あけがたルージュ

あけがたルージュ

夜の仕事をしている母親と高校生の娘。それまで離れて暮らしていた2人は、ある日、突然一緒に暮らすこととなった。互いの立場からすれ違いながらも、次第に分かり合っていくまでの母娘の葛藤を描いたヒューマンドラマ。「ビッグコミック」1997年7月25日号から1999年6月25日号、「ビッグコミック増刊号」1999年8月2日号から2000年8月17日号にかけて掲載された作品。

正式名称
あけがたルージュ
ふりがな
あけがたるーじゅ
作者
ジャンル
親子
関連商品
Amazon 楽天

概要・あらすじ

吉田苑子は新宿歌舞伎町でバー「ルージュ」を経営していたが、母親の吉田しげがガンに冒されたため、これまでしげに育てられてきた自身の娘である吉田可乃子と暮らすことになった。かつて苑子は駆け落ち同然で結婚したが、可乃子を抱えて離婚し、その心労により父親を亡くしていた。今でもそのことをしげに責められているように感じていた苑子は、しげに寄り添うことができず、そのせいでおばあちゃん子の可乃子には、冷たい母親だと敬遠されていた。

そんなある日、可乃子はしげとかつて暮らした大宮の家を売却することを苑子から聞かされて傷つき、大宮の家で暮らすと言って家を出て行ってしまう。しかし可乃子はその家で、自分の立場を顧みると同時に、母親の苦労にも思いを馳せるのだった。

一方、苑子は常連客だった宇津木と離婚した宇津木の元妻や、娘に出て行かれた横木など、「ルージュ」の客たちの個々の事情を知って共感。その想いを自身へと投影し、娘や自分の両親に対して、柔軟な心持ちになっていく。

登場人物・キャラクター

吉田 苑子

新宿歌舞伎町でバー「ルージュ」のママを務める女性。吉田可乃子の母親で、吉田しげの娘。年齢は40歳手前だが、それよりはかなり若く見える、落ち着いた雰囲気の美人。若くして駆け落ち同然で結婚したが、可乃子を産んですぐに離婚した。その後は銀座のクラブ「えり華」に勤め始め、可乃子をしげに預けて、離れて住むようになった。 それからは仕事一筋の人生を送り、現在の地位を築いた。その後、しげがガンに冒されたため、可乃子と一緒に暮らすようになった。娘との慣れない生活に戸惑うことも多い。真面目だが不器用な性格。

吉田 可乃子

吉田苑子の娘で、女子高校生。祖母の吉田しげと暮らしていたが、しげがガンにななったため、苑子と一緒に暮らすことになった。おばあちゃん子で、母親の苑子がしげに対して余り感情を表さないことを訝しんでいる。憐れまれることを何より嫌う、自立したしっかり者だが、時としてひどく子供っぽい部分を見せることもある。家庭的でない苑子に対して不満はあるが、素直に甘えられない自分を持て余してもいる。

吉田 しげ

吉田苑子の母親で、吉田可乃子の祖母。苑子の代わりに可乃子を育ててきたが、ガンに冒され入院することとなった。厳しく育ててきた苑子が、駆け落ち同然で結婚してすぐに離婚したため、心労がたたった夫を亡くした。そんな経緯もあり、苑子には裏切られたという思いが強い。可乃子にはいい大学に入って、いい会社に勤めて、いいお嫁さんになってほしいと、心から願っている。

芳賀

新宿歌舞伎町のバー「ルージュ」のチーフを務める男性。バツイチの独身。さり気ない気配りで吉田苑子をサポートする、頼りがいのある人物。もとはホテルのバーテンダーだったが、サラリーマンが性に合わず、銀座のクラブ「えり華」のママ、エリコにスカウトされた。だが、のちに一から参加できるとして、苑子の立ち上げた「ルージュ」に移籍し、苦楽をともにしてきた。 趣味は釣り。

サヤカ

新宿歌舞伎町のバー「ルージュ」でアルバイトをしている、明るい性格の若い女性。店の客であり、外資系の会社に勤める羽振りのいい男性と付き合っていたが、会社が営業不振になると暴力を振るわれるようになり、仕事に身が入らなくなってしまう。のちに親に水商売をしていることがばれ、実家に帰ることになる。

河野 雅彦

吉田苑子と付き合っていたカメラマンの男性。苑子より年下。苑子が娘の吉田可乃子と同居することになっため、それまで一緒に住んでいた家を出て行った。その後は外国を放浪しながら写真を撮っている。その途中、ブータンから苑子宛に絵葉書を送ってきたことにより、その存在が可乃子に知られることとなった。のちに帰国後、銀座で初めての写真展を開く。

沖田

新宿歌舞伎町のバー「ルージュ」の常連客の男性。会社社長で、吉田苑子が銀座のクラブから独立する時、銀行に口添えをした恩人。律儀な性格で、沖田の会社が不渡りを出して整理することになった際も、しばらくは来られなくなると、店に顔を見せに訪れた。その際も紳士的には振る舞っていたが、やるせなさは隠せないでいた。

エリコ

銀座のクラブ「えり華」のママ。パワフルで迫力のある中年女性。吉田苑子が初めて水商売に入った際に教えを受けた。ホテルのバーテンだった芳賀をスカウトした人物でもある。自分は「女の才能」があると豪語する女傑で、女の子の顔を30年以上見てきたこともあり、女性の私生活の悩みをすぐに見抜く。

木村

新宿歌舞伎町のバー「ルージュ」の常連客の男性。釣りが趣味で、芳賀と話が合う。岡山に転勤することになった際にも、挨拶がてら店に立ち寄った。犬を飼い始めて家の中が明るくなった矢先の転勤で、家族がついてくる気がないことに寂しさを感じている。

ショートカットの女子高生 (しょーとかっとのじょしこうせい)

吉田可乃子の友達で、ショートカットの髪型をした女子高校生。気遣いができる性格をしている。可乃子とは小学校時代からの付き合い。そのため可乃子が祖母に育てられ、母親の吉田苑子と離れて暮らしていたことも知っており、「かわいそう」と言われると怒ることも承知している。可乃子とロングヘアの女子高生と3人で遊ぶことが多い。

ロングヘアの女子高生 (ろんぐへあのじょしこうせい)

吉田可乃子の友達で、ロングヘアの女子高校生。余計なことを言いがちな性格で、母親に甘えられない可乃子に、「せっかくママと同居しているのにかわいそう」と言ってしまい、可乃子を不機嫌にさせてしまう。可乃子とショートカットの女子高生と3人で遊ぶことが多い。

宇津木

新宿歌舞伎町のバー「ルージュ」の常連客。デザイナーの中年男性で、「ルージュ」が開店した頃から通っていたが、ある日、突然交通事故で亡くなってしまう。いつも1人でやって来て静かに飲み、自分のことはあまり語らなかった人物。浮気癖があり、また友人の面倒見が良すぎることでも妻といさかいが絶えず、離婚していた。

宇津木の元妻

新宿歌舞伎町のバー「ルージュ」に突然現れた女性。常連客であった宇津木の元妻。遺品整理していた時に「ルージュ」のマッチを見つけ、彼の通夜の帰りに訪れた。元夫は賑やかに面白おかしく暮らしていると思い込んでいたが、1人で静かに飲んでいたという宇津木の意外な一面を知り、さまざまな思いにかられる。

小沢 武彦

吉田可乃子の中学時代の同級生の男性。新宿歌舞伎町の花屋でアルバイトをしており、バー「ルージュ」のママ、吉田苑子とは顔見知り。「ルージュ」で偶然可乃子に出会い、交友関係がスタートする。実家の工場が倒産し、高校を中退し、アルバイトに明け暮れる大人びた少年。猫が苦手。

横木

新宿歌舞伎町のバー「ルージュ」の常連客の初老の男性。横木の娘が高校生の時に妻が亡くなり、以降ずっと娘と二人暮らしをしていた。世間体やしきたりを重んじる古いタイプの人物。会社の同僚の娘の結婚式に出席した帰り、最近結婚すると言って家を出て行ってしまった娘のことを「ルージュ」で語り出す。

横木の娘

横木の娘で、30代前半の女性。真面目な性格で、高校生の時に母親を亡くして以来、父親の世話をしてきた。札幌でベンチャービジネスを始めた元同僚と結婚したいと言い出し、家を出て行ってしまう。父親のことは立派だと認めているが、自分の人生は父親のものではないという思いが強く、意地になっている。

(たいら)

新宿歌舞伎町のバー「ルージュ」の常連客。3年ぶりに転勤先の福岡から帰って来た男性。奥手で真面目な性格で、初恋の人のことがいまだに忘れられずにいる。風の噂で、初恋の彼女が「マンネンダさん」という珍しい名字の人と結婚したと聞いていた。「ルージュ」で万年田という客が離婚の危機にあるということを知って、複雑な気分になる。

万年田 (まんねんだ)

新宿歌舞伎町のバー「ルージュ」の常連客の男性。身勝手な性格で、妻が子供にかかりきりになって家に居場所がないため、外に愛を求めているという口実で、浮気を繰り返している。妻は子供を連れて実家に帰ってしまっていると嘆くが、女心がわかっていないと、酔った吉田苑子に説教される。

清美

新宿で雇われママをしている女性。吉田苑子が銀座のクラブ「えり華」で働いていた頃からの友人。妻子持ちの男性と付き合っており、年末年始になると寂しくなるので、バー「ルージュ」にやって来ては、普通の幸せが欲しいと愚痴を言っている。のちにその言葉どおり、ゴルフ場で知り合った普通のサラリーマンと結婚することになる。

須藤

新宿歌舞伎町のバー「ルージュ」の常連客の初老の男性。不動産取引の話を大声で電話でするようなバブリーなオヤジで、口も悪く、周りの客に迷惑がられている。「人生バクチだ」という考え方の持ち主で、下心丸出しの態度で、吉田苑子をゴルフに誘おうとする。

園山

新宿歌舞伎町のバー「ルージュ」の常連客の中年男性。いつも会社の人と一緒に来るが、母親を施設に入所させた日の夜に1人で店を訪れた。妻に認知症の母親の世話を押し付け、自分は仕事に逃げていたことを認めてはいる。しかし、よくやってくれていた妻に対して優しい態度がとれず、やりきれない思いを抱えている。

立原

吉田苑子が銀座のクラブ「えり華」に勤めていた頃の客の男性。現在は田舎で部品工場の社長を務めている。東京出張時にバー「ルージュ」を訪れ、吉田苑子と久々の再会を果たす。実直なロマンチストで、新入社員だった当時、プロポーズしたいくらい苑子のことが好きだったと打ち明ける。

まさこ

吉田苑子の行きつけの美容室「まさこ」の女性店主。母親の四十九日を済ませた苑子をねぎらい、娘の吉田可乃子との関係に悩む苑子の相談に乗るなど、気さくな人物。まさこ自身の娘が高校時代に不良だったため、自分たちのせいで娘の人生がめちゃくちゃになるのではないか、と苦しんでいたことを苑子に打ち明ける。夫は店を潰してばかりの飲んだくれのマスターであり、それを支えるしっかり者の妻。

場所

ルージュ

新宿歌舞伎町にあるバー。吉田苑子がママを務めている。他に、元ホテルのバーテンダーだったチーフの芳賀、アルバイトのサヤカの3人で店を切り盛りしている。カラオケは置いておらず、常連客はサラリーマンが中心となっている。苑子は頑張って来た自分のために、サヤカの送別会も兼ねて、10周年記念イベントを開催することを計画する。

SHARE
EC
Amazon
logo