農民ゲリラVS.薩摩藩士
本作の舞台となるのは、大政奉還後の江戸である。薩摩藩の西郷隆盛は江戸市中の風紀を乱し、情勢不安を煽ることを計画。藩士たちに徒党を組ませ、武装集団「御用盗」を結成し、商家を中心に強盗や放火、辻斬りといったテロ行為を行っていた。一方、幕府側はテロ行為が薩摩の仕業だと推測していたが、決定的な証拠がなく動けずにいた。うかつに正規の討伐隊に対処させれば、江戸幕府との武力決着を望む薩摩藩の思うツボでもある。そこで幕臣の勝海舟は、元新選組隊士の島田幸之助らに命じ、江戸近郊の農村から力自慢を選抜、対御用盗の農民ゲリラ「一撃必殺隊」を結成した。なお、「一撃必殺隊」は架空の部隊であり、本作はリアルな時代背景や実在した一部の登場人物を活かして創作された時代フィクションである。
にわか仕込みの決死隊
勝の命を受けた島田は、江戸近郊の農村を回り、力自慢の農民を集めて試験を行う。試験内容は、米俵を担いだ状態での約90メートルの駆け比べ。合格者には、前金で3000文、後金で金2両が支払われ、働き次第では侍にもなれるという話であった。試験に合格した丑五郎(ウシ)たち10名(訓練中に一人が欠け9名になる)は、とある屋敷に集められ、初めて自分たちの仕事を知らされる。それは、江戸市中を荒らす「御用盗」の成敗であった。事態は急を要するため、ウシたちは攻撃だけを叩き込まれ、たった6日間で「一撃必殺隊」を結成することになる。しかし、新選組仕込みの実戦向き剣術とずば抜けた身体能力を持つ「一撃必殺隊」は、めきめきと実力をつけ、予想以上の成果を上げていく。
薩摩藩士、伊牟田の私怨
「一撃必殺隊」の初陣は、薩摩藩士の伊牟田が率いる「御用盗」約40名への奇襲であった。腕力だけではなく機転も利く「一撃必殺隊」は、互いに連携し、とっさに敵を囲い反撃の隙を与えなかった。その結果、敵の死傷者20名以上に対し、味方の犠牲は1名という大勝利を収める。このとき、伊牟田が可愛がっていた薩摩藩士の前之助が死亡したことから、伊牟田は「一撃必殺隊」に対し私怨を抱く。その後、伊牟田は薩摩藩と別行動をとり、執念で前之助を殺したのがウシだと突き止めた。伊牟田は、慕うものを失う怒りと悲しみを思い知らせるため、ウシの出身村へと向かう。
登場人物・キャラクター
丑五郎 (うしごろう)
東一之江村出身の農民の男性。祖母と妹・チヨと三人で暮らしていた。小柄な体格ながら抜群の身体能力を持ち頭も切れる青年。村を訪れた元新選組隊士の島田によって選ばれ、「一撃必殺隊」の隊員となる。剣術でも筋が良く、めきめきと実力をつけていく。武装集団「御用盗」を奇襲した初陣では、最初の切り込み役を務め、薩摩藩士の伊牟田が可愛がる前之助を殺害した。
島田 幸之介 (しまだ こうのすけ)
元新選組隊士の男性。右頬から顎にかけ大きな切り傷がある。幕臣の勝の命を受け、新選組を脱退したことにし、力自慢の農民を集めて選抜。「一撃必殺隊」を結成し、実戦向きの剣術だけを短期間で叩き込む。冷静沈着な性格で選抜試験の際、暴れた農民を眉一つ動かさずに斬り捨てた。丑五郎の才能を高く買っており、個人的に指導することもある。歴史上の同名実在人物をモチーフにしている。
クレジット
- 原作
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永井 義男







