概要・あらすじ
賢木理央が10歳のころ、母が失踪してしまう。それをきっかけに継母と実の父から執拗な精神的圧迫を受けるようになった理央は、自傷行為を繰り返すようになり、カウンセリングを受け始める。同じころ比嘉佐保子は家から一歩も出られなくなり、不登校になってしまう。彼女の周りを取り巻く環境には何の問題もなかったが、カウンセラーである御法鏡子からの提案により、親子が物理的に距離を置くことで、ある程度の解決が図られた。 そして高校3年生になった時、理央と佐保子は出会う。2人は次第に恋人のように同じ時間を過ごすようになり、互いに心の大部分を占めるかけがえのない存在となっていくのだった。だがそんな中、理央は継母である繁子からの悪意ある言葉に傷つき、自殺を図る。佐保子の懸命な看護の甲斐あって一命をとりとめた理央は、佐保子の心の内を聞き、法的に家族と離れて佐保子と暮らす決意をする。そして佐保子も、永遠に理央と人生を共にすることを誓うのだった。
登場人物・キャラクター
賢木 理央 (かしき りお)
女子高に通う精神不安定な高校3年生。7歳のころ、実の妹を生後半年で亡くし、10歳のころに母が自分を置いて家を出て行ってしまったことで、自責の念に駆られ、自傷行為を繰り返すようになる。11歳のころから御法逍三のカウンセリングを受けるようになり、現在に至るが、一時的に彼の手を離れていた時期がある。その間は繁子によって悪名高いX病院に入院させられており、この入院が、彼女の性格に悪影響を与えた。 男の子のような風貌、そして周囲に女子しかいないという学校環境から、周りからはちやほやされているが、本人は至ってクールであり、感情を表に出さない。一方で、いつも人の温もりに飢えているところがあり、彼女を取り巻く女性に関する噂は後を絶たない。
比嘉 佐保子 (ひが さほこ)
賢木理央と同じ女子高に通う高校3年生。実は理央よりも2歳年上の19歳。中学時代に精神不安定で不登校になり、引きこもった時期がある。その後地元の高校に入学するも、自分の過去を知る人が多いことに抵抗を感じ、2年生の時に今の高校へ転入してきた。精神不安定だった当時、カウンセリングに通っていたのは御法夫妻の勤務していた病院で、理央とはそこですでに出会っており、屋上から飛び降りようとしていた彼女を救ったことがあったが、2人ともその過去を覚えていない。 理央とは後に、互いにかけがえのない存在となり、一生を理央の支えとなって生きていく決断をする。
繁子 (しげこ)
賢木理央の継母。常日頃から理央のことを極端に嫌い、彼女がこの世に存在しなければいいと考えている。そのため、理央の精神状態を知った上で彼女を陥れ、あわよくば自殺に追い込もうと画策している。自分の実子である、理央の2人の弟のことを一番に考え、彼らに固執している。また、2人の息子の良い母親である自分自身に酔っている。
お父さん (おとうさん)
賢木理央の父親。繁子とはもともと愛人関係にあったが、理央の母が失踪したのを幸いに、妊娠した繁子を後妻に迎え入れた。理央が本当に自分の子供なのかと疑っているため、理央の精神状態や、その治療に対する姿勢には一切の愛が感じられない。
御法 逍三 (みのり しょうぞう)
臨床心理士として病院に勤務する傍ら、大学の教授も勤める。7年前から夫婦で賢木理央のカウンセリングに携わっている。当時11歳だった理央を休みごとに夫婦の自宅に招き、一緒の時間を過ごすことで彼女の心を取り戻そうと考えるほど思い入れていた。だがある時、研究のため夫婦揃ってアメリカへ行くことになり、後ろ髪をひかれつつ理央と離れることになる。 帰国してからは理央をX病院から退院させ、医者と患者の関係を越えて新たに信頼関係を築く。いつか理央を本当の家族にしたいと考えている。理央にとっては数少ない理解者である。
御法 鏡子 (みのり きょうこ)
御法逍三の妻で、逍三と同じ病院に勤務する臨床心理士。比嘉佐保子の主治医を務めており、彼女を家族と離すことを提案した。逍三がカウンセリングの一環として賢木理央を家に連れ帰って来たことから、彼女を家族のように迎え入れ、それが理央の心の支えともなっていた。
叔母さん (おばさん)
比嘉佐保子の叔母でギャラリーを経営している。佐保子の状態を知ったうえで、両親から彼女を預かって一緒に暮らしている。佐保子の良き理解者。明るくおおらかな性格で、佐保子が気を遣わなくていい生活を提供してくれている。
明石 (あかし)
賢木理央の学校の同級生。叔父が学園理事であり、プライドが高い。理央とはほかの人よりは一歩踏み込んだ関係だと思っていたが、比嘉佐保子を悪く言ったことで、理央との関係が悪化してしまう。
場所
X病院 (えっくすびょういん)
繁子が、精神不安定な理央を自分や息子たちから遠ざけ、閉じ込めておくためだけに入院させた病院。関係者の間では知らない人はいないといわれるほど悪名高い病院で、理央がこの病院に入院していることを知った御法夫妻は、彼女をここから退院させるために尽力する。後に数々の摘発を受け、廃院となる。