うらみちお兄さん

うらみちお兄さん

子供番組の「体操のお兄さん」である「うらみちお兄さん」こと表田裏道が、爽やかな外見とは裏腹に情緒不安定な様子で仕事に取り組む姿を描くコメディ作品。個性豊かな番組の共演者達と裏道の掛け合いが大きな見どころ。一迅社「comic POOL」2017年5月から連載の作品。第3回「次にくるマンガ大賞」Webマンガ部門1位。2021年7月テレビアニメ化。

正式名称
うらみちお兄さん
ふりがな
うらみちおにいさん
作者
ジャンル
ギャグ・コメディ
レーベル
comic POOL(一迅社)
巻数
既刊1巻
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

教育番組「ママンとトゥギャザー」に出演する「うらみちお兄さん」こと表田裏道は、子供たちに笑顔を振りまく優しいお兄さんとして活躍しているが、時おり「しんどい、辛い、何もしたくない」といった大人社会に対する暗鬱とした不満で歪(ゆが)んだ「裏の顔」を見せては、周囲を驚かせていた。そんな裏道は、酒焼けで声がガラガラになったり愚痴を吐いたり不安定になりながらも、無邪気な子供たちの前で懸命に爽やかな体操のお兄さんを演じていた。番組そのものや、ほかの出演者やスタッフまでもがどこかズレているうえに、個性的な人や達観している人に振り回される複雑な日常の中でも、裏道は日々の仕事や周囲との交流を乗り越えていく。そんなある日、朝から珍しく調子がよく上機嫌で出勤した裏道は、番組内の新コーナーで着ることになる新衣装を受け取る。だがその衣装は、上機嫌だった裏道を新たな不安と絶望に導くデザインだった。(エピソード「うらみちお兄さん」) 

 爽やかなお兄さんを演じる裏道は、時には子供たちの何気ない一言で傷つき、大人になってしまったことへのやるせない気持ちと、大人なら誰しもが持っている裏の顔を見え隠れさせながら、今日も明るく「ママンとトゥギャザー」に出演していた。一方、番組出演者であり裏道の後輩でもある兎原跳吉は、ある大きな悩みを抱えていた。ふだんから金欠になりがちな跳吉は、家賃の滞納が続いてアパートを退去させられる寸前だという。裏道だけでなく多くの知り合いに借金を申し入れる跳吉だったが、いつも無駄遣いをしている彼に優しく金を貸してくれるお人好しはいない。番組内で「ウサオくん」というキャラクターに扮している跳吉は、出番が来ても家賃の悩みが頭を離れぬまま集中できず、ついには裏道に怒られてしまう。(エピソード「払えない家賃」) 

 子供たちの信頼なしには成り立たない仕事だからこそ、その期待に応えたいという気持ちを抱きながら仕事に励む裏道は、宗教団体からの勧誘もクールに振り切っていつものように出勤。世間ではクリスマスが近づき、大人も子供も浮き足立っていき、師走の激務と年末恒例の面倒事への不安が、裏道たちを襲っていた。多忙な中で販売企画部の木角半兵衛に呼び出された裏道は、MHKの若手社員でもある彼と初めて対面。呼び出しの内容は、「ママンとトゥギャザー」のクリスマス企画で発売されるグッズ制作についての相談だった。明るく見えてどこか不安定な半兵衛に淡い親近感を覚える裏道だったが、半兵衛は予想外の闇を抱えており、恐怖すら感じた裏道はすぐに心のドアを閉じる。早急に話を済ませて離れようとする裏道だったが、なぜか半兵衛は裏道の体を椅子に縛り付けてしまう。(エピソード「聖なる鳥」)

 裏道が子供たちのケンカを仲裁したり、変な衣装で左右確認の大切さを教えたりする中、ショッピングモールでの父の日スペシャルイベント「パパンとトゥギャザー」がせまっていた。イベント当日、ステージでは裏道、跳吉、熊谷みつ夫の三人が、それぞれの父親の似顔絵を描いてみんなに見せるという、台本になかった予想外のコーナーが始まってしまう。跳吉とみつ男は自分たちの演じる動物キャラクターを忘れて、うっかり本当の父親の絵を描いてしまうものの、すぐに獣耳を描き足してなんとかごまかすことができた。しかし裏道だけは、二人の子供を振り回している物騒な父親の絵を仕上げてしまう。恐怖の父親像を絵にしてしまった裏道は、自分と妹に対してとても厳しかった父親のことを思い返しながら、幼少期の思い出を静かに語り出す。(エピソード「パパンとトゥギャザー」) 

 初対面の相手から「極限まで焦がした鍋底みたいな目」と言われても、初めてのSNS投稿が呪いの儀式扱いされて不評に終わっても、日々の理不尽に負けることなく、裏道は体操のお兄さんとしての仕事と趣味の筋トレに励んでいた。そんなある日、蛇賀池照が大学の恩師との再会をきっかけにスランプに陥り、歌を歌えなくなるという深刻な悩みを抱えていた。いつものように低レベルな下ネタにも反応せず、ため息ばかりついている池照を心配した裏道たちは、彼を励ましながら相談に乗り、スランプの原因を探っていく。裏道たちや子供たちに励まされた池照は元気といつもの調子を取り戻すが、裏道だけはあることに腑に落ちない様子だった。(エピソード「スランプの出口」) 

 ある時は孤独に疲れ蝕まれた「バイキンダーEX」を、ある時はてるてる坊主の圧に敗北した「太陽の怨霊」を、ある時はヒザの強烈なアザが目立つゴキブリのようなセミを演じる裏道は、出木田適人を通して販売企画部の半兵衛から呼び出される。今度の新企画の内容は、いまいちやる気のなさそうなうらみちお兄さんを飼育したり着せ替えたりするという、需要のなさそうなデジタル育成ゲーム「ママンとトゥギャザー おんらいん」だった。大切なフィギュアを人質に取られた上武裁人と共に椅子に縛り付けられた裏道は、監修として育成ゲームの内容を確認させられる羽目になる。だが、結構予算が出ていると言い張る半兵衛の言葉に反して、ゲームのグラフィックは予想以上に低レベルだった。(エピソード「ママンとトゥギャザー おんらいん」) 

 相変わらず奇抜な衣装を着せられる裏道は、マイペースに暴走気味な共演者やスタッフに囲まれながらも、子供たちの笑顔のために体を張って奮闘していた。精神がまったく休まらず、不眠やぎっくり腰に悩まされるようになった裏道の日常は、愉快な仲間たちと共に今日も続いていた。ある日、裏道が番組内で描いた奇妙なイラストから生まれた「小鳥さん」のデザインが盗作されるという事件が発生。盗作の犯人は、小鳥さんを微妙にかわいらしくしたキャラクターのグッズを無断で制作し、インターネットショップで売りさばいていた。激怒した半兵衛は裁人の指摘から、知り合いの布隅冬作が犯人だと疑う。ブログ用の写真撮影のために裁人の職場へ来ていた裏道も、この謎の騒動に巻き込まれてしまう。(エピソード「本物とニセモノ」)

メディア化

TVアニメ

2021年7月から9月にかけて、本作『うらみちお兄さん』のテレビアニメ版『うらみちお兄さん』が、テレビ東京で放送された。監督は長山延好、キャラクターデザインは髙橋瑞紀が務めている。キャストは、表田裏道を神谷浩史が、蛇賀池照を宮野真守が演じている。

登場人物・キャラクター

表田 裏道 (おもた うらみち)

教育番組「ママンとトゥギャザー」に、体操のお兄さんとして出演している男性。年齢は31歳で、独身。アパートで一人暮らし中。一流体育大学出身で、筋肉質な体格をしている。番組内では「うらみちお兄さん」と呼ばれている。明るく元気なお兄さんを演じているものの、子供たちのために大量のエネルギーを消費することも多く、仕事が終わったらほとんど寄り道をせず早めに帰宅している。大学時代の後輩であり、共演者でもある兎原跳吉や熊谷みつ夫とは仲がよく、休日は彼らと家飲みすることもある。体操選手をしていたことがあり、連続バク転をこなすなど高い身体能力を持つが、現在は体力や気力の低下に悩まされている。爽やかな笑顔を振りまく一方で情緒不安定なところがあり、大人の世界にありがちな悲哀や闇をやんわりと暴くように子供たちに語って聞かせる時は、暗く歪んだような裏の顔に変わる。子供たちの何気ない一言で傷つくこともあるが、番組に出演している子供はもちろん、初対面の子供にも親身に接し、教育番組での仕事も子供の信頼で成り立っていると考えている。その一方で、スタッフからは無茶な役や奇抜な衣装を押し付けられることが多く、新衣装を見るたびに絶望している。出演中以外の時はさらに裏表が激しくなり、過去の体験や社会の厳しさにメンタルを削(そ)がれたような不安定な言動が多い。考え事をしては自己嫌悪に陥ることが多く、ふだん演じている明るいイメージとは対照的に、本来はネガティブな性格である。疲れを自覚しているにもかかわらず、睡眠導入剤がないと寝つけないことに悩んでいる。絵のセンスが独特で、企画で仕方なく描いた絵は周囲に気持ち悪いと評されている。絵が下手という自覚もあるが一部の人からは好評で、小鳥さんを中心に商品化もされている。大学時代は全国大会の個人種目で1位を取るほどだったが、ケガにより引退した過去を持つ。父親も同じく体育系だが、かなり厳格な人物で、練習をサボるとマットに投げられるなど、幼少期は妹と共に厳しい教育を受けていた。妹は父親のスパルタに耐えられなくなり、16歳の時に逃げるように家を出ている。身長は175センチで、血液型はAB型。喫煙者で酒好き。好きな食べ物はへしこで、趣味は筋トレ。

蛇賀 池照 (だが いけてる)

教育番組「ママンとトゥギャザー」に歌のお兄さんとして出演する男性。年齢は27歳。番組内では「いけてるお兄さん」と呼ばれている。コンビで出演している多田野詩乃とは、同じ音楽大学に通っていた。黒の短髪の爽やかなイケメン。超有名音楽大学出身の元・ミュージカル俳優というのもあり、歌唱力とルックスに恵まれている。明るく仕事熱心だが、かなり天然な性格で、行間も空気もアナログ時計も読めず、ハサミを使うのも下手。悪気はないが一般常識に欠けていたりズレているところがあり、共演者の控室にノックをせずに入って来たり「ぎっくり腰」や「バニーガール」といった、大人なら知っていて当然の言葉の意味を知らなかったりする。このように苦手分野が多いものの熱意や才能はあり、やるべきと決めたことには期待以上の仕事ぶりを発揮し、特に役者モードに入った時は全力で入り込んで、任された役を演じることができる。また、ほかの出演者とは異なり裏表がなく、基本的には素直で優しい好青年である。仕事以外の時はボーっとしていることが多く、なぜかいつもおにぎりのことを考えている。低レベルな下ネタに弱く、「チンダル現象」「チンアナゴ」といった「チン」の付いた単語を聞くたびに笑いをこらえられなくなる。このため、表田裏道の怒りを買った時はチンの付いた言葉を連発されるという攻撃を食らっている。サンタクロースを真剣に信じているなど、子供っぽく純粋な一面もある。絵を描くのが上手だが、自分の絵よりも裏道の描いた奇抜な絵を気に入っている。家では大型犬の小百合を飼っている。小学生の頃は、家庭教師が来るまでの時間を「ママンとトゥギャザー」を見ながら過ごしており、この頃から教育番組の仕事にあこがれていた。身長は184センチで、血液型はO型。タバコを吸えない体質で、酒にも弱い。

多田野 詩乃 (ただの うたの)

教育番組「ママンとトゥギャザー」に歌のお姉さんとして出演する女性。年齢は32歳で、独身。茶髪のロングヘアで、結婚できないことに悩んでいる。売れないお笑い芸人の彼氏、須胡井宙太とは、6年以上同棲している。元はアイドル歌手として芸能界にデビューしていたがまったく売れず、その後はものまね演歌歌手からジャズシンガーと、職を転々としていた過去を持つ。蛇賀池照と同じ超有名音楽大学を卒業したエリートで、楽器の演奏や歌をはじめ音楽に関する能力は高いものの、運とタイミングが悪く売れなかった過去の経験から、音楽への情熱はほとんど失われている。表田裏道と同様にふだん演じているキャラクターとのギャップが大きく、カメラが止まったとたんに笑顔が消え去り、愚痴や結婚願望を吐き出したり、親父(おやじ)臭い発言をする女性に切り替わり、教育番組の仕事に疑問を抱くことも多い。演歌歌手の「追出やす子」として路上ライブをしていた頃に裏道たちと何度か会ったことがあり、初めてCDを買ってくれた相手も当時大学生だった裏道だった。共演者たちの性格をよく把握しており、奇抜な衣装の裏道を見るたびに笑ったり、収録中に悪ノリしてからかったりすることもある。結婚願望が強く、結婚に関する話題になると機嫌が悪くなったり、暗く重い返し方をしたりする。酒好きで、打ち上げなど酒が飲める機会があれば積極的に参加している。身長は162センチで、血液型はA型。タバコは禁煙中。

兎原 跳吉 (うさはら とびきち)

教育番組「ママンとトゥギャザー」に出演する男性。年齢は28歳で、京都出身。番組では「ウサオくん」として、ピンク色のウサギの着ぐるみを着て出演している。明るい茶髪の短髪で、無駄遣いの多い女好きのお調子者。外向的で人付き合いのいい性格で、面白くなってモテることを目標としている。独身で、事あるごとに彼女が欲しい、モテたいと嘆いている。表田裏道の体育大学からの後輩であり、学生寮では彼と熊谷みつ夫と同室だった。大学時代は陸上部に所属し、主に走り高跳をしていた。番組内はもちろん、収録中以外でも裏道による後輩いびりの被害に遭うことが多く、無茶振りをされたりいきなり八つ当たりを食らうこともある。不安定な裏道のことを恐れながらも、陰口を叩いたり余計なちょっかいをかけたりしており、そのたびに静かに暴言を吐かれたり辛らつな悪口を返されたりしている。酒好きの下戸で裏道やみつ夫と共に酒を飲み、酔っぱらうたびに女子に受けるために面白くなりたいと言うほどモテることへの願望が強いが、女性局員のあいだでは評判があまりよくない。番組内では小鳥さんのパペットを使って、裏道の友人として人生相談コーナーに出演することもある。パチンコや麻雀が趣味でガールズバーにもよく通っているためいつも金欠になりがちで、家賃が払えず退去させられそうになったことがある。バニーガール好きだが、言葉の意味をカンちがいした蛇賀池照からは、メスのウサギが恋愛対象と思われている。たまに京都の実家に帰っているが、実家に帰ってしばらくは、東京に戻ったあとも地元の京都弁が出やすくなる。身長は182センチで、血液型はO型。タバコが嫌い。

熊谷 みつ夫 (くまたに みつお)

教育番組「ママンとトゥギャザー」に出演する男性。年齢は28歳で、福井出身。番組では「クマオくん」として、茶色のクマの着ぐるみを着て出演している。表田裏道の体育大学からの後輩であり、学生寮では同室だった。黒の短髪で、表情に乏しくクールな性格の持ち主。寡黙で落ち着きがあり、視野も広い方だが、それらを何にも活かせていない。要領がよくフォローもうまいため、裏道をはじめとするほかの共演者からの信頼も厚い。猫好きで、黒猫を1匹飼っている。番組内で子供たちに頼られる一方、大学時代からの友人である兎原跳吉にも何かと頼られている。実家が料理屋を営んでおり、祖父が漁師、父親が板前という家庭で育ったことから魚が好きで、魚釣りを趣味としている。大学時代は弓道部に所属していた。現在はまじめだが、窮屈な家庭や世間に対する反発心から不良になっていたことがあり、実家にいた頃はケンカばかりしていた。これらの過去から弟の熊谷はち太以外の家族とは不仲気味で、今でも人付き合いは得意ではなく、過去の職場ではパワハラ上司を殴ってクビになったことがある。しかし、はち太のことは大切に思い、彼と猫の前では笑顔を見せる。裏道のことは当初苦手に思っていたが、現在は映画のDVDを貸し合うほどの仲で、個性的な共演者の中では裏道がもっとも親しくしている相手となっている。よくも悪くも無自覚に行動することが多い一方で、優しくも厳しくもないつもりだったが、はち太に対しては優し過ぎることを指摘されたことがある。これ以来、苦手なことを克服したがっているはち太に、問答無用でオコゼを捌(さば」)かせるなどの厳しさを見せる。だが、結局ははち太に甘いことが多く、彼に対しては過保護になりがち。昔からケンカに強い。身長は176センチで、血液型はA型。過去にタバコを吸っていたが、現在は禁煙している。酒に強い。

出木田 適人 (でれきた てきと)

子供番組「ママンとトゥギャザー」のディレクターを務める男性。番組に直接出演する事はない。思いつきで番組の演出を決める事が多く、表田裏道ら出演者にいつも無茶な要求をしている。夜でもサングラスを外さないため、周囲にぶつかりながら歩くという癖の持ち主。

カッペリーニ 降漬 (かっぺりーに ふりつけ)

子供番組「ママンとトゥギャザー」でダンスの振付を担当している男性。年齢不詳・国籍不明で、ダンスの振付も意味不明なものが多い。性別こそ男性であるものの、銭湯で女湯に入浴しても違和感を抱かれないほどの高い女子力を持っている。

辺雨 育子 (へあめ いくこ)

教育番組「ママンとトゥギャザー」のヘアメイクを務める女性。年齢は32歳。茶髪のボブヘアで、大人っぽいお姉さんタイプ。サバサバした面倒見のいい性格で、個性的な出演者たちをサポートしながら、番組を支えている。愛称は「育ちゃん」。同い年の多田野詩乃とは仲がよく、悩みの多い彼女の恋愛相談などに乗っている。女子力の高いカッペリーニ降漬にあこがれている。

上武 裁人 (うえぶ さいと)

MHK放送局の若手社員の男性。年齢は24歳で、デジタル企画部に所属する。眼鏡をかけた地味な見た目で、眼鏡を外した時の素顔は清潔感のあるイケメンだが、重度のオタクで二次元キャラクターにしか興味がない。ドライでいつも淡々と話し、冷めたオーラを漂わせ、社員同士の交流も避けている。アニメをリアルタイム視聴するために、いつも定時になった途端に職場から消える。木角半兵衛とは同期で、仕事でいっしょになることも多い。半兵衛とはケンカも多いが、なんだかんだで同期の若手同士らしい仲のよさを見せる。黒のストレートヘアの女性が好み。身長は180センチで、血液型はA型。

熊谷 はち太 (くまたに はちた)

熊谷みつ夫の弟。年齢は23歳。料理修行のために、福井県から上京して来たばかりで、みつ夫の自宅にいっしょに住んでいる。クールで恐いものなしのみつ夫とは対照的に、臆病で子供っぽく、天真爛漫(らんまん)な性格をしている。あだ名は「子グマ」。和食店で料理の修行をしていたが、魚を捌(さば)くことができずにクビになってしまう。上京初日は都会の雰囲気に慣れず、捨てられた動物のように震えていたところを、偶然見つけた表田裏道に保護される。料理人の道をあきらめかけていたが、みつ夫の指導により克服し、修行を再開した。家族と不仲なみつ夫がもっとも心を許せる相手であり、彼が不良だった時期もまったく気にせず無邪気に接し、どんな時でも彼を兄として慕っていた。また、不良時代のみつ夫に部活に入ることを勧め、彼が反抗期から脱するきっかけを作っている。裏道と出会った時は、彼がテレビで見かけるうらみちお兄さんその人だとは気づかず、印象が違い過ぎるために完全に別人だと思っていた。また、裏道に対して「極限まで焦がした鍋底みたいな目」という第一印象を抱いている。語彙が不安定で、誰かをフォローするために言葉を選んでは、いつも途中であきらめている。布隅冬作からは気に入られており、彼が起こした盗作事件が解決したあとも、時おり会ってスイーツをおごってもらっているため、過保護なみつ夫からは心配されている。身長は173センチで、血液型はO型。

獅子戸 たま子 (ししど たまこ)

猫田又彦の一人目の妻の娘。虎井又太郎の腹違いの姉で、年齢は5歳。腰まであるロングヘアと猫口が特徴。子供とは思えないほどにませた言動が多く、時おり毒舌になる。父親の又彦の浮気が原因で両親が離婚したため、彼のことをゴミクズ同然と思っている。子守を押し付けられた又彦に連れられて街を歩いている最中に、又太郎と共に彼とはぐれてしまい、表田裏道たちの収録現場に迷い込んでしまう。好物はとうもろこし。

須胡井 宙太 (すごい ちゅうた)

売れない漫才コンビ「門真アミーゴ」のボケ担当を務める男性。大阪出身。高学歴という単語を嫌う高学歴のツッコミ担当「土井柴雄」と二人で活動している。恋人の多田野詩乃とは同棲6年目を超えているが、彼女の尻に敷かれがち。詩乃からの結婚アピールを無視し続けており、彼女が買ってきた結婚情報誌の上に少年漫画雑誌を積み上げている。芸人仲間の「シーサーまさみ」という沖縄の男性と電話していたところ、沖縄に住む女性と電話しているとカンちがいした詩乃から、浮気を疑われたことがある。虫が大嫌いで、部屋にカメムシが出現した際には慰安旅行中の詩乃に電話で助けを求めていた。

風呂出 油佐男 (ふろで ゆさお)

「ママンとトゥギャザー」のプロデューサーを務める中年男性。年齢は48歳。金髪で裸の上から派手なアロハシャツを羽織っている。色黒肌でいつも顔がテカっており、顎ヒゲを生やしている。テンションが高く、馴(な)れ馴れしい態度を取ることが多い。蛇賀池照をやたら気に入って積極的にアプローチをしており、慰安旅行の時は暑苦しい絡み方をしていた。

虎井 又太郎 (とらい またたろう)

猫田又彦の二人目の妻の息子。獅子戸たま子の腹違いの弟で、年齢は3歳。菱(ひし)形のような形の口が特徴。短髪でオーバーオールを着用している。たま子とは対照的に、子供らしい言動が多い。少々泣き虫だが、サンタクロースを信じるなど純粋な性格をしている。子守を押し付けられた父親の又彦に連れられて街を歩いている最中に、たま子と共に彼とはぐれてしまい、表田裏道たちの収録現場に迷い込んでしまう。好物はツナマヨネーズ。

蛇賀 眩衣 (だが まぶい)

バイオリン講師を務めている音楽家の女性。年齢は32歳。ロングヘアの美人で、弟の蛇賀池照と同居している。池照と多田野詩乃とは同じ有名音楽大学の出身であり、彼女とは顔見知り。池照と同様に、よくおにぎりのことを考えている。姉弟そろって絶対音感を持ち、リズムや音感を巡ってしばしば池照とケンカをしている。マッチングアプリで婚活をしているがなかなかうまくいかず、向いてないと感じてあきらめ、結婚願望がまったくないことに気づいた。魚が大嫌いで、池照がアクアパッツァを作っているだけで嫌な顔をする。酒好きだが、酒には少し弱い。

木角 半兵衛 (きかく はんべえ)

MHK放送局の若手社員の男性。年齢は24歳で、販売企画部に所属する。主に教育番組「ママンとトゥギャザー」のグッズ開発を担当する。ボサボサの長髪で前髪も長く、いつもマスクを顎にずらした状態で付けている。耳には大量のピアスを付けている。昔はバンドマンをしていた。いつも笑顔で明るい好青年に見えるが、メンタルは表田裏道以上の不安定さで、急に癇癪(かんしゃく)を起こして怒鳴ったり暴言を吐いたりする。裏道からは初めて会った時から親近感のような感情を抱かれているが、分かり合えるかもしれないと思うたびに闇を見せるため、結局は彼に心を閉ざされてしまっている。上司に無茶な仕事を押し付けられて振り回されては機嫌が悪くなっているが、なんだかんだで仕事にはまじめに取り組んでいる。仕事に追い込まれると裏道に助けを求め、彼を椅子に縛り付けて後ろから監視しながら、無理な相談をしたり手伝いをさせたりすることがある。上武裁人とは同期で、仕事でいっしょになることも多い。裁人とはケンカも多いが、なんだかんだで同期の若手同士らしい仲のよさを見せる。身長は178センチで、血液型はO型。

小鳥さん (ことりさん)

教育番組「ママンとトゥギャザー」に登場するキャラクター。表田裏道が番組内で描いた絵から生まれた。フランスパンを抱えた生気のない鳥の姿をしており、嘴(くちばし)以外にも顔の中央に口がある。当初は気持ち悪がられていたがパペットなどの人形が作られ、人生相談コーナーに裏道の友人として登場するようになる。のちに販売企画部によってグッズが発売された。

枝泥 エディ (えでい えでぃ)

教育番組「ママンとトゥギャザー」のアシスタントディレクターを務める男性。キャップを後ろ向きにかぶり、糸目の地味な風貌をしている。番組をスムーズに進めるために、脇役として出演者たちを支えている。まじめで爽やかだが、出木田適人のもと、出演者たちに悪びれる様子もなく、笑顔で無理難題を押し付けている。悪ふざけ同然の企画でも遠慮や物怖(お)じすることなく出演者たちに説明し、笑顔で奇抜な衣装を表田裏道に渡している。

小百合 (さゆり)

蛇賀池照が飼っている大型犬のメス。いつも元気で人懐っこい性格をしている。飼い主の池照や蛇賀眩衣からはさん付けで呼ばれ、とてもかわいがられている。性格や癖は池照によく似ている。池照と同様に、なぜかいつもおにぎりのことを考えており、「チン」のついた言葉を聞くたびに笑うような鳴き声を出す。一時的に表田裏道に預けられたことがあり、彼にも懐いている。

布隅 冬作 (ぬすみ とうさく)

木角半兵衛の知り合いの男性。半兵衛の友人を名乗るが、彼からは否定されている。年齢は24歳。切りそろえた赤毛の短髪で、額や首、腕などにタトゥーを入れており、眼鏡をかけている。表田裏道の描いた小鳥さんのデザインを盗作し、無断でグッズまで制作してインターネットで販売していた。半兵衛に怒られても盗作を認めないうえに、小鳥さんを微妙にかわいらしくしたデザインに自信があり、グッズ販売をやめるよう言われても拒否していた。この盗作グッズを本物とカンちがいして購入していた熊谷はち太のことを気に入り、裏道が一生懸命考えたデザインを盗むのはよくないというはち太の純粋な熱弁を受け、販売サイトを閉鎖した。その後、街中で遭遇したはち太にマリトッツォをおごっていた。身長は190センチで、血液型はB型。

縁ノ下 カヨ (えんのした かよ)

教育番組「ママンとトゥギャザー」のアシスタントディレクターを務める女性。年齢は20歳。淡い茶髪のセミロングヘアを首後ろで束(つか)ねている。元気いっぱいのがんばり屋で、表田裏道をはじめとする番組の出演者の健康状態や精神状態を気にかけている。個性的な出演者たちを優しくサポートしながら、番組を支えている。優しく気配り上手だが、たまに辛らつな発言をする。関西弁を話す、まじめな男性が好み。

アモン

教育番組「ママンとトゥギャザー」の演出家を務める男性。年齢は42歳で、本名は「田中トメ三郎」。茶髪の短髪で、長い前髪で目が隠れている。気の弱い変わり者だが、仕事への熱意は本物で、子供たちを喜ばせるために面白い演出や企画を練ろうと日々努力している。しかし、番組の企画案に行き詰まることも多く、アイディアが浮かばない時は表田裏道をはじめとする出演者に助けを求めて巻き込んでいる。裏道が見た夢の話をヒントに、台風でつぶれてしまったシソの怨念から生まれた薬味の神「シソ神様」をはじめ、保存袋を忘れられて乾燥したフランスパンの怨念から生まれた神「ボンジュールマン」などの珍妙なキャラクターを生み出している。奇抜なアイディアで周囲を驚かせるが、裏道が演じるキャラクターは奇抜で露出高めな衣装を着ているため、新キャラクターを考案するたびに彼を絶望させている。身長は173センチで、血液型はA型。

猫田 又彦 (ねこた またひこ)

バー「CAT KICK」の店長を務める男性。年齢は28歳で、高知出身。明るい茶髪を短髪にしている。表田裏道の大学の後輩でもある。明るく楽天的で、物腰が柔らかく人懐っこい性格をしている。初対面の相手にいきなり合コンに誘うなど、他人との距離感がかなり近い。大学時代は兎原跳吉、熊谷みつ夫と同じ寮室だったが、彼女と同棲するために寮を出ており、入れ替わる形で裏道が寮に入っている。バツ2で、現在は一人目の妻との娘、獅子戸たま子と、二人目の妻との息子、虎井又太郎の二人分の養育費を払っている。裏道からはほとんど覚えられていなかったが、スーパーで偶然再会した際に彼を半ば無理やりCAT KICKに連れて行った。当初は距離感のおかしさを感じた裏道から苦手と思われていたが、高知の遊び「べく杯」をしながら酒を飲み交わすうちに打ち解け、親しくなった。身長は181センチで、血液型はO型。

書誌情報

うらみちお兄さん 1巻 一迅社〈comic POOL〉

第1巻

(2017-09-27発行、 978-4758015752)

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