父子の日常を淡々と描いた人間ドラマ
都内で暮らす42歳の俊夫は、母親が他界したことをきっかけに、都下の実家で父と暮らすことになる。久しぶりに戻った自分の部屋で、俊夫は引き出しに隠された500万円の札束を発見する。それは「大事なものはお金」というリアリストな母が俊夫に残したお金で、「お父さんには内緒です」という紙切れが同封されていた。俊夫は母の遺した500万円の使い道に頭を悩ませながら、慣れない父との二人きりの暮らしを始める。本作は、東京オリンピック開催やコロナ禍で揺れる世界を背景に、お互いに知らないことばかりの父子の日常を淡々と描いていく。
年老いた父と中年の息子の同居生活
俊夫はバツイチの42歳独身男性。幡ヶ谷のアパートで気楽な一人暮らしをしており、会社でもあまり期待されていない。実家に帰ることを言わずに1か月も連絡を絶っていたため、交際中だった彼女とも別れることになる。俊夫の父は元教師で72歳の老人である。校長を退職した後は、散歩をしたり図書館を訪れて余暇を過ごしている。無口で堅物なイメージだが、じつはバイク好きという一面もある。結婚のために俊夫が家を出たとき父はまだ校長をしていたので、父の余暇の姿を見るのは初めてである。俊夫は、年老いた父との同居に戸惑いながらも、やがて「現状をもう少しだけ引き延ばしたい」という想いを抱くようになる。
登場人物・キャラクター
灰田 俊夫 (はいだ としお)
バツイチの独身男性。初登場時は42歳。会社では主任を務めているが、上層部からの期待は薄い。一人暮らしが長かったため、多少の家事ができる。母の死をきっかけに実家に戻り、年老いた父と暮らす。交際していた彼女がいたが、相手の気持を考えずに勝手に実家ぐらしを決めたため愛想を尽かされる。
父親 (ちちおや)
俊夫の父親。初登場時は72歳で、白髪と眼鏡が特徴。元教師で最終的には校長の職に就いていた。引退後は散歩や図書館で時間を潰している。定時に図書館に現れ「THE BIKE」という雑誌を読むため、職員たちには「ザ・バイクさん」と陰で呼ばれている。妻が亡くなり、息子の俊夫と二人暮らしをすることになる。







