おしゃべり階段

おしゃべり階段

中学二年生の森本 加南はクラスでいちばん背が低く、天然パーマの髪にコンプレックスを持つ内気な女の子。しっかり者で姉のような存在の親友・粟ちゃんや、加南をからかういたずらな男子・中山手 線らと共に中学生活を送っている。時に先輩に淡い憧れを抱いたり、ドジを踏んで悩んだりする毎日の中、さりげなく優しさを見せる線に加南は次第に恋心を抱くようになる。やがて加南は高校進学、大学受験と節目ごとの様々な体験、人との別れや出会いを経て大人への階段を上っていく。一人の少女が成長していく過程の繊細な心の内側を描く青春グラフィティ。くらもちふさこの初期(1978年)作品。

正式名称
おしゃべり階段
ふりがな
おしゃべりかいだん
作者
ジャンル
青春
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あらすじ 

第1巻 

森本 加南は中学二年生。体育の授業の前、加南は親友・粟田が新任の国立先生が来るのを心待ちにしている様子を微笑ましく見守っていた。ところが、国立先生は教室に入るなり加南の天然の巻き髪を指してパーマをかける子は嫌いだと厳しく注意する。何も言えずにとまどう加南の横から中山手 線が天然パーマだと口を挟んで誤解を解いてくれた。なんとなく気持ちにしこりが残ったまま授業を受ける加南だった。そんな加南の気持ちを払拭するかのように線はまたいたずらを仕掛けるのだった。

粟田は元バスケットボール部の部長・根岸先輩のことが好きだった。根岸先輩は加南も見とれるほど素敵だった。粟ちゃんは根岸先輩が自分のストレートの髪をきれいだと褒めてくれたのだと言う。加南は家に帰ると、何とか天然パーマを直そうと髪にアイロンをかけて失敗するのだった。

加南は国立先生の体育の授業でまたドジを踏んで恥をかいてしまう。次の保健体育の授業も憂鬱に思った加南は、授業をさぼろうとする男子の後に付いて教室の天井裏へ登ろうとした。ところが、その寸前に先生に見つかり、下へ落ちて足を骨折してしまう。すっかり自信を失くした加南に、理科の立川先生は自信がある部分と無い部分の両方を併せ持つ人が魅力的なのだとなぐさめの言葉をかける。体育祭の日、骨折で走れない自分に優しさと親切をみせてくれた根岸先輩に加南は淡い恋心を抱く。根岸先輩は立川先生が言う魅力的な人そのものだと感じた加南だった。しかし、その後粟ちゃんと根岸先輩の恋が実ったことを知り、また自分を惨めに思い落ち込んでいく。

悩みでいっぱいだった加南は、ある日、線もまた加南と同じように自信がない部分を持っていたと知る。線はそれを努力して克服しようとしていた。加南は線の姿を見て自分も自信が持てる部分を探してみようと思い直し始める。加南にとって線は徐々に心の中で頼りになる存在となっていった。やがて中学卒業の日がやってきた。加南は線とは別々の高校へ進むことになってしまった。

高校生活では加南に新たな出会いが待っていた。 

第2巻 

森本 加南は高校でいちばんの仲良し日野 光咲子がとんがらしこと真柴を思い続けていることを知っている。まゆげを剃り、赤い髪をした真柴はロックミュージシャンの顔を持つ異色の存在。一つ年上の真柴は加南たちが高校に入学した時に転入してきた。高校のお昼休み、加南は自分なりに気を利かせてさりげなく光咲子の話を真柴に振るのだった。加南は相変わらず、他の高校に通う中山手 線を思い続けていた。線はバスケットボール部のキャプテンとして活躍していた。皆高校三年生となり大学受験の話もちらほら出始めていた。

加南は光咲子も出場するバスケットボールの試合を見にいった。途中、線の高校でバスケット部のマネージャーをしている国分寺と出会う。国分寺と言葉を交わした加南は自分の声と彼女の声がとてもよく似ていることに気づいた。驚く加南の様子を見て国分寺は以前、練習中に線から加南と呼び間違えられてショックを受けたと話す。加南はかつてバスケットボールの練習を見学に行った時のことを思い出した。国分寺の肩に手をかけて何かを誤っているような線の姿だった。二人はつき合っているのではないかと心配していた加南だった。しかし、誤解だったのだ。加南は相手チームで活躍する線の姿を誇らしげに眺めていた。そして、勝った線の高校チームにおめでとうと声をかけるのだった。後日、加南は線に誘われて縁日に向かった。そこで偶然、中学時代憧れていた根岸先輩と再会する。根岸先輩からきれいになったねと言われた加南は、あの頃と変わらない自分もいるが、同時に自信を持てるようにもなったのだと心で応えるのだった。

しばらくして、あるトラブルが加南を襲う。たまたま居合わせた線に救ってもらった加南は線への思いが募り気持ちを伝えようとする。思いを察した線は加南に言わせまいと自分から好きだよと言葉を被せた。加南はあまりの驚きにその場にへたり込むのだった。

大学受験ムードが色濃くなってきた。加南は線と同じ大学を目指して必死で勉強に打ち込むものの、思うような手応えをつかめずに悩んでいた。そうして、迎えた合格発表の日、加南と線はどちらも志望大学に不合格となってしまった。

登場人物・キャラクター

森本 加南 (もりもと かな)

中学2年生の女の子。天然パーマと背が低いことにコンプレックスを持っている。 自分に自信がなく失敗を繰り返す。仲のよかった中山手 線と同じ高校に行きたくて明神高校を受験し合格するが、線は志望校を変更し、別々の高校に通うことになる。加南は高校の同級生である日野 光咲子や真柴との付き合いの中で次第に自信をつけていく。線のことを一途に思い続け、高校三年の時にお互いの気持ちを伝えあう。大学生になるまでの出来事を通して、様々な思いを抱き悩み迷いながらも成長していく。

中山手 線 (なかやまて せん)

森本 加南の中学時代の同級生。加南をからかいながらも見守っている優しい性格。照れ屋であまり気持ちを口にしない。加南とは友達同士仲がいいことで有名だった。バスケットボール部所属。加南とは別の松浦高校に進学する。背が低いことを気にしていたが、高校生になると急激に身長が伸びた。左利き、目を細めるのがクセ。

森本 哲夫 (もりもと てつお)

森本加南の3歳年下の弟。明るく素直な性格だが、ドラムが欲しいと親にだだをこねた。中山手線の弟中山手円とバンドを組み、念願のドラムを担当。真柴一興に憧れて、毎週ライブを見に行っていた。

中山手 円 (なかやまて えん)

眼鏡をかけている。中山手線の弟で、森本哲夫の同級生。一緒にバンドを組むことになる。

日野 光咲子 (ひの みさこ)

森本加南の高校時代の親友。中山手線と顔が似ている。バスケットボール部。真柴一興に心惹かれていたが、彼が森本加南を思っていることを知り、身を引いた。

真柴 一興 (ましば かずおき)

森本加南の明神高校のクラスメートだが、年齢はひとつ上。髪が赤くて長髪のため、森本加南からは密かにとんがらしと呼ばれている。森本加南に告白する。ライブハウスで人気の歌手で森本哲夫は彼の大ファン。

国分寺 (こくぶんじ)

中山手線と中学、高校が同じ。森本加南と声が似ていて、中山手線によく間違えられていた。高校生のときに中山手線と付き合うことになる。カエルの解剖で気絶するほど気が弱い。

粟田 (あわた)

森本加南の中学時代の親友。きれいなストレートヘアをしており、根岸に髪を褒められた。このことが森本加南のコンプレックスを刺激することとなる。根岸から交際を申し込まれた。

根岸 (ねぎし)

中山手線の中学時代のバスケットボール部の先輩。明るくほがらかで、森本加南の憧れの人。

立川 (たちかわ)

森本加南の通う中学校の理科教師。眼鏡をかけていて、身なりに気を遣わない風貌。生徒の身なりに対してや授業は厳しい。

国立 (くにたち)

森本加南の通う中学校の体育教師。若くてかっこよくて話せると生徒に人気がある。

神田 等 (かんだ ひとし)

中山手線の中学と高校のクラブ仲間。中山手線と国分寺が付き合っていると噂を流した。

四谷 まこと (よつや まこと)

森本加南の中学、高校の同級生。バスケットボール部で、中山手線とはパチンコ仲間。

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