スカイハイ カルマ

スカイハイ カルマ

高橋ツトムの代表作「スカイハイ」シリーズの第2作目。生まれながらにして背負った恐るべきカルマに、16歳の少女、高丸真唯が真っ向から向き合う姿を描くヒーリング・ホラー。怨みの門番、イズコは、前作では堕胎された魂という位置付けだったが、本作では、前世が主人公と同じく不思議な能力を持っていた人物として描かれている。集英社「週刊ヤングジャンプ」2003年8号から2003年30号にかけて掲載された。

正式名称
スカイハイ カルマ
ふりがな
すかいはい かるま
作者
ジャンル
ホラー
関連商品
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あらすじ

第1巻

暗く深い闇の夢に苦しんでいた高丸真唯は、事故に遭って自分の頭部のレントゲンを撮る。後日、真唯はその時のレントゲン写真に人の手が写っていると、心霊番組のプロデューサー、矢島公平から知らされる。真唯は、矢島の知る霊能者の小松原樹州から、この霊障は父親の先祖の悲劇によるものだと告げられる。真唯は人工授精で授かった子であり、歌手である母親の城丸あやめも、父親が誰なのかは知らなかった。しかし真唯の父親の先祖には、日本の敗戦を予言した事から、父親の加藤周明の逆鱗に触れて焼き殺された加藤伊丸という人物がいた事が明らかになる。真唯は小松原の弟子である神南の協力のもと、伊丸と対峙すべく、守護神を降ろそうと修業に励む。そんな中、怨みの門番、イズコは、伊丸があやめに憑いて、娘を殺させようとしている意図を知る。真唯の境遇を、在りし日の自分を重ねたイズコは、門の掟を破り、真唯の力を開花させるべく人間界へと降り立つのだった。

第2巻

守護神として現世に降り立ったイズコの導きで、修業に励む高丸真唯は、先祖の加藤伊丸になにが起きたかを知り、自らの行く末をも悟ってしまう。一方、紅白歌合戦への出場が決まった城丸あやめは、伊丸の怨念により身体に異常をきたし、変わり果てた姿となる。自分の身に起きた異変の意味を知ったあやめは、自らの手で決着をつけるべく姿を消すのだった。そんな中、自分のカルマを受け入れた真唯は、伊丸の骨壺がある延行寺を訪れたのち、伊丸の魂を救済すべく、あやめのもとへ駆けつける。真唯は伊丸の苦しみに同調し、あえてあやめに乗り移った伊丸からの攻撃を受け止める。そして真唯は伊丸の骨を飲み込み、いっしょに逝こうと、伊丸の魂を骨に帰るよう導く。こうして、真唯と共に怨みの門に到着した伊丸は、門番のイズコから魂の選択を迫られる事となる。

登場人物・キャラクター

高丸 真唯 (たかまる まい)

16歳の女優で、歌手の城丸あやめの娘。ロングヘアの清々しい少女だが、「見る」「聞く」「降ろす」という霊能力のうち、「見る」「聞く」の力が備わっている。また大蛇の夢を見たり、霊障により体調不良になる事も多いので、自分をダメな子だと思いがちなところがある。ホラー映画「タナトス」への出演が決まるが、事故に遭った際に撮った頭部のレントゲン写真に、人の手が写っていたため、霊能者の小松原樹州に会う事になる。 小松原によれば、大きな蛇念に憑かれており、それは父親の先祖、加藤伊丸による怨念だと判明。小松原の弟子、神南の協力のもと、この世とあの世の仕組みや、自分のカルマについて学ぶべく修行に励み、さらには怨みの門番、イズコの導きにより、伊丸と対峙する事になる。 過酷な状況の中、他人を慈しみ、自分の死をも受け入れる度量を持つ。ログという飼い犬をかわいがっている。

イズコ

怨みの門の門番を務める女性。前髪が短いロングヘアの、まだあどけなさの残る顔立ちをしている。人間界にいる時は、「美保」という名の少女で、不思議な「力」を持っていた。嫌な予感がするにもかかわらず、家族でスキーに出掛けて、車の事故で焼死する。母親と姉妹達はすでに怨みの門を通過している。力を持っている事が怖くて言い出せなかったために、家族を死なせてしまったと後悔しているところ、当時のイズコから、人を救いたいなら怨みの門番をやってみるかと、誘われた経緯がある。 同じく不思議な力を持つ高丸真唯に自分自身を重ねて感情移入している面がある。加藤伊丸が母親に憑き、娘を殺させると知り、門の掟を破ってまで、彼女の守護神となるべく地上に降り立つ。

城丸 あやめ (じょうまる あやめ)

本格派の歌手で、高丸真唯の母親。江戸っ子のような口調で話す、気の強い性格の女性。現在は紅白歌合戦に落選し、レコード契約も危機的な状況にあったが、過去のヒット曲「イナイセカイ」が若手の歌手にカバーされ、再び人気が再燃。紅白歌合戦出場が決まった頃、加藤伊丸の怨念に憑かれ、身体が酷い火傷状態となる。現実主義者で霊感はまったくなく、心霊や先祖供養は金儲けの手段だという思いが強い。 子供だけは絶対産みたいという信念があり、アメリカでの人工授精で真唯を授かった経緯があり、父親が誰かは城丸あやめ本人も知らない。のちに、自分の身に起きた異変の意味を感じ取り、真唯を守るため、伊丸の怨念に殺される覚悟で身を隠す。

門主 (もんぬし)

怨みの門の門主で、平べったいカエルの姿をしている。怨霊と対峙するのはイズコの仕事ではなく、現世の人間に主観で対応すれば門番は地獄へ堕ちる事になると、高丸真唯を助けようとするイズコを牽制した。だが、最終的には己で決めるようにと、イズコに選択を託す。

加藤 伊丸 (かとう いまる)

加藤周明の息子で、高丸真唯の父方の先祖。予言能力があり、16年間、離れの檻に監禁されていた。伸びっぱなしの長髪で、顔が隠れている。昭和17年に日本は戦争に負けると予言した事が父親の逆鱗に触れ、昭和20年に離れに火をつけられ、生きたまま焼死させられる。自分の運命も予見しており、この戦争で生き残っても加藤の家系はみな死ぬ運命にあり、自分が一人残らず呪い殺すと呪詛の言葉を吐き、狂ったような笑顔を浮かべ死んでいった。 以降、怨念となり、光さえ届かない地獄でずっと叫び続けている。霊能者の小松原樹州に乗り移り、加藤家の末裔である真唯の目の前で焼死させるなど、徐々に真唯を追い詰めていく。最終的には自分と同じ運命を辿らせようと、城丸あやめに憑き、娘を殺させようとしている。

神南 (かんな)

小松原樹州の弟子の男性。肩にかかるボサボサ髪と前髪で顔が隠れている。生まれつき目が見えなかったが、それを心配した両親により、12歳の時に小松原と面会。目が見えないのは、神南家の4代前に目を潰されて亡くなった先祖が、家系からも忘れられ、未成仏霊となって苦しがっているというサインだと霊視される。親が言われるがままに49枚の写経を書き、お炊き上げをしてもらうと、1年後、右目が少しだけ見えるようになった。 「見る」「聞く」「降ろす」という霊能力のうち、「見る」の力がある。小松原は最近霊格が落ちていると気づいており、蛇念が憑いている高丸真唯を案じて、彼女にこの世とあの世のしくみや、カルマについて教え、真唯に守護神が下りるよう尽力する。

小松原 樹州 (こまつばら きしゅう)

心霊番組を担当するテレビプロデューサー、矢島公平の知る霊能力者。外はねのおかっぱ頭をした威圧感のある初老の女性。高丸真唯に憑いている蛇念と対峙し、仏殿の下敷きになる。その後、怨みの門の門番、イズコの前に、人を騙して来たとして、キツネの姿となって現れる。本物の霊能力がありながら、TVの仕事で台本通りのヤラセを行うなど、能力の使い方を間違えており、大きなカルマを一つも返せていないとイズコに咎められる。 未成仏の怨念、加藤伊丸に捕らえられ、地獄の闇に引きずり込まれて生死をさまようが、真唯の目の前で焼死するためだけに、人間として一度生き返らされる。

石田 (いしだ)

高丸真唯の担当医を務める男性。専門は皮膚科。五分刈り頭で口周りに髭を生やし、メガネをかけている。真唯の頭部のレントゲン写真に人の手が写っていた事に驚愕し、友人で心霊番組を担当するテレビプロデューサーの矢島公平に、一度霊能者に見てもらいたいと話を持ちかけた。のちに酷い火傷の症状が浮き上がった城丸あやめから直々に診察を頼まれ、検査を担当する事になる。

矢島 公平

関東テレビプロデューサーで、口髭を生やした脂ぎったような短髪の男性。「心霊スーパーファイル」という番組を担当している。高丸真唯の担当医である石田の友人で、彼から真唯のレントゲン写真を見せられ、霊能者の小松原樹州に相談する。自分といっしょに闘ってみないかと真唯に話を持ちかけ、真唯と城丸あやめの親子出演を狙っている。 あやめがアメリカで精子バンク通いをしているという昔の週刊誌を持ち出したり、真唯の父親が5年前に変死体で発見されている事実をつかみ、あやめに心理的な揺さぶりをかける。

加藤 周明 (かとう しゅうめい)

加藤伊丸の父親で、頭を短く刈った厳格な男性。妻と伊丸のほかに清丸、勝丸という息子がいる。伊丸の予言を忌み嫌い、家の離れに16年間監禁し、昭和17年に伊丸が日本は戦争に負けると予言した事に激怒する。その後、南方の戦地に赴任するが、昭和20年には帰還しており、敗戦が濃厚となって苛立ちが頂点に達した際、伊丸の離れに火をつける。 天はなぜ我が家に化けモノを授けたと、特殊能力を持つ伊丸の存在を受け入れられずにいた。

藏木 (くらき)

日本橋で古物商をしている男性。人里離れた延行寺に壺を供養してほしいと話を持ち込んだ。少し禿げ上がった富士額で、スーツを身につけて蝶ネクタイを絞めている。高価な壺を買い得だと考え、土井かの子から購入したが、この壺が動くという噂を目の当たりにしたため、恐れをなして、和尚に供養を頼みに訪れた。

土井 かの子

戦時中、加藤周明の家に仕えていた女中。周明に加藤伊丸が火あぶりにされた悲劇を間近で見ていた女性。伊丸を不憫に思い、亡骸を壺に入れ持ち出した。しかし戦後の混乱で自身も食うに困り、古物商の藏木に売ってしまった。現在は入院中で、高丸真唯の身を懸念する神南が訪ねるが、すでにできうる範囲の供養はしたため、伊丸には供養は効かず、加藤の家系はみんな殺されるとあきらめている。

和尚 (おしょう)

人里離れた場所にある延行寺の和尚を務めている。五分刈りで丸メガネをかけた男性。困っている人がいれば助けるのが当たり前だと、古物商の藏木から、動き回るという噂の壺を預かって供養を引き受けた。以降、50年あまり1日も欠かさず加藤伊丸の魂を鎮めようと念仏を唱え続けている。

大川 (おおかわ)

城丸あやめのマネージャーを務める男性。顔が長く短髪でメガネをかけている。あやめがアメリカで人工授精をした事実を知る人物。あやめが加藤伊丸に憑りつかれ、変わり果てた姿になった際には、彼女に付き添って都心から離れた一軒家に身を隠すが、高丸真唯が到着した時には現状が信じられず、憔悴しきっていた。

場所

怨みの門 (うらみのもん)

不慮の事故や殺された人達が訪れる門。死者は門番、イズコにより、天国へ行って再生のための準備をする、未成仏霊となって現世を彷徨う、現世の人間を一人呪い殺す、という魂の選択を迫られる。イズコは生前、不慮の交通事故で亡くなった「美保」という名の少女であり、怨みの門に到着した際、不思議な力があった事を怖がらずに言えばよかったと後悔していたため、当時の門番、イズコから、人を救いたいならここで「怨みの門番」をやってみるかと声を掛けられた。 門主は平べったいカエルの姿をしている。また、現世の人間に主感を入れて対すれば、門番でも地獄へ堕ちる事になるという決まりがある。

その他キーワード

カルマ

魂の人生に対する「借り」。人間が生まれて来るのはカルマを返すためであり、その人が人生でカルマを返していなければ、それを背負ったまま輪廻する。この世はどれだけ他人と自然を思いやれるかの修行であり、カルマは人間界でしか返せず、カルマと同じ数の徳を積まなければならない。また、それぞれの家系には100年に一人、先祖を浄化する人間が生まれるといわれており、その人は先祖に感謝し、供養をして、のちの子孫に家をつなげる仕事をさせられる。 高丸真唯は、神南から、先祖を浄化する役割をこそが君のカルマだとに教えられ、命を賭して加藤伊丸の魂を浄化しようと決意する。

守護神

霊能者に、映像を見せたり、力を与えて導いてくれたりする存在。優秀な霊能者は、霊的な力は自分ではなく、降りて来るなにかに与えられており、それが守護神と呼ばれている。また霊能力の力があるだけではなく、一生徳を積めるような人間にしか降りて来ない。神南によると、小松原樹州にも昔は守護神が降りて来たが、TVの仕事で台本通りのヤラセをやってからは降りなくなった。 怨みの門の門番、イズコは、自分と同じ能力を持つ高丸真唯を助けるべく、彼女の守護神として人間界に降り立つ事を決意する。

前作

スカイハイ

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続編

スカイハイ新章 (すかいはいしんしょう)

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スカイハイIV<FOUR> (すかいはいふぉー)

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