概要・あらすじ
第二次世界大戦開戦前夜。柔術家柳勘九郎の息子柳勘太郎は一人日本に渡って来た。武術の才を受け継ぎながらも行く末に悩んだ彼は、戦闘機の飛行士となる。
登場人物・キャラクター
柳 勘太郎 (やなぎ かんたろう)
登場時14歳。額の左側に古傷がある。一人称は「わが輩」。中国大陸で馬賊の中で育った。背中に「覚有情」と刺青が彫られている。空手と柔道に非凡な腕を持つ。豪放磊落だが自らの行く道に悩む。矢崎正介の家を出て転々とした後、戦闘機の飛行士を志す。
矢崎 正介 (やざき しょうすけ)
前作『柔侠伝』から引き続き登場する。髭を生やした紳士。早稲田大学教授。柳勘太郎の父柳勘九郎とは若い頃友人だった。柳勘太郎の母柳駒子から頼まれ、満州から渡ってきた柳貫太郎を書生として迎え入れる。
中野 国彦 (なかの くにひこ)
登場時は早稲田大学の学生。政治家・中野英雄の一人息子で、矢崎正介の教え子。柳勘太郎の宿命のライバルとなる。表向きはスマートな振る舞いだが、裏では卑劣な手段で女や権益を我がものにする。講道館で柔道を学んでいたが断念し、陸軍士官学校に進み、関東軍の大尉として満州に渡る。
矢崎 順子 (やざき じゅんこ)
矢崎正介の娘。満州からやってきた柳勘太郎の姿や振る舞いに呆れつつも、何かと面倒を見る。勝気だが、根は優しい。柳勘太郎に飛行士になることを勧める。
尾崎 恵美 (おざき えみ)
髪が長い女性。心臓に持病を抱えている。矢崎順子と同じ女学校に通い、周囲でも美人との評判。兄は共産党に籍を置いている。柳勘太郎は彼女を助け、好意を寄せるようになる。
野々宮 朝子 (ののみや あさこ)
ところどころくるくると跳ねた髪が特徴。東北弁で明るく快活な女子。高杉家の女中をし、自動車の運転手もしている。自動車整備工場で働いていた柳勘太郎と出会い、付き合うようになる。
二月 田三郎 (にがつ でんさぶろう)
額に大きなほくろのあるいがぐり頭で体格の良い男性。鹿児島弁を話し、豪放な性格。陸軍少年飛行兵学校に入るため上京してきたところを柳勘太郎と出会い、共に八九三部隊に配属される。
白鳥 秀三 (しらとり しゅうぞう)
坊主頭で、頭に無数の傷がある。柳勘太郎が所属する八九三部隊の隊長。始終鼻をかみくしゃみをしている。言葉少なで、何を考えているか分からないが、飛行・射撃技術は優れている。
美濃 健次 (みの けんじ)
太い眉で顔の真ん中にバツの形の傷がある。陸軍八九三部隊で柳勘太郎の同期。かつては岐阜商のエースで、甲子園大会で優勝した経歴を持つ。熊井五郎達とよくいがみ合っている。
竜崎 勝也 (りゅうざき かつや)
坊主頭に揉み上げ、周囲より老けた容貌。陸軍八九三部隊で柳勘太郎の同期。腹に一文字の傷を持つ。熊井五郎とともに粗暴な振る舞いをして柳勘太郎や美濃健次と度々衝突する。
熊井 五郎 (くまい ごろう)
尖り気味の坊主頭に大きな花が特徴。陸軍八九三部隊で柳勘太郎の同期。気弱な同期生をいじめるなど、粗暴な振る舞いが目立つ。柳勘太郎や美濃健次とはよくいがみ合っている。
猪熊利一郎 (いのくま りいちろう)
講道館柔道六段。昭和17年、満州国軍の柔道師範として赴任する。ポンプ投げと呼ばれる背負い投げを得意とする柔道の古豪。矢崎正介の教え子であり、柔道着を貰い受けた。満州で同居した鈴木勇次の想い人・松原和代を元気づける。
鈴木 勇次 (すずき ゆうじ)
満州国軍航空隊上尉。柔道二段。柔道師範猪熊利一郎と同じ官舎に住む。看護婦の松原和代と相思相愛だが、松原和代の兄には交際を厳しく反対されている。のちに満州軍から日本軍に転属され、八九三部隊に配属される。
松原 和代 (まつばら かずよ)
満州で看護婦をしている。兄は関東軍第四課で課長補佐官をしている。満州軍の鈴木勇次と相思相愛だが、兄から交際を厳しく反対されている。のちに従軍看護婦としてビルマに赴く。
関連
柔侠伝シリーズ (じゅうきょうでんしりーず)
4代100年にわたる柔道家の人生と、その技を受け継ぐ者の物語。 関連ページ:柔侠伝シリーズ