あらすじ
心霊研究家である後一太郎の父親のもとには、心霊写真の真贋を見極める調査依頼がたくさん来ていた。テレビの心霊特集などで取り上げられる機会も多い心霊写真だが、その多くは作り物だと、一太郎の父は苦笑いしていた。そんな中、一太郎のもとに後輩の草薙はるかが、家にあるたくさんの心霊写真をなんとかしてほしい、と相談を持ち掛けてくる。はるかにいいところを見せたい一太郎は、二つ返事でこの依頼を引き受けるが、訪れた家でさっそく心霊現象に見舞われ、驚いて逃げ帰ってしまう。しかもはるかの家で見た霊は、一太郎を追って自室にまで姿を現す。心霊現象の当事者となってしまった一太郎は、飼い犬の霊能犬、ゼロや父親の助けを借りて、その霊がはるかの妹である草薙さやかの生霊である事を突き止める。脳の病気を患っているさやかの、二度目の手術を拒絶する気持ちが霊現象の引き金ではあったが、さらに調査を進めるうちに、実は事件の裏側には、草薙家の先祖にまつわるおそろしい宿命と、それに関する強力な霊障が潜んでいる事が明らかになっていく。(第一話「衝撃の心霊写真」)
龍頭華衣に、相続した屋敷を調査してほしいと依頼された一太郎の父は、息子の一太郎と霊能力者の風祭白峰を伴って龍頭屋敷を訪れる。ここは肝試しに訪れた者が必ず怖い目に遭うと噂の廃屋だった。調査に懐疑的な立会人である華衣の叔父、寺西博士を加えた一行は、龍頭屋敷で早速ラップ音や人魂、白峰が呼んだエクトプラズムなどを体験する。さらに調査を進めるうち、華衣が、祖母を名乗る霊魂に取り憑かれてしまう。しかもその霊魂は、一太郎を自分の息子だと思い込むのだった。これを逆手に取り、一太郎は祖母の霊魂と話を合わせて、屋敷にまつわる情報を聞き出すという大役を任される事となった。一方、一太郎の父は屋敷で起こった凄惨な事件を探り当てる。明治時代に、屋敷の住人の八人が、次々と肉親の手によって殺害されたのである。一行は霊障の源がその事件にあると考えるが、実は龍頭屋敷にはそれ以上の怨念が宿っており、明治時代の事件さえも、その強大な怨霊が引き起こしたものに過ぎない事が明らかになっていく。(第二話「龍頭屋敷の怨霊」)
登場人物・キャラクター
後 一太郎 (うしろ いちたろう)
霊魂や霊界に並々ならぬ関心を抱いている少年。心霊研究家の息子。非常に強力な守護霊である後百太郎之命に守られており、後一太郎本人もかなりの霊感の持ち主。ただしトラブルに巻き込まれやすい体質で、自ら霊的な事件にかかわっていく事が多い。また、一太郎の父の職業柄、そういった事件の調査に参加する事もある。
一太郎の父 (いちたろうのちち)
心霊研究家の男性。すでに30年以上も霊魂を調査し続けており、アメリカの研究会に参加するなど精力的に活動している。息子の後一太郎に知識を授けたり、研究の助手をさせたりしているが、その結果として彼を危険な目に遭わせてしまう事もある。
ゼロ
後一太郎が飼っている霊能力犬。非常に強力な霊能力を持っており、一太郎と念話で話したり、テレポートで移動する事もできる。念話では、飼い主の一太郎を馬鹿にしているような言動を見せる事も多いが、彼がピンチになると率先して力を貸している。
後百太郎之命 (うしろひゃくたろうのみこと)
後一太郎の守護霊。非常に強い力を持つ霊で、後家のご先祖様でもある。一太郎が窮地に陥ると現れ、言葉でコミュニケーションを取る事もできる。神霊や神界ともつながっており、神様の力を借りて事件を解決する事もある。
風祭 白峰 (かざまつり はくほう)
霊能者の女性。一太郎の父の知り合いで、確かな霊能力を身につけている。一太郎の父の要請で、心霊写真の一件や龍頭屋敷の事件でも重要な役割を担う。
草薙 はるか (くさなぎ はるか)
「第一話 衝撃の心霊写真」に登場する。後一太郎の通う高校の後輩。1年D組に在籍する女子で、草薙さやかの姉。たくさんの心霊写真が撮れたり、家でラップ音がしたりと、何かと霊魂に縁があり、一太郎に相談を持ち掛ける。
草薙 さやか (くさなぎ さやか)
「第一話 衝撃の心霊写真」に登場する。草薙はるかの妹。自分の事を「さーちゃん」と呼んでいる。悪性の脳腫瘍で、長いあいだにわたって入院しており、手術のせいで頭髪をすべてそり落としている。二度目の手術を控えていたが、霊感によって次は失敗すると悟っており、それが草薙家で起こる心霊現象の一因にもなっていた。
龍頭 華衣 (りゅうず はなえ)
「第二話 龍頭屋敷の怨霊」に登場する。龍頭屋敷を相続した女性。古い屋敷をリフォームするにあたって、「お化け屋敷」と噂される龍頭屋敷の調査を一太郎の父に依頼した。徹底的な調査のうえで悪い噂を払拭したいと考えていたが、自らの先祖にまつわる恐ろしい事件に巻き込まれてしまう。
寺西博士 (てらにしはかせ)
「第二話 龍頭屋敷の怨霊」に登場する。龍頭華衣の叔父。龍頭屋敷の調査にあたって立会人を申し出た。霊の存在には懐疑的で、一太郎の父や風祭白峰をインチキ扱いしている。
場所
龍頭屋敷 (りゅうずやしき)
「第二話 龍頭屋敷の怨霊」に登場する。明治時代には龍頭男爵という人物の屋敷だったが、現在では有名な心霊スポットになっている。「残酷な殺人事件が起こった」「訪れた人は必ず心霊現象を体験する」など、さまざまな噂がささやかれており、肝試しに訪れる若者があとを絶たない。龍頭華衣が相続しており、噂の真偽を確かめるために、一太郎の父が呼ばれる事となった。
その他キーワード
ラップ音 (らっぷおん)
霊魂がいる時になるとされる音。何かを引き裂いたり割ったりしたような鋭い音や爆発音など、さまざまなパターンがあるとされる。
エクトプラズム
霊媒体質の人間や霊能者の体内から湧き出る綿状の物質。その物質に霊魂が乗り移って、生前の姿を見せる。エクトプラズムを出しているあいだ、その人間の意識は失われるため、霊魂から話を聞き出すには別の人間が必要になる。