジョフレ・ド・ペイラックにアンジェリクを嫁がせる。

場所

ネスルの塔

木原敏江作『アンジェリク』の登場する、ならずものが集まる古い砦。コエスルの仲間となったニコラ・メルロと、助けられたアンジェリクもしばらく暮らした。大襲撃を受け、そこで暮らしていた者たちの大半が命を落とす。フランスに実在した古い砦。砦として使われなくなり、荒れていたところにならず者が住み着いたと言われている。

バスチーユ

木原敏江作『アンジェリク』の登場する牢獄。バスチーユ監獄とも呼ばれる。陰謀に巻き込まれ無実の罪でジョフレ・ド・ペイラックが投獄され、拷問を受けた牢獄。ルイ14世の「勅命逮捕状」によって捕らえられた者が投獄される。フランスに実在した牢獄。貴族たちにとってはさして極悪な場所ではなく、比較的自由に過ごせたという。

その他キーワード

木箱 (きばこ)

木原敏江作『アンジェリク』で、不正発覚を恐れた財務長官フーケが首謀した、国王ルイ14世暗殺に組みした者の証文と、暗殺のための毒薬を納めた木箱。借金を断られただけではなく、父を馬鹿にされたアンジェリクが、軽い気持ちでプレシ公爵夫人を困らせようと持ち去った。コエスルの復讐によりすり替えられジョフレ・ド・ペイラックは火刑に処せられる。 波乱を巻き起こすキーアイテム。

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