世界観
恋愛が題材。嘘の恋人関係を結ぶことになった神宮寺すばると入谷匡史のカップルを中心に、すばるを想う友人の和久井朔哉と、すばるの妹であり、すばると匡史の交際に強く反対する神宮寺ともの4人の人間関係が描かれる。主人公であるすばるの恋愛のみならず、ともの心境の変化も丁寧に描かれ、本作『うそカノ』においては神宮寺姉妹の両方が主人公ともいえる。
作品誕生のいきさつ
主人公の神宮寺すばるたちメインキャラクターは写真部部員であり、本作『うそカノ』は「恋愛もの」であると同時に、青春を描いた「部活動もの」でもある。これについて作者の林みかせは、自身は中学、高校ともに運動部に所属していたが、一方で文化部に憧れがあった。さらに高校時代、写真部の友人の写真現像を手伝った経験が強く印象に残っており、これがきっかけで写真部を中心とした物語を描こうと考えたと語っている。また現在も写真を趣味にする友人が多く、作品を見せてもらっては刺激を受けているという。
あらすじ
神宮寺すばるは、明るく前向きだが、やや身体が弱く保健室利用が多い高校1年生。以前体調を崩した際に同級生の入谷匡史に助けられて以来、ひそかに匡史に憧れていた。ある日匡史がある事情から「うそカノ(嘘の彼女)」を募集していると知ったすばるはすかさず立候補するが、その日を境にすばると匡史の関係は大きく変わり始める。
コラボレーション
2015年12月、天乃忍が手掛ける『ラストゲーム』とのコラボレーション企画が行われた。これは『ラストゲーム』9巻と本作『うそカノ』6巻が同時発売されるのを記念して行われたもので、『ラストゲーム』の柳尚人と九条美琴、『うそカノ』の神宮寺すばると入谷匡史の4人が一堂に会したイラストが制作されたり、コラボレーションコミックが制作された。
メディアミックス
コミックス5巻の初回限定特装版と、「ララ」2015年7月号には、ドラマCDが付属された。神宮寺すばる役を東山奈央、入谷匡史役を内山昂輝、和久井朔哉役を櫻井孝宏が演じている。また、コミックス5巻の巻末には、林みかせがこのドラマCDのアフレコ現場を見学した際のレポート漫画も掲載されている。
登場人物・キャラクター
神宮寺 すばる (じんぐうじ すばる)
清詔高校普通科1年5組に所属する女子生徒。前髪を目の上で切り揃え、肩の下まで伸ばした茶髪ストレートセミロングヘアをしている。明るく前向きな性格だがやや身体が弱く、保健室の常連となっている。以前体調を崩した際、入谷匡史に気遣われたのをきっかけに匡史に想いを寄せるようになった。そのため、匡史が「嘘の彼女」=「うそカノ」を探していると知って立候補。 クールで不愛想な匡史に振り回されつつ、嘘の恋人関係を足掛かりに少しずつ距離を縮めていく。部活動は写真部に所属しており、熱心に活動している。
入谷 匡史 (いりや ただふみ)
神宮寺すばるの想い人で、清詔高校特進科1年1組に所属する男子生徒。前髪を目が隠れそうなほど伸ばし、黒髪ショートヘアを襟足まで伸ばしている。特進科の生徒の中でも特に優秀で、成績は学年トップ。しかしクラスメイトたちからは恋愛に興味のない冷たい人間だと思われている。その状態に嫌気がさしていたのと、もう1つのとある理由から「嘘の彼女」=「うそカノ」を募集し、すばるを「うそカノ」に選ぶ。 養護教諭の槇村里香と、里香の恋人である卓とは、自身が生まれた頃から3人で親しく、里香と卓の関係を知りながらも、ひそかに里香に想いを寄せていた。しかしすばるが「うそカノ」になったのを機に、次第にすばるに関心を持つようになっていく。クールで不愛想なために感情表現がやや苦手で、すばるとうまくコミュニケーションをとれず悩むこともある。 趣味は将棋。
和久井 朔哉 (わくい さくや)
神宮寺すばるの小学校時代からの友人で、清詔高校普通科1年5組に所属する男子生徒。前髪を真ん中で分けた、暗い緑色のウルフカットをしている。明るく話しやすく、スマートに気遣いの出来る人柄から、女性に非常にもてる。小学校時代、周囲になじめないすばるに「一緒に食事しよう」と声をかけたのがきっかけで親しくなった。それ以降もすばるとはずっと同じ学校に通う友人として仲が良く、男友達が少ないすばるにとって自分は特別な存在だと考えていた。 しかし入谷匡史の登場によって関係が変わったことをきっかけに、自分の本当の気持ちに気づく。以降はすばるにストレートに想いを伝えるようになるが、友人関係が長かったために冗談と捉えられがちなことに悩んでいる。部活動はすばると同じ写真部に属しており、撮影した作品は欲しがる女子生徒が絶えないほどの人気。
神宮寺 とも (じんぐうじ とも)
神宮寺すばるの妹で、中学3年生。前髪を目の上で切り、顎の高さで切りそろえた黒髪ボブヘアをしている。クールで落ち着いた性格のしっかり者で、おっとりした性格のすばるを常に案じており、ややシスコン気味なところがある。そのため、すばるに「嘘の彼女として振る舞ってほしい」と頼んだ入谷匡史のことを不誠実に感じ、毛嫌いしている。 嘘をつけない正直な性格から周囲とはぶつかることも多い。志望校はすばると同じ清詔高校で、合格後は特進科の生徒として入学し、写真部に所属することになる。
時田 律 (ときた りつ)
神宮寺とものクラスメイトで、時田まちの兄。清詔高校特進科1年1組に所属しており、神宮寺すばるとは、すばるたちが2年生に進級してから知り合う。前髪を目が隠れそうなほど伸ばしたウルフカットをしている。清詔高校文化祭で行われたミスターコンテストで注目されて以来、盗撮被害に遭うようになってしまい、ともに相談したことをきっかけに写真部に入部する。 ともの正直で正義感の強い性格に惹かれており、次第に想いを寄せるようになっていく。
槇村 里香 (まきむら りか)
入谷匡史のかつての想い人で、清詔高校で養護教諭を務める24歳の女性。髪型は前髪を右寄りの位置で斜めに分け、胸の下まで伸ばしたゆるくウェーブがかったロングヘアで、眼鏡をかけている。匡史とは家が隣同士で親しく、高校で教師と生徒の関係になってからも、保健室を匡史の勉強場所として利用させるほど仲がいい。匡史の自分への想いを知ってはいるが、学生時代から親しい恋人の卓との結婚が決まっている。
栗山 楓 (くりやま かえで)
和久井朔哉の中学時代の後輩で、神宮寺ともの中学時代の同級生。藤倉女子高校に通う1年生の女子生徒で、神宮寺すばるたちとは、高校に進学してから知り合った。前髪を目の上で切りそろえ、胸の下まで伸ばした、ゆるくウェーブがかった茶髪ロングヘアをしている。非常に可愛らしい雰囲気だがやや思い込みが激しく、歯に衣着せぬ正直な性格。 「乙女ゲーム」が大好きで、お気に入りキャラクターが朔哉によく似ているという理由から、朔哉に想いを寄せている。また、日常会話にもゲーム用語を多用し、現実の人間関係も恋愛シミュレーションゲームのように捉えている節がある。ともとは非常に相性が悪く、犬猿の仲。
卓 (すぐる)
槇村里香の婚約者で、入谷匡史の友人。前髪を眉上で短く切った短髪ヘアと、大柄でやや太り気味な体型が特徴。穏やかでおっとりした性格で、匡史が清詔高校に入学後、学生時代から親しかった里香に正式に交際を申し込み、匡史たちが高校2年生となる秋に結婚式を挙げることになっている。
入谷 雅史 (いりや まさふみ)
入谷匡史の兄で、外資系医療メーカーに勤める25歳の男性。前髪を左寄りの位置で分け、襟足まで伸ばしたストレートショートヘアで、眼鏡をかけている。口元にほくろがあるのが特徴。匡史のことは幼い頃から現在に至るまでのアルバムを作っているほど大切にしているが、なぜか匡史からは毛嫌いされている。
滝本 睦月 (たきもと むつき)
神宮寺すばるの友人で、清詔高校普通科1年5組に所属する女子生徒。前髪を右寄りの位置で斜めに分け、顎の高さで内巻きにしたボブヘアをしている。明るく賑やかな性格で、部活動はすばると同じ写真部に所属している。すばるが入谷匡史の「うそカノ」であることは知らず、普通に交際しているのだと思っている。
吉野 祐輔 (よしの ゆうすけ)
入谷匡史のクラスメイトで、清詔高校特進科1年1組に所属する男子生徒。目が隠れそうなほど前髪が長く、ふんわりとした髪を襟足まで伸ばし、眼鏡をかけている。気さくで話しやすい雰囲気だが策略家の一面があり、文化祭のミスターコンテストでは、秘密裏に匡史を出場させようと企む。
藤森 杏香 (ふじもり きょうか)
清詔高校特進科に所属する3年生の女子生徒。神宮寺すばるとは、すばるたちが2年生に進級してから知り合う。前髪を左寄りの位置で斜めに分け、胸のあたりまで伸ばした巻き髪ロングヘアをしている。才色兼備で家柄も良いうえ、読者モデルとしても活動している高嶺の花。そのため校内の男子からは圧倒的支持を受けており、清詔高校の文化祭で行われるミスコンテストでも2年連続1位を獲得。 今年も1位確実と言われている。
元村 由依 (もとむら ゆい)
清詔高校特進科1年2組に所属する女子生徒。神宮寺すばるとはすばるたちが2年生に進級してから知り合う。前髪を目の上で切りそろえ、胸のあたりまで伸ばしたストレートロングヘアをツインテールにしている。藤森杏香には及ばないが、非常に可愛らしい芸能人のようなルックスから、男子生徒に非常に人気がある。
時田 まち (ときた まち)
時田律の妹の幼い少女。前髪を左寄りの位置で斜めに分け、顎の高さまで伸ばしたふんわりとしたボブヘアをしている。母親と清詔高校文化祭を訪れた際にはぐれてしまったところを、神宮寺すばるに保護された。年齢に対して非常に大人びており、迷子になっても落ち着いていることから、すばると和久井朔哉には「昔の神宮寺ともに雰囲気がよく似ている」と評されている。
大橋 圭吾 (おおはし けいご)
清詔高校3年8組に所属する男子生徒。神宮寺すばるとは、すばるたちが2年生に進級してから知り合う。前髪を眉上で短く切って真ん中で分けたウルフカットをしている。清詔高校文化祭で行われるミスターコンテストでは確実に優勝したいと考えており、後輩に圧力をかけて組織票を集めていた。しかし入谷匡史がコンテストに関わったことで予想外の展開になり、以降匡史のことを逆恨みするようになる。 部活動はサッカー部に所属している。
神宮寺すばるの母親 (じんうぐじすばるのははおや)
神宮寺すばると神宮寺ともの母親。前髪を真ん中で分けて額を見せ、顎のあたりまで伸ばしたボブヘアをしている。街で偶然すばると入谷匡史が一緒にいるのを見かけ、半ば強引に家に招く。手芸が趣味で、すばるはその影響で人形やアクセサリー作りに励み、母娘で共同制作した作品を和久井家にプレゼントしたこともある。
神宮寺すばるの父親 (じんうぐじすばるのちちおや)
神宮寺すばると神宮寺ともの父親。前髪を上げて額を全開にした撫でつけ髪にしている。非常に大柄なやや太り気味の体型で、眼鏡をかけている。強面な容姿と寡黙な雰囲気から神宮寺家を訪れた入谷匡史を驚かせるが、共通の趣味の将棋がきっかけで親しくなる。棋士としての実力はいまいち。
入谷匡史の母親 (いりやただふみのははおや)
入谷匡史と入谷雅史の母親。前髪を左寄りの位置で斜めに分けたショートカットヘアをしている。若々しく美しいがややマイペースな性格で、ある場所で知り合った神宮寺すばるのことも無自覚に振り回す。匡史のことは「あまり笑わない子」と捉えていたが、すばると一緒にいると匡史が楽しそうにしていることに少し驚いている。
和久井朔哉の母親 (わくいさくやのははおや)
和久井朔哉の母親。前髪を上げて額を全開にし、顎の高さまで伸ばした内巻きボブヘアをしている。やや太り気味で、朔哉のことを「さっくん」と呼ぶ。昔からコロッケを作るのが非常に得意で、朔哉と神宮寺すばるが親しくなったのも、このコロッケの存在がきっかけ。
泉 陽斗 (いずみ はると)
入谷匡史のクラスメイトで、清詔高校特進科1年1組に所属する男子生徒。前髪を目が隠れそうなほど伸ばしたウルフカットをしている。元気で賑やかな性格で可愛い女子生徒に目がないが、あまり相手にされないため、西山塔子に意地悪を言われてしまうこともある。
西山 塔子 (にしやま とうこ)
入谷匡史のクラスメイトで、清詔高校特進科1年1組に所属する女子生徒。前髪を目の高さで切りそろえ、腰のあたりまで伸ばしたストレートロングヘアを、低い位置で1つに結んでいる。クールで落ち着いた性格で、特に泉陽斗に対してはやや辛辣なところがある。
その他キーワード
おまじない入りのシャープペンシル (おまじないいりのしゃーぷぺんしる)
神宮寺すばるが、入谷匡史と両想いになれるようにおまじないを施したシャープペンシル。水玉模様のペン軸に、上部には花のチャームがついている。一見普通のシャープペンシルだが、中にはシャープペンシルの芯とともにすばるの願い事が書いた紙が入っているため、人の手に渡り、中が見られてしまうと非常に危険。これがうっかり匡史の手に渡ったことで、事件が起きてしまう。
バタ郎 (ばたろう)
神宮寺すばるが短期アルバイト先に選んだケーキ屋のマスコットキャラクター。太ったひよこの姿をしており、クリスマス前後というアルバイト時期にちなんでサンタの帽子とムートンを履いている。発する言葉は「バター」のみで、この1語で喜怒哀楽を表現する。すばるはバタ郎の着ぐるみを被ってアルバイトをすることになった。
フランス語特化電子辞書 (ふらんすごとっかでんしじしょ)
神宮寺すばるが、入谷匡史に贈ったクリスマスプレゼント。文字通りフランス語に特化しており、指定した意味の文章を読む音声機能もついている。冬休みにフランスに旅行する匡史のためにすばるが急遽アルバイトして贈ったものだが、匡史の渡仏中、意外な形で力を発揮することになる。高校生が恋人に贈るプレゼントとしては高額なため、匡史は以後10年ほどかけて、最終的に同額になるようにすばるへプレゼントを贈り続けたいと考えている。